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【WEB版】やり込んだ乙女ゲームの悪役モブですが、断罪は嫌なので真っ当に生きます【書籍&コミカライズ大好評発売中】  作者: MIZUNA
第五章

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アモンとの会談

「・・・・・・改革だと?」


父上が眉間に皺を寄せ、訝しむように聞き返すと、彼はこくりと頷いた。


「恥ずかしながら、我が領地に住む狐人族は、近い将来その数が激減。部族として立ち行かなくなるかもしれません。その理由が、父のガレスと兄のエルバが推し進める大軍拡に伴う重い税です」


グランドーク家の軍拡政治により狐人族の領民が困窮している情報は得ていたけど、まさか内情がそこまで逼迫しているとは思わなかった。


父上は「ふむ」と難しい顔を浮かべる。


「続けてくれ」


「はい。それでは・・・・・・」


アモンは父上に促されるまま、狐人族の置かれている状況。


グランドーク家の行っている軍拡政治の問題点を語り始めた。


狐人族が軍拡政治を推し進めるようになったのは、ガレス・グランドークが部族長になった時からだそうだ。


エルバ・グランドークが成人して政治に関わるようになってからは、その傾向はさらに強くなったらしい。


そして、数年前。


軍拡政治を止めようとしていたガレスの実弟グレアス・グランドークが、反逆者としてエルバに断罪されてしまう。


同時期、反逆に加担したとされる豪族達が一斉に処刑されたことにより、軍拡政治を止められる者が居なくなってしまったらしい。


ドワーフに次ぐ武具作りの才能を持つと呼ばれた狐人族。


かつては、武具だけに止まらず様々な物を作成。


獣人国内だけはなく、帝国、教国トーガ、レナルーテ、バルスト等、各国に輸出していて取引量も多かった。


でも、今の取引量は当時より大分少なくなっており、見る影もないらしい。


理由は、軍拡政治により、武具製作にほとんどの生産力をつぎ込んでいるからだそうだ。


結果、狐人族の領民は領外から得られる収入が少なくなり、軍拡による重税を強いられているとのこと。


だけど、そんな領地運営を行えば、いずれ立ち行かなくなるのは火を見るより明らかだ。


ガレスやエルバでもさすがにわかりそうだけどな。


そう思った時、僕が考えたこと察したのか、アモンが「ここまで、父と兄上が軍拡を進めるのには、ある理由があります」と切り出した。


「それが、今から約二年後に開催が予定されている獣王戦です」


「獣王戦というと、獣王国を統べる王を決めるため試合ですよね?」


「はい。リッド殿の仰る通りです。父と兄上は、次回の獣王戦で獣王になれると考えているようです」


曰く、獣人族の各部族から最も武力と知力を持つ者が選別され、勝抜戦を行う。


歴史上、死者が出ることもあるほどに苛烈な争いであり、勝ち残った者が『獣王』となり、獣人国を統べる王となる。


エルバが王と成れば、各部族に王命を下すことが可能となり、狐人族が抱える問題を解決出来る算段が付くらしい。


彼は説明が終わると、首を横に振った。


「確かに、兄上が獣王と成れば現状の問題は解決するかもしれません。ですが、その間に苦しみ、死んでいくのは領民です。そもそも、獣王という成れるかどうかもわからない不確定なものを頼り、領地運営をすべきではありません」


「それで、バルディア領の運営方法を学び、アモン殿が改革をしていこうと考えた。そう言うことか?」


父上の問い掛けに、彼はコクリと頷いた。


「はい。ですが、正直に申しますと、私の考えは狐人族の中では『異端』とされています」


「……つまり、アモン殿とエルバ殿達では根本的に領地運営に対する考え方が違う。言ってしまえば、狐人族内でも派閥が生まれていると?」


「確かに、ライナー殿のご指摘の通り、私の行いに賛同してくれる者は増えております」


アモンはそう言うと、室内にいるリックや護衛の戦士達を見回した。


「今回のバルディア訪問に付いてきてくれた戦士達は全員、私の考えに賛同してくれた者達です。しかし、残念ながら、『派閥』と言える程ではありませんでした」


「その言い方だと、何か風向きが変わったのですか?」


僕が聞き返すと、アモンは身を乗り出した。


「はい。バルディア家の皆様には大変失礼なお話にはなりますが、我が領内に潜むとされる過激派の起こした前回と今回の襲撃事件。これについて、父と兄達が行った対応に否定的な意見が出て、私の支持者が急激に増えたのです」


その言葉に、父上が眉をピクリとさせた。


勿論、僕も良い気はしない。


でも、彼が続けた話はとても興味深いものだった。


アモンは、以前から苦しんでいる領民を救い領地運営の改善を図るため、サフロン商会と密かに繋がりを持ったらしい。


クリスティ商会との繋がりも検討したそうだけど、ガレスやエルバ達の監視も厳しく、あえて遠方のサフロン商会を選んだそうだ。


そして、自身を支持してくれる領民に様々な日用品や美術品の作成を依頼。


サフロン商会に適切な金額で販売をしたり、食料と交換していたらしい。


弱肉強食の思想とはかけ離れた草の根活動とも言うべき彼の行為は、すぐに狐人族の中で知れ渡ることになる。


父であるガレスや兄のエルバ達の耳にも入り、嘲笑されたそうだ。


でも、呆れられた結果、逆に誰もアモンの行いを咎めなかったらしい。


後ろ指を指されても、彼は細々と着実に取引量を増やしてき、少しずつ形にした。


時間と共に実績を積み上げていく内、豪族の支援者も現れ始めたという。


更なる発展と取引量増加を目指していた折、姉のラファ、妹のシトリーと共にバルディアの領地運営を学びに行く機会に恵まれる。


意外にも、その機会を与えたのはガレスだったらしい。


アモンの行いに支持者が出て来たこともあり、無視できなくなったそうだ。


そして、彼等が訪問中に発生した『工房襲撃事件』から始まる、バルディア家との亀裂。


平和的解決を望む、会談の決裂。


狐人族の過激派による帝国内でのクリスティ商会襲撃誘拐事件。


バルディア家の長女、メルディ・バルディアの拉致。


立て続けに起きた横暴の数々は、ガレスやエルバを支持していた豪族の一部も難色を示したらしく、『バルディア家と争えば争う程、グランドーク家もとい狐人族全体が将来的に弱体化してしまう可能性がある。ここは、無暗に争わず慎重に事を運ぶべきだ』という主張が強くなった。


その結果、皮肉にもアモンの支持者増加に繋がったそうだ。


そうして、バルディア家と再び行われる会談の使者にアモンが選別された、ということらしい。


彼の話を聞く内、僕の中ではある疑問が生まれていた。


「……アモン殿が此処にきた理由は理解しました。ですが、それだと反逆者として断罪された『グレアス・グランドーク』殿と同じ道を辿ってしまうのではありませんか?」






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― 新着の感想 ―
[気になる点] この様に敵対派閥からの寝返りの時真っ先に疑わなければいけないのは敵対派閥からのスパイが混ざっていないか、だと思うのですが、その辺をアモンはどのように思ったのでしょう?
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