リッドとライナーの打ち合わせ 帰国に向けて
エルティアとの話が終わった後、僕はファラと雑談をしながら楽しく過ごした。
彼女の日々のスケジュールを聞いた時、あまりの詰め込み具合に僕は驚きを隠せなかった。
ファラはそんな様子の僕を見ながら笑みを浮かべて言った。
「ふふ、もう慣れましたから。それに案外、楽しい時もありますよ」
「それでも、凄いと思うよ……」
ファラはレナルーテと帝国、それぞれの文化や礼儀作法、歴史にとても詳しかった。
僕は前世の記憶を取り戻したから、色々出来ることがある。
ファラは素で様々な事を吸収してすでに大人に劣らない言動をしている。
そう考えると彼女こそ本当の才女のような気がしていた。
僕は久しぶりに心穏やかな時間を過ごした。
バルディア領からレナルーテに来るまでも大変だったけど、来てからはもっと大変だった。
ノリス、ルーテ草等などそれこそ、怒涛の日々だったと思う。
そんなことを思いながらファラと談笑の時間を楽しんだ。
しばらくしてから、部屋の外にいる兵士から声が掛けられた。
「失礼致します。バルディア騎士団所属、騎士ディアナ様がいらっしゃいました。よろしいでしょうか?」
「はい。お願い致します」
ファラはディアナと聞いてすぐに通してくれた。
ディアナは入室すると、ネルスと入れ替わった。
ネルスは彼女と入れ替わる際に、ディアナにしか聞こえない声で言った。
「ルーベンスとのデートはちゃんと楽しめたかい?」
「……‼ はぁ、ネルス。あなたのそういう所は好きではありません」
ネルスは「クスクス」と笑みを浮かべた後、僕達に一礼して先に部屋を退室した。
僕は、ディアナに対して微笑みながら言った。
「おかえり、どうだった?」
「はぁ……リッド様もネルスと同じ事を聞くのですか? あまり感心致しません」
僕の一言にディアナは呆れた様子で呟いた。
何か誤解されている気がした。
僕は怪訝な表情をしながら彼女に言った。
「……僕は城下町の様子とか、お土産のことを聞いたつもりだったのだけど」
「え……⁉ も、申し訳ありません。えーと、城下町はとても良い街で、ナナリー様とメルディ様のお土産も迎賓館に届けさせております。後で、ご確認下さい」
珍しくディアナが動揺していた。
その様子を僕もファラも微笑みながら見ていた。
ファラはディアナとルーベンスの出会いや幼馴染として育った環境など結構、根掘り葉掘り聞いていた。
ディアナはそんなファラに少したじろぎながらも、少し照れながら丁寧に話していた。
ここ数日で一番、平和な時間が過ぎて行った。
◇
ファラ達と過ごしたあと、僕達は迎賓館に戻って来た。
戻るとザックより父上が呼んでいると言われ、僕はすぐに父上がいる部屋に移動した。
ドアをノックして、返事をもらってから部屋にはいった僕は父上に向かって言った。
「お待たせして申し訳ありません。父上、お呼びでしょうか?」
「帰って来たか。そこに座って話をしよう」
僕は父上に促され、父上と机を挟み対面する形でソファーに座った。
父上は僕を見据えながら、おもむろに言った。
「今回、外交的に行うべきことはすべて終わった。特に何もなければ少し前倒しになるが、エリアス陛下に話を通して明日、明後日にもでも帰国しようと思う。そこでだ、リッド、お前の予定はどうなのだ? まだ、こちらにいる必要はあるのか?」
「そうですね……」
僕は何か忘れていることはないかを考えに耽った。
ファラとの婚姻、ルーテ草など必要なことは終わったと思う。
もし、何かあったとしてもクリスが商流を作ってくれているから何とかなるだろう。
僕は頷くと父上に言った。
「はい。僕も最低限、すべきことは終わりましたので大丈夫です」
「わかった。それから、先に言っておこう。私はバルディア領に戻り次第、すぐに帝都に出向く予定だ。今回のレナルーテの報告とお前とファラ王女の婚姻の件を早急に進めよう。大丈夫と思うが帝都の貴族共が騒ぐと面倒だからな」
帝都の貴族達か。
彼らのおかげでファラと巡り会えたからある意味、感謝かな?
僕は父上が言い終えた後にハッとして思い出したように言った。
「父上、申し訳ありません。問題はないと思うのですが今回、将来的には私が抱えようと思う技術者をバルディア領に引き入れようと思います」
「……それは、初耳だ。事の経緯を含めて話せ」
僕はドワーフの技術者である、エレンとアレックスについて説明した。
父上は興味深そうに話を聞いていた。そして、ニヤリと笑った。
「でかした、リッド。ドワーフの技術者はどこの領地も欲しがる人材だ。是非とも我が領地に連れて行こう。私も出来る限りの支援を約束すると伝えなさい」
「はい。ありがとうございます」
父上はドワーフの技術者については満面の笑みを浮かべていた。
クリスもドワーフは自国から出ることが少ないと言っていた。
父上もひょっとすると探していたのかも知れない。
それからしばらく、僕と父上の打ち合わせは続いた。
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