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【WEB版】やり込んだ乙女ゲームの悪役モブですが、断罪は嫌なので真っ当に生きます【書籍&コミカライズ大好評発売中】  作者: MIZUNA
第四章

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エルバ・グランドーク2

身体属性強化・金剛とは、土の属性素質と身体強化・弐式を掛け合わせたものらしい。


金剛発動時に術者が纏う魔力は、数ある身体属性強化の中で最も『防御力』を上昇効果を得られる。


烈火が攻撃特化なら、金剛は防御特化ということだろう。


発動中における魔力消費は、烈火同様に激しいと思われる。


しかし、術者のエルバには疲れた様子は微塵も見られない。


「でも、そうなると・・・・・・」


僕の言わんとすることを察した父上は、厳しい表情を浮かべた。


「うむ。今のノアールとラガードでは、一矢報いることすら難しいかもしれん」


「そ、そんな⁉」とクリスが心配そうに目を瞬いた。周りを見れば、エマやディアナもどこか悔しげな表情を浮かべている。


「泣いたところでどうにかなるものではありません。あの二人の運命は、兄上と相対した時点で決まっていたのですよ」


マルバスは、皆が心配する様子を横目にニヤリと笑う。


「・・・・・・まだ、どうなるかわかりません。それに、バルディア家に騎士として仕えるノアールとラガード。彼等をあまり見くびらない方が良いですよ」


睨み付けるように凄むと、彼は一瞥して「ふん」と鼻を鳴らして腕を組んだ。


あの二人には、『奥の手』がある。


それを、どこで使うかだろう。


懐にある懐中時計を確かめると、私闘が始まり『三分』がそろそろ過ぎようとしている。


時計から視線を戻すと、エルバは両腕を組んで不敵に笑っており、消耗している様子は見受けられない。


そもそも、彼は獣化すらしていないのだ。


対するノアールとラガードは、獣化した状態でずっと猛攻を続けているせいだろう。


二人は肩で息をしており、明らかに体力を消耗している。


「頑張れ、二人とも」


小声で呟いたその時、エルバがゆっくりと組んでいた腕を解いた。


「さて、そろそろ時間だ。覚悟は良いな?」


「はぁはぁ、く、くそ・・・・・・」


肩で息をするラガードは、悔しそうに吐き捨てる。


次いで、ノアールが何かを決意したようにエルバを睨んだ。


「ラガード。やりましょう」


「え⁉ で、でもさ、この場でそれを使ったら・・・・・・」


「いいえ。私の全てを託します」


「・・・・・・わかった」


ラガードは頷くと、ノアールを守るように前に出る。


いよいよ、あれを使うのか。


「ん? 何だ、命乞いでもするつもりか?」


エルバが首を傾げると、ノアールが祈るように手を合わせた。


その瞬間、『燐火の青炎』が彼女から溢れ出て空に舞い上がる。


「ラガード。貴方に燐火の灯火を・・・・・・」


その時、面前で起きた事態を目の当たりにしたマルバスが、目を丸くした。


「燐火の灯火だと・・・・・・馬鹿な⁉ あの一族はすでに滅んだはずだ!」


聞き捨てならない発言に、思わず眉間に皺が寄る。


「滅んだ・・・・・・? それは、どういうことでしょう」


ノアールは、狐人族の中でも特殊な一族の出身ということだろうか。


「く・・・・・・。これは我が部族の問題故、お答えは控えさせていただきます」


彼はそう言って口を噤んでしまった。


失言だった、ということだろう。


やがて、舞い上がった燐火の灯火がラガードに注がれていくと、彼は獣化した状態のままに青炎を纏った姿となる。


これが、あの二人の奥の手だ。


ノアールが発動した『燐火の灯火』とは『対象者の能力を上昇させる補助魔法』である。


僕との鉢巻き戦の時にも使用していたけれど、当時のような付け焼き刃とは違う。


今の二人があの魔法を使用すると、第二騎士団の中でラガードの実力は最上位に位置すると言って良い。


「はぁはぁ・・・・・・ラガード。後はお願いします」


魔法発動に体力を使い果たしたのか。


息も絶え絶えとなったノアールは、その場で両膝を突いた。


「あぁ。必ず、エルバをぶっ飛ばしてやる!」


ラガードは力強く返事をすると、目の前に立つエルバを睨み付ける。


しかし、一方のエルバは二人の変化で何かを察したのか。


急に小刻みに両肩を震わせ始めた。


「ふはははははははは、ぬははははは!」


奇っ怪にも急に笑い出したエルバの言動に、この場にいる皆が訝しむ。


「な、何が可笑しい!」


相対するラガードが怒号を上げると、彼は首を横に振りながら喉を鳴らす。


「くっくくくく。これが笑わずにいられるか。なるほどな、そうか、そういうことか。まさに、グレアスの遺志・・・・・・いや、亡霊と言ったところだな。良いだろう、直ぐに終わらせてやる。さぁ、掛かってこい」


「ば、馬鹿にしやがって。さっきの俺と一緒だと思うなよ!」


その瞬間、ラガードが目にもとまらぬ速さで飛び込んだ。


しかし、エルバの首元を狙った彼の爪撃は空を切る。


「な⁉」


ラガードが目を見開いたその時、エルバは彼の後頭部を背後から鷲づかみにする。


「さっきのお前と一緒だ。馬鹿が」


エルバはそのまま勢いよく、ラガードを地面に叩きつけた。


その衝撃により、彼等を中心に大地が窪んだ。


辺りには轟音が鳴り響き、激しい土煙が空を舞う。


「ぐぁあああああああ!」


悲痛なラガードの声が響き渡る中、エルバは冷淡な笑みを浮かべた。


「さぁ、どうする? このまま虫けらの如く、惨め叩き潰されるのか。地面に這いつくばったまま、情けなく命乞いをするのか。どちらか選ばせてやろう、俺は紳士だからな」


「ふ、ふざけ・・・・・・ぐぁああああ!」


「くく、良いぞ、もっとだ。もっと歌え、断末魔を響かせろ!」


エルバは高々に笑いつつ、地面に押しつける力を強めているらしく、ラガードの声がさらに悲痛なものになっていった。


それから間もなく、ラガードが纏っている青炎が弱々しくなり始める。


あの青炎がなくなると、能力上昇効果が無くなってしまう。


そうなれば、ラガードは今の状況に耐えきれず、最悪の場合は死んでしまうかもしれない。


「やり過ぎです。もう勝負は付いたでしょう!」


あまりの惨状にクリスが声を荒らげるが、マルバスは首を捻る。


「はて。勝負が付いたとは、どういう意味でしょうか」


「見たらわかるでしょう! もう、これ以上の戦う必要はないと言っているんです」


「クリス殿。失礼ながら、これは勝ち負けを決める『勝負』ではありません。仇を討つか、返り討ちにするかの『私闘』なのです。それをあの二人は申し込み、兄上は受けた。今更、相手を生かしたままの決着などありえませんよ」


彼はそう言うと、やれやれと首を横に振った。






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― 新着の感想 ―
[一言] 「今更、相手を生かしたままの決着などありえませんよ」 これは、その通りだと思う。仇討ちという果し合いに、ここまでと言うことがあると思う方が異常だと思う。
[良い点] マルバスの最後に言ったことは事実でしょうがエルバの目的がリッドの実力を見ることもあることを考えるとそりゃ止めないでしょうね。彼に止めて貰いたいでしょうから。
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