ファラからの手紙
カペラ、エレンとアレックスについての話が終わると僕は久しぶりの自室に戻って来て、ベッドに仰向けに倒れ込んだ。
「はぁー……疲れたぁ」
レナルーテから戻ってきて休めるかと思ったら、予期せぬクッキーとビスケットとの再会。
彼らは何故、僕に付いて来たのだろう?
その点についてもいつか尋ねたい。
カペラについてはあの後、ガルンに少し話を聞いたら、とても筋が良い。
しばらくすれば、執事としても問題ない振る舞いが出来ると太鼓判を押されている。
元暗部だから、その辺は得意なのかもしれない。
エレンとアレックスの作業場を探してあげないといけない。
それから、作って欲しい物がある。
することが山積みだなぁ……
そう思った時、ふと思い出した。
「そうだ……ファラから手紙をもらっていた……」
僕はむくりと起き上がると、ファラの手紙を荷物から手元に持ってきて、仰向けでベッドに再度寝転んだ。
少し行儀が悪いけど、誰も見ていないから大丈夫。
「……なんだか、ドキドキするな」
僕はそう思いながら手紙を開けて中を読んだ。
「………………」
無言で僕は手紙を読みながら顔がどんどん赤くなっていったと思う。
ファラからの手紙には僕が酔いやすいからと、体調を心配してくれていることから始まった。
そして、僕のおかげでとても心が救われたこと。
エルティア様とのこと。
何より、帝国との政略結婚ではあるが、今は僕としか結婚したくない。
という彼女の思いが書き記されていた。
あと、ファラがダークエルフの中で稀な体質が一つあり、その点もいつか僕に伝えたいとも書いてあった。
最後に、「本丸御殿でリッド様にお伝えした事に嘘偽りは一切ありません。お慕いしております。リッド様」と書いてあった。
「……‼」
僕は顔を真っ赤にしながら、にやけていたと思う。
一人、気恥ずかしさに襲われベッドの上をゴロゴロと転がっていた。
そして、知らない間に眠ってしまった。
バルディア領の朝に、僕の部屋に必ず来る来訪者の事を忘れて……
◇
「う……ん? あれ? あのまま、寝ちゃったのかな?」
「おはよ~、にーちゃま‼」
僕が目を覚ますと、何やらニヤニヤとした笑みを浮かべたメルがベッドの横から僕を見ていた。
クッキーとビスケットもメルの肩に乗っている。
「おはよう、メル。とても楽しそうだけど、何かいいことがあったの?」
「うん‼ ところで、にーちゃまは、ひめねえさまがすきなの?」
「へ……? 姫姉さまって、誰かな?」
初めてメルから聞く言葉に僕は思い当たる節がない。
多分、起きたばかりということもあるんだろうけど。少し意識が覚醒してくるとハッとした。
ファラからの手紙がない‼
その瞬間、メルがさっき言った言葉「ひめねえさま」という意味に嫌な予感がした。
「メ、メル、ベッドの上に手紙がなかったかな?」
「ベッドのうえにはなかったけど、ゆかにはあったよ?」
メルは話しながらニヤニヤすると、手紙を僕に差し出した。
僕は「あ、ありがとう」と言いながら受けとった。
そして、メルに対しておもむろに口を開いた。
「……ところで、メルは中身を読んだのかな?」
「うん、ひめねえさまがにーちゃまをすごくすきっていうのはわかったよ」
「うぐ‼ ゴホン……メル、その手紙の事は誰にも言ってはダメだからね? さすがに、その内容を誰かに言ったら僕はメルの事を怒らないといけない。わかった?」
メルは僕の言葉に笑顔で「はーい‼」と答えていた。
これに関しては僕が迂闊だったと思う事にしよう。
ところで、メルが先程から言っている言葉が気になった。
「……ところで、なんでファラが『ひめねえさま』なの?」
「だって、おひめさまでわたしのおねえさまになるひとなんでしょ? それなら、ひめねえさまがいいなって、だめかな?」
「駄目っていうことはないと思うけどね。そういえば、ファラからメル宛にも手紙をもらっているよ」
「ほんとう⁉ みせて、みせて‼」
メルはファラから手紙が自分にも来ていると思わなかったのだろう。
僕の横でとてもはしゃいでいる。
僕は昨日、手紙を取り出した荷物から、封の空いていない手紙を取り出した。
その手紙をメルに見せながら、封を開けた。
「じゃあ、読むね」
「うん‼」
ファラがメルに宛てた手紙には、僕と近々結婚するということから、メルに会えることをとても楽しみにしているということ。
家族になれることを楽しみにしているということが書かれていた。
メルは手紙の内容にとても喜んでくれた。
「それなら今度、一緒にファラ宛に手紙を書こうか?」
「うん、わたしもかく‼」
後日、このことがきっかけで僕とメルとファラの三人は文通をするようになった。
ちなみに、ファラに手紙を送るときに、レイシスから預かった手紙は返送しておいた。
二度と彼が「ティア」に手紙を送ってこないようにする為に、封を開けていない手紙の上から「それでも王子ですか、軟弱者」と筆跡を変えて書いた。
人をパシリ扱いした、兄となる人に対しての意趣返しではない。
諦めてもらうためである。
僕はそう自分に言い聞かせた。
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