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【WEB版】やり込んだ乙女ゲームの悪役モブですが、断罪は嫌なので真っ当に生きます【書籍&コミカライズ大好評発売中】  作者: MIZUNA
第七章

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部族長会議と外交

バルディアが技術開発を行い、その技術による生産事業をアモンが部族長となった新政グランドーク家の協力の下、今現在の狐人族領でにおいて計画進行中であること。


そして、僕達が後ろ盾となったクリスティ商会が、狐人族領で造られた製品を大陸全土に向けて販売していく考えがあることを資料に沿って告げた。


その上で各部族にも協力してほしいとも。


「……現状と大まかな概要説明は以上です。勿論、協力をしていただければ、皆様にも利点がございます。まず、アステカ殿が治める馬人族領との連携について申し上げましょう」


僕は視線を彼に向け、流暢に説明を続けた。


途中で茶化されたりするかと思ったが、部族長達は思案顔を浮かべてこちらを凝視している。


ズベーラ国内全土で輸送を営む馬人族には、将来的に木炭車の貸し出しを視野に入れた輸送網の拡大とクリスティ商会との連携も確立することで、馬人族の輸送力を国外にも展開して外資を得ていくことを提示。


ゆくゆくは、ズベーラとバルディア産の商品を大陸全土に展開する販売網構築を考えていること告げた。


馬人族では誰が一番速く走れるかを競う催しを行う文化もあるそうだから、いっそ『競馬場』を馬人族領内に設置。


施設近辺には、各国の貴族や金持ち向けに賭博場付き超高級宿泊施設で外貨を稼ぐ方法もあるのでは、とも付け加えて提案した。


当初こそおちゃらけた雰囲気を出していた馬人族部族長のアステカだったけど、今では真剣な面持ちで資料を見つめている。


バルストやトーガの国境警備を獣王から請け負っている鳥人族にも、輸送網の構築を提案。


ただし、馬人族と違って小型荷物の『速達便』を担当してもらうことを案内した。


飛行機などがなく、陸路輸送しかないこの世界では『空を飛べる能力』は圧倒的な強みだ。


地形を無視して配達ができるから、人命に関わる薬や急ぎ配達してほしい荷物を担当することで外貨を稼げるのではと提案した。


鳥人族部族長のホルストは笑顔で「面白そうですね」と頷いていたが、内心はどう思っているのかよくわからない。


彼は要注意人物だから、警戒しておくことに越したことはないだろう。


海に面していることで漁業と塩作りが盛んな兎人族には、木炭車と氷属性魔法を併用することで海で取れる海産物を大陸全土に販売できると伝えた。


大陸の内陸部に位置するバルディア領を始めとする帝国領と、ダークエルフが治めるレナルーテ王国では塩や海産物はバルストか、帝国南側から持ってこなければならない。


帝国南側から輸送する分はどうしても経費と時間が掛かるし、かといってバルストはここぞとばかりに足下を見て価格を釣り上げてくる。


そうした現状において、兎人族から海の幸と塩が手に入るようになれば既存の仕入れ先に対して価格交渉もできて市場価格の適正化を図れるというわけだ。


兎人族領では海の幸を豊富に得られるそうだが、輸送方法がないため販売できるのは隣接する領地と王都ぐらいだ。


でも、バルディアとグランドーク家が協力することで、兎人族領で取れた海の幸を大陸全土に販売できる。これは兎人族にとって大きな利益に繋がることは間違いない。


バルディア領としても、更なる食文化発展のためにも海産物の仕入れ量は是非とも増やしたいところだ。


兎人族部族長のヴェネは「へぇ、良い提案じゃねぇか」と口元を緩め、彼女の横に立つシアは険しい表情をしながら「あぁ。実現できれば、だがな」と相槌を打った。


だけど、彼の言い方は決して悪いものではない。


ヴェネとシアの反応は上々と見て問題なさそうだ。


バルディア領で既に手先の器用さを発揮している猿人族には、当家とクリスティ商会から装飾品、装身具、宝飾品などの様々な商品の製作依頼をしたいと伝えた。


「あら、嬉しい提案ね。でも、猿人族が作った装飾品が帝国やレナルーテの貴族に売れるのかしら」


「はい。僕達と手を組めば、必ず売れます」


猿人族部族長のジェティは首を傾げて懐疑的な反応を示したが、僕は力強く断言して懐から懐中時計を取り出した。


「企画と原案を考えたのは、当家に仕える二人のドワーフ姉弟です。しかし、完成に至ったのは狐人族や猿人族の子達の協力あってこそ。彼等に出来て、猿人族領におられる方々に出来ぬ道理はないでしょ」


僕のこの発言で、会議場の部族長達からざわめきが起きた。


バルディアで造られる『懐中時計』の存在は他国でも既に知られ始めているが、製作に狐人族や猿人族の子供達が拘わっていることが『僕自身』の口から告げられたことに驚いたのだろう。


バルディアの工房で獣人族の子供達に働いてもらっていることも、少しずつ周知されているが『ただの噂だろう』と一蹴する人達が大半でもある。


前世の世界のように映像や写真なんてないから、人伝でしか情報は伝わらない。


実際、僕が行っていることはこの世界では『非常識』に見えるそうだからね。


この場に居る部族長達も情報こそ得ても、真偽は疑っていた可能性が高い。


「そもそも、ジェティ殿に製作依頼をするものは当家とクリスティ商会が需要があるものを緻密に調べ、確実に売れるものだけに絞ります。ただし、品質は追求させてもらいますけどね」


「つまり、私達は依頼された物を造れば領地が潤うということかしら」


僕の説明を聞いたジェティは、目を光らせて身を乗り出した。


「はい、市場調査と原材料の調達は当家とクリスティ商会で行います。協力していただけた暁には、猿人族の皆様は製作と品質追求に集中していただきたく存じます」


「ふふ、わかったわ」


猿人族への提案が終わると、ジェティは満足そうに笑っていた。


次に僕が視線を向けた相手は、熊人族部族長のカムイと牛人族部族長のハピスだ。


二人は自領で大規模農業展開しており、ズベーラ国内の食糧自給率と密接な関係にある立場だ。


彼等には、農業技術力が高いレナルーテ王国から『米』の栽培技術を教えてもらう他、様々な農業技術を伝える準備があると告げた。


僕が今過ごす世界の主な穀物は『麦』であり、ズベーラで栽培されている穀物も麦だということは事前に確認している。


でも、条件さえ揃って栽培できるなら『米』の方が収穫量が麦の約五割増しとなるのだ。


勿論、米が栽培できない場合に備えて『麦』の生産効率を上昇させる試みも同時並行で行う。


そうすれば麦と米、二種類の穀物を得られるようになる。


その後、生産効率を見て気候にあった穀物を育てるようにすればいい。


一応、事前に調べた感じではズベーラでも水田による米栽培はできそうだった。


だけど、これだけはやってみなければわからないところがある。


「……食糧難は毎年大きな問題になっている故、提案は有り難い。しかし、レナルーテが他国である我等のために動くとは思えんな」


カムイが腕を組んだまま顔を顰め頭を振ると、彼の隣の席にいたハピスが「その通りだ」と鋭い眼光を光らせた。


「隣国である帝国、バルスト、トーガなどであれば外交上の取引であり得ない話ではないかもしれん。だが、レナルーテと我が国の間には帝国がいる。それこそ、バルディアがあるではないか。レナルーテの協力を得られるなど、絵空ごとにしか聞こえんぞ」


「なるほど。絵空ごと、ですか」


僕はあえて大きな相槌を打つと、「少し話は変わりますが……」と切り出した。


「私は諸事情によって、この年齢で既に婚姻しております。そして、故郷のバルディアにはその妻がおりますが、彼女の出自はご存じでしょうか」


「出自、だと」


ハピスが首を捻り、カムイが「確か……」と思案顔を浮かべた。


しかし、すぐに二人はハッとする。


「そう、私の妻はレナルーテ王国出身の王女でした。そして、バルディアとレナルーテの信頼関係は皆様が想像するよりも、ずっと強いものです。今回の会議前、一応の打診もしておりますが義父のエリアス王からは良い返事をもらっております故、私の提案は『絵空ごと』ではありませんよ」


微笑み掛けたところ、「……貴殿の奥方について失念していたな。大変失礼した」とカムイが決まりの悪い顔で会釈した。


「だが、もし本当にレナルーテから技術を学べるなら喜ばしい限りだ」


「私も、自らの発言が軽率だったと詫びよう」


ハピスが頭を軽く下げると、僕は「いえいえ、お気になさらず」と頭を振った。


そして獣王セクメトス、狼人族部族長ジャッカス、鼠人族部族長ルヴァ、狸人族部族長ギョウブ達に視線を向けて微笑んだ。


「では、最後はズベーラの国防に従事している皆様にどのような利点があるのか。ご案内します」






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挿絵(By みてみん)

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挿絵(By みてみん)

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資料が束になってそうですね
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