雨の後、虹を渡る金魚
学校帰りのバスに乗る高校生の凛子。外はしとしと、と雨が降っている。
バスの車窓から長閑な田園風景を眺める凛子。
バス停につき、バスから降りて傘をさす。ほかに降りる乗客はいないようだ。
田舎の一本道。周りには誰もいない。
バスが通り過ぎた後、静まり返る畦道。
「ピショッ。」
・・・・・。
何かの音がしたのを聞いた凛子。
バス停の近くに一本の楠木の大木があり、その辺りから聞こえた気がする。
「何の音だろう?」
大木の根元に小さな水たまりがいくつかできていた。凛子は近づいて水たまりの中を覗き込む。
一匹だけ、赤い小さな金魚が泳いでいた。口をパクパクと動かしている。
驚く凛子。
「えっ!水たまりの中に金魚がいる!どういうこと?」
先ほどの音はこの金魚の泳ぐ音か。
水たまりに片手を入れようとしたらその金魚が、ピショっと勢いよく
飛び跳ねて近くの別の水たまりへ飛んでいった。
その金魚はぴょんぴょんと次々に水たまりを飛び跳ねる。
雨が強くなってきた。
金魚は水たまりを飛び出して、ついには雨の降る空中を泳ぎ始めたではないか!
凛子の周りをスーイスーイと泳ぐ金魚。
この雨を待っていたかのようにいつの間にか他にもたくさんの金魚たちが
周りの水たまりから出てきて空中を泳ぎ始めている。黒い出目金の姿もある。
光が鱗をキラキラと反射する。
雨の降る中を自由に泳ぎ回る金魚たち。
「一緒に遊ぼうよ!」
とでも言いたげに凛子の手を口先でツンツンとつつく金魚もいる。
「すごく綺麗だ!映画みたいだ!」
雨に濡れるのも構わずに、傘を放り投げて駆けだしてみる。
赤色、黄色、白色、黒い出目金。色とりどりの金魚たちが雨の降る空間を
元気に泳ぎ回る。
小さな魚たちと戯れている。
でも、凛子は気づいた。
「ああ、これはきっと夢だな。雨の中、魚が空を泳ぐなんてあり得ないこと。
でもすごく素敵な夢だ」
まどろむ視界。
蝉の鳴き声で意識が覚醒した。
自分の部屋で身を起こした凛子。寝ぼけ眼だが今見た光景は憶えている。
「やっぱり、夢だったか・・・。」
雨の中、沢山の金魚たちと遊んだ綺麗で愉快な夢。
でも、いい夢を見た後は気分がいいものである。ふいに窓の外を見やる。
遠く、雨上がりの晴空に夏雲が綿菓子のようにふわふわと浮かんでいて
その彼方に七色の虹が掛かっていた。
のどの渇きを感じた。
台所へ行き、グラスに水を入れる。
「ぴしょ!!」
「え・・・?」
グラスの中に一匹の赤い金魚が見えた。
「
最後までお読みいただきありがとうございました。この作品に特に深い意味などはなく、文学なので芸術的な描写を意識しました。よければいいね!感想、評価頂ければ嬉しいです。