閑話 おすすめグランドカバー植物
評価項目の説明
暑:耐暑性=暑さにどれだけ強いか
◎:暑い方が元気 ○:問題ない △:夏眠する ×:枯死する
寒:耐寒性=寒さにどれだけ強いか
◎:寒い方が元気 ○:問題ない △:冬眠する ×:枯死する
陰:耐陰性=日陰にどれだけ強いか
◎:日陰でも元気 ○:問題ない △:弱る ×:枯死する
乾:耐乾性=乾燥にどれだけ強いか
◎:乾燥が好き ○:問題ない △:弱る ×:枯死する
湿:耐湿性=湿気にどれだけ強いか
◎:湿気が好き ○:問題ない △:弱る ×:枯死する
踏:耐踏性=踏みつけにどれだけ強いか
◎:踏んだ方が元気 ○:問題ない △:強くない ×:踏まれる想定ではない
成:成長性=どれだけ速く広がるか
◎:超ハイペース ○:ハイペース △:適度に ×:ほとんどひろがらない
経:経済性=苗の価格
◎:百円未満 ○:三百円未満 △:五百円未満 ×:五百円超
花:花の様子=花が咲くか、花期や美しさはどうか
◎:美しく花期が長い○:良い特徴アリ △:目立たない ×:咲かない・わからない
総合評価
A:オススメ B:条件が合えば C:気になるなら D:やめた方が無難
※参考:芝
暑:◎ 寒:△ 陰:△ 乾:◎ 湿:○ 踏:○ 成:○ 経:◎ 花:×
総合評価:A
以下の評価は筆者の感覚です。気候や土壌等によっても変わってくると思うので、あくまで参考程度に考えてください。
※写真は全て11月に撮影したものです。
クラピア
暑:◎ 寒:△ 陰:△ 乾:◎ 湿:△ 踏:◎ 成:◎ 経:× 花:○
総合評価:A
長所
暑さと乾燥に強く、成長も速い、踏めば踏むほど密になる。時々隙間から雑草が生えるが、目立つのですぐ気付く。単子葉類でないので葉がちくちくしない。目立った害虫がいない。かわいい花が咲くが、種はできないので変なところからいきなり生えない。挿し芽等での増殖が容易。
短所
値段が高い。シーズンに数回刈り込んでやる必要がある。日照不足と湿気で立ち上がる。水はけが悪いと枯れる。病気にかかることがある。種苗法で保護されているので、勝手に譲渡したり販売したりすると罪になる。冬枯れする。
所見
雑草対策、緑の絨毯という観点からは相当優れた植物。根から成長阻害物質を出しているとの話もあり植えてから本当に雑草が激減した。環境条件と価格が折り合えば是非!
サギゴケ(ムラサキサギゴケ)
暑:◎ 寒:○ 陰:○ 乾:△ 湿:◎ 踏:○ 成:○ 経:○ 花:○
総合評価A
長所
湿気に強く、成長が速い、多少の踏みつけには耐える。かわいい花が咲き、花期も非常に長い。背が高くならないので刈り込みが不要。冬は多少葉が黄色くなるが常緑。根が深くないので不要に感じたときの処理が容易。目立った病気もなく、ほとんど害虫もつかない。
短所
乾燥に弱いので夏場は散水が欠かせない。元々雑草のようなものなので、こぼれ種で変なところから生えてくることがある。根張りが強くないので、上で踏ん張るとはがれる可能性がある。
所見
水はけが悪い土地におすすめ。乾燥している時以外は手入れ要らずなのも良い。緑の絨毯としても結構優秀。常緑なので冬も緑を維持できる。病害虫の心配も要らない。
タマリュウ(リュウノヒゲ)
暑:◎ 寒:◎ 陰:◎ 乾:○ 湿:◎ 踏:○ 成:△ 経:◎ 花:△
総合評価A
長所
どんな環境でも問題がない(乾燥させすぎたり、日光に当てすぎたりすると葉焼けする程度)。多少の踏みつけは問題ない。花は目立たないがきれいな実がなる。常緑で目立った病気もなく、ほとんど害虫もつかない。
短所
地下茎で増えるが、成長はゆっくり。葉の生え方の関係で隙間からそこそこ雑草が生える。
所見
日陰の土地におすすめだが、日向にも十分対応できる。常緑なので冬も緑を維持できる。病害虫の心配も要らない。ただし成長はゆっくりなので、緑の絨毯にするためには、かなり密に植えてやる必要がある。また、芝ほど踏みつけに強いわけではないので注意を。
ディコンドラ
暑:◎ 寒:○ 陰:○ 乾:○ 湿:◎ 踏:△ 成:○ 経:○ 花:△
総合評価B
長所
湿気に強く日陰でも元気(※緑葉系品種。白葉系は直射日光と乾燥に強い)。成長が速い。背が高くならないので刈り込みが不要。常緑。手入れが不要で病害虫の心配がない。種を使用するなら『経:◎』。苗も株分けが容易。
短所
踏みつけにはさほど強くないので芝生代わりにはならない。耐寒性は微妙。北関東以北なら『寒:△』。花は咲くが今一。種でどんどん増えるので変なところから生えてくることがある。
所見
サギゴケより耐陰性と耐乾性は高そうな気がするが、それ以外は下位互換のように感じた。ネットでは踏みつけると密に茂るなどと書いてあるものもあるが、正直そんなに強いとは思えなかったので、植える際はあまり踏まれない場所に植えるなど注意を。
芝桜
暑:◎ 寒:◎ 陰:△ 乾:◎ 湿:△ 踏:△ 成:○ 経:○ 花:◎
総合評価A
長所
春になると美しい花が大量に咲く。暑さ寒さ、乾燥に強く成長も速い。目立った病害虫もない。
短所
日陰では上手く育たない。湿気にも弱いので、梅雨前に刈り込んで蒸れなくしてやる必要がある。多少踏まれても大丈夫だが、日常的に踏まれることは想定されていない。葉が杉のように尖っていて掴むと痛い。
所見
植える場所を選ぶ。日向の花壇等、普段歩き回らない場所に植える分には大変優れている。草取りなどのために踏み歩いても全く問題なかった。雑草はほとんど生えないが、芝桜自体がこんもりしているので、気付いたときには雑草がかなり大きく成長していることがある。また、草取りをするときには手袋をしないと手が痛い。年に数回の刈り込みが必須。品種によって開花時期や伸びる時期が違うので、別品種を混植するときは注意を。
ローマンカモミール
暑:◎ 寒:◎ 陰:△ 乾:○ 湿:△ 踏:○ 成:○ 経:○ 花:○
総合評価C
長所
暑さ寒さ乾燥に強い。リンゴに似た良い香りのするハーブ。花はハーブティーにできる(苦みがある)。常緑。踏んでも大丈夫。成長が速い。砂利の上でも根付いた。種なら『経:◎』。
短所
湿気が苦手、梅雨時は下の方が蒸れて汚らしくなる。花の時期はすぐ立ち上がるので刈り込みが必須。刈り込むと見栄えがあまり良くない。アブラムシやハダニが付くことがある。
所見
ハーブとしては一年草の『ジャーマンカモミール』に一歩も二歩も劣る。花が咲いて香りも良い芝生代わりに用いるならアリ。それなりに湿気に耐性はあるようだが、それにしても限界はある。湿気の多い日本では植える場所を選ばないと厳しそう。けっこう蔓延るので、思い切り整理してもあまり気にならなかった。根は深くないので整理はさほど難しくない。ワンポイントなら。
クリーピングタイム
暑:○ 寒:△ 陰:○ 乾:◎ 湿:△ 踏:△ 成:◎ 経:○ 花:◎
総合評価B
長所
乾燥に強い。爽やかな香りのするハーブ。料理にも使用する。踏んでも大丈夫。大変成長が速い。かわいい花が沢山咲く。種なら『経:◎』。病害虫に強い。
短所
カモミール系より湿気が苦手。成長が速いが下の方が蒸れて枯れるので刈り込みが必須。冬枯れする(暖地なら常緑の可能性もある)。踏んでも大丈夫だが、日常的に踏まれる事までは想定されていない。
所見
ハーブとしての用途はあまりなかった。どちらかといえば観賞用。蒸れや踏みつけの問題があるので、芝生の代わりは難しいように感じる。いくらでも伸びるので放置しておいても問題なかったが、表に出ている部分はきれいな緑色でも、その裏が蒸れて枯れているということもあるので、点検及び刈り込みは必須。一度根付いてしまえばおおざっぱに引き抜いてもすぐに周囲から広がってくれる。根は深くないので整理も難しくない。猫には効かないという話もあるが、我が家は効果があった。条件が合えば。
セダム(マンネングサ)
暑:◎ 寒:◎ 陰:△ 乾:◎ 湿:△ 踏:× 成:△ 経:○ 花:△
総合評価C
長所
多肉植物の範疇に入るので暑さ寒さ乾燥に強い。ただ、品種によって長所が違うので注意する必要がある。同じ条件でも勢いの良い品種強くない品種がある。
短所
日陰には向かず、多湿に弱い。踏んだら潰れる。品種によって短所も違うので注意が必要。花はいまいちな品種が多い。夏場に一気に成長する品種が多いが、基本的に成長はゆっくり。破片などから再生する品種もあり、一度植えると、イメージと違っても整理には時間がかかるかも。
所見
いろいろ品種があって面白いし、きれいなのだが、思ったようにコントロールできない。原因もわからないまましぼんでしまうこともあるし、予想以上に大きく成長することもある。寄せ植えならともかく地面に植えるならワンポイント程度にしておくのが無難。品種によって特性も大きく異なる感じなので、特に地植えする場合は品種選択も事前に考えておく必要がある。
ヒメツルソバ(ポリゴナム)
暑:◎ 寒:○ 陰:○ 乾:◎ 湿:△ 踏:○ 成:◎ 経:○ 花:◎
総合評価C
長所
暑さ寒さと乾燥に強く、成長も速い。病害虫に強い。かわいい花が咲き非常に花期が長い。踏みつけに強いわけではないが、成長が速いのですぐ復活する。増殖も容易。花は少なくなるが半日陰でも平気。
短所
少し丈が高くなる(15cm程度)。種でどんどん増えるため、思いもかけないところから生えてくる可能性がある。湿気は苦手。
所見
花は沢山咲いてくれるし、すぐに広がってくれるのだが、こぼれ種でいくらでも増えるので、こまめに引き抜くなどしてコントロールしてやる必要がある。これ自体が雑草のようなものなので、他の雑草を淘汰してくれるため雑草対策には良いかもしれないが、芝代わりにはならない。はっきり言って用途を選ぶ。
アジュガ
暑:○ 寒:◎ 陰:◎ 乾:△ 湿:○ 踏:× 成:○ 経:○ 花:◎
総合評価A
長所
春先にきれいな花が沢山咲く。また、春から夏にかけて急激に成長する。品種も多く、葉や花の色も様々で、他品種混植が楽しめる。常緑。日陰にも強い。株分けも容易。病害虫に強い。
短所
秋冬は成長が止まるので、なかなか広がらない。また、踏みつけることは想定されていない。花が咲くとチュウレンジバチ(※刺さない)というバラの大害虫が押し寄せてくるので、バラの栽培をしている場合は注意(※アジュガで集めて捕殺するという作戦もあるらしいが、何もしないなら無意味)。ちなみにチュウレンジバチはアジュガには全く害をなさない。
所見
葉の色も美しいが、春に咲く花は見事。チョコレートチップという小葉の品種は花穂が特に多かった。頑健度は大葉のレプタンスの方が優れる。踏むことを前提とした植物には見えないので、一度ならともかくずっと踏み歩いていると、おそらく枯れる。暗めの半日陰でも元気に生育するので、人が歩き回らないシェードガーデンのグランドカバーとしてはかなり優秀。逆に、日向で乾燥した場所は向いていないように感じた。
ユキノシタ
暑:△ 寒:◎ 陰:◎ 乾:△ 湿:◎ 踏:× 成:○ 経:○ 花:○
総合評価C
長所
食用。天ぷらにすると旨いとのこと。昔は薬草としても用いられたらしい。相当な日陰でかなり湿った土地でも元気に生育する。常緑で冬季に元気なので、冬の庭を賑わわせてくれる。病害虫の心配がない。
短所
春にランナーを伸ばして一気に拡大するが、そのランナーが真っ赤でちょっと気持ち悪い。30cmぐらいの花穂を出して花を付けるがそれほど大きな花ではないので『△』でもいいかも。大きくなった葉は初夏に枯れてみすぼらしくなる。踏みつけることは想定されていない。
所見
春には庭を占領されるのではないかと思うほど旺盛に拡大したが、初夏、花が咲くころには完全に勢いが止まり、大人しくなった。そして、大きな葉が枯れ、目立たなくなって夏秋を過ごし、寒くなって拡大を始めている。常緑だが、こんなサイクルなので、冬に庭が寂しくなるのを抑えたい、日陰の庭にアクセントがほしい、こんなケースなら植えてもいいかも。
ワイルドストロベリー
暑:◎ 寒:◎ 陰:△ 乾:○ 湿:△ 踏:× 成:○ 経:○ 花:○
総合評価B
長所
実が食用。春から初夏にかけてが旬だが、秋とかにもちまちまと実を付けている。葉もハーブティーになる。ランナーを伸ばして勢いよく広がる。耐暑性耐寒性ともに強い。花は小さいが花期は長い。
短所
日陰や湿地には向かない。踏みつけることは想定されていない。蒸れてくると病気にかかりやすいので葉の整理は必須。かなり長くランナーを伸ばすので、注意が必要。実はナメクジの食害に会いやすい。
所見
イチゴの原種のような植物で、小さいが甘い実をかなり長く収穫できる。病害虫や鳥の被害はあまりなかったが、唯一ナメクジが湧くのには困った。また、日陰には向かない。ランナーを伸ばして隣家の庭にまで侵入しかけたことが何度もあった。根が深くないので抜くのは難しくないが、そういった観点からは注意が必要。ネットではジャムにおすすめと書いてあるが、ナメクジ等の食害を避けてジャムを作るほど収穫するには相当の株数が必要(※我が家は4株植えたが1年目はジャムには到底足りなかった)。用途を考えて本数を選択すべき。
ニオイスミレ(スイートバイオレット)
暑:○ 寒:◎ 陰:◎ 乾:○ 湿:△ 踏:× 成:○ 経:○ 花:○
総合評価C
長所
甘い香りのするハーブ。冬から春にかけてかわいい花が咲き花期も長い。常緑でそれなりの速さで成長する。耐寒性と耐陰性が強い。
短所
イモムシやナメクジの食害に会うことが多い。思ったより花は咲かなかった。夏季は直射日光に当てると葉焼けする。踏まれることは想定されていない。
所見
虫にとって美味しいのか、周囲の草花はなんともないのに、これだけ葉っぱに穴が空きまくりということが多くあった。何と3月からヨトウムシに食われる(葉っぱを裏返したら出てきたw)という快挙! 冬の日陰のアクセントになる植物だが、きれいに育てるためには、枯れ葉摘みと薬剤散布が欠かせない。それが苦でなければ植えても良いかも。
ニリンソウ
暑:△ 寒:△ 陰:◎ 乾:△ 湿:◎ 踏:× 成:○ 経:○ 花:○
総合評価C
長所
春から初夏にかけて可憐な白い花を付ける。食用。湿った土地を好む。地下茎を伸ばして良く広がる。
短所
夏冬は休眠する(らしい)。想定していなかったところから生えてくることがある。直射日光に当てると葉焼けすることがある。
所見
山菜として価値が高い植物だが、猛毒のトリカブトに酷似しているため、山野で発見したときには花の付いていないものは取るなと言われる。庭に植えたものは新芽のうちから問題なく食べられるので、安心した食べたい人にお勧め。夏は休眠すると言われるが、我が家のニリンソウはすごい勢いで蔓延って、整理に困った。抜いても抜いても生えてくるのでもっと食べれば良かったと反省している。
ラムズイヤー
暑:○ 寒:○ 陰:△ 乾:◎ 湿:△ 踏:× 成:○ 経:○ 花:○
総合評価D
長所
ハーブ香りのある葉は、柔らかく非常に手触りが良い。大きく成長する。
短所
湿気に弱く、湿度が高いと根腐れを起こす。また、枯れ葉は病気の元なのでこまめな整理が必要。風通しが悪いとアブラムシが付きやすい。すぐに大株に成長する。花穂も背が高くなるので見通しをもって植える必要がある。踏まれることは想定されていない。
所見
ハーブと称しているが、ハーブとしての用途はあまりない。唯一手触りが良いことぐらいが取り柄だと思う。グランドカバーとして本に載っていたので買ってみたが、グランドカバーになるのは丈が低い品種で、通販でもほとんど見かけない。普通に販売されている品種は高さ50(花穂は80)cmにもなるので一般的なグランドカバーとしては不適格。単品で植えるならアリ。
マツバギク
暑:◎ 寒:○ 陰:△ 乾:◎ 湿:△ 踏:× 成:○ 経:◎ 花:○
総合評価C
長所
多肉植物の範疇に入るので暑さや乾燥に強い。寒さにも特段弱いようには思えない。その名の通り、初夏にはピンク色のきれいな花が沢山咲く。こぼれ種で勝手に増える。そして夏場に一気に成長する。根は思ったより深いが、根からは再生しないので整理は難しくない。病害虫の心配はない。普通に買ったら『経:○』だが、我が家では勝手に生えたものを増やしているだけで一度も買ったことがないので『経:◎』
短所
日陰だと勢いが弱い(普通に生育はする)。多湿にも弱く、踏んだら潰れる。こぼれ種で勝手に増えるので、思わぬ所から生えて、気が付いたら他の植物を圧迫するほど大きくなっていることもある。多年草だが、生やし続けていると茎が硬質化して見栄えが悪くなり弱ってくるので整理が必要。
所見
手間がかからず、全く水や肥料を与えなくても勝手に増殖するので、ある意味便利。前に住んでいた借家の庭では、勝手に生えてくるこれだけを残して、あとの雑草を刈り取ることで緑の絨毯(※潰れるので上は歩けない。跳び石が必要)を作っていた。ただ、1年目は良いが、徐々に茎が木質化してくるので手入れをしないと見た目が悪くなる(※こぼれ種でいくらでも生えてくるので、木質化してきたら抜いてしまうという手もある)。思った通りに増殖するとは限らないので、一部分ならともかく、これで広い範囲を覆うのは相当な計画が必要。ロックガーデンとかには良いかも。
次回は、本編に戻ります。
第16話「動物たち」(2) また動物が登場しますよ。何が出てくるかはお楽しみに!




