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第13話 裏庭の土壌改良工事

 11月某日。とうとう最後に(※本当は物置の裏がちょこっとだけある)残ったエリア、街路から見えない部分の3坪ほどの整備に入ることとなりました。


 このエリアは家屋の西北西側に当たるのですが、隣家の家屋には近接していないため、なぜか日当たりは悪くありません。当然、西日が中心なのですが、場所によっては午前中の比較的早い時間帯から日が差してきます。


 ただし、土壌の条件は最悪で、家を購入した当初からかなり固く締められていました。その固さは尋常ではなく、何も手を加えていないのに半年以上雑草がほとんど生えなかったほどです。


 当初の計画では、全部を掘り返して土壌改良し、クラピアで全面を被覆する予定したので、メインで南南西側の土壌改良を進める傍ら、こちらの西北西側も溝を掘るようじわりじわりとに土壌改良を進めていました。そして、夏前には、幅にして1m弱分のクラピアの被覆エリアができあがっていました。

挿絵(By みてみん)

※当時はこんな感じでした




 ところが、その後、とんでもないことが判明しました。例の梅雨の長雨でわかったのですが、このエリアは周囲より低く、前庭以上に水がたまりやすかったのです。

 そのうえ、固い地面の影響か、日が当たっている時間は前庭部分より明らかに長いはずなのに、水が引くのが明らかに遅い。その結果、水に浸かってしまうエリアでは、せっかく植えたクラピアが、枯れたりひょろひょろになったりして、結構な割合で駄目になってしまいました。


 例によって溜まった水を流す場所はありません。つまり、整備を行うにあたっては、雨が続けば水が溜まること考慮に入れておかなければならないということになります。


 これに対する解決策は、今度も遊水池作戦でした。具体的には、庭の約半分を掘り下げ、そこから出た土を、残った側に盛土して花壇を作るというもので、言ってしまえば、今まで行ってきたことの踏襲です。


 ただ、前庭側と違うのは、こちらの方が面積が広いので、遊水池部分に手を加えやすいことと、日当たりが良いので、植える植物の種類であまり悩まなくてもよいことです。




 ということで、今回は思い切って、遊水池部分には湿地帯でも生育できる植物を植えてみることにした。


 具体的には、今回も、防草シートを敷いた後、いくつか穴を開けておきます。外縁部の穴には堆肥をすき込んで、湿原でも生育できるニッコウキスゲを植え、中央部の穴は大きく掘り下げ、睡蓮鉢を埋め込んだ上で、鉢の中に菖蒲や杜若かきつばたといった抽水植物を植えることにしました。


 そして、レイズベッドとして盛土をする部分ですが、隣家側に生け垣を作り、遊水池側は家庭菜園にしてみようと考えました。


 生け垣の候補はフェイジョアです。フェイジョアは南米原産の常緑低木で、実だけでなく花も食用となります。そして、氷点下10度程度まで耐え、目立った害虫や病気もないというなかなか優れた果樹です。

 実は、フェイジョアは前庭の築山に植え付ける木の有力候補でした。しかし、前庭部分は後背地に半日陰エリアを抱えています。フェイジョアは常緑樹のため、日照時間の短くなる冬の日光を遮る原因となることから、落葉樹のポポーにその座を譲ったという経緯がありました。

 生け垣用に密に植えるということを考えると、実の収穫は期待できないでしょうが、とりあえず、実がなったら儲けぐらいの感覚で考えることにしました。


 また、水はけが悪い粘土質の土壌ということで、庭造りを始めた当初から家庭菜園は諦めていたのですが、レイズベッドにするので水はけが良くなりますし、元々日当たりも良いですから、思い切ってチャレンジしてみることにしました。

 何を植えるかは未定ですが、とりあえずいろいろと調べてみようと思います。



 工期は、穴掘り、土ふるい、改良材を投入するという流れの土壌改良に5週間。土を移動し、石積みを組んでレイズベッドを形成したり、池部分を形成したりといった作業に2週間。苗の植え付けに1週間。合計2ヶ月で計画しました。この計画を立案したのが11月でしたので、1月半ばには作業が完了し、庭の整備がほぼ終了している計算になります。





 さあ、計画もできました。工事開始です。


 このエリアは結構広いく、一度に進めるのは無理がありますので、工区を4分割して進めることにしました。手順は以下の通りです。


①ブルーシートを敷き、その上に土を掘り上げる。なお、掘り下げるのは石が出土しなくなる砂質の層(地下約60cm)までとする。


②掘った土は、一度『』に載せ、足で踏んでなるべく細かく砕く。その際、見つけたガラやゴミは種類別に別の育苗箱に入れて分別しておく。


③砕いた土を電動ふるい機にかける。なお、ふるい機は掘った穴の上(または中)に設置し、細かくふるった土は自動的に穴の中に戻るようにし、残ったガラや大きめの土塊は、育苗箱(上記の箱とは別の物)にためていく。


④ガラや土塊で育苗箱が一杯になったら、育苗箱に溜まった土で再度②、③の作業を繰り返す。


⑤電動ふるい機に3回通した残りの土は、通常のふるいに入れ、金網に手でこすりつけるようにして小石にこびりついた土を落としたり、まだ残っている土塊を潰したりして仕上げのふるいをする。


⑥土壌改良材を投入し、細かくなった土と混ぜ合わせる。


⑦以上の作業を、山がなくなるまで繰り返す。


⑧穴が埋まったら、上にブルーシートをかけて周囲にペグで押さえる。(※猫対策)


⑨作業で出た残留物は、以下のように処分する。

 プラスチック片、貝殻、スギナの地下茎等 → 燃えるごみ

 コンクリート片等 → 土嚢袋に保管。後日業者に処分依頼

 石  → 洗って砂利の入っていた袋で保管。後日敷砂利に

 砂利 → 洗って分別。

   → 小石は砂利の入っていた袋で保管。後日敷砂利に

    → その他はゴミ又は、土嚢袋へ


 さあ作業開始です。私はスコップを突き立てました。














 最初のエリアを掘り上げ始め、しばらく作業をしているうちに、気が付きました。


「これ、いつまでたっても掘り終わらないんだけど、もしかして、ここ、相当広くないか?」


 気がついた私は、メジャーを持って、前庭の築山に向かいました。そしてその寸法を測って愕然としました。


 私のイメージでは、裏庭の面積は、前庭の築山部分の1.5倍程度のはずだったのですが、よくよく計算し直した結果、実際の面積は2.5倍もあったのです。



 確かに土ふるい機の登場で、ふるいの作業効率は3倍になりましたが、その他の作業効率に変化はありません。しかも、このエリアの土は庭の中でも有数の硬い土です。継続して作業を続けることを考えると、1日に作業ができるのは、せいぜい当初の予定の半分であることに、ここで初めて気が付きました。



 この結果、作業初日にして、いきなり作業日程が倍になるという事態に陥ったのでした。












 その後も苦難が続きます。


 元々水が溜まりやすい土地だったため、表面はともかく地中では土が湿った状態になっていました。したがって、掘り上げた土をふるい機にかけても、すぐ目が詰まってしまい、機械のポテンシャルを十全に発揮できません。この状態を改善するために、土を掘り上げた後で、数日間の乾燥期間を設ける工程を入れることになりました。



 余計な工程が加わったせいでさらに予定が後ろ倒しになりました。




 また、穴を掘っていると、スギナの地下茎が出てくるわ出てくるわ、見た目は黒いので枯れているようにも見えますが、切ってみると中には白い維管束があり、元気に生きていることがわかります。ちなみに、スギナの地下茎には塊茎というものもあって、これが土に混じると見分けるのは非常に困難です。土をふるう際に見逃してしまうと、土中で発芽し、せっかく土壌改良した場所がスギナの野原になってしまいかねません。


 そんな理由から、慎重に地下茎の分別を進めた結果、時間を取られて、さらに予定が遅れました。




 そして、石洗いです。ニトリル手袋を結構お高い極厚手の物に変えた結果、下手をしたら30分に1枚ペースで破れていた手袋がほとんど破れなくなったため、手指のへのダメージがなくなったのは幸いでした。


 しかし、育苗箱一つ分の砂利を洗って分別するのに20分近くかかります。また、一度穴を掘ると、事前にかなり分別を進めていても、育苗箱5~6杯分の砂利が出てきます。つまり、石洗いにかかる時間は1回につき、だいたい2~3時間ということになります。


 さらに、洗っている間は、ずっとしゃがんで作業しなければいけないので、腰へのダメージはかなり大きいものになりました。


 腰をやってしまっては元も子もありませんので、健康の維持のため、さらに予定が遅れることになりました。





 このままの調子で作業を続けていたら、作業終了は来春どころか初夏になってしまうかもしれません。


 ここに至って防草シートの上に敷くための小砂利の分別はやめることにしました。コンクリート用の砂利は20kg入り一袋200円以下で手に入ります。砂利洗いは作業時間に加えて水道代もかかりますから、冷静にみれば、どう考えても割に合わない作業です。


 家にあるのにわざわざ買うのはもったいないという意識で行っていましたが、さすがにここまでの無駄は許容できません。物置回りの犬走り用として敷くための石の分別・洗浄は続けますが、小砂利はそのまま土嚢袋に詰め込んで、処分することにしました。



 この結果、洗浄にかかる時間が1/4程度になり、作業の遅延は多少解消されました。

挿絵(By みてみん)

※整備中の裏庭の様子

 上の方の黒い箱に入っているのが出土したガラです





 休日が雨で作業ができないことはあらかじめ想定し、長めに予定を組んでいたのですが、これらは全くの想定外でした。このような想定外の出来事が頻出した結果、土壌改良が終わったのは、2月の上旬。作業開始から3ヶ月弱が経過していました。



今日の教訓:

①計算は目分量ではなく、きちんと計って行おう。


②作業中予期せぬ事態が発覚することもあります。計画は余裕をもって立てておこう。





 次回は第14話「裏庭の整備」です。なかなか裏庭も手間がかかっております。どうなりますことやら……。お楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[一言] スギナ本当に厄介。 石灰撒くといいとか聞いたけどそんなことない。 あいつら気を抜くとすぐに生えてくる。 目算を誤ると大変ですね…。 作業量が違うとモチベーションも変りそう。
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