クリスティ・サフロン
「今日はお時間を頂きありがとうございます。早速ですが、クリスティさんは化粧水やリンスという商品を知っている。もしくは聞いたことがありますか?」
事前に手紙で、商売の相談がしたいと言ってきた貴族の子息「リッド・バルディア」、彼が最初に投げかけてきた質問は「この商品は既に存在しているだろうか?」だった。
「……いえ、初めて聞きます。ですが、名前だけではわかりません。どういった内容の商品でしょうか?」
クリスは彼に返事をしながら心の中で呟いた。
「どうせ、既存の商品の名前を変えているだけでしょうに……」
世にない「新商品」というものはそうそう出てくるものではない。
商会に幼い頃からノウハウを叩きこまれたクリスは良くわかっていた。
閃きや長年の研究などにより、利便性があるものを新たに生み出せれば大きな利益に繋がる。
だが、そんなアイデアが世に出ることは中々難しい。
「閃き」も具体化して、商品にしないと意味がない。
長年、研究しても結果が出ないこともある。
「では、説明させて頂きますね。まず化粧水ですが……」
……リッドの説明を聞いてクリスは驚愕した。
年端もいかない子供が「閃き」を「物」にして具体化したのだ。
まだ知られていない知識と商品。
女性の美に関する商品で消耗品というのも素晴らしい。
実用化されたら貴族のご婦人、令嬢など欲しがるところはいくらでもあるだろう。
だが、まだ机上の空論。現物がなければどうにもならない。
「でも、試験品でもなんでも商品がないと絵に描いたご馳走ですけどね……」
「あ、それなら試作品を持ってきましたよ」
「え……? 試作品があるのですか⁉」
驚愕した。試作品を作成、持参しているとは思わなかった。
彼に使い方を聞いて、右の手の甲につけて試してみる。
すると、付けていない左とで全然、触った時の感触が違う。
クリスは心の中で、感動に震えながら心の中で呟いた。
「これは……今までと考え方や用途も違う、本物の新商品だわ‼ 完全な未開拓市場の先駆者になれる……⁉」
化粧品やリンスに驚いていると、彼は「魔力枯渇症」の特効薬まで考えていた。
探してほしいと言われた薬草が鍵になるのだろう。
クリスは商売人の人生の中で心が躍っていた。
リッドは話が終わるとクリスと握手をして、クリスティ商会を後にした。
「それにしても、クリス様がそんなに楽しそうにするなんて、あの子そんなに凄かったのですか?」
「彼と出会えた今日この日に感謝しないといけないわ。これから忙しくなるわよ、エマ」
「えぇ⁉ クリス様がそこまで仰るなんて、あの子とんでもないですね」
エマと呼ばれた少女はクリスの言葉に驚き目を丸くしていた。
クリスの中で燻っていた商売人の炎が大きく燃え始める瞬間であった。
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