第7話 クラピアを植えた。その結果……
とうとう1回目のクラピアの植え付けの日になりました。
朝から植え穴を開け、穴の底に肥料を入れ、すぐに植え付けられる体制を整えて、通販で頼んだ苗の到着を待ちます。
午前10時過ぎ、ついに苗が届きました。
梱包を解いてすぐ水をかけます。
花も咲いていて元気な苗でしたが、予想していたよりも苗のサイズが小さかった(注1)ため、事前に掘っておいた穴を少し埋め戻しながら、一つ一つ植えます。植え終わったら軽く踏みつけ、水を撒いて終了です。
アクシデントはありましたが、なかなか手際よくできたと思います。
反省点すべき点としては、適切なサイズの穴を開けられず、手間取ってしまったことと、土を柔らかくしすぎたため、植え付けているときや、踏みつけたときに庭がボコボコになってしまったことです。
次回は対策を練らなくては。そう考えてその日の作業が終わりました。
こんなに小さくて大丈夫だろうかと心配していた苗でしたが、5月の好天のおかげもあってか、あれよあれよという間に成長し、植え付けた40株は、2週間ほどで3坪ほどの今回の工区の半分近くを覆ってしまいました。
隣家の庭部分に面した部分で、我が家の庭の中でも1・2を争う日当たりのいい場所とはいえ、期待以上の成長です。
まだ、土がむき出しの部分も多いため、そこからスズメノカタビラやオヒシバ、ツメクサ、カタバミといった雑草が生えてきますが、一度耕した土地なので土がしまっておらず、抜くのはたやすいことでした。
そして、一度クラピアが覆ったところは種が入り込みにくくなるためか、明らかに雑草の量が減少していますし、生えたとしても明らかに葉の形や色が異なるので、すぐ気付くきます。よって、処理も手早く行えます。
これは良いことずくめです。
もう土壌改良を始めてはいますが、予定通り第2期の工事を行っても良さそうです。
第2期工事は初期のエリアを広げるように進めました。
既にクラピアに覆われた庭の西の角から南東方向に進むのがメインの工区です。
また北西方向にも拡大する予定で、割合は南東:北西が7:3ぐらい。
相変わらず埋まっているガラはひどいですが、好天にも恵まれて、土壌改良は順調に進んでいきます。
また、今回は新兵器として土壌改良剤EB-aというものを購入しました。これは水と一緒に散布すると土壌の団粒化を進め、粘土質土壌を保水、排水性に優れ、通気性がよく水はけもよい土にしてくれるというのが謳い文句の夢のような薬剤です。植物に直接かかっても大丈夫というのも心強いことです。
散水を兼ねて、植え付けと同時に撒くことにして作業を進めました。
作業の進捗を見ながら、クラピアの購入も進めていきます。
なお、今回は購入先を変えることにしました。
前回購入した出光系メーカーの苗の品質はよかったのですが、配送可能な曜日が厳密に定められており、私の休日と合わない可能性があったからです。休みに届かないと、植え付けが週単位でずれてしまうことも考えられ、これから梅雨に向かう中、雨でも降られては大変です。
そんなことから、配送日の制限がない、大手通販サイトに出店しているメーカーに購入先を変更することにしました。
ちなみに、種苗法により守られた品種のため、何か取り決めがあるのか、どちらのメーカーも本体価格は一緒でした。が、大手通販サイトを通じて購入すると、ポイントが付くため、こちらの方がちょっとお得であるというゲスな考え方が根底にあったのも否定しません。
配達指定は5月末の某日午前中。当日の天気予報は曇りのち雨。夕方から雨が降り出す予想でした。ただ、午後はそれなりに降水確率が高く、あまり悠長に作業をする余裕はなさそうな感じです。
前回同様、朝のうちに植え穴を開け、元肥を施した状態で苗の到着を待っていました。ところが、今回は到着が遅く、宅配便が届いたのは正午数分前でした。
悔しいですが確かに午前中です……。
気を取り直して水をかけようと梱包を解きました。すると目を疑う光景が飛び込んできました。
届いた苗のサイズは前回と一緒だったのですが、すべて青々としていた前回とは異なり、黄色い枯れ葉がちらほら。これは明らかに弱っているようにしか見えません。
『このまま放っておいては枯れてしまうかもしれない! 1ポット500円以上もするのに! すぐに植え付けないと!!』
そう考えて植え付けを始めたところ、なんとぽつぽつと雨が落ちてきました。予報よりだいぶ早い振り出しです。
焦って苗を植えていきますが、雨はだんだん強くなっていきます。
土も湿っていき、作業をしている間に、とうとう地面が泥のようになってきました。
そんな中作業をすること1時間弱、なんとか植え付けを終えることができました。
そして、地面は相当濡れていましたが、予定通りEB-aも散布しました。
このとき私は、雨の中、やりきった感でいっぱいでした。
ところが、いろいろ対処をしたにもかかわらず、今回植え付けた苗はなかなか元気になりません。
そのうえ、今回の工区は前回植えたところに比べて明らかに水はけが悪くなっており、折からの梅雨の長雨でどんどん水たまりができていきました。
水たまりに沈んだ苗はどんどん枯れていき、排水路を掘ったり、砂を入れたりと応急処置を取ってはみましたが、結局二期工事で植え付けた苗の約3割が枯れてしまいました。そして生き残っている苗も、地面を覆うよりも、ひょろひょろ立ち上がってしまい、とても芝代わりになるようには見えません。
※水たまりと元気のないクラピア。
写真上部の密なところは一期工事で植えたところ
最初はどういうことかと思いましたが、今ならそうなってしまった原因がはっきりとわかります。それは雨の中でも作業をやめなかったせいです(注2)。
赤玉土や腐葉土を混ぜたとはいえ、土を入れ替えたわけではない以上、主となっているのは元からあった粘土質の土です。しかも、混ぜ物は入れましたが、石等の元々入っていた異物を取り除いたので、下手をしたらトータル量は減っている状態です。
Q:粘土質中心の土に水(雨)を加えてこねた(踏んだ)らどうなるでしょうか?
A:よーく締まった水はけの非常に悪い土のできあがり!
こんなことはちょっと考えれば子どもにもわかりそうなものです。
「EB-aがある?」
いくら土壌改良効果があるといっても、ファンタジーではない以上、ものには限界があります。
雨の中の植え付け作業はEB-aの力以上に土を締めてしまったのです。
ついでにいうならば、本当に土壌をどうにかしたいのなら、一度苗を掘り上げて、庭を耕し直せば良かったのです。
あれから1年がたち、いろいろ経験した今なら、まちがいなくそうします。それができなかったのは、40株の苗2万円超が無駄になるのを恐れたからです。
掘り上げて枯れてしまったらと思うと、耐えられませんでした。20,000円は私にとって安い買い物ではありません。
それでも今なら掘り上げます。
なぜか? それは、クラピアの強さと弱点がわかったからです。
確かにクラピアは刈り取って放っておくとすぐしなびてしまいますが、根の付いた切れ端を培養土に挿して水をやっていれば相当の割合で根付き、気温さえ合えばすぐに広がっていきます。病気にかかることもありますが、枯れたエリアを掘り取って、土を入れておけば、1ヶ月もしないうちに周囲の芽が伸びて土壌を被覆してしまいます。
その期間が惜しいなら、挿し芽で増やした苗をあらかじめ鉢やプランターで栽培しておくこともできます。そして開いた穴にその苗を突っ込めばあっという間にきれいな状態を取り戻せるのです。
そう、上手に水を与えながら短期間で植え戻せるなら、たぶん掘り出したって問題なかったでしょうし、それで2割ぐらい枯れたとしても、植え直して2月もすれば誤差の範囲内に収まるレベルの被覆が為されていたに違いありません。
これがクラピアの強さです。
私はクラピアの生命力を完全に舐めていたのです。
では、弱点は何かというと、クラピアは多湿にかなり弱かったのです。
水はけの悪い土地では、酸素を求めるためなのか、むやみに葉茎が立ち上がってしまいます。そして高くなって茎が自重を支えきれなくなると倒れ、重なり、蒸れ、枯れて、病気になるという悪循環に陥ります。
前述の通り、具合の悪い部分は掘り捨ててしまえばどうにでもなるのですが、土地の水はけが悪いと、長雨が降れば同じことを繰り返すだけです。
今考えれば、私は目先の2万数千円を惜しんで、無駄な労力を費やし、結果、植えた苗の多くを無駄にしていたのです。
実はこれらの情報に触れる機会は何度もありました。
実際に購入時に参考にしたHPやブログを後からよく見てみると、『水はけが悪いと徒長することがある』という記述がありました。
ですが、土作りをしているのだから自分は大丈夫だという思い込みと、踏んでも大丈夫なのだから、いざとなったら踏みつけて倒してやれば広がるに違いないという勝手な判断で、せっかくあった容易に手に入れられる先人の知恵を無視してしまったのです。
今日の教訓:
どんな環境でも大丈夫なグラウンドカバー植物や、何にでも効く土壌改良剤はありません。特に植物は生き物。予想外の生育をすることもあります。導入にあたっては、メリットよりもデメリットを見落とさず、しっかり確認しましょう。
そして、ネットで調べて決めるなら、高評価のものだけでなく、低評価の記事についてよく吟味してからにしたほうが、後々安心です。
注1:私がメーカーの仕様をよく読んでいなかったことが原因です。
注2:実はそれだけが原因ではないのですが、後々気付くことなのでここでは触れません。
クラピア代は計66,000円でした。
「参考になった!」と思った人。「あぶね-!!」と思った人。そして何かの弾みでこのエッセイを覗いてしまった人。約半金をドブに捨てた形になった筆者に評価などつけていってみませんか?