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【WEB版】やり込んだ乙女ゲームの悪役モブですが、断罪は嫌なので真っ当に生きます【書籍&コミカライズ大好評発売中】  作者: MIZUNA
第八章

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狐人族領到着

「リッド様、アモン様。起きてください」


「う……ん……?」


被牽引車【トレーラーハウス】の座席で寝ていた僕は、呼びかけに応じて目をこすりながらゆっくり開けていった。


寝起きでぼやけた視界に映ったのはティンクだ。


「ふわぁ、どうしたの?」


体を伸ばしながら欠伸をすると、彼女は目を細めて会釈する。


「お休みのところ起こして申し訳ありません。狐人族領の首都フォルネウ、部族長屋敷に到着いたしましたので、お声を掛けさせていただきました」


「え……⁉」


一気に意識が覚醒して体を起こして車窓から外を見やると、夕暮れで薄暗いけど間違いなく見覚えのある部族長屋敷の前だった。


「本当だ。もう到着したんだね」


馬人族領から狐人族領への帰途に就いたのが数日前のことだ。


狸人族領からぐるりとズベーラを回ってきて、ようやくの帰り道。


その道中、僕はずっと眠りっぱなしだった。


乗り物酔いに弱いのもあったけど、緊張の糸が緩んだらしくどっと疲れて強烈な眠気に襲われたのだ。


「はい。ズベーラでの外遊、お疲れ様でございました」


ティンクがにこりと微笑むと、僕の隣に座っていたアモンが「ふわぁ……」と大きな欠伸をして、ゆっくりと目を開いた。


「リッド、ティンク殿。どうしたんだ」


「アモン、僕達が寝ている間に狐人族領の部族長屋敷に到着したんだよ。ほら」


「え……?」


車窓から外を見せると、きょとんとしていた彼の目が大きく見開かれた。


「本当だ。すっかり寝てしまっていたらしいな」


「僕もだよ」


アモンと顔を見合わせると、どちらともなく「ふふ……」と笑みがこぼれる。


するとその時、部族長屋敷の扉が勢いよく開かれ、見覚えのある狐人族の男性がこちらに走ってくる姿が車窓から目に飛び込んできた。


「アモン様、アモン様はおられますか⁉」


「あれはバルバロッサだ。どうしたんだろう」


バルバロッサとは、アモンを支持する豪族の筆頭だ。


アモンは眉を顰めて席を立つと、急いで車から降りた。


僕も気になったので、すぐに後を追いかける。


一体、何があったんだろう。


もしかして、エルバやマルバスが現れた、とか。


「バルバロッサ、どうしたんだ」


アモンが緊張した面持ちで声を掛けると、駆け寄ってきたバルバロッサは「ラファ様が、ラファ様が……」と肩で息をしながら俯いた。


「姉上が……? まさか姉上の身に何かあったのか⁉」


血相を変えてアモンが尋ねると、僕も思わず返答に息を呑んだ。


バルバロッサは俯いたまま頭を振って「……ないのです」と呟いた。


「……? すまない、聞き取れなかった。もう一度、言ってくれないか」


アモンが聞き返すと、バルバロッサはゆっくりと顔を上げた。


「部族長代理を任命されたというのに、ラファ様が全く、これっぽっちも事務処理をしてくださらないのです」


「……は?」


あまりに予想外の答えで、アモンと僕は呆気に取られて顔を見合わせてしまった。


「あらあら、バルバロッサったら人聞きが悪いわねぇ」


独特な口調の声が聞こえてハッとして見やれば、部族長屋敷から白い髪を靡かせて優雅に色香を纏ってラファが歩いてくる。


僕達の前にやってくると、彼女はにこりと口元を緩めた。


「私も……『これっぽっち』ぐらいはしたでしょ」


「そのこれっぽっちすら、私がお願いしてようやく手を付けたものではありませぬか」


「でも、やったことに変わりはないじゃないの。だから『してない』は言い過ぎよ」


「あ、貴女という人は……⁉」


バルバロッサが青筋を走らせ凄むも、ラファは涼しい顔で口元を緩めたままだ。


「えっと、姉上。それにバルバロッサも、状況を説明してくれないか」


戸惑いながらアモンが切り出すと、バルバロッサが「どうもこうもありません」と怒号を発した。


「さっきもお伝えしたとおりでございます。アモン様が外遊に出てからというもの、ラファ様は領内から届く書類を尽く無視しているのでございます。挙げ句、執務室で山積みになった書類には目もくれず、リッド様よりいただきました清酒を浴びるように飲む始末。領地運営は滞り、豪族達の怒りも頂点に達する寸前でございます」


「な……⁉」


アモンは絶句すると、恐る恐るラファを見つめた。


「あ、姉上。バルバロッサの言ったことは本当ですか?」


「尽くというのは間違いよ。緊急を要する案件は処理したもの。まぁ、それ以外は手つかずだけど」


「な、なな……⁉」


悪びれる様子もなく、さも当然のように告げるラファ。


アモンは真っ青になってたじろぐも、彼の手をバルバロッサががっしりと掴んだ。


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