1、ここじゃない世界Ⅱ
窓側の一番後ろの席。大抵の生徒はおそらく席替えの時に奪い合うような絶好の場所。
そこが俺の席だ。
「また、遅刻かよ」
席に座るなり、前の席から話かけてきたコイツは鐸島和也。
俺の悪友だ。一応もう一人いるがそいつは別のクラスで今は紹介できないのが残念だ。
蒼「うるせえなぁ、冬場は起きれねえんだよ」
和也「起きれねえのは一年中だろ…」
(このやろ、一言多いんだよ)
午前の授業の終わりを告げるチャイムがなる。
俺は和也から食堂に行かないかと誘われたが、遅い朝食を食べたばかりなので、やんわりと断った。
とはいえ、さすがに昼食時のこの時間に教室に一人でいるのは気まずい。 なので俺は屋上に行くことにした。
普段は生徒も多く賑やかな屋上も、冬の寒さのせいか誰もいなかった。
俺は屋上に設置してあるベンチに横になり空を眺める。
冬の空は雲ひとつなく澄みきった青い色が一面に広がっていた。
すると外と内を繋ぐ扉が開く。
俺は起きて誰が来たのかを確かめた。
蒼「……如月か」
確かめた後、もう一度横になる。
如月ソラはフェンスに寄りかかり遠くの方を見ている。
蒼「はぁ、退屈だなぁ」
そんな事を呟きながら俺は次第にウトウトし始め、夢の中へと旅立つ。
ーーーーー
ーーー
ー
蒼「……う…ん?」
如月「やっと起きたのね」
俺が目を覚ますと、最初に視界に入ったのはなんと如月ソラだった。
如月ソラは俺の顔を覗きこむように顔を近づけてじっと見つめている
さすがは学園内でも上位に入る美少女と言われる程のものがそこにはあった。
指を通せばスルスルと通りそうな赤みがかった茶髪につり目がちといえど黒く輝きを放っている瞳
しみやシワなど一切無縁な白い肌がそれを物語っている。
そんな彼女を見て、俺は一瞬見とれてしまったが我に返り、すぐさま飛び起きて如月から距離をはなして背を向ける。
俺は動揺を隠せず、起きたばかりの頭をフル稼働させる。
(な、なんで如月が目の前に? つーか可愛すぎて一瞬理性が飛びそうになっちまった! って、イカン、イカン! 考えると余計に思い出しちまうーー)
頭を抱えながら、色々葛藤していると
如月「あの…」
俺は振り返った。
如月「ごめんなさい。驚かせる気はなかったの」
気を悪くしたと思ったのだろうか。
反省の色を浮かべて謝罪する如月。
蒼「あ、いや、別に気にすんなよ!」
誤解させてしまったと思った俺は少し笑って見せてアピールする。
蒼「それで、俺に何か用?」
ああいう風にしていたという事は自分に用があるんだろうと思い、俺は聞いてみた。如月「神代くん、お休みになる前に退屈だっていってたわよね?」
蒼「言った…、と思う」
起きた時の衝撃が強すぎて、そんなこと言ったかどうかも覚えてなかったので曖昧な返ししかできなかったが如月が何かを言いかける。
しかし間の悪いことに午後の授業のチャイムがなる。
如月「チャイム、鳴っちゃったね」
ガッカリしながら言う如月。すると、
如月「今日の放課後って暇かな?」
蒼「あ、あぁ暇だけど…」
それを聞いてニコッと笑いながら如月は
如月「じゃあ、丘の上公園に来てね!」
そう言うと教室に戻っていく
一人残された俺はキョトンとなった。
蒼「何だったんだよ…一体」






