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第11話その2『喧嘩:妄言とモウシュウ』

※この『物語』は『フィクション』です。

※それなりに『大切にしたい』気持ちで読んでください!



「ところでサイムさん、いつ能力に覚醒したんですか?」

「いや、じつは戦闘する前から使えてたんだよ。

今まではコーヒーとミルクを混ぜるためだけに使ってた。」

「ここにきて衝撃の真実!」

 そう、俺は何気なしに使ってた特技が、実はとんでもない能力だったのだ。

まぁどうやってこの能力が発動しているのか、俺もよくわからないんだけど…。

ただあの場でがむしゃらでやったら、本当に発動してしまって。今にして思えば相当無茶したと思う…。うん…。



「でさ、あのテグラの悔しがりぷり!アルゴニックにも見せてやりたかったねぇ~」

「…テグラ、蜘蛛の怪物、究極の歯車………

ツヴァイ・インテグラル…。」

「どうしたんだアルゴニック?」

「タランチュラか…まさか、生きていたとはな。

これで奴を倒したのは4,5度目だな。」

「4、5度目!?」

「『こっち』で1,2回【あっち】で3回ほど。だな。

だいたい『力』のバカの手柄だが…

また懐かしい奴が復活したな。

ということは…サンアが黄泉帰ろうとしてる。可能性が高いな。」



 そういえば…サンアって?

「なぁ、テグラが言ってた、魔神サンアってそんなにやばいのか?」

「ああ、創造主である俺と互角かそれ以上の力を持つ。

昔は俺が捨て身で奴を封印した。

だがその封印が解けかけているやもしれん。」

「アルゴニックと同等かそれ以上の力を持つ存在か。そんなのいるわけないだろ。」







「……サンアは俺の天敵であり、どこまでも人間を憎みきっている。

性格は残酷で冷酷。どこまでも人に絶望を強いるのが好きな存在。

俺が絶対に許せないと思った相手だ。」

「ふーーーん。」

 まぁあとはこいつにまかせればいいや。歯車さえ集めればきっと何とかしてくれるさ。



「究極達四体が動いているってことは状況は思った以上にまずい。

早く俺の家族を探さなきゃいけない。彼らを探し、奴に対抗しなくてはならねぇ。」

「なーにこのペースで行ったら、すぐ見つかるでしょ!

すぐに見つけて俺らはお前に願いを叶えてもらって、

お前は魔神とやらを封印しなおす、

そうすれば完璧だ!」

「…はたして今回は、そんなにうまくいくもんなんだろうか…」

「大丈夫、大丈夫。いざとなれば俺たちもいるし。後方支援くらいはできるぜ。」

「……そうだよな。まぁ大丈夫かな。今回も。」





「そーそー。何事も大丈夫だって思っとけばいーんだって。

あ、そうだアルゴニック。お前にちょっと聞いときたいことがあったんだ。」

「お、なんだなんだ?俺に聞きたいことがあるなら、どーんと言ってみなさい!」

「いやな、テグラが俺の願いだけは叶えられないって言ったんだよ。」

「はぁ?俺に叶えられない願いがあるだって?

俺に叶えられない願いは相当数が絞られてくるぞ。

一体その願いってのは何なんだ?俺にばーんと!言ってみなさい!」



 俺は意気揚々と答える。

「ああ、俺の叶えたい願いってのはな『死んだ人を生き返らせたい。』っていう願い。

あとその生き返らせた人物を『不老不死』にしたいっていう願いなんだけど。」





▼▼()。」



▽▽▽▽▽▽▼▼



「あの…その人って誰なんですか?」

「あたしも気になってたんだけど…。」

「ハナビも知りたーい。」

「「▼▼()。」」

 そうか、女子たちは知らなかったな。ユウジとソライは言うまでもないけど。



「その死んだ人物っていうのがさ。俺の昔の彼女なんだよね。」

「ええぇ!?サイムさん彼女いたんですか!?」

「意外だわ~。あ、ハナビ、醤油取って頂戴。」

「はいユミ先生。

サイムさん、その彼女さんってどんな人だったんですか?」

 ユミはハナビから受け取った醤油を焼き魚にかける。



「ん?ああ、ヒトメのことか。

あいつはなー俺にとって最高の女だったよ。つっても14歳の時のだけどな。」

「……そぅ…なん…ですね…。」





▼▼()。」

 ユウジは少し微妙な表情で口元が笑う。

「まぁアルゴニックさんと、私たち女性陣は初めて…聞きますし、お、教えてくださいよ。

その…か、彼女さん。私気になります!」



▽▽▽▽▽▼▼▼



「まぁそんな、たいした話じゃないんだが…

ヒトメは俺の孤児院に5,6歳くらいのころに、突如やってきたんだ。

そこから、まぁ当然いたずらを仕掛けるわな。

だがそのいたずらを簡単に見破ってこう言ったんだ

『もっとうまく仕掛けなよ。私をワクワクさせるような、そんないたずらを。』ってさ。

喧嘩してもすぐに仲裁に入るし、

泣いている子がいたら慰めて。

本当に笑顔が素敵な奴でさ。」



「…強い人だだった。」



「サイムにはもったいないできた女でね。

僕らは彼女にこぞって、いたずらを仕掛けては

逆にいたずらを仕返しされたり、茶目っ気があった……。」

「そして勉強もできた。

あいつ、不良の俺らに動じることなく、勉強を教えたり遊んでくれたりしたんだよ…。」

「……へぇ…なんだか素敵な人だったんですね。」

「あんたたち昔っから馬鹿やってたのね。」

「ヒトメさん。私も会ってみたいなぁ…あ、ユウジさんおかわりです。」

「ハナビ。これでご飯三杯目だよ…」

 ユウジがご飯をよそう。






「まぁすぐに会えるさ。そん時になったらまた一緒に馬鹿できる。」

▼▼()。」

▼▼()。」

「ち、ちなみにですけど!どちらが告白してきたんですか!?」

「ん?ああ、あいつのほうからだよ。中二のころ花火がきれいな夏のお祭りの時に

神社で告白された。」

「わぁロマンチック。」

「その肝心なシーンを僕とユウジは見逃してしまったんだよねぇえええええええ。」

 ソライがどこか悪戯を仕掛けるように、口元をゆがませる。



「ソライお兄ちゃんはデリカシーというものがありません!」

「そうよ。女の子が勇気をもって告白するっていう時に、あんたら友人A、Bは余計よ!」

「「がーん。」」



▽▽▽▽▼▼▼▼



「そ、それであの!なんて言われたんですか!?」

「ニッちゃん食い気味すぎだよ。あなたのことがずっと好きでした。

心の底から愛しています…だったっけ。」

「ちょっと重いわね。」

「そうか?俺はこう言われてめっちゃうれしかったんだが。」

「「▼▼()!」」




▽▽▽▼▼▼▼▼


▼▼()!」

「ねぇサイムさん。サ、サイムさんはヒトメのどこを好きになったんです?」

 ニッちゃんは顔が赤くなりながら少し気になるようだ。

「長い髪。かわいらしい笑顔。明るい性格。涙なんて見せない強い性格。」

「そしておなかと…」

「だからおなかは今関係ないし、そのころはおなかはどーでもよかったよ!!

大体、あいつの裸を見たのはガキの頃あいつが来たばっかのころくらいだぞ!!」

「きゃーーー裸を見たんですか!?」

「エッチ!変態!」

「いや、子供だったからな!」

▼▼()!」



「まぁ俺は今でもあいつのことが好きだ。好きだった、ではなく好きなんだ。

あいつが俺にワクワクすることを教えてくれたし、

喧嘩しか能がなく、馬鹿だった俺をマシに変えさせてくれた、

明るくて茶目っ気があって、悩み事があったらすぐに相談できるし相談される。

今でも俺は愛している。」

「…そう、なんですね。」

「ニッちゃんともいい友達になれるさ。きっと永遠に別れることが惜しくなってくる。

そんなパートナーになると思う。」

「あーでもよサイム。あいつって確か、冒険職嫌いだったよな。

冒険なんかに命を懸けたくないとか言って

生き返らせた後、職はどうすんだ?」

「やめる!」

「案外、きっぱりと言ったな。」

「だって俺、あいつが嫌がることやりたくねーもん。職をやめて二人でなんかやっていくさ。」

▼▼()!」

「差し支えなければ出すけど…いったい…どうして…」




▽▽▼▼▼▼▼▼



「……病気…末期の心臓癌でな。

検査を受けた時には肺とかにも転移してた。

…あいつの死に際は本当に哀しかった。

ずっと俺の手を握っていて

だんだんと衰弱していって言いたいことを全部言って。

最後に愛してる…って言ってくれたんだ。」

「あの時はサイムも大変だったよな。」

「そのあとずるずると中卒になってな。」

「今は大丈夫なの…?」





「ああ、大丈夫だ!あいつが生き返ってしかも不老不死になれば

もう二度とこんな思いをしなくて済むからな!

いや、あいつに会える日が楽しみだよ。」



▽▼▼▼▼▼▼▼



「サイム。」

「なんだ?アルゴニック?」





 俺はアルゴニックに突如のごとく、きついビンタをされる。



▼▼▼▼▼▼▼▼



「信じたくないのもわかる。だけど、俺は『▼▼(さっきから)!』言っているよな。

その願いは叶えてはならない願いだ。

叶えることができない願いだ。

お前が一番わかっていると思っていた。違ったようだ。

周りが見えていない一番信用がない俺が言うと、矛盾しているんだろうけどよ。

いい加減、目を覚ませ。」



 …。



 ――…▼▼▼▼▼▼(聞かないよう)にしていたのに。



 …信じられない。信じたくない。信じない。

嫌だ聞こえない。聞きたくない。逃げたい。

「…サイム、お前には悪いけどできないんだ。

人を生き返らすこと。そして不老不死というのは

俺にはできないんだ。」




▼▼▼▼▼▼▼▼



「は?」

 頭が真っ白になりそうだった。

できない?

何が?

生き返らすのができないだって?

「お前、もういっぺん、言ってみろ。何ができないって?」

 唇が震える。怖い。



「俺は世界を創造した創造主だ。

だが俺は『世界』を創造しただけで『人間』を創造したわけではない!

人間はいわば俺の世界に勝手に生まれたイレギュラーの存在にすぎない。

人間は勝手に生まれてきた偶然の産物、そんな偶然の産物である人間を、

そんな人間を一々生き返らせることができるほど、俺は器用なことはできん。」







 ――その言葉で俺の何かが壊れた。





「…だけどお前は『なんでも』願いを叶えるって言ったよな!!」

「俺は『創造者たる俺の叶えられる範囲』とも言ったぞ!ちゃんと思い出せ。」

「ふざけんな!!なら生き返らせるように努力をしやがれよ!!」



「それができないから言ってんだよ!俺は万能ではない!

死にかけた人間を助けることは、寿命でない限り『医』の歯車があれば大体できる!

だがな死とはある種の【概念】だ!【概念】を捻じ曲げることは容易ではない!

概念を創り出す、概念を書き換えるという行動ができるのは【Id】がないと無理だ。

だが俺のIdでは、せいぜい簡単な無機物を生み出すのがやっとだ!

@を使ってみたが無理だった!何をどうあがいても何も変わらなかった!

【死ぬ】っていうことへの【命の反逆】という概念は覆らなかった!

例え動いたとしても失敗してアンデットになるのが世の常だ!!

そいつは生きてないんだよ!!蘇ったそれは、魂も心もない肉体でしかない!

俺でもできないことはあるんだ!それが死という絶対的な概念の解だ!!」




 ……この野郎が!!

「テメェ嘘ついてたんじゃねーか!!!」

「嘘はついてない!!聞かれなかったから答えようがなかっただけだ!!!

それに命はな!そんなに簡単に扱っていい代物ではない!!

【生きる】っていうことを理解しないお前のような馬鹿の

下らん願いなんか、死んでもやってたまるかよ!!!」

「あぁん!?ふざけんな!!!ふざけんなよテメェ!!!

じゃあ何のために俺はここまでやってきたんだよ!!!」

 俺はアルゴニックにつかみかかる。





「サイム!そのくらいに…」

「うっせぇ!!黙ってろ!!」

「仕方がないだろ!!!!できないものはできないだよ!!!!」

「ガタガタうっせぇよ!!やれよ!オイ!!ヒトメを生き返らせろよ!!!

くそったれがああああ!!!!」

「お前、命を軽んじたな?

その考えの軽薄さへの後悔を持って【生きる】のが今の俺達だ!

いい加減それに気づけボケがァ!!!」

 アルゴニックは俺を突き放す。



「俺の怒りも知らないで、テメェには人間の心がないのかぁ!?あああん!!!?」

「………………ああ、無いね!!

俺は…どのみち人の形をした、否、ただのバケモンでしかねぇんだからよ!!」



▼▼▼▼▼▼▼▼



 ………その言葉を皮切りに俺達は怒りに包まれた。

とても浴びせてはならない言葉を互いに言いあった。

とても語るべきではないひどい言葉を言いあった。



 ………どのくらいの時間がたっただろうか…。

取っ組み合いの喧嘩はエスカレートしていった。



 ――………………………周りのことを視ずに。



▼▼▼▼▼▼▼▼



「もういい加減にしてくださいッッ!!!!!!!」




 我を忘れていた俺達。



 そんな俺達にニッちゃんが俺とアルゴニックの間に割って入って止める。

「もう…いい加減にしてください……」





 ――ニッちゃんは泣いていた。





「二人ともいい加減にしろ。周りをよく見てみるんだ。」

 俺はユウジの言われた通りに周りを見てみる。



「ひっく…えっぐ…」

 ハナビは涙がなく泣いていた。



「…」

 ユミは泣いたハナビを抱きかかえながらじっとこちらを睨んでいた。



「…………すまん…サイム…」

 ソライはそう言うと、こちらを一瞬見て目をつむる。



「うぅう。」

 ニッちゃんは割って入ってうずくまり。静かに静かに涙を流していた。





 そして周りは俺とアルゴニックの取っ組合いのせいで

食べかけのごはんや割れた食器がそこらへんに投げ出されていた。

「サイム、アルゴニック。お前らは今、最もしちゃあいけねぇことを二つした。

それは一つが食べ物を粗末にしたこと。そしてもう一つは、女の子を泣かしたことだ。」

「それがどうしたんだよ。」

「口答えすんな。お前らは今、オレの中で最低の馬鹿になり下がった。」





「…」

「二人とも出ていけ。」

「俺は…」

「いいから出ていけつってんだよッ!!!!」

「はぁ、なんで俺がそこまで言われなきゃなんねーんだよ、ユウジ!!!

俺がいなきゃみんな今頃、テグラと戦ったとき死んでたん」





 ――…………パシッ…!




 と俺の頬に痛みが走る。



 俺の言葉を聞いたニッちゃんは立ち上がって、弱弱しくビンタしていた。



 ニッちゃんは震えた声で

「そ、その節はどうもありがとうございました。

だけど、もう出ていってください。

あなたを見ていると、あの戦いのときの苦しみより心が苦しくてたまらない。

だから出ていってください…!」









「…あーそうかよ。こんな会社創るんじゃなかった。

じゃあな。とっとと潰れちまえ。」

 俺はもう自分がどんな顔をしているかわからないが。

こんな哀しい思いを振り払うようにこの場を去る。





「俺も出ていくわ。

……別にお前らに頼まなくても一人でやっていく。あばよ。」

 俺らは雨が降っている中、傘も持たずに

玄関から出ていき、そのまま反対方向の別々の道を歩いてく。



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~ノヴァアージ知恵袋のコーナー~

~サイムは彼女を心から愛していたぞ!~

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