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【WEB版】やり込んだ乙女ゲームの悪役モブですが、断罪は嫌なので真っ当に生きます【書籍&コミカライズ大好評発売中】  作者: MIZUNA
第四章

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リッドとエルバ

「ライナー殿! いくら貴殿の嫡男とはいえ、この暴言は看過できませぬぞ⁉」


「マルバス殿。わかりやすく説明した結果、言葉が少し不躾であったことはお詫びしよう。だが、リッドの言ったことは概ね事実だ。そもそも、暴言と言うのであれば、貴殿達が我等にした発言を少し顧みては如何ですかな?」


「な・・・・・・⁉」


父上の毅然と切り返しに、彼は目を丸くした。


その時、エルバが大声で笑い始める。


「なるほど。バルディア家の言い分にも一理ある。良いだろう。ならば・・・・・・」


彼はそう言うと、ゆっくりと右手の人差し指で僕を指差した。


「リッド・バルディア。俺に傷一つでも付けられれば、私闘の件は不問にして、我等は大人しく引き下がろうじゃないか」


「兄上⁉ そいつらは、造反組の生き残りですよ!」


目を見開き、マルバスはノアールとラガードを指差した。


だが、エルバはそんな彼を、横目で睨み付ける。


「少し、黙ってろ」


「う⁉ も、申し訳ありません」


マルバスがビクリと戦き会釈すると、エルバは口元を緩めた。


「さぁ、リッド・バルディア。ここに来い。俺の相手をしてくれるんだろう?」


「わかった」と頷き歩き出そうとした時、父上が僕の前に腕を出して制止する。


「勝手に話を進めるな。エルバ殿、バルディア家の当主として貴殿の相手は私がしよう」


しかし、彼は喉を鳴らして首を横に振る。


「ライナー殿。残念だが、俺にあれだけの口を叩いたのだ。リッド・バルディアでなければ認めんよ」


「貴様・・・・・・」


二人が睨み合う中、僕は父上の腕を潜って前に出た。


「彼の相手を僕がすれば、この場は一旦収まるのです。これが、今回の落とし所でしょう。ご安心ください、無茶はしませんから」


「む・・・・・・」と父上は顔を顰めるが、程なくして深いため息を吐いた。


「無理はするな。何かあれば、すぐに止めるぞ」


「はい。よろしくお願いします」


ニコリと頷くと、すぐに重なるように倒れている二人の元に駆け寄った。


ボロボロとなったラガードは、ノアールが涙を流して大事そうに抱きかかえている。


「ラガード、ノアール。大丈夫かい?」


「・・・・・・はい。でも、私のせいでラガードが・・・・・・」


嗚咽も漏らして答えると、彼女は悔しそうに俯いた。


「り、リッド・・・・・・様。ご迷惑をおかけして申し訳ありません」


ラガードは息も絶え絶えでこちらに視線を向ける。


そんな彼の瞳には、様々な感情が複雑に交ざり合っているのが見て取れた。


「本当だよ。でも、ともかく君達が無事で良かった」


あえて冗談交じりに答えて微笑みかけると、二人の頭を優しく撫でた。


「よし。じゃあ、行こうか。ノアールは動けるかな?」


「は、はい。何とか・・・・・・」


頷く彼女からラガードを丁寧に受け取ると、「よいしょっ」と両腕で抱きかかえる。


いわゆる、お姫様抱っこだ。


それから程なく、ディアナとエマが駆け寄ってきた。


「リッド様。後は引き受けます」


「うん、お願い」とエマに頷くと、彼女はノアールを抱きかかえた。


「あ、あの。私は歩けます」


困惑するノアールに、エマは「駄目です」と首を横に振った。


「万が一のこともありますし、走れないでしょ? ここに居ては、リッド様の邪魔になりますからね」


エマとノアールのやり取りを横目に、ラガードをディアナに渡した。


「すぐに二人をサンドラに診てもらって」


「畏まりました」


ディアナはラガードを抱えて会釈すると、すぐに屋敷に向かって走り出した。


それを、ノアールを抱えたエマが追いかける。


両手を拳に変え、彼女達の背中を見送っていると、片付けは終わったか?」と背後から声が聞こえた。


「ふぅ」と息を吐き、振り向く。


「・・・・・・言った通り、相手してやるよ」


「ようやくだな」


エルバは、ゆっくりと腕を組んで喉を鳴らした。


「あいつら同様、まず三分やろう。さぁ、せいぜい楽しませてくれよ」


「なら・・・・・・お言葉に甘えさせてもらおうかな!」


そう答えると、身体強化・弐式を発動して瞬時に間合いを詰める。


悔しいけれど、エルバは強い。


今の僕では勝てないだろう。


でも、油断している今なら奴に『傷を付ける』ことぐらいならできるはずだ。


「ぬ⁉」


何かを察したのか、エルバが眉を顰めた。


「出し惜しみはしない。最初から全力だ!」


吐き捨てると、身体属性強化・烈火を発動させる。


次いで、密かに両手の拳の中で圧縮していた魔法を解放した。


「螺旋槍!」


「こ、これは⁉ ぬぉおおおおおおお!」


瞬間、エルバは腕を交差させて『螺旋槍』を受け止めるが押し込まれて吹き飛ばされていく。


だが、そんなことで防げる魔法ではない。


父上から教わった『烈火』は、身体能力だけでなく『火の属性魔法』の威力を強化する。


従って、全属性の魔槍が混ざり合う『螺旋槍』の威力も上昇するというわけだ。


バルディアが襲撃されて以降、僕は武術と魔法研鑽の密度を高めている。


短期間とはいえ、その威力は以前とは比べものにならない。


それから間もなく、吹き飛ばされたエルバを中心とした爆発が起こり、辺りに轟音と爆風が吹き荒れる。


「はぁはぁ・・・・・・」


魔力をほぼ使い果たしてしまい、その場で片膝を突いた。


最大火力で放つ螺旋槍と烈火の組み合わせは、体に掛ける負担がやはり大きい。


この点は今後の課題だな。


ふとそんなことを思いながら、爆発した場所を見据える。


『燐火の灯火』で強化されたラガードを圧倒した奴が、これぐらいで倒れることはないはずだ。


案の定、もうもうとした煙の中にうっすらとエルバの姿が浮かび上がる。


だが、よく見ると、彼の背後にゆらりと動く七本の影がわずかに見えた。


「ふふ。まさか、俺が獣化させられるとはな」


「それが、七尾の金狐か」


爆煙の中から現れたエルバは、金色の毛に覆われている。


しかし、その姿は神々しいと言うよりも、奴の欲望と禍々しさが表面化したように感じた。


「今の魔法は中々の威力だったぞ。次は、俺の魔法を見せてやろう」


「・・・・・・三分間。手を出さないんじゃなかったの?」


息を整え、その場で立ち上がり構えると、こちらに向かって歩いて来るエルバを見据えた。


「想像以上だったのでな。特別に三分短縮だ。とはいえ・・・・・・」


奴は嘗めるように僕を見ると、獣化を解いた。


「何の真似だ?」


「消耗したお前には、この姿で十分だろう。さぁ、耐えてみせろよ?」


エルバはそう言うと、右手を掲げて『黒炎』を右腕全体に纏わせた。


あまりに禍々しい魔力の気配に、背中で嫌な汗が流れ始める。


「あれは、何だかやばそうだな・・・・・・」


思わず呟くと、その小声が聞こえたのか。奴はニヤリと口元を緩めた。






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― 新着の感想 ―
[気になる点] 自分の言葉撤回した時点で負け認めたのと同様ですかね。 「子供相手にこんな失態見せた」とか、獣人国の価値観としてどう見られるんでしょうね。
[気になる点] エルバ公表分より2本位尾の本数が多いと思っていたのですが違う様ですね(まだ隠しているのかもしれませんが。彼の本命は獣王戦ですからね)。やっぱり九尾はゲーム本編のヨハンルートのラスボスと…
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