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【WEB版】やり込んだ乙女ゲームの悪役モブですが、断罪は嫌なので真っ当に生きます【書籍&コミカライズ大好評発売中】  作者: MIZUNA
第六章

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謁見の間へ

寝間着から普段着に着替えた僕は、バルディア領の情報局にいるサルビアに連絡を取り、帝都に無事に着いたことを告げる。


そして、何か領地で問題が発生していないか尋ねた。


(いえ、特に問題はありません。あ、でも、ファラ様が到着の連絡がないと心配されていたそうです。次回から、夜遅くても構いませんのでご一報下さった方が良いかもしれません)


(わかった。ファラには心配掛けてごめんねって伝えておいて。じゃあ、何かあればすぐに連絡してね)


(畏まりました。では、そのようにファラ様にも申し伝えておきます)


(うん、よろしくね)


サルビアとの通信が終わると、部屋の扉が丁寧に叩かれた。


「リッド様。お着替えが終わりましたら、食堂へご案内いたします」


「わかった。すぐに行くよ」


扉越しに聞こえたシルビアの声に答えると、僕は食堂に移動する。


「おはようございます、父上」


「うむ、よく眠れたようだな。型破りな風雲児」


父上は口元を不敵に緩めると、読んでいた情報誌を食卓に置いた。


「……帝国の剣ともあろう方が茶化さないでください」


「帝国の剣とはバルディア家を指す言葉だ。残念ながら、私にはお前のような二つ名はないぞ」


「はぁ……そうですか」


席に着くと、笑みを浮かべる父上を睨むように見つめた。


「父上はこの騒ぎ。すでにご存じだったんですか?」


「騒ぎ……? あぁ、『型破りな風雲児』と書かれている記事が話題になっていることか。勿論、知っていたぞ。狐人族の領地にいた時から、帝都のカルロと連絡は取っていたからな」


「『型破りな風雲児』と祭り上げるのは、少々やり過ぎではありませんかね」


バルディア領で戦後処理に追われていた僕は、帝都の動きは父上に一任していたから、ここまで大騒ぎなっていることを全く知らなかった。


それに大きな問題が発生した場合、帝都にいるシルビアから僕にも直接連絡が来る手筈にもなっていたのだ。


帝都での動きや世論は父上に任せている上、シルビアから直接連絡も来ない。


だから、問題は何もないだろうと思っていたら『型破りな風雲児』と呼ばれて僕は時の人扱いだ。


文句の一つも言いたくなる。


故に嫌みっぽく尋ねたんだけど、父上は肩を竦めておどけた。


「まぁ、どんな形であれ、世論がバルディア家の味方になってくれれば良いではないか。それに今回の帝都では、狐人族の領地再興に向けた商談をサフロン商会とも行う。文句があるなら、その時に直接言うんだな」


「むぅ、畏まりました」


父上の言うとおり、両陛下との謁見と報告が終わった後日には、クリスの家族が運営しているサフロン商会とも打ち合わせを行う予定だ。


実は、クリスティ商会は獣人国ズベーラとの取引口を持っていない。


クリスが独立する際、サフロン商会が既にズベーラの西側から取引をしていたから、商圏が重ならないよう配慮したそうだ。


今まではそれでも良かったんだけど、バルディア家と狐人族を治めるグランドーク家に密約が結ばれ、劇的な変化が起きた以上はそうも言っていられない。


今後はバルディア家、クリスティ商会、サフロン商会による協力関係の強化は必須であり、最優先事項でもある。


サフロン商会はクリスの父である『マルティン・サフロン』が代表を務め、母の『ロレイン・サフロン』が会計を担当。兄の『マイティ・サフロン』が副代表の役についているそうだ。


クリスの家族がどんな人達なのか。


僕は会えるのをとても楽しみにしているけど、クリスはあまり乗り気ではなさそうだったのが少し気に掛かる。


なお、以前帝都で懇親会を開いた時には、様々な貴族の対応にも追われた他、先方の都合も付かず、顔を合わせることはできなかったんだよね。


「お待たせしました」


考えを巡らせていると、執事のカルロを先頭に給仕とメイド達が次々と食卓に料理を並べていく。


白いご飯に始まり、味噌汁、焼き魚、生野菜サラダ、半熟卵、牛のレアステーキ、鶏モモのステーキ等々、まだ色々と運ばれてくる。


所狭しと並んだ料理を目の前に、僕は呆気に取られてしまった。


「……何だか、朝から凄い量ですね」


「今日は帝城に行くからな。最悪、深夜近くまで帰れないかもしれん。朝食はしっかり食べておけ」


「あ、そういうことですね」

合点がいった僕は、父上と一緒に朝ご飯をがっつり食べていく。


でも、やっぱり朝からこの量が多すぎだよ。


折角作ってくれた美味しい料理を無駄にしまいと食べていたけど、育ち盛りの僕でもさすがに限界だ。


「す、すみません、これ以上は食べきれません。申し訳ありませんが残してもよろしいでしょうか?」


父上は「うん?」と首を傾げてから頷いた。


「勿論だ。私達が食べきれなかった分は、屋敷の皆が食べるからな。元々、そうした分量だぞ」


「えぇ⁉」


「む? 言ってなかったか」



「聞いてません。もっと早く教えてほしかったです」


バルディア領の朝食でも料理の一部は僕達が食べる分と、屋敷で働く皆が食べる分を一緒に沢山作っている。


だけど、こんなに大量に食卓に並ぶことはないから、今日は全部食べないといけないって思い込んでしまったのだ。


手を合わせて『ごちそうさま』をすると、僕は朝から前途多難だなぁと思いつつ、重い足取りで食堂を後にして自室に戻る。


そして、出発する時間まで準備に勤しむのであった。



帝城に出向くためバルディア邸の馬車に乗り込むと、門前にいた記者達と門番や騎士達ともみくちゃになってしまい、騒然とした中での出発となった。


帝都内で木炭車は目立ち過ぎるから、基本は馬車で目的地まで移動するんだけど、今回はバルディア家の紋章入りということだけで注目を浴びている。


車窓から外の様子を見れば、様々な人がこちらに向かって手を振っていた。


「何だか、想像以上の大騒ぎになっていますね」


「近年では国境付近で小競り合いこそあれど、大きな武力衝突はなかったからな。グランドーク家が侵攻したという事実は、市民に大きな不安を与えたはずだ。それ故、我々が勝利したという知らせは、彼等にとって良い意味で大きな衝撃となったのだろう」


小競り合いというのは、バルストやズベーラと隣接するバルディア領の国境付近や、教国トーガとズベーラに隣接するケルヴィン領の国境付近を主に指している。


「そうですか。でも、世論が味方になってくれるのは、僕達にとっては好都合ですよね?」


「……うむ。そう思いたいがな」


父上が相槌を打ったその時、馬車がゆっくり停まる。


車窓から外を見れば、そびえ立つ帝城が目に入った。


 

馬車を降りると、帝国騎士の案内で僕と父上は帝城の中を足早に進んでいく。


何でも、すでに貴族達は謁見の間に集まっており、僕達を待っているそうだ。


従って、今回は来賓室ではなく、謁見の間に直接行くらしい。


歩きながらふと周りを見やれば、いつもより城内にいる騎士や兵士達の視線が好意的な感じがする。


帝都だけではなく、帝城内にも号外の情報は届いているようだ。


城内を進んで程なくすると、先導していた帝国騎士の足が止まった。


「ライナー・バルディア辺境伯とそのご子息リッド・バルディア様をお連れいたしました」


騎士の声に反応し、豪華絢爛な扉がゆっくりと開いていく。


謁見の間を見渡せば、帝国貴族達が勢揃いして姿勢を正し、厳格な表情のまま鋭い眼差しを僕達に向けている。


以前とは、比べものならない威圧感が部屋に漂っていた。


あ、でも、ベルガモット卿は居るけど、ベルルッティ侯爵の姿が見えない。


どこにいるんだろう。


「あまりきょろきょろするな。行くぞ」


「は、はい。すみません」


父上から小声で指摘され、僕は息を飲む。


最奥にある玉座を見やれば、皇帝皇后陛下がすでに鎮座し、傍にはデイビッド皇太子、キール第二皇子、アディことアディール皇女も並んで座っている。


どうやら、今回の会議は皇族全員参加するらしい。


この場の注目を一身に浴びつつ、玉座の前に進み一礼する。


顔を上げると、皇帝陛下は不敵に笑っていた。


「ライナー、リッド。この度の勝ち戦、祝着である。先立って届いた書簡とクリスティ商会のエマより状況は聞いているが、改めてこの場で話を聞かせてもらおう」


「畏まりました」


父上は会釈すると、狭間砦の戦いになるまでの経緯と戦の詳細を堂々と語り始めた。






少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

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挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
いただきます、ごちそうさまの所作は、この世界では奇異に見られない? 畜産業も割りと盛んなのかな? 牧場を荒らしそうなクッキーやビスケットみたいな魔物もそれほど居ない感じ?
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