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第8話 迷走する庭づくり

 時は梅雨に入り、毎日のように雨が降るようになりました。


 庭の状況を見ると、そこかしこに水たまりができています。土壌改良していないところや、踏み固めてしまったところはもちろん、少ないとはいえ、土壌改良をしたところにも水たまりができはじめました。


 以前に触れましたが、この庭はコンクリート部分や隣家との境目に、土の部分より高いブロックが設置されているため、土の部分に落ちた水は、基本的に土壌に自然浸透させるしか処理する方法がありません)。


 庭の数カ所に穴を掘り、そこに水が向かうように溝を掘ったり、踏み固めてしまったところに犂のようなもので細かい穴を開けたり、低いところに砂を入れたりといった応急処置をしてはみましたが、低くなっていて水のたまりやすいところでは、既に枯れて溶けてしまったクラピアもあります。


 ここに至って、現状ではクラピアで全面被覆するという当初の計画は達成不能であるという結論に達し、庭の現状に合わせて計画を変更することにしました。




 まず、水たまりができるのはなぜか。それは、水が流れ出すところがないからです。


 我が家の庭は隣接する道路より20cmほど高くなっていて、排水については可能なように見えますが、犬走りを整備するときに雨水枡の回りを高くしてしまっていたため、雨水枡に水を導く方法が使えません。

 また、土壌流失防止の観点から水が直接流出しない構造になっているため、雨水を流し出すには、地表面がブロックや犬走りの高さを超えるように、庭全体に数センチ分の盛り土を施すか、駐車場との境目のブロックか雨水枡の周囲を一度破壊して流出口を作るしかありません。


 流石にそれは素人の手には負えませんし、せっかく植えたクラピアが無駄になるのも業腹です。


 では、素人でもなんとかできる方法は何かと考えて思いついたのは、全体を高くできないなら低くすればいい。つまり、周囲より低い、水を集める遊水池的な物を造ってしまおうということでした。



 具体的には、クラピアを植えた場所の先、幅にして1,5mほどのエリアを周囲より15cmほど掘り下げて玉砂利を敷き、枯山水のようなものを作ることにしました。


 こうすれば、水はここに流れ込むし、池を造るのと違って深く掘る必要も、漏水対策の手間もかかりません(※防草シートを張るぐらいです)。


 庭の手前側は隣家が迫っていて半日陰になってますが、明るい色の砂利を敷けば見た目も明るくなることでしょう。雨が止めば水も引きますから、蚊の発生を必要以上に気にしなくて済むのも良い点です。


 こうして新たな計画をもとに、庭の整備を進めることにしました。







 修正した計画に従って、広く浅く穴を掘っていきます。そして、掘った土は、ふるいにかけてガラを取り除きます。今まで通りガラは物置の裏に捨て、掘った土は埋め戻さずに穴の外に積んでいきました。


 浅いとはいえ、計画の2/3、幅1mほどを掘り上げたときには、ふるいにかけた土で結構な大きさの土の山ができあがりました。



 その成果を見ながら、頑張った自分を誇らしく感じていた私は、ふとあることに気付きました。





 ……この、山どうするんだ?



 掘ったら掘った分だけ土が出るのは当たり前です。あっという間に今回の計画は破綻し、修正を迫られることになりました。





 以下が私が考えた修正案です。


案① 積んだところにならす。

→無理。平らにしたら庭の端のブロックの高さを越えます。そして雨が降れば駐車場に流れ出し、コンクリートの隙間に入れてある化粧砂利の部分に流れ込んでひどいことになることは必定です。

※実際、近所の家がそれをやって、化粧砂利が土まみれになってしまったのを見ました。


案② 庭全体に撒く。

→嫌。素人がクラピアを植えたせいでボコボコしている庭が平らになるかもしれませんが、こんな粘土質の土を上から撒いたら、ただでさえ弱っているクラピアがきっと枯れることでしょう。もう4万円以上かけているのに無駄にするのは絶対に嫌です。


案③ 捨てる。

→嫌。わざわざふるいにかけて異物を取り除いてやった土を安易に捨てるのは嫌ですし、そもそもただの土を捨てるのに金をかけるなんて許しがたいことです。


案④ そのまま山を作る。

→GO。



 その場で山にしてしまえば、土を移動させる手間が省けますし、高くすれば水はけもよくなるはずですから、湿気も減るはずです。


 ただ、山を作るとすると、踏んでやることで芝のように地面を覆うクラピアで植栽するのは少々面倒なことになるかもしれません。


 いっそのこと花壇にしてしまおうかとも考えましたが、今は良くても、異動で違う部署に行ったら、手入れが行き届かなくなって、草むらに化けていくのは目に見えています。



『具体的に植える植物を何にするかは後で決めることとして、とにかく多年草で背丈の低いグラウンドカバー植物を植えることにしよう。あまり丈の高くならない木を植えるのも良いかもしれない。そして、山にするなら土留めに石も必要だ。踏みつけにあんまり強くない植物を植えるなら、草取りの時に足場となる場所も作らないといけないなあ。クラピア全面被覆を諦めるなら、遊水池の砂利の中に別の植物を島のように植えるのも面白そうだ。湿気を好み、多少水に漬いたぐらいでは枯れず、半日陰でも大丈夫な植物を探して植えてみようか。そうすると飛び石も欲しいなあ……。』



 このようなことを考えながら、計画の修正を始めました。そして、庭の姿は初期の計画とは相当かけ離れた方向に進んでいくのでした。





今日の教訓:

 穴を掘ったら土が出る。処分をどうするかも含め、最初から考慮に入れて作業にかかりましょう。


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― 新着の感想 ―
[一言] うわぁ、すっげぇワクワクする。 山作るって決めた時の胸の高まりっていったらなかったでしょうね。 ……え? そこまで興奮してない? たらこだけかぁ……笑
[良い点] 実は僕、二十代前半に三年程造園会社で働いていたことがあるのです。ですから、鶴舞さんのこのエッセイを大変懐かしい思いで拝読させてもらっています。とても限られた分野を題材としていますが、執拗に…
[良い点] 江戸や名古屋の街づくりに通ずるものがありますね。 湿地の改造。 そう考えるととても興味深いです。
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