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【WEB版】やり込んだ乙女ゲームの悪役モブですが、断罪は嫌なので真っ当に生きます【書籍&コミカライズ大好評発売中】  作者: MIZUNA
第二章

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狼人族の姉弟

僕はサンドラから告げられた病名に驚きを隠せなかった。


まさか、母上と同じ『魔力枯渇症』を患った獣人族の子供がいるとは想像もしていなかったからだ。


「本当に、魔力枯渇症なの」


「はい。狼人族の少年、名前は確か『ラスト』ですね。彼は、ナナリー様と同じく魔力枯渇症である可能性が非常に高いです。魔力枯渇症は珍しくはありますが、種族に関係なく、誰がいつ発症してもおかしくはありません。リッド様……処方はいかが致しましょう」


「どうしましょうって……」


その時、サンドラとビジーカの表情が重々しくなり、僕はハッとする。


治療薬の原料となる『ルーテ草』の在庫が少なくなっているのだ。


今は、母上の治療だけなのでまだ大丈夫だが、狼人族の少年、ラストにも使用すればそれだけ無くなるのも早くなる。


その為、サンドラ達は僕に『処方』について尋ねたのだろう。


僕は、処方についてその場で少し俯いて考え込む。


勿論、救う、救わないで言えば『救う』だ。


しかし、母上の治療の事を考えると、言葉を発するのに思わず二の足を踏んでしまう。


でも、その時ふと……母上の顔が脳裏に浮かんだ。


この事を母上が知ったらどう思うだろうか。


きっと、母上は……。


僕は意を決すると、重々しい表情をしているサンドラとビジーカに向けて、ニコリと微笑んだ。


「そんなの、決まっているよ。母上と同じ薬を処方してあげて」


「……⁉ リッド様、本当によろしいのですか」


声を発したのはビジーカだ。


彼は信じられないと言った様子で、驚嘆の表情を浮かべている。


僕は、そんな彼の言葉に頷くと話を続けた。


「うん。母上も、きっと同じ事を言うと思うんだ。それに、狼人族の姉弟にも約束したしね。あ、でも、折角だから病名を伝えて治験にも協力してもらおうよ」


僕が処方について明言すると、ビジーカは何やら感嘆した面持ちを浮かべていた。


しかし、横で見ているサンドラは、実に楽しそうなしたり顔でニコニコと笑っている。


それから間もなく、ビジーカがハッとしてから呟いた。


「なんと……珍しくサンドラの言う通り、リッド様は本当に型破りで豪気なお方ですな」


「……珍しくは余計です。でも、バルディア領に来て良かったでしょ。ビジーカさん」


「うむ……」


二人は何やら楽しそうに会話をしており、おかげで本題が先に進みそうにない。


なので、僕はわざとらしく咳払いをしてから、二人に少しだけ冷やかな視線を向けた。


「さて……狼人族の子の治療方針も決まったことだし、そろそろ彼らの所に案内してもらってもいいかな」


「は、はい。承知致しました」


ビジーカとサンドラの二人は、僕の冷やかな視線に少し怯えた表情を浮かべる。


そして、すぐに狼人族の姉弟が居るところに案内してくれた。


ちなみに、宿舎の医務室は結構広く作っており、奥には個室も何部屋か用意されている。


狼人族の男の子は『魔力枯渇症』ということで、個室にサンドラが運び込んで診断をしていたそうだ。


彼女達の説明を聞きながら足を進めると、間もなく彼らの居る部屋の前に着いた。


僕はノックして、「お休み中にごめんね。失礼するよ」と、声を掛けるとすぐにドアを開ける。


「……⁉ リッド様‼」


そこには、馬車の時に顔を合わせた狼人族の少女が、ベッドに寝ている弟に寄り添っていた。


彼女は僕に気付くとすぐに駆け寄ってきて、頭をペコリと下げる。


しかし、顔を上げると彼女の目には涙が浮かんでいた。


「リッド様……私達のような者にここまでの対応をして頂き、本当にありがとうございます。この御恩は、弟のラストの分を含めて、私ことシェリルが一生を以てお返しさせて頂きます‼」


シェリルは自身の胸の中央を、服の上から片手で掴みながら、僕の目を見つめて明言する。


そして、ハッとすると涙を服の袖で拭った。


突然すぎる彼女の言動に、僕は苦笑しながら優しく答える。


「あはは……ありがとう。気持ちはありがたく受け取っておくよ。でも、君達にはこれから辛いかもしれないけど、大切な話をしないといけないんだ。ラスト君にも聞こえるようにベッドの側で話をしても大丈夫かな」


「は、はい。大丈夫です」


 

彼女は僕の答えに少し、戸惑ったような表情を浮かべている。


その時僕は、シェリルの姿にふと視線が移った。


彼女は、馬車で初めて会った時よりも白い髪や狼耳、尻尾がフワッとしている。


恐らく湯浴みで汚れが落ちた結果だろう。


その姿はとても可憐で凛としており、今更だけどかなりの美少女だ。


すると、僕の視線に気づいたようで、彼女は困惑した表情を見せる。


「あ、あの、どうかされましたか」


「あ、ごめんね。シェリルがあんまり可愛くて綺麗だからさ。つい見惚れちゃってね」


「え……⁉」


何やら彼女は急に顔を赤らめてしまう。


僕はその様子に、一瞬きょとんとするがすぐに顔を引き締める。


そして、本題を二人に伝える為に、ラストの顔が見えて会話しやすい位置に移動するのであった。












本作を読んでいただきましてありがとうございます!

少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

差支えなければブックマークや高評価を頂ければ幸いです。


評価ポイントはモチベーションに直結しております!

頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張る所存です。

これからもどうぞよろしくお願いします。


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※注意書き

携帯機種により!、?、‼、⁉、など一部の記号が絵文字表示されることがあるようです。

投稿時に絵文字は一切使用しておりません。

絵文字表記される方は「携帯アプリ」などで自動変換されている可能性もあります。

気になる方は変換機能をOFFするなどご確認をお願い致します。

こちらの件に関しては作者では対応致しかねますので恐れ入りますが予めご了承下さい。

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― 新着の感想 ―
[一言] 無自覚に人を誑し込むなwww
[一言] 「レナルーテ草の在庫が少ないとか有り得ない」とかいう、過去の話きちんと読んでない方の寝言は気にせず、今後も更新楽しみにしています。
[一言] 狂犬誕生の悪寒w
感想一覧
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