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【WEB版】やり込んだ乙女ゲームの悪役モブですが、断罪は嫌なので真っ当に生きます【書籍&コミカライズ大好評発売中】  作者: MIZUNA
第八章

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馬人族の民族衣装

僕達の話し合いが終わると、豪族達やティンクとカペラ達は早々に部屋に呼び戻された。


全員が席に着いて会談が再開されると、アステカは開口一番で馬人族、バルディア、クリスティ商会で三者協定を結ぶことを決めたことを盛大に告げる。


当然、室内にはどよめきが起きるが、彼は言葉巧みに『共同出資金』の免除を僕達との交渉で勝ち取ったと説明し、豪族達を歓喜させて納得させたのだ。


一方、状況が飲み込めないティンクとカペラからじろりと棘のある視線を向けられた僕は、大袈裟に咳払いをして耳目を集めた。


『皆様、お喜びのところ申し訳ありません。共同出資金の免除につきましては、今後の打ち合わせ次第です。前向きに検討いたしますが、決定事項ではございませんのでご注意ください』


僕が高らかに告げると、アステカは舌打ちをして肩を竦めていた。


あわよくば、この場の勢いに乗じて丸め込もうという算段だったんだろうけど、そうは問屋が卸さない。


それからの会談内容は、他の部族領と同じく文字打ち込み君の台数から始まり、狐人族領と馬人族領の国境をまたぐ街道整備の発注など、目新しいものはなくて会談は拍子抜けするほどあっさりと終了。


各地で口減らしされた子供達の件で僕から『共同出資金の免除』を引き出したことで満足したのか、不気味なほどアステカは何も言ってこなかった。


夜の懇親会まで時間があるということで、僕達は会議室から来賓室に案内される。


そこには『文化交流』ということで、馬人族の民族衣装がこれ見よがしに飾られていた。


ただ、今までと違ったのは僕、アモン、クリス以外にもティンク、カペラ、エマの分まで用意されていたことだ。


ティンク達は最初こそ難色を示すも『これも両家両国のためだからね』と僕が微笑みかけると、諦めた様子で着替えることを承諾してくれた。


心の中で僕がぐっと拳を作ったけど、そのことは秘密だ。


それから馬人族のメイドに着方を教わって、僕達は民族衣装に着替えることになった。


なお、ティンクとクリス達は別室で着替えが終わり次第戻ってくる予定だ。


馬人族の服装は、上はゆったりと広い作りかつ丈が長くて裾にスリットが入った細かい刺繍の施された赤を基調とした長袖。


下もこれまたゆったりと幅の広い長ズボンで赤を基調としつつ刺繍が施されている。


面白いのは首に長いスカーフを巻き、帯を腰近くまで垂らすことだ。


腰にも帯を巻いて垂らすという不思議な文化だけど、馬人族のメイド曰く『馬人族は足の速さを誇りとし、走る姿の煌びやかさを重視いたします。速く走れば走るほど、この二つの帯が風に靡き、見る者を虜とするのでございます』ということらしい。


アモンやカペラも僕と同じ服装だけど、色合いが白や青で落ち着いた雰囲気を醸し出している。


どうして、僕だけ赤なんだろう。


着替えが終わると、馬人族のメイドは『それでは懇親会の時間となりましたら、お知らせに参ります』と言い残して退室する。


僕は部屋に備え付けられた鏡の前に移動すると、まじまじと自分の立ち姿を見つめた。


はて、どこかで見たことがあるような、ないようなそんな格好だ。


その時、僕はハッとして前髪で右目を隠し、陰のあるうつろ表情を作ってみた。


うん、これはあの台詞を言わないね。


「……加速そ」


「リッド、さっきから何をしているんだ」


「うわぁ⁉」


アモンに呼びかけられ、僕はびっくりしながら振り返った。


「そんなに驚かなくてもいいだろう」


「ご、ごめん、ちょっと考え事をしていたから、つい……」


目を丸くする彼に、僕は頬を掻きながら誤魔化すように苦笑した。


「そうか、それは申し訳なかったな。ところで、何か言おうとしていなかったか」


「あ、それは……」


答えようとしたその時、部屋の扉が丁寧に叩かれた。


「リッド様、ティンクでございます。入室してもよろしいでしょうか」


「うん、どうぞ」


僕が返事をすると、カペラが扉を開いてティンク達を部屋に招き入れた。


彼女達の服装はほぼ僕達と同じ作りでクリスが赤色、ティンクが水色、エマが桃色を基調としている。


「あはは、まさか私まで着替えることになるなんて思いませんでした」


ティンクが照れくさそうに笑うと、アモンが頬を染めながら前に出た。


「とてもお似合いですよ。ティンク殿」


「そう、ですか? アモン様、ありがとうございます。お世辞でも嬉しいです」


「いや、そんな、お世辞なんかじゃありませんよ」


二人のやり取りを横目に、僕はクリスとエマを見やった。


小柄なエマに桃色を基調とした民族衣装は可愛らしくて、とてもよく似合っている。


クリスは赤色を基調とした民族衣装を着こなしつつ、いつも後ろでまとめている金髪を下ろしていた。


二人とも似合っているんだけど、クリスだけちょっと似合い過ぎな気がするのは気のせいだろうか。


僕の視線に気付いたのか、クリスがこちらを見て首を傾げた。


「リッド様。その変な髪形はどうしたんですか」


「あ、えっと、これは何でもないよ」


慌てて自分の髪形をいつも通りに戻すと、僕は「ところでクリス……」と切り出した。


「その衣装に着替えて聴覚が特段に優れたり、とてつもない遠視力や透視能力に開眼したとかない?」


「なんですか、藪から棒に。そんなことあるわけないじゃありませんか」


クリスは目付きを細め、あからさまに僕を訝しんだ。


「あ、あはは。そうだよね。そんなことあるわけないよね」


頭の後ろに手を置いて誤魔化すように笑い出すと、クリスとエマは顔を見合わせてきょとんとしてしまう。


彼女達からすれば、僕の言動は意味不明だろうからしょうがない。


でも、尋ねずにはいられなかったのだ。


「恐れながら、リッド様。少々よろしいでしょうか」


ふいに畏まった声で呼びかけられる。


振り向けば、ティンクが真顔で迫ってきた。


彼女の後ろにはカペラも立っている。


「え、えっと。二人とも、急にどうしたの」


「どうしたの、ではありません。アステカ様が仰った『共同出資金免除の件』でございます。私達は、まだ何も聞かされておりません」


「ティンクさんの仰る通りです。懇親会が開催されるまで、きっちりと説明していただきたく存じます」


「そっか、ごめん。その説明がまだできてなかったね」


僕は軽く頭を下げてからクリスとアモンに目配せすると、二人は意図を察した様子でこくりと頷いた。


それから皆で部屋の中央に備え付けられたソファーに腰掛け、僕はアステカが出してきた提案の説明を始めた。


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― 新着の感想 ―
若い子にどれだけ通じるのか(笑)
あれ?じゃあアモンは006(火)か007(変身)扱い?
009なつかし
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