表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大魔女様は婚活中  作者: くろえ
1/8

プロローグ

全部で 8話 になります。

よろしくお願いします♪

国を治める大魔女の姉妹は12人。

どの娘も優秀な 魔女 であったがそれぞれステキな恋をして、想いを交した恋人にその「呪文」を唱えてもらいごく普通の 娘 になった。

魔女の名前は「禁忌の呪文」。

家族ではない他の誰かに名前を呼ばれたその魔女は、魔力を失い人間(ひと)になる。

しかし、大魔女だけは少々違う。

大魔女の名前は「婚姻の呪文」。

彼女を名前で呼んでいいのは、この世界でただ1人。

共に国を守り導く、彼女の「夫」だけである。


---☆---☆---☆---☆---


大広間の扉が開け放たれるなり、泣きはらした目をした娘が飛び込んできた。

立ちそれを迎えるのは、この国の女王にして偉大なる「大魔女」。

燃えるような赤い髪。挑むような鋭い目。

まだ若いが絶大な魔力で国を治める大魔女は、玉座から立ち苦笑した。


(やれやれこの娘ときたら!

小さい頃から何かに夢中になったら周りがみえなくなっちゃうんだから。)


確かに娘は周りが見えていなかった。

大広間の大扉から玉座まで伸びる赤い絨毯。その上をまさに一直線に、全力疾走してくる娘。

ドレスの裾を振り乱しながら力一杯駆けてくる。

玉座の横で控える大臣がギョッと驚き目を見張る。そのくらいの「激走」だった。


(こんな娘だから、姉妹達の中でとうとう一番最後になった。

自室に籠もって本ばかり読んで、恋をしようとしないんだもの。まったく手を焼いた事!

でももう安心ね。この娘もきっと幸せになるわ・・・。)


娘が開けてほったらかしの大扉から、オズオズと若者が入って来た。

彼は気が小さく優柔不断。しかしとても誠実な正直者で、何より娘を愛している。

大魔女は満足そうに微笑むと、突撃してくる娘の方へ優しく両手を差し伸べた。


「お姉様!!!」


娘が思いっきり飛びついてきた。

それを受け止め抱きしめる大魔女の目は、温かい慈愛に満ちている。

娘のクシャクシャになった髪を撫でてやる。娘は小さな子供のように声を張り上げ泣きじゃくった。

「お姉様、お姉様、ありがとう、お姉様!!!」

「あぁもう、少しは落ち着きなさい!本当にもう、アンタときたら・・・。」

遅れて入ってきた若者が絨毯の上をソロソロ歩いて遠慮がちに近づいてきた。

大魔女は若者を鋭く睨む。

「ちょっと、そこの学校教師!

私の妹を不幸にしたら承知しないわよ?いいわね!?」

「も、もちろんです。大魔女様!」

すくみ上がった若者が慌ててその場に跪く。

嘘偽りない約束の言葉は大魔女と娘を満足させた。


近々結婚式を挙げるという。

その喜ばしい報告と、永遠の感謝と親愛を残し、恋人達は去っていった。

かつて「8番目の魔女」と呼ばれ、これからは「先生の奥さん」と呼ばれる娘の、新しい人生の旅立ちだった。


---♡---♡---♡---♡---


大魔女は大きく吐息を付いた。

「あぁ、せいせいした!やっと姉妹全員キレイに片付いたわ。

随分骨が折れたけど、まぁ上出来だったんじゃないかしら?

どの娘の相手も人がいい男ばかりだし、よっぽどヘマでもしない限り不幸になったりしないでしょ!

何かあったらこのアタシがいつでも助けに行けるしね。ホホホホホ♪」

改めて玉座に座り直し、高々と足組み、高笑い。

満足げそうな大魔女に、大臣は黙って頭を下げた。

しかし大広間の片隅で、子供達の相手をしていた女性が苦言を述べる。

「それはそうだけどねぇ、お前。」

今の大魔女の 母 にして、先の大魔女 だった婦人。

彼女は小さな椅子に腰掛け、纏わり付いて離れない可愛い孫達の頭を撫でる。


「自分はいったいどうするつもり?

 お前、誰と 結婚 するの???」


「・・・。」

大魔女の哄笑がピタリと止んだ。

頬の辺りが微妙に引きつり、笑顔が冷たく凍り付く。

母たる婦人はため息付いた。

「・・・やっぱり何も考えてなかったのね?」

「まっ、まさか!そんなわけないでしょ、お母様!!!」

金のローブを翻し、大魔女は玉座から立ち上がった。


「先に妹達を片付けてから、じっくり考慮するつもりだったのよ!

なんたって私は大魔女なのよ!?この国の偉大なる女王なんですからね!

相手は徹底的に選び抜かなきゃならないわ!並の相手じゃ、絶対ダメよ!!!

さ、大臣!縁談なら山のように来てるはず、早速吟味に入るわよ!

姿絵、釣書、紹介状!

一つ残らず全部まとめて、私の部屋へ持って来て!!!」


逃げるようにそそくさと、大魔女は大広間から退散した。

それを見送る母親はまた深々とため息付いた。


「どうしようかねぇ、大臣や。

あの娘のああいう所、若い頃のアタシにそっくりなんだけど。」


・・・この場合、家臣ごときにいったい何が言えようか???

寡黙で聡明な大臣はいつものように、黙って軽く頭を下げた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ