ep1.
『募集。
今夜、新宿歌舞伎町入り口前から三十分程度ですが、バイク流します。終着は新宿の新南口を考えています。後ろに乗りたい人はDM下さい。年齢性別問いませんので、早いもの勝ちということでお願いします。決まり次第、詳細は後程』
SNSに募集の記事を流して十五分後。再びスマホを開くと、三通のDMが来ていた。僕はその内の一番早くメッセージをくれた人を選んで、まずはプロフィールをタップする。
MAIと記された名前の下には、都内OLで食べる事と旅行が大好き! と記されている以外、特に性別も何もないが、名前や投稿されている内容から、大体二十代後半から三十代前半位の独身女性だろう。スターバックスの新作フラペチーノの写真をアップする際、見えるジェルネイルの派手さから、きっとお洒落な人なのだろうかと予想する。
『応募ありがとうございます。
今夜二十一時、歌舞伎町入り口付近にいますので、着いたらDM下さい。荷物は最小限にして下さい。時間は厳守なので、五分以上は待ちません。では後程。』
書き慣れた定型文を綴り、募集記事を消すと、僕はスマホをベッドに放り投げた。
時間まであと三時間。少し眠ろうかな。
電気の点いていない薄闇色の部屋に比べて、民家の明かりが灯り始めた藍色の窓の外は、仄明るく温かそうに世界を照らしている。僕はそんな街並みをベッドに横たわりながら眺め、ゆっくりと目を閉じた。