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【WEB版】やり込んだ乙女ゲームの悪役モブですが、断罪は嫌なので真っ当に生きます【書籍&コミカライズ大好評発売中】  作者: MIZUNA
第五章

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アモン・グランドークとシトリー・グランドークの訪問

グランドーク家の三男アモン、次女シトリーを乗せた馬車が本屋敷の門前に到着。


その様子を、屋敷の扉前から僕と父上は遠巻きに見つめていた。


「・・・・・・エルバ達が来た時より、護衛の狐人族が多いですね。父上」


「うむ。両家が緊張状態であることを考えれば、当然かもしれんが少し気になるな」


訝しむように馬車を見つめながら、父上は頷いた。


エルバとマルバスがやって来た時の護衛は、十名~十五名ぐらいだった。


でも、アモンとシトリーを乗せた馬車の周りには、三十名ぐらいの護衛がいるのが見て取れる。


念のため、本屋敷の敷地内に入る狐人族の武器は、こちらで預かるよう騎士達に指示は出していから、問題はないと思うけど。


やがて、アモンとシトリーと思われる少年少女が馬車から降りた。


その姿を見て、やっぱりね、という確信を得る。


眺めていると、騎士団長のダイナスとルーベンスが武器を預かろうと彼等に近寄っていくのが見えた。


狐人族の戦士達は、嫌そうな反応をするが、アモンと思われる少年が指示を出したらしく、不承不承で武器を騎士達に預けてくれたようだ。


ちょっと、ヒヤッとしたけど何も無くて良かったよ。


程なく、ダイナスとルーベンスに先導された少年少女と、一部の護衛達が僕達の前にやって来た。


「君とこんな形で再会するとは思わなかったよ。アーモンド・・・・・・いや、アモン・グランドーク殿とシトリー・グランドーク殿」


「それは、こちらも同じさ。リッド・・・・・・バルディア殿」


「お久しぶりです。リッド・バルディア様」


軽い挨拶と握手を交わすと、父上が眉をピクリとさせて首を捻った。


「・・・・・・リッド。知り合いだったのか?」


「え、えぇ。以前、父上に報告した工房襲撃事件の協力者が彼だったんです。尤も、アモン殿はその時、アーモンド。シトリー様はリドリーと名乗っておりましたけど」


「あはは・・・・・・その節はどうも」


アモンは、笑いながら誤魔化すように頬を掻いた。


シトリーは、目を瞑ってペコリと会釈する。


「ほう。まぁ、良い。その辺りのことも、色々と聞かせてもらうぞ。一先ず、貴賓室に案内しよう」


父上は、踵を返して先導するように屋敷を歩き始める。


その時、ふとアモンの傍に控える狐人族に目が留まった。


「確か・・・・・・貴方はリックさんでしたね」


「はい。私のような者まで覚えてて下さるとは、光栄でございます」


畏まって一礼する彼の表情は硬い。


あれ? 以前、会った時はもっと明るい雰囲気だった気がするけど。


さすがに、緊張しているのかもしれないな。


「リッド、何をしている。早く行くぞ」


「はい、父上! じゃあ、また後で話しましょう」


振り向き様に微笑み掛けると、リックは、「ありがとうございます」と表情を綻ばせた。


そのやり取りに、アモンとシトリーを護衛する他の狐人族達の表情も柔らかくなった気がする。


まぁ、護衛からすれば、ここは敵地のど真ん中だからね。


やっぱり、彼等なりに緊張していたみたい。


なんにせよ、エルバ達よりは有意義な会談になりそうだ。


貴賓室に移動したのは、僕と父上の他、ディアナやカペラ、ダイナスとルーベンスを含んだ護衛の騎士が数名。


グランドーク家側も、アモンとシトリーの他、リックを含んだ護衛の戦士達が数名控えている。


ちなみに、会談の場に武器は持ち込み厳禁であり、全員丸腰だ。


ディアナとカペラは、暗器を隠し持っているだろうけど。


皆が会談の席に着くと、父上はジロリとこちらに目を向けた。


「さて、本題に移る前に、リッドとアモン殿達がどうして知り合ったのか。聞かせてもらうぞ」


「は、はい。実は・・・・・・」


僕は、ゆっくりと語り始める。


アモンやシトリー達と知り合ったのは、工房襲撃事件の時だ。


事件発生の一報が入った際、バルディア領の町中に居た僕は、目に入った狐人族の少年に声を掛けた。


それが、彼等だったんだよね。


その時、アモンはアーモンド。


シトリーはリドリーと名乗り、事件解決に向けて協力してくれたのだ。


彼等のおかげで襲撃犯達に追いついた僕達は、犯人達と激闘を演じた末に撤退させる。


その際の混乱に乗じて、アモン達も共に去ったけど、「また会う機会があれば、その時こそ色々と話そう」と言い残していた。


それが、まさかこんな形で再会するとは思わなかったけどね。


「・・・・・・という訳なんです」


説明が終わると、父上は「なるほどな」と相槌を打った。


「お前の報告から聞いていた狐人族の一行というのが、アモン殿達だったというわけか」


「はい。その通りです」


頷いたその時、ふとこの場にいない人物。蠱惑的な彼女の姿が脳裏を過った。


「でも、そうなると、あの時『リーファ』と名乗った彼女は・・・・・・」


アモンは目を細めて頷いた。


「お察しの通りです。彼女は、私の姉であり、グランドーク家の長女。『ラファ・グランドーク』です」


「やっぱり、そうだったんですね」


そんな気はしていたんだけどね。


確信があったわけじゃなかった。


だけど、また新たな疑問が浮かんでくる。


「・・・・・・つかぬ事をお伺いします。あの時、アモン殿は、バルディア領内の町で何をされていたんですか?」


「当然の疑問ですね。では、会談の本題に移る前に、その点からご説明させて下さい」


「待たれよ。その前に一つ尋ねたい」


父上は、身を乗り出すと、アモンを睨み付けて凄んだ。


「我が娘、メルディ・バルディア。そして、クリスティ商会の代表である、クリスティ・サフロン。二人を含む多くの者達が貴殿達が主張する『過激派』によって拉致され、グランドーク家が預かったとのこと・・・・・・全員、無事であろうな。そうでなければ、貴殿の話を聞く価値はないぞ?」


言葉と共に、父上から怒気の籠もった殺意が発せられ、室内の空気が一瞬で張り詰めた。


その殺気は、僕ですら息を飲むほどである。


正面の二人を見やると、メルと同い年ぐらいに見えるシトリーは殺気に当てられたのだろう。


耳と尻尾の毛を逆立て、目を潤ませているが必死に耐えてこちらを見据えている。


アモンは「う・・・・・・⁉」と一瞬怯むが、すぐにニコリと微笑んだ。


「・・・・・・ライナー殿のお言葉は、御尤もですね。先にその点をお伝えしますと、メルディ様、クリス様を含めて皆無事であり、可能な限り丁重に扱っております。どうか、ご安心ください」


「そうか。それで、今から貴殿の話すことは、本題にも繋がることなのだな?」


「はい。その通りです」


彼は頷くと、真っ直ぐに父上を見つめる。


しんとした静寂が少し訪れた後、父上はふっと表情を崩した。


「わかった。では、アモン殿の話を聞かせてくれ」


「ありがとうございます」


ほっとした様子を見せた彼だが、その顔つきはすぐに真面目なものに変わった。


「以前、私がバルディア領を訪れたのは狐人族を救う・・・・・・いえ、グランドーク家をいずれ改革するため、御家の領地運営を参考にしたいと考えたからです」






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― 新着の感想 ―
[気になる点] 無手で充分強く武器を取り上げた位では戦闘力がそれ程下がらない獣人の兵士が30人もいるのだから明らかに別動隊レベルですよね。従者の様子もおかしいのだしアモンとシトリーが化術による偽物でな…
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