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【WEB版】やり込んだ乙女ゲームの悪役モブですが、断罪は嫌なので真っ当に生きます【書籍&コミカライズ大好評発売中】  作者: MIZUNA
第九章

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リッドの牢宮【ダンジョン】攻略

「リッド、背中と援護は任せたぜ」


「わかってる。でも、あんまり前に出過ぎないでよ、イビ。離れすぎたら援護が間に合わないことだってあるんだから」


見渡す限り花畑が広がる牢宮【ダンジョン】。


イビと僕が握手をして手を組んだその瞬間、待ってましたと言わんばかりにボロボロの鎧を身に纏った剣と盾、槍を持ったみすぼらしい骸骨達が一斉に地中から湧き出てきた。


唐突な出現とおどろおどろしい容姿に最初こそ驚いたけど、見慣れてしまえばなんてことはない。


出現した魔物は牢宮の『魔力』で造られた存在だから、遠慮なく『火槍』で倒していった。


骸骨達を倒しながらイビが説明してくれたけど、魔物を倒すと魔石や武器が消滅せずに残ることがある。


それらが牢宮の『戦利品【ドロップアイテム】』だそうだ。


魔石は持ち運ぶ余裕がないから、僕は骸骨を倒して得た戦利品の短弓、短剣、剣を拾って装備している。


イビが持っている槍も骸骨を倒して得た戦利品らしい。


現地調達、というやつだね。


現状、牢宮の出入口を探して、槍を持ったイビが先頭を走って骸骨達の群れを蹴散らして道を作り、後ろから僕が魔法と弓矢で援護しながら進んでいる。


「はは。なら、間に合うようにしっかりついてこい」


「言われなくてもそのつもりだよ」


追いかけながら即答すると、僕は「ところで、イビ」と大声で呼びかけた。


「骸骨達が湧いてきて話す暇もなかったけど、牢宮の出入口がどこにあるのか。あてはあるの」


「あてなんぞ、あるわけねぇじゃねぇか」


「はぁ⁉ じゃあ、走っている分だけ体力を消費しているだけじゃないか」


驚きで声を荒らげると、イビは周囲の骸骨達を槍で一蹴してからこちらに振り向いた。


「あてはねぇ。だが、この牢宮はあたし達をどこかに誘っていることは確かだ」


「……どういうこと?」


僕が訝しんで首を捻ると、イビはくいっと顎と視線で空を見るよう促してきた。


「リッドと出会う前、あたしは上空に飛んで牢宮を見渡したんだよ。だが、見えたのは花畑のみで、出入口はおろか木々すらなかった。んで、試しにこの槍を地上に刺して空を飛んでみたら、再び槍を刺して目印にした場所に戻ってきちまったんだよ」


「つまり、牢宮もしくは何者かの意図によって、同じ所をぐるぐる回される造りだってこと?」


「さすがリッドだ。理解が早くて助かるぜ」


イビはにやりと笑うと、周囲をぐるりと見渡した。


「牢宮にはな、次の階層へ進むために条件がある場合が『稀』にあってな。おそらく、さっきのクソ蝶の存在からして、ここはその『稀』に属する牢宮だろうぜ」


「あぁ、なるほど。だから進みながら骸骨を倒すことで、『一定上進む』もしくは『骸骨を一定数倒す』という条件が当てはまるか調べていたってことかな」


合点がいって手をぽんと叩いて相槌を打つと、イビが眉をぴくりとさせた。


「……異様に理解が早い奴だな。リッド、本当に牢宮は初めてなのか」


「も、もちろんだよ。足を踏み入れたことも、魔物を倒したことだって初めてさ」


ぎくりとして誤魔化すように僕は頭を振った。


前世でやっていた数々のゲームで似たようなギミックが沢山あったなんて、言えるわけがないからだ。


イビは目付きを細くしてこちらをジトっと訝しむも、ふっと表情を崩して肩を竦めた。


「まぁ、これぐらい察しが良くないと『型破りの風雲児』なんて異名は得られねぇか」


「あ、あはは。そう言われると、そうかもね」


決まりが悪くなって頬を掻いていると、「いやぁ、君達は強いねぇ」と可愛らしくおどけた声がどこからともなく聞こえてきた。


ハッとして僕とイビが背中合わせに身構えると、蝶の羽を持つ妖精を模した魔物こと『フェイ』が、周囲をずらりと囲むように複数現れる。


「出やがったな、クソ蝶。また性懲りもなく分身か」


「フェイ、今度の僕は容赦しないよ」


僕とイビが魔圧を発して凄むも、フェイは動じることなく「ふふ」と笑みを噴き出した。


「実はこっそり、君達の会話を聞かせてもらったんだ。鳥人族で赤毛の女の子がイビ・パドグリー、銀髪の可愛らしい顔付きの男の子がリッド・バルディアって名前みたいだね。今後、僕も『リッド』と『イビ』って呼ばせてもらうよ」


「勝手にしろ」


「好きにすればいい」


僕達が吐き捨てるように答えると、フェイはやれやれと頭を振った。


「そんな邪険にしなくてもいいだろ。実は僕、君達と友達になりたくて来たんだから」


「友達、だって?」


「……耳を貸すなリッド」


僕の問い掛けにイビが冷たく答えるが、フェイはにこりと頷いた。


「そうさ。そして、もし友達になってくれるなら、地上に帰る方法を教えてあげる」


「ふざけんな、クソ蝶」


イビが鋭い眼光でフェイ達を一瞥した。


「てめぇと友達なぞ、御免被るぜ。それに、どうせお前を倒せば地上に戻れるか、下の階層に行けるんだろうが。牢宮ってのはな、牢宮核【ダンジョンコア】のところに辿り着けば地上に戻れるって相場が決まってんだよ」


「あらあら、イビちゃんは頭の回転は速いかもしれないけど、おつむは三歩歩けば忘れる鶏なみなのかな。鳥人族だけに、ね」


「この、クソ蝶が……⁉」


イビは怒りの形相で舌打ちすると槍を大きく振り回し、周囲に存在していたフェイ達を一気に薙ぎ払う。


フェイ達は呆気なく斬られて光となって霧散するも、「馬鹿だなぁ」と上から声が聞こえてきた。


見上げれば、霧散した光が集まってフェイの姿となっていく。


「今の君達は牢宮に誘われたいわば囚人。そして、僕は君達の生き死にを自由にできる監視者なんだ。こんな風にね」


フェイがそう言って指を鳴らすと、辺りが薄暗くなって骸骨達が忽然と現れ、僕達を取り囲んだ。


ただし、数が今までの比ではない。


地平線の彼方まで届くような、文字通り無数に出現したのだ。


「な……⁉」


僕は目の前の光景に絶句し、目を瞬いた。


今までのおどろおどろしさが可愛く思える程、目の前の骸骨達は禍々しい気配を放っている。


仮に骸骨達の強さが今までと同じだったとしても、これだけの数を相手にするのは不可能だ。


否応なく『死』が脳裏を過り、背中にぞくりと戦慄が走る。


するとその時、イビが小声で「クソが……⁉」と呟いたのが聞こえた。


「この牢宮。やっぱり、当たりかよ」


やっぱり、当たり……?


背中越しに聞こえてきたイビの言葉に引っかかりを覚えるも、フェイが「これでわかっただろう」と微笑んだ。


「君達は僕と友達になるしかないんだ。でも、どうしても嫌っていうのなら、断ってくれてもいいよ。ちょっと残念だけどね」


彼の言葉に反応してか、骸骨達がカチャリと骨を鳴らして身構える。


僕は周囲を見渡してから、「ふぅ……」と息を吐き、構えを解いてフェイを見上げた。


「わかった。僕がフェイと友達になろう」


「ふふ。ありがとう、リッド。君ならそう言ってくれると思っていたよ」


フェイは返事を聞いて破顔するも、「リッド、正気か⁉」とイビが勢いよく振り向いて僕の襟を掴んだ。


「どうせ罠に決まってんだろ。あたしが骸骨達を相手してやるから、お前がクソ蝶を倒せばいいだけだ」


「イビ、それは駄目だよ」


僕は襟を掴んでいるイビの腕にそっと手を添え、頭を振った。


「まず、フェイを倒して出入口と次の階層に続く道が出る確証がないでしょ。仮にフェイを倒せたとして、出入口と次の階層が現れなかったら、また牢宮を彷徨い歩くことになるんだよ」


「そ、それは……」


彼女がたじろぐと、僕はフェイを見やった。


「それに、最初に出会った時と今回。フェイはイビの斬撃を受けても、何食わぬ顔で復活しているでしょ。おそらく、彼はこの牢宮と密接な関係があるんだ。初見で戦い方や対策もわからず、やみくもに戦って勝てる相手じゃない」


フェイのこれまでの言動。


無数の骸骨を召喚できる彼の絶対的優位性。


イビの斬撃を受けても無傷で何度となく復活。


これらの事実と前世の記憶が告げている。


蝶の妖精を模した魔物ことフェイ、彼は間違いなく牢宮の特殊魔物【ギミックモンスター】だ。


リッド君の活躍が面白い、続きが読みたいと思いましたら『評価』『ブックマーク』『リアクション』『温かい感想』をいただければ幸いです!


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▽565話時点 相関図

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▽悪役モブ第二騎士団組織図

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