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【WEB版】やり込んだ乙女ゲームの悪役モブですが、断罪は嫌なので真っ当に生きます【書籍&コミカライズ大好評発売中】  作者: MIZUNA
第二章

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移送団・二台目③

「言葉遣いに気を付けなさい。この方は、バルディア家のご子息、リッド・バルディア様です」


「……すまない。あまり畏まった言葉は得意じゃないんだ。あんたの事はなんて呼んだらいい? 若……主……ご主人様……若旦那とかでいいのか?」


言葉遣いを指摘された彼は、ディアナを一瞥して会釈する。


そして、答えながら再度、視線を僕に移した。


この子は、他の獣人族の子と違って少し育ちが良い感じがする。


粗はあるけど、畏まった様子で彼なりに丁寧な言葉遣いを意識しているのだろう。


「若旦那とかご主人様は嫌だから、リッドでいいよ」


「そうか、リッド……様。これで良いか?」


すこしぎこちない言い方をしながら、彼はディアナに視線を移す。


彼女は少し意外そうな顔を浮かべた。


今までの獣人族の子達からすれば、受け答えがしっかりしているからだろう。


「……まぁ、良いでしょう。現段階では及第点です」


「そうか……、ところでリッド様、言える立場ではないかも知れんがお願いをしてもいいか」


彼は、視線を僕に移してから呟いた。


『お願い』という言葉を聞いて、ディアナが眉を顰める。


カペラは無表情だが、あんまり良く思ってはいない感じかな。


そんな二人の、様子を察しながら、僕は彼に微笑んだ。


「いいよ。ただ、お願いを叶えてあげられるかはわからない。それでも、良ければ話は聞くよ」


「十分だ。俺以外の熊人族のやつらは気が弱い所はあるが、良い奴らなんだ。だから、あいつらに手荒な真似はしないでほしい。もし、あいつらに罰が必要なときは、すべて俺が代わり受ける……これが、俺の願いだ」


予想外の言葉に僕は驚いた。


勿論、罰とか手荒な真似をするつもりは一切ない。


でも、今はまだ、彼からすれば僕がどのような仕打ちをするかは想像もつかない状況だ。


その中で、僕に対する最初のお願いが、『仲間の身代わりとなる』である。


胆力というか、根性が座っていると言うか、ともかく中々、出来る事ではないと思う。


彼の目には嘘偽りはなく、ただ真っすぐに僕の目を真剣に見つめている。


僕は少し考える素振りを見せてから、彼に頷いた。


「わかった、検討するよ。でも、元から罰とか手荒な真似はするつもりはないよ。そこは安心して欲しいかな。後、君の名前を教えてもらってもいいかな?」


「そうか、まだ名乗ってなかったな。すまない。俺の名前はカルアだ。リッド様……あんた、良い人みたいだな」


僕は思わず目を丸くした。


まさか、奴隷としてやってきた獣人族の子にそんなこと言われるなんて。


彼はその後、僕に会釈してから騎士に引き連れられて宿舎に向かう。


これで、獣人族の子達の受け入れはすべて終わった。


辺りは先程までの慌ただしさから少しだけ、落ち着いたようだ。


すると、ディアナが不満顔で額に手を添えながら俯いた。


「はぁ……しょうがないのでしょうが、獣人族の子達の礼儀は全然なっておりません。バルディア家に仕える者としてあのままではいけませんね。マリエッタ様にもお願いして礼儀作法の教育を見直す必要がありそうです」


「あはは……お手柔らかにね」


彼女の少し怒気が籠った言葉に、僕は苦笑しながら答えた。


クリスやエマから作業をしながら聞いたけど、獣人族の子達の大半は親がおらずスラムのようなところで暮らしていたらしい。


そこでの暮らしにおいて窃盗や強盗は日常茶飯事。


当然、そんな場所だから人の命も軽い。


そういった場所にいる子供達は後腐れもないので、今回のような奴隷売買に於いて標的になりやすいそうだ。


今回来た子達は、恐らく皆似たような状況からやってきたのだろう。


俯いてそんなことを考えていると、豪快な声が辺りに響く。


その声に、反応するように顔を上げると、爽やかにこちらに向かって来るスキンヘッドの大男、ダイナスが目に入る。


彼の傍らにはルーベンスも居た。


「リッド様、獣人族の受け渡し作業完了致しました。これより、騎士団はこの現場の片づけと宿舎に移動してあちらを支援する班に分かれて動こうと思いますが良いでしょうか?」


「うん、お願い。僕はこの後、宿舎に向かうから後をよろしくね」


僕が答えながら頷いた時、ふと彼の隣にいるルーベンスと目があった。


そして、ある事を思いついてニヤリと笑みを浮かべる。


「あ、ディアナ。僕とカペラで先に宿舎に戻るから、ルーベンスと少し話してから来なよ。色々話したいこともあるだろうからさ」


「……⁉ ゴホン‼ リッド様、お言葉はありがたいですが、今は護衛の最中です。なので、お気遣いは不要です。そうですよね、ルーベンス?」


彼女は少しの怒気を言葉に交えて答えると、ルーベンスを突き放すような冷たい視線で見つめた。


彼は、その視線に苦笑している。


「う、うん、そうだな。リッド様、お気遣いありがとうございます。しかし、ディアナの言う通り今は仕事中ですから、大丈夫です」


「そう? なら、いいけど」


二人に対して僕は笑いかけると、今度こそ宿舎に向かって歩を進めた。


さて、宿舎はどんな状況になっているかな。












本作を読んでいただきましてありがとうございます!

少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

差支えなければブックマークや高評価を頂ければ幸いです。


評価ポイントはモチベーションに直結しております!

頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張る所存です。

これからもどうぞよろしくお願いします。


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投稿時に絵文字は一切使用しておりません。

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気になる方は変換機能をOFFするなどご確認をお願い致します。

こちらの件に関しては作者では対応致しかねますので恐れ入りますが予めご了承下さい。

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[気になる点] 人の恋路を茶化してばっかり。 嫌なやつだな。
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