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大魔女様は婚活中  作者: くろえ
3/8

勇者はカボチャを携えて

セルタイス国は、商人の国。

世界各地から多くの物資がこの国に集まり、腕利きの商人達によって売買される。市場には物が溢れ、人々は色美しく着飾り、様々な娯楽が彼らの人生を華やかに彩る。

他国が羨むような、非常に豊かな国だった。だからこそ、国の宰相であり、非常に高潔な人柄で知られるビニグ氏は憂鬱だった。


「起きんか、このボンクラ息子!怠けるのもいい加減にせぇーい!!!」


ビニグ氏は部屋の扉をほとんど体当たりでぶち破り、窓際の寝台へと突撃した。

そしてクシャクシャになった羽毛布団をガシッと掴むと、力任せに引っぺがす!


「きゃー!ナニするんですか、父上ぇ!?」


少女のような悲鳴を上げて現れたのは1人の若者。

セルタイス国宰相の一人息子は、未練がましく枕を抱えてシーツの上に転がった。

「ボク、寝てたんですよぉ?

夕べは面白い本を読みふけっちゃって、明け方近くまで寝てなくて・・・。」

「喧しい!この愚か者!!!」

ビニグ公爵はまだ眠たそうな息子の寝間着の胸ぐらを掴み、ガクガク激しく揺さぶった。

「わかっておるのか、エルゲイよ!

お前はこの国の命運を賭けて、かの国の大魔女と結婚せねばならんのだぞ?!

北の大国が台頭してきておる今、かの国の援助が必要だ!

我が国の護りを強固にするためにも、この縁談はなんとしても取りまとめねばならんのだぞ!?」

「それはヤだって言ったじゃないですかぁ。勝手に話を進めないでくださいよぉ。」

「ワシだってこんなボンクラ息子を国外に出して、恥を晒すよーなマネなどしたくはない!」

父親は容赦無い。しかし息子がこの有様ならば致し方ない事だった。

痩せぎすで血色の悪く、風が吹けば飛んで行くかと思えるくらい軟弱そう。

世間に出すには忍びない、絵に描いたような「ボンクラ息子」。

ビニグ氏の怒りの形相が、やるせない悲しげなものへと代っていった。

「他に妙齢の男子がいなかったのだ!

しっかりした家柄の若者は皆、まだ年若いうちに身を固めてちゃんと社会に貢献している!

お前もたまには人様のお役に立つ事をせい!

腐ってもお前は宰相の息子、いずれはワシの後を継いでこの国を護ってゆかねばならんのだぞ!?」

ボンクラ息子=エルゲイは、盛大に欠伸をして伸び上がった。


「ヤですってば~。それにボク、誰とも結婚なんてしたくないし~。

面倒じゃないですか、結婚なんて。わざわざ窮屈な思いして他人と暮すとか、無理ですから~。

のんびり気ままに暮していければ、それでいいんですよね~、ボク。」


ビニグ氏の形相がまた変った。

もともと怒りで紅潮していた顔色は、赤いを通り越し黒くなる。


「 出て行け!このボンクラ息子ーーーっっっ!!! 」


エルゲイは寝間着姿のまま、屋敷の外へと叩き出された。


---♪---♪---♪---♪---


(あ~ぁ、()()追い出されちゃった。)

寝間着姿のエルゲイは、森の小道をトボトボ歩いて進んでいった。

普段真面目な父親は時たまキレて暴挙に及ぶ。しかしこういった仕打ちには慣れていた。

そう頻繁な事ではないし、ビニグ家敷地内の森では危険な獣は滅多にでない。

(ま、お昼ご飯の時間くらいに帰れば中に入れてもらえるだろ。

この辺散歩するのも久しぶりだなぁ♪)

セルタイス国はいま、木々が芽吹く深緑の季節である。

幸せそうなエルゲイは、清々しい空気を胸一杯に吸い込んだ。


---♪---♪---♪---♪---


(・・・冗談じゃないわ!こんな奴!!!)


その様子を水晶玉で眺める大魔女はビニグ氏同様、ブチキレそうになっていた。

(10番目の妹を思い出すわね。あの娘も脳天気に引き籠もってた時があったっけ。

なんの苦労も努力もせずに、ただ楽して暮すだけ。

咎められても反省どころか反抗する気もまったくない。

結婚どころの話じゃないわ!こんな怠け者、お断り!!!)


キィン!


大魔女は首に掛けている首飾りに手を当て、宝石の一つを指先で弾く。

異変はすぐに現れた。

水晶玉に映るエルゲイに、大魔女の魔法が襲いかかる!


ゴンッッッ!!!


いったいどこから飛んできたのか、デッカいカボチャがエルゲイの頭を強打した!

エルゲイは悲鳴を上げる間もなく、白目を向いて昏倒した。


---(>_<)---(>_<)---(>_<)---


・・・側で誰かの話し声が聞こえる。

それでようやく目が覚めた。エルゲイは右手を持ち上げ、痛む頭へ当てようとした。


(あれっ?動かない???)


右手はピクリとも動かなかった。

手だけではない。足も、頭も動かない。

横たえられた身体を起こすどころか、閉じた瞼を開く事すらまったく出来なくなっていた。

(ど、どうなってるんだ?!一体何があったんだ!?)

指一本動かせない。エルゲイは大混乱に陥った。


「困った奴だ。あの森には行くんじゃないっていつも言ってるだろう?」


男性の声がした。

とても穏やかで落ち着いた声は、慌てふためくエルゲイの心を妙に優しく鎮めてくれた。

「だってさぁ、森ン中だったら探せばなんか喰えるモンがある知れねーじゃん?

まさか人が行き倒れてっとは思わなかったけど。」

元気な少年の声もした。ハキハキした言い方が好ましい。

「あの森は私有地なんだぞ、ジャック。

不法侵入が見つかったら撲たれるくらいじゃ済まない。」

「・・・ナナが泣くんだよ。腹減ったって。」

少年の声が少し沈んだ。


(腹が減ったって?お店で食べ物を買えばいいじゃないか。)


声を出せないエルゲイは心の中でつぶやいた。

不意に、目を閉じているにもかかわらずある光景が見えてきた。

低く暗い天井、所々ヒビが入ったくすんだ壁、書物がビッシリ収まった棚や乱雑に物が置かれた机。

机の前に置かれた椅子には優しい目をした青年が座り、利発そうな少年に微笑んでいる。

この少年がジャックだろう。彼は家の経済状況が見て取れるような、汚れて粗末な出で立ちだった。

「そこのサンドイッチを持って行きなさい。」

青年が部屋の隅に置かれた小さなテーブルを指さした。

「でもコレ、クララ姉ちゃんが先生に持ってきた昼飯じゃ・・・?」

「いいから持って行きなさい。兄妹で仲良く食べるんだぞ?」

ジャックは瞳を輝やかせ、サンドイッチに飛びついた。

「ありがとう、ニド先生!そんじゃ、その人よろしくね!」

元気いっぱい走り出ていく少年を、ニドと呼ばれた青年は優しい眼差しで見送った。

彼は聴診器を耳に当て、粗末なベットで横になるエルゲイの方へ歩み寄る。


「安心して下さい、私は医者です。

どこのどなたかは知りませんが、意識が戻るまで出来る限りの治療をさせていただきますよ。

・・・一体何があったんですか?森の中、寝間着姿でカボチャと一緒に倒れているなんて。」


エルゲイが宰相の息子だとは思いも寄らないようである。

枕の横にはエルゲイの頭を強打した、あのデッカいカボチャが置かれていた。


「まぁやっぱり。もう一度来てみてよかったわ。」


今度は女性の声がした。

飛び出していった少年と入れ違いに入ってきたのは、簡素なドレスを着た娘。

彼女が足を踏み入れるなり、診療所と思われる部屋が急に色めき華やいだ。

「貴方の事だから、最初に持ってきたサンドイッチは人にあげてしまうと思ってたの。

さぁ、コレを食べてちょうだい!」

娘が差し出す籠からサンドイッチの美味しそうな香りが立ち上る。

照れくさそうに笑うニドの腹が小さくグゥ、と鳴った。

「い、いや、その・・・。

いつもゴメン。ありがとう、クララ。」

「いいのよ。気にしないで♪」

クララと呼ばれた娘がニッコリ微笑んだ。

美しい、艶やかな微笑だった。

エルゲイは一目で、恋をした。


---♡---♡---♡---♡---


クララは美しいだけでなく、しっかり者で優しい娘だった。

ニドの診療所を毎日訪れ、家を掃除し衣類を洗い、食事を作って世話をする。

時には忙しいニドを手伝い患者達にまで世話を焼く。

ニドを慕って集まって来るジャックのような子供達にも、クララはとても優しかった。

(こんな素晴らしい女性がいたなんて!

まるで女神のようだ。こんな女性(ひと)となら、結婚してもいいかもなぁ・・・。)

眠り続けるエルゲイは心の中でつぶやいた。

素晴らしいのはクララだけではない。ニドもまた素晴らしかった。

診療所がある地域は貧しい者が多いらしい。ニドはお金のない人達からはあまり治療費を受取らない。

自分が食うや食わずになっても、魔法で患者を必死に癒やす慈愛溢れる人物だった。


ニドとクララは寝たきりになったエルゲイを献身的に世話してくれた。

「おかしいな。あれから随分日が経つのに目を醒ます気配がない。

俺の治癒魔法はちゃんと効いてるはずなんだけど。」

ニドが腕組み首を傾げる。

忙しい合間を縫って、ニドはエルゲイに治癒の魔法を掛け続ける。

夜遅くまで診療が続き疲れていても、寝る間を惜しんで魔力を注いでくれている。

「この人に何があったのかしら?意識が戻ればご家族とも連絡が取れるのだけど。

・・・早く元気になってくださいね?」

クララも心配げに眉を潜め、汗ばむ額をタオルでそっと拭ってくれた。

有難くて、申し訳ない。

こんな二人の重荷になる自分がとてもイヤだった。


--(´・_・`)--(´・_・`)--(´・_・`)--


そんな生活が続き、1週間。

診療所のベッドの上でニドの魔法治療を受けながら、エルゲイは心の中で訝しんだ。

ニドに元気がない。心ここにあらずといった感じで酷く悲しそうなのだ。

(何があったんだ、ニド?)

優しい彼が苦しむ姿に胸が痛む。

重い空気が立ちこめた下町の診療所。

そこに血相変えた子供達が、いきなりなだれ込んできた。


「ニド先生、大変だ!

クララ姉ちゃんがカバルクト商会の奴らに連れて行かれちゃった!!!」


(なんだって!?)

切羽詰まった面持ちのジャックの言葉に驚いたは、ニドではなくエルゲイだった。

(カバルクトといえば、あの国内きっての大富豪の?!

商才ある一族が経営する大会社だが、裏では悪行三昧だと噂されてる奴らだぞ!?

なんだってそんな輩共にクララが拉致されるんだ!?)

狼狽えるエルゲイの心情をよそに、ニドは子供達の方を振り向きさえしなかった。


「・・・その事なら、もう知っている。」


「!? なんで!?」

(何故だ、ニド?!)

横たわるエルゲイの傍らで、うつろな目をして俯くニド。

理由を話す彼の声は酷く掠れ、痛々しいほど荒んでいた。


「夕べ遅くにね、クララが別れの挨拶に来てくれたんだ。

カバルクトのご子息と 婚約 したそうだよ。

近く結婚式を挙げるそうだ。

彼女なら大丈夫。きっと幸せになれるだろう・・・。」


( !!? )

エルゲイは衝撃に打ちのめされた。もちろん、ジャックや子供達も。

「な・・・変だよ先生!なんでそんなに落ち着いてんだよ!

あのクララ姉ちゃんが、他の男と結婚しちゃうんだぞ!?先生じゃなくってさ!」

(そうだ、なぜそんなに冷静なんだ!?

しかも相手はカバルクト商会の息子だぞ?!

父親の権威を鼻に掛けたどうしようもない(ワル)だ!なぜ引き留めなかった!?)

「・・・みんな、聞きなさい。」

ニドが初めて振り返った。

慌てふためきく子供達が、ハッと驚き息を飲む。

エルゲイにはその理由がよくわかる。この善良な青年の顔には、深い哀しみの色が浮かんでいるのだ。

絶望にも似た感情が、子供達を諭す声からいつもの優しい響きを奪う。

それでも何とか笑おうとするニドの顔は、歪にゆがんで引きつっていた。


「いつも気丈に振る舞っていたけどね、クララの家は今、とても大変なんだ。

父上が重い病気を煩っている。私の治癒魔法なんかじゃなく、もっと高等な魔法を使う治療でなければ、命を落としてしまうんだよ。

それにはとてもお金が掛かる。家を売っても土地を売っても、とても足らないほどお金が必要なんだ。

でも幸い、カバルクト商会のご子息が援助の手を差し伸べてくれた。

ぜひ力になりたいと言ってくれた彼の気持ちに応えて一緒になる事にしたんだそうだ。

これで父上は高等魔法の治療を受ける事が出来る。

また元気になって、長生きして下さるだろう・・・。」


(・・・何を言っているんだ、ニド?)

エルゲイは愕然となった。

(そんなの 身売り じゃないか!

父親の治療費と引き替えに結婚を迫られ、泣く泣く従うだけだろう!?)

多くの子供達が言葉を失い泣き出す中、ジャックが必死で食い下がる。

「酷いよ先生!そんなのでクララ姉ちゃんが幸せになれるわけ・・・!」

「この国では、金がなければ幸せになれない!

お前くらいの歳になれば、もう充分すぎるほど知っているはずだぞ。ジャック・・・。」

ニドの言葉がジャックとエルゲイの心に突き刺さる。

子供に声を荒げてしまったニドが、その場を取り繕うように微笑んだ。

まるで泣いているかのような、辛く苦しげな微笑だった。

(なんて事だ・・・。)

エルゲイは打ちのめされた。

不快なだみ声が聞こえてきたのは、その時だった。


「ここの責任者はいるか?!」


「!?」

ニドが俯いていた顔を上げた。

慌てて外へ出た彼は、意外な来訪者達に目を見張る。

役人のように立派な出で立ちの男が5人ほど。男達の集団で一番権威があると思われる大きな男が冷たく言った。

「この辺りの貧民街は取り壊される事になった!」

「なんだって?!」

「ここから大通りまでの土地をカバルクト商会が買い取ったのだ。

君達には近日中に立ち退いてもらう!」

「な・・・!?」

言葉を失うニドに代り、他の子供達と一緒に外へ走り出てきたジャックが怒声をあげた。

「チクショー!カバルクトの不良息子の悪巧みだな?!

クララ姉ちゃんがニド先生に二度と会えないよう、先生をこの街から追い出す気なんだな!?」

「なんとでも勝手にいいたまえ。」

大男が冷酷に笑う。

そして立派な紙に書かれた書状を一枚、ニドの眼前に突きつけた。

「この通り、この国の宰相・ビニグ様の署名付き許可証もある。

さぁ、わかったらとっとと立ち退きの準備でもしたまえ。

それとも何かね?君達は宰相様に楯突くというのかね?

やれるものならやってみたまえ!是非ともお手並み拝見して・・・!!?」

悪党がほざく戯れ言は、強制的に止められた。

突然の事に驚く余り、立ち尽くすニドと子供達。

その背後から飛んできた デッカいカボチャ の強打によって!


ゴンッッッ!!!


一抱えもあるカボチャを顔面中央でまともに受け止め、大男は仰け反った!


「おぉ、なかなかの威力ではないか、私の頭を撲ったカボチャは!」


久しぶりに出した割にはしっかりとした声が出た。

弾かれたように振り向くニドと、目を丸くする子供達。診療所の戸口に立つエルゲイは、彼らに向かって笑い掛ける。

なぜ急に動けるようになったのかはわからない。しかし、今、為す事はわかっていた。

白目を剥いて昏倒した大男が手放した、宰相署名入だという書状。

ヒラリと足下に舞い落ちてきた紙切れを、エルゲイは屈んで拾い上げる。

「ふん!そんな事だろうと思った!」

ほんの一瞥で充分だった。エルゲイは勝利を確信した。

そして、父に自宅の屋敷から追い出された前夜、熟読していた分厚い本を思い出す。

悪に立ち向かう若き勇者の物語。

その主人公になりきって、悪党共を睨めつけた!


「この署名は偽造だな!

あの高潔な父上が貴様らのような悪漢に手を貸すなどあり得ない!

方々に金をばら撒けば父上の耳に入らず事が済むとでも思ったか?小賢しい事だ!!!」


「なに?ち、父上???」

悪党共がざわついた。

(って事は、コイツはここ数日行方不明になってるって噂の、宰相の息子?!

いや待て!そいつは確か引きこもりのボンクラだって話だぞ?!

なんだこの堂々たる強そーな態度は?!

聞いてる話とまったく違う、まるで別人みたいじゃないか!!?)

慌てふためく悪党共に、エルゲイはビシッと指を突きつけた。


「公式文書の偽造は大罪、その確たる証拠もここにある!

言い逃れなど一言もさせんぞ、カバルクト商会はお終いだ!!!」


「ひぃい?!」

妙な気迫に気圧されて、混乱した悪党共は逃げだそうと踵を返す。

そんな彼らにどこからともなく、群れを成して飛んできた デッカいカボチャ が襲い掛かる!


ゴゴゴゴゴン!!!


カボチャは悪党共の頭を強打し、1人残らず仕留め倒した。


---(>_<)---(>_<)---(>_<)---


「・・・ナニ、このカボチャ?」

「どっから飛んできたの?」

ジャックと子供達が恐る恐る、転がるカボチャを拾い上げる。

そんな子供達を呆気の取られて眺めるニドに、エルゲイはツカツカ歩み寄った。

「さぁ!ぼんやりしている場合じゃないそ、ニド!」

「え?あ、あの、なんで私の名を・・・?」

「そんな事はどうでも良い、今はすぐにでも行動に移らなければならない時だ!

クララを助け出さなければ!

あんな素晴らしい女性を、愛を金で買おうとする者どもなんかに渡してはならない!」

「!? し、しかし・・・!」

「しっかりするんだ、ニド!」

狼狽えるニドの肩に手を置き、ありったけの思いを込めて強く掴む。


「彼女の父親の事は任せておけ!治療費が無いのなら私が何とかしてみせる!

解っているはずだ!クララの人生に必要なのは、金なんかじゃない!

彼女を本当に幸せにできるのは 君 だけなんだぞ!!!」


ニドの目に、闘志が宿った。

俯き加減だった顔を上げ、真っ直ぐエルゲイを見返す彼は、力強く頷いた!


「・・・クララを助けます。彼女を愛しているんです!!!」


「良し!!!」

エルゲイは努めて明るく笑って見せた。

胸に走った切ない痛みを振り切るように、子供達へと向き直る。


「さぁ行こう、精鋭達よ!

姫が捕らわれているカバルクト商会に奇襲を掛ける!

我らが麗しのクララ姫を悪党共から救い出すのだ、全員私に付いて来いっっっ!!!」


カボチャを抱えて困惑していたジャック達の目が輝いた。

「おぉーーーっっっ♪!!」

小さな拳が一斉に、空に向かって突き上げられる!

勇者になりきるボンクラ息子と、冒険したい歳頃の血気盛んな子供達。

若い町医者まで一緒になって、彼らは出陣して行った。


---♪---♪---♪---♪---


(コレだから娯楽本ばっかり読んでる引きこもりは!)


勇者達の進軍を、水晶玉を通して眺める大魔女が呆れて小さくため息ついた。

(世間知らずのボンクラ息子が、物語の勇者みたいに立ち回れるわけないでしょ!

ナニが「私に付いてこい!」よ、子供達が怪我でもしたらどーすんの!?)

すぃ、と右手を軽く振る。

水晶玉から勇者達の姿が消え、大臣の顔が現れた。

「エレノアと連絡を取ってちょうだい。

・・・そう、セルタイス国の憲兵隊隊長ンとこに嫁いだ元・7番目の魔女よ!

あの子にね、今すぐダンナに一個小隊率いてカバルクト商会に行くよう言えって伝えて。若い娘が拉致されてるの。

助けてやるついでに家宅捜査でもすればいいわ。相当タチが悪い悪徳商人みたいだから、悪事の証拠がワンサカ出てくるはずよ!

後ね、その悪党共のアジトに宰相の息子が子供連れて押しかけようとしてるの。保護するついでに叱り飛ばしとくよう、言っといて!

これであのボンクラ加減も少しはマシになるかもね。これからは国の貧しい人達の為ガンガン働いてもらわなきゃ、この私が魔法を使った甲斐がないわ!

あぁ、そうそう。城の厨房でカボチャが消えたって騒いでるだろうから、私の仕業だって伝えておいてくれるかしら?

・・・食べた? 私が?? 6個も???

ンなワケないでしょ、止めてちょうだいっっっ!!!」


大魔女が再び手を振ると、水晶玉の中で苦笑する大臣の顔が消え失せた。

カボチャはこの国の特産物。甘くて美味しいと評判である。

しかし。

残念な事に大魔女はカボチャ料理が嫌いだった。

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