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【WEB版】やり込んだ乙女ゲームの悪役モブですが、断罪は嫌なので真っ当に生きます【書籍&コミカライズ大好評発売中】  作者: MIZUNA
第二章

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四方山話・ナナリーとライナーの夜語り

「スースー……」


「ふふ、こんなにすぐ寝てしまうなんてよほど疲れていたのね」


ナナリーは自身の横で寝ているリッドの頭を優しく撫でる。


こうして、一緒に寝るのはかなり久しぶりだ。


彼女は改めて自身の横に寝る子供が大きくなったことを実感する。


ついこの間まで、自分の腕に抱かれていた赤ん坊だったのに……今は、彼女が寝るベッドの半分近くを、可愛らしい寝顔を浮かべて占領しているのだ。


「私の腕で寝ていた姿は、もう懐かしい思い出なのね。ふふ、それにしても可愛い寝顔なこと……少し悪戯しようかしら」


彼女は悪戯な笑みを浮かべると、息子の頬をツンツンしたり、摘んでみたりしている。


その時、やり過ぎたのかリッドがナナリーの手を軽く払うと「うー……ん、メルやめて……」と寝言を囁いた。


「あらあら、ふふ、どんな夢を見ているのでしょうね。それにしても、この寝顔はライナーに少し似ているかしら?」


リッドの寝顔が誰に似ているのか考えていると、ドアがノックされライナーの声が部屋に響く。


「ナナリー、私だ。入っても大丈夫か?」


「ええ、ですが、静かにお願いします。今だけの、とても可愛らしいものが見れますよ」


「……今だけの可愛らしいもの?」


彼はナナリーの答えに首を傾げながら、言われた通りに静かに入室する。


そして、悠然と彼女の側に近寄ると、思わず頬を緩ませた。


「なるほど、確かに今だけの可愛いものだな」


「そうでしょう? 大きくなったら、また違った可愛さはあるのでしょうけど、この寝顔は今だけしか見られませんからね」


二人はリッドの寝顔を見て、とても慈愛に満ちた表情を浮かべている。


すると、悪戯な笑みを浮かべたナナリーは、彼に囁いた。


「ね、あなた。リッドの頬を触って下さいな。とても、スベスベでプニプニなんです」


「う、うむ……」


ライナーは言われるまま恐る恐る、リッドの頬を優しく撫でる。


そして、優しく摘んでみた。


「確かに、スベスベでプニプニだな」


「そうでしょう? ふふ、でもこの寝顔はあなたによく似ていますよ」


ナナリーに言われた彼は、息子の顔をよく見た後、軽く首を横に振ると呟いた。


「この寝顔は私ではなくナナリー、君によく似ているよ」


「あら、そうかしら……でも、そうね。私達の子供ですから、きっと二人に似ているのでしょうね」


「ふふ、そうだな……しかし、こうして寝ている姿が一番可愛いな」


彼はリッドの頭を撫でながら、普段のやりとりを思い出して苦笑しながら呟いた。


すると、ナナリーは頬を膨らませる。


「あら、リッドはいつも可愛いですよ」


「まぁ、それはそうなのだが……少しばかり、母上と君に似て悪戯好きというか、常識に囚われないようなところがある。それに振り回される私の身にもなってくれ」


彼はナナリーの言葉に苦笑しながら答えると、寝ているリッドに再度、優しい視線を向けた。


「まぁ、ひどい。トレット様が聞いたらきっと怒るわ」


「まさか……母上はきっと喜ぶさ」


二人が楽しく話していると、間に挟まれていたリッドが「ううん……」と寝言を言いながらベッドの掛け布団で丸まった。


その姿に、ナナリーが顔を綻ばす。


「あらあら、少しうるさかったかしら。ねぇ、あなた。あっちのソファーでもう少し話さない?」


「うむ、そうだな」


ライナーはそういうと、ベッドの反対側に回り込みナナリーを腕に抱きかかえた。


いわゆるお姫様抱っこである。


そして、そのまま丁寧にナナリーをソファーに下ろす。


彼は続けて、辺りを見渡すとひざ掛けを見つけ手に取ると、彼女に優しく掛けた。


「体を冷やすなよ。寒くはないか?」


「ええ、ありがとう、大丈夫よ。それにしても、今日はどうしたの?」


ナナリーの問い掛けに、ライナーは怪訝な表情を浮かべて答えた。


「ん? 聞いていないのか。リッドに私がここに後で行くと伝えるように言っていたのだがな」


「あら、そうだったのね。私が怒ったから、話す機会を失っちゃったのね」


「珍しいな君が怒るなんて、リッドは何をしたんだ?」


彼は、ナナリーの言葉に少し目を丸くする。


彼自身も彼女が怒った姿を見たことは、ほとんどない。


何をしでかしたのか? と思っているとナナリーは、苦笑しながら先程のやりとりを丁寧に彼に伝えた。


「ふふ、メルの演技と説明は面白かったですよ。ただ、話を聞くと理由があっても、態度と言葉遣いが貴族の子息としては如何かと思いまして、少し怒ったのです」


「確かにな。リッドは調子に乗りやすいところがあるからな。誰に似たのやら……」


ライナーが苦笑しながら首を横に振ると、ナナリーは思案顔を浮かべる。


やがて、おもむろに呟いた。


「そうね……私の父上か、あなたのお父上のエスター様じゃないかしら。覚えている? 私の実家のお屋敷であなたとの縁談をした時のこと」


彼女の言葉にライナーは懐かしげに頷いた。


「ああ、覚えているよ。父上とトリスタン殿にしこたま飲まされて、翌日に初めて二日酔いを経験したからな」


「あらそうなの? それは初耳だわ。ふふ、でも、私達の縁談がまとまると、二人して調子に乗ってお酒を飲んで、トレット様が激怒されたじゃない。そこから考えると、リッドはあの二人にも似ている部分があると思うの」


「そうだな……そうかもしれんな」


ライナーが頷くと、ナナリーがハッとして話を続ける。


「あ、話が逸れてごめんなさい。それで、今日はどうされたの?」


「ああ、そうだったな。いや、君に私達の息子が大活躍をした話をしようと思ったんだよ。まぁ、寝ているとはいえ、本人の近くでする話ではないかもしれんがな」


彼はそういうと、優しい眼差しをリッドが寝ているベッドに向ける。


ナナリーはその様子を見ると、満面の笑みを浮かべた。


「まぁ、それは、是非聞きたいです。お聞かせ願えますか?」


「わかった。少し長くなるから、体調が悪くなったらすぐ言うんだぞ」


ライナーは彼女の体調を気にしながら、リッドの活躍を楽しげにナナリーに伝える。


彼女も、ライナーの話を嬉しそうに聞き続けるのであった。


ちなみに、ライナーが部屋を出る際、リッドを抱きかかえて連れて行こうとする。


しかし、ナナリーが制止した。


理由は、『息子の寝顔をもっと見ていたい』ということだったそうだ。






本作を読んでいただきましてありがとうございます!

少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

差支えなければブックマークや高評価を頂ければ幸いです。


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投稿時に絵文字は一切使用しておりません。

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気になる方は変換機能をOFFするなどご確認をお願い致します。

こちらの件に関しては作者では対応致しかねますので恐れ入りますが予めご了承下さい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 本編ではなかった世界……
[一言] 凄く幸せで… そして、少し悲しい光景です。
[良い点] こういう第三者のお話、人物像に広がりが出て凄く好きです!
感想一覧
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