暗転・どこかの牢宮【ダンジョン】にて
「……くそ⁉ いったいここはどこなんだ」
「なんで気付いたらこんな牢宮【ダンジョン】にいるんだよ」
「知るかよ。今は考えるより、足と手を動かせ」
「皆、落ち着いて。ともかく、出口を探すのよ」
一番手を走る一人の男は、剣と大盾を持った戦士ジャン。
二番手を走る一人の男は、長剣を構えた剣士ルイ。
三番手を走る一人の男は、薙刀を操る槍士ジーン。
四番手を走る一人の女は、弓を巧みに操る射手フローベル。
男三人と女一人の冒険者らしい狐人族達は、迫り来る魔物達を打ち払いながら、広大なダンジョンの中を当てもなく彷徨っていた。
その牢宮は、彼等の経験則に当てはまらない極めて不思議な牢宮だった。
通常であれば必ず出入口があって、そこから冒険者達は攻略すべく足を踏み入れる。
しかし、彼等は気付けばこの牢宮の中にいたのだ。
彼等の周囲は見渡す限りの美しく幻想的な花畑であるが、襲いくる魔物達は似つかわしくない剣を持つ骸骨剣士、斧を持つ骸骨戦士、弓を放つ骸骨射手などばかりである。
もしや、魔物達はこの牢宮に取り込まれた者達のなれの果てなのか。
四人は口に出さないが、嫌でもそう連想してしまい戦慄していた。
だが、四人は手練れの冒険者らしく、迫り来る骸骨達を確実に手早く倒していく。
大盾を構える戦士ジャンが正面から迫ってくる敵を倒しつつ壁となり、倒しそびれた魔物達を二番手のルイと三番手のジーンが確実に仕留めていく。
四番手のフローベルは、骸骨射手が湧くと即座に矢を放ち、一撃必中で仕留めている。
彼等が魔物を倒しながら足を進めて息も絶え絶えになると、不思議と骸骨達は湧かなくなった。
「……まただ。また、湧かなくなりやがった」
ジャンが周囲を見渡して訝しむ。
「この牢宮、やっぱり何かおかしいぜ。普通だったら、魔物が湧かなくなるなんてことはありえねぇ。ひたすら襲ってくるはずだ」
ルイが長剣を杖に片膝を突くと、「もしかしたら……」とジーンが警戒しながら呟いた。
「俺達の魔力が回復するのを待っているのかもしれない」
「はぁ、そんなことして何になるんだよ」
ジャンが眉を顰めて吐き捨てると、ジーンは自分の手を見やった。
「……ずっと魔力を徐々に吸われているような気がするんだ。この牢宮は誘い込んだ人を食べるんじゃなくて、飼い殺しにするつもりなのかもしれない」
「馬鹿な。そんな牢宮があるなんて聞いたことねぇぞ」
ルイが声を荒らげると、「待って、何かが近くにいるわ」とフローベルが身構えた。
その動きに残りの三人もサッと武器を構える。
「ふふ、ふふふ、ふふふふ。君達は生きが良いねぇ。頑張って地上から引き込んで良かったよ」
可愛らしい笑い声と共に現れたのは、蝶の羽を持つ掌サイズの人。
いわば『妖精』だった。
「……花畑だからって、蝶の妖精まで出てくるのかしら」
フローベルが弓に矢をつがえて凄むと、妖精はにこりと微笑んだ。
「初めまして、僕の名前はフェイ。蝶の妖精でフェイさ。可愛い名前でしょ」




