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【WEB版】やり込んだ乙女ゲームの悪役モブですが、断罪は嫌なので真っ当に生きます【書籍&コミカライズ大好評発売中】  作者: MIZUNA
第二章

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狼人族の姉弟の苦難

狼人族のシェリルとラストの二人に決意を述べてもらった後、改めてサンドラとビジーカを紹介した。


その際、ラストが二人と握手した時、何やら彼の耳が『ぞわっ』と逆立ったように見えたのは僕の気のせいだと思う。


紹介が終わると、シェリルがおずおずと尋ねてきた。


「リッド様。私は、この後はどうすれば良いのでしょうか」


「そうだね。今はとりあえず、ラストと二人で長旅の疲れを取ってくれれば大丈夫だよ。ちなみに食堂にはもう行った?」

「いえ、私は湯浴みをされた後にすぐに弟に会いたいと言ったの……」


シェリルが僕に答えている途中「グゥゥ」と可愛らしいお腹の音が辺りに響く。


僕はその音にきょとんとするが彼女は、恥ずかしそうに顔が真っ赤に染まる。


その時、ラストが慌てて大声を出した。


「あの‼ リッド様、俺ずっと腹が減っていたのですみません」


「そっか、ラストのお腹の音だったんだね。君は、皆と同じ食事は難しいかもしれないから、ビジーカとサンドラが特別な食事を用意してくれると思うよ」


「え……?」


あの二人が特別な食事を用意する。想像するだけで恐ろしいけど、母上の快復と医療技術発展の為だ。


ラスト、君の選んだ道は想像以上に過酷だよ。僕はニコリと怪しく微笑んだ。


「ふふ、だって言ったでしょ。その身を捧げて、僕の期待に応えてくれるってね。本当に期待しているから、頑張ってね。」


「……は、はい」


彼は僕の笑みに何かを悟ったようで、どんよりと項垂れてしまう。


だが、そんな彼とは裏腹に嬉々とした表情を浮かべる二人が近くにいた。


「なるほど。確かに……食事療法は良い方法かもしれませんな」


「薬の原料の味は『独特』過ぎますからねぇ。調理しても効果が出るのか、試してみる価値はあります。ラスト君は素晴らしいじっ……ではなく、協力者ですね」


いま、実験体と言おうとしたな。


ラストの耳が、逆立ってフルフルと何やら可愛らしく震えている気がする。


うん、気のせいだろう。僕は視線をシェリルに向けた。


「それで、シェリルはどうする? ここで、ラストと一緒の物を食べても良いけど、お勧めは食堂かな。皆の感想も聞いてみて欲しいからね」


「う……わ、私はラストと……」


彼女が躊躇いながら言葉を口にしようとした時、ビジーカがどこからともなく魔力回復薬の原料である『月光草』を取り出すと彼に手渡した。


「これを食べて見てくれ」


「こ、これをこのままで……ですか」


僕は、目の前の光景に何やら見覚えがあった。


魔力回復薬を開発する為に僕がしたことだ。


サンドラを一瞥すると笑いを堪えているようにも見える。


さて、どうしたものか。


と思った矢先、ラストが決意の表情を浮かべて口に月光草を放り入れた。


そして、口の中でモゴモゴと噛んだ様子を見せると同時に、真っ青になり絶望の表情を浮かべる。


うん、美味しくないんだよね。


「う、うう、お⁉ ううぉお‼」


「む、水か。ほれ」


彼が何を言うのか予想していたように、ビジーカが水を差し出す。


ラストは水を一気に飲み干すと、まさに『良薬は口に苦し』という表情を浮かべた。


「な、生で食べるのはえぐみが強すぎてきついです……おかわりは少し時間を置いて欲しいです」


「ほうほう。以前、サンドラがしたという実験結果と一緒の感想だな」


『サンドラがしたという実験結果』という言葉を聞いた僕は、微笑みながら鋭い目で彼女をギロリと睨んだ。


だが、サンドラは顔を逸らして、わざとらしく口笛を吹き始める。


ちなみに、シェリルはラストの様子にドン引きしているようだ。


でも、彼女の性格では彼と一緒に食べると言いかねない。


「シェリル、ラストが食べた『草』は到底食事とは言えないものだよ。彼にはちゃんとした食事を出すから、君は食堂に行って美味しいもの食べてきて。これは命令だよ。わかった?」


「う……で、ですが……」


彼女は、申し訳なさそうにラストに視線を向けるが、彼は苦笑して姉に答えた。


「俺は大丈夫だから行ってきなよ。姉さん、俺より食べるんだからさ」


「……⁉ ラ、ラスト、リッド様の前で余計な事を言うな‼」


ラストの言葉にシェリルは、怒りながらまた顔を赤くしている。


何故、彼女が怒っているのかわからず、僕はきょとんと首を傾げた。


「余計も何も……沢山食べられる女の子も素敵だと思うよ」


「はう……」


彼女は、何やら今度は恥ずかしそうに俯いてしまう。


シェリルって感情豊かだな。


そんなことを思いながら、僕は彼女に言った。


「それよりも、ほら。食堂でご飯食べておいで。場所がわからなかったらメイドに尋ねればいいからね」


「……‼ わ、わかりました。では、お言葉に甘えて失礼致します。ラスト、また来るからな」


「うん、姉さん。また後でね」


彼女は後ろ髪を引かれる面持ちで個室を出て行った。


その後、ラストについてはビジーカに任せて僕達も個室を後にする。


その時、ビジーカが何やらニヤリと不敵な笑みを浮かべていた気がするが、あの笑みはなんだったのだろうか? 僕の疑問を察したのか、サンドラが小声で耳打ちしてきた。


「ビジーカさんは、患者が重病であればあるほど笑顔になるんです。逆に大した病気じゃないと、機嫌が悪くなるんですよ。本人は気付いていませんけどね」


「そ、それはまた、個性的だね」


サンドラに答え、僕達が個室を出ると医務室内に突然女の子の声が響く。







本作を読んでいただきましてありがとうございます!

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気になる方は変換機能をOFFするなどご確認をお願い致します。

こちらの件に関しては作者では対応致しかねますので恐れ入りますが予めご了承下さい。

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― 新着の感想 ―
[一言] >ほうほう。以前、サンドラがしたという実験結果と一緒の感想だな 「研究者」なら追試験は必須w >患者が重病であればあるほど笑顔になるんです。逆に大した病気じゃないと、機嫌が悪くなるんで…
[良い点] 個性強すぎる医者やな…… それなんてアスクレピオス? [一言] 軽傷をみてフン、つまらん患者だ。そんなものは栄養のある食事をとって抗生剤を飲めば治る もっと魔力枯渇症の患者とかいないのか?…
2023/08/18 17:43 退会済み
管理
[気になる点] 粉にしたり錠剤にしたりする方が効果があると判明しているのに、どうして薬草を生のまま食べさせたのかがよく分からない。効果低いし、貴重な薬草無駄遣いしてるように感じます。
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