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【WEB版】やり込んだ乙女ゲームの悪役モブですが、断罪は嫌なので真っ当に生きます【書籍&コミカライズ大好評発売中】  作者: MIZUNA
第一章

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リッドの事業提案

「リッド、いくらお前の言う事でもわけがわからん。養鶏場をするとはどういうことだ?」


「はい。なので、この事業計画書を元にご説明致します‼」


僕は机の上に置いておいた書類を表にして、父上に渡した。


受け取った書面を見た父上は眉をピクリとさせて眉間を指で揉むと、書面を再度見てため息を吐いた。


「はぁ……リッド、お前がこれを作ったのか?」


「はい‼ たたき台を作って、クリスに確認してもらいました。事業計画書として問題はないと思います。書類に沿ってご説明してもよろしいでしょうか?」


「……この書類は、パッと見る限り問題がない。だから、『問題』なのだが……まぁ、良い。説明を始めなさい」


父上の言葉に僕はきょとんとしたが、すぐに気を取り直して父上に考えている事業計画の説明を始めた。


実はこの世界にも家畜の基本となる動物が存在している。


その動物たちは、ほぼ前世の記憶と同じで牛、豚、鶏だ。


ただ、大量飼育などは確立されていないのと、品種までも全く同じというわけではないようだ。


肉関係は平民でも手は届くが、それでも高級食材の部類になっている。


その中で何故、鶏なのか? 


それは卵と鶏肉の入荷が安定して揃うことで料理の種類が大幅に広がるのが一点。


あとは、オリーブのオイルを作ったあとの搾りカスをニワトリの飼料に出来るから無駄も無くせる。


牛と豚も考えたが、鶏は卵もあるし料理の幅が広がるだろうと判断した。


それに、レナルーテで手に入る調味料の『醤油』等の存在も大きい。


鶏肉、醤油、小麦粉、油、これさえあれば……そう「唐揚げ」が作れるようになる。


これは、この世界にまだ知られていない料理なのでバルディア領の名物料理として広めれば面白いと思う。


養鶏をすることで領地内の食生活も今より、良く出来る。


それは、領地の地力を向上させることにも直結するはずだ。


まぁ、僕が食べたい気持ちもあるけど。


養鶏のメリットについて話し終えると父上は額に手を添えながら俯いてため息を吐いた。


「はぁー……私がオリーブを始めると言った時、周りが抱いた感情はこんな感じかもしれんな……」


「父上、その通りですよ。何事もやってみて初めて分かることも多いのです。それに、鶏の肉を食べると筋肉に良いらしいですよ。特に『胸肉』という部位が良いそうです。食事を改善すれば、僕達を含めて領地に住まう全員に良い影響を与えられます。やりましょう、父上‼」


僕の言葉を聞いた父上は首を横に小さく振ると、僕を見据えた。


「……これだけでは、了承はできん。すべての説明を聞いてから、総合的に判断させてもらおう。まだ、あるのだろう?」


「畏まりました。では、二枚目の内容をご説明しますね」


父上の返事に僕は落ちついてニコリと笑顔で返した。


さすがに、すんなり通してはくれない。


でも、僕の予想が正しければ、二枚目には食いつくだろうと思っている。


父上は僕が二枚目の説明を始めると、一息つくようにガルンの淹れた紅茶を口にした。


「二枚目は……『木炭』の大量生産を可能にする内容です」


「……⁉ ゴホゴホ‼ 木炭だと⁉」


父上は僕の提案を聞いて口に含んだ紅茶で思い切りむせた。


僕は父上が落ち着くのを待ってから、説明を再開した。


まず、最初に伝えたのが今日、最初に怒られた「巨木」の件だ。


僕が樹の属性素質を持っている事を伝えたら、また父上は額に手を当てて俯いた。


都度、気にしてもしょうがないのでそのまま説明を続けた。


「……つまりですね。樹の属性素質を持っている者が、ちゃんとした指導を受けて魔法の修練を積めば木を生やすことが誰でも出来ます。その木を木炭にすれば良いのです」


「木炭を作る技術はどうするのだ? バルディア領にそのような技術はないぞ?」


父上は養鶏の時はあまり乗り気ではない印象だったが、木炭の話になるとかなり前向きで真剣な顔つきに変わっている。


やはり、この世界もしくは帝国において燃料問題というのは大きいのかもしれない。


僕は父上の質問に笑みを浮かべた。


「その問題も解決済みです。提案をすべて受け入れてもらわないと話せませんが、技術は確保しています。すべての提案に了承頂ければすぐに動き始める予定です」


「ふむ。お前の事業計画書の内容をすべて認めないと、技術提供はしないつもりか? 随分と悪知恵が働くものだ……まぁ、良い。説明を続けてくれ」


僕は父上に軽く会釈すると、樹属性魔法に木材確保、木炭作成、人材育成をセットで行うことで木炭を安定供給できると説明した。


だが、父上の顔は険しいままだ。


「リッド、お前の提案はわかった。だが、樹属性魔法を使えるかどうかの判断をどうするつもりだ? 魔法の修練を長期間行い、魔力がある程度扱えるようになるまでその者が持っている属性素質は不明なのだぞ?」


「その問題点も解決済みです」


「なに?」


僕は続けて、エレンとアレックスに開発してもらった「属性素質鑑定機」の事も伝えた。


魔力を少しでも使えるようになれば、色にて個人が持っている属性素質を判別できる。


また、属性素質鑑定機は改良中であり、いずれ手をのせるだけで判別できるようにする予定だと説明した。


僕の話を聞いた父上は厳格な表情で天を仰ぐと呟いた。


「……まさか、帝都に行っている間にここまでの事業計画書を作って来るとは……」


「父上、どうでしょう? 養鶏と木炭製造をお許し頂けないでしょうか……?」


恐る恐る尋ねた僕を父上は見据えると、呆れた様子で言った。


「わかった。ただし、木炭をまず作って見せろ。リッドの考えた一連の流れで作成した木炭の品質を見て最終判断を下そう。それでよいな?」


「……‼ はい、ありがとうございます、父上‼」


僕は父上から条件付きとはいえ、了承をもらえたことが嬉しくて満面の笑みを浮かべていた。


父上も僕の笑顔を見て少し微笑んだ気がしたが、すぐに父上は次の質問を始めた。


「ところで、リッド。お前の計画にある人材育成だが、どうやって人を集めるつもりだ?」


「……それは、心苦しい思いもありますが、奴隷をクリスティ商会経由で集めようと思っております。何分、初めての試みに加えて機密事項とすべきことが多いですから、その点でも奴隷が今回は最適だと思います」


僕が言い終えると、父上は奴隷を集めると言う言葉が僕から出るとは思わなかったようで少し驚いた表情をしていた。


人材をどうするか? 


この問題は最初から僕は「奴隷」を集めることで対応をしようと考えていた。


レナルーテとの話がまとまる前であれば、奴隷を集めるのはイメージが悪くなるかもしれない。


でも、僕はファラやエリアスと繋がりが出来た。


後は、事前に事情を伝えるようにすれば問題ないだろう。


父上は僕の返事に少し考え込んでからおもむろに言った。


「商会を通して奴隷を集めたとして、我が領地での扱いはどうするつもりだ? 帝国においては、奴隷の扱いは禁止となっているのだぞ? 奴隷を集めたところで、有効活用できるとは思わん」


「はい。ですから、奴隷として集めた人達には、集めるのに負担した金額を僕達に返済してもらおうと思います」


「返済だと?」


僕の言葉を聞いた父上は怪訝な表情を浮かべている。


集めた奴隷たちに対する扱いを僕はゆっくり、丁寧に説明をした。


まず、奴隷の人達を集めるのにかかった費用を計算する。


それを、奴隷だった人達に平等に割り振り、バルディア領で働いてもらうことで少しずつ返済をしてもらうようにする。


つまり、表向きはバルディア家が彼等にお金を貸して、身分を買い戻したことにすれば良い。


勿論、働いてもらうことで、毎月のお給金は支給する。


返済金を差し引いた金額になるけど。


そのかわり、彼等には僕達が作成した教育課程を学んでもらい、木炭作成や養鶏など領地開発に従事してもらう。


そして、技術流出を少しでも防ぐため、彼等に借金返済後はバルディア領内であれば好きに生きて良い。


ただし、バルディア領外に出るのは禁じる。


他にもバルディア領が窮地に陥るようなことがあれば、力を貸して欲しいということにすれば、いざという時の戦力にもなるだろう。


父上は僕が話し終えると、眉間を指で揉みながら、俯いて息を吐いた。


「ふぅー……奴隷に出資して身分を買い戻させる。そして、その出資金を返済させる為に、我が領地で技術を教えて、領地開発に貢献できる有益な領民とするか……末恐ろしい仕組みを考えるものだ……」


「……人は安寧安定を求めるものと思います。我が領地に来たことで奴隷と言う身分から解放されて、安寧安定した生活を得られれば、バルディア領から出て行く者はいないでしょう。養鶏と木炭はそれだけの可能性がある事業です。父上、お願いします。やらせて頂けないでしょうか……⁉」


僕は言い終えると頭を深々と下げた。


この事業計画を進めることが出来れば、必ず将来的にバルディア領は飛躍的に大きくなるはずだ。


僕の必死の思いを感じ取ってくれたのか、父上が優しく声をかけてくれた。


「リッド、頭を上げなさい。わかった……お前の好きにしろ。ただし、何度も言うように事前にすることは報告しろ。矢面には私が立つが、事前に知らなければ立ちようがないこともあるからな」


「……‼ 父上、ありがとうございます‼」


僕は顔を上げると同時に満面の笑みでお礼を言った。


そんな僕の表情を見た父上は一瞬、微笑むがすぐにいつもの厳格な顔に戻った。


「だがな、リッド。先程、伝えたようにまずはお前が考えた一連の流れで『木炭』を作ってみせろ。最終的な判断はそこで下す、いいな?」


「はい、承知致しました‼」


養鶏場や木炭製造に関しては父上の説得が一番の難題だったけど、条件付でも承認をもらえた。


僕はそのことが嬉しくて、思わず笑みがこぼれていた。


父上は笑みを溢して喜んでいる僕を見て、少し雰囲気が柔らかくなった気がする。


その時、父上はあることに気付いて僕に疑問を尋ねた。


「リッド、養鶏場と木炭製造がお前の主な提案か? だが、この三枚目はなんだ?」


「あ……‼ 忘れていました。それは、屋敷建造の要望と設計のたたき台です」


「なに……?」


父上は書類に軽く目を通すと、柔らかい雰囲気が消えた。


そして、表情が厳格になり険しい目で僕を見据えている。


「リッド……当然、これについても説明があるのだろう……?」


「はい‼ 勿論です、父上‼」


父上は心なしか疲れているような感じがするが、僕はあえて気にせず屋敷建造の話を畳み掛けるように続けることにした。











最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


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頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張る所存です。

これからもどうぞよろしくお願いします。


※注意書き

携帯機種により!、?、‼、⁉、など一部の記号が絵文字表示されることがあるようです。

投稿時に絵文字は一切使用しておりません。

絵文字表記される方は「携帯アプリ」などで自動変換されている可能性もあります。

気になる方は変換機能をOFFするなどご確認をお願い致します。

恐れ入りますが予めご了承下さい。

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― 新着の感想 ―
ザンドラさんや、胃薬の開発まだかな???
[一言] 温泉・木炭・養鶏 なるほど、黒色火薬か。 あ、温泉はあっても硫黄が無いのか?
[良い点] 身分の買い戻しができるのは、ローマ帝国方式!
感想一覧
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