第8話その1『鉄の道中_1_通際橋』
※この『物語』は『フィクション』です。
※それなりに『光を探す』気持ちで読んでください!
「ねぇサイム。」
俺は隣にいた彼女のほうを見る。
彼女は昔と変わらない姿のままで、俺を見つめ返す
“どうした?”
「永遠の命ってあると思う?」
“さぁな?案外あるもんなんじゃねーの?”
「もしさ、永遠の命を与えられたらサイムはどうしたい?」
“…そーだな。俺なら、特に何もせず一生だらだらぐーたらと過ごすかな?
まぁお前と一緒ってのが前提だけどな
だってお前がいない人生なんて俺、嫌だもん。”
「…そっか。…私はね。永遠の命なんていらない。
人として死ねたらそれでいいの。」
“なぜ?”
「だって永遠も生きていたらつらいでしょ?
宇宙が終わっても始まっても、永遠を生き続けるって。」
“ふーん。”
“…なぁなぜ突然そんなことを聞くんだ?”
「…最近ね…。誰かに同じ質問をされたの。
その人は、出会ったばかりの私にその質問をしてきてね。
初対面だったけど、とても不思議な人でね。
私達がさ、こうやってずっと一緒にいて。もし、死んじゃって蘇って。
それをずっと繰り返して、永遠に生きていけたとしても
それっていいことなのかな…って。その人と話していて思ったの。」
”俺は…いつでもお前と一緒にいれたらいいよ。
こうやってダラーんと昼寝でもしてさ。
深くは考えない!あははは!”
俺は笑いながらゆっくりと後ろへ仰向けになる。
「……そうね。」
??
なぜ?悲しそうな声なんだ?
“…あ、そうだ!今度の夏祭り、一緒に行こうぜ!”
「…うん。
…また『金魚掬い』しよ。
一緒に行こう。
……ね。サイム。」
……なんでそんな笑顔…。
▽▽▽▽▽▽▽▽
俺は目を覚ます。
…そうだよな、また一緒に行けるもんな。
大丈夫、大丈夫だ。
願いは必ず叶う。
もう思い出じゃない。
今度こそあいつの愛を、取り戻すんだ。それだけじゃない。
何ならあいつを…。
…そうすれば同じ過ちは繰り返さないで済む。
二度と…あんな思いをせずに済む。
…そうだな。そうしよう。
そうすれば…こんな、こんな思いをせずに済むんだ。
もう一度、あいつに会うために必ずこの旅を果たそう…。
いつか再会できるんだ。
…頑張ろう。
俺は5時という少し早めに起きたことを若干悔いながら、
社長椅子に座り、ニッちゃんや、みんなの寝顔を見る。
▽▽▽▽▽▽▽▽
みんな、気持ちよさそうに寝ている。
さすがに@戦で疲れていたんだろう。
…よく考えれば、ニッちゃんがメガネを外しているのって久々に見るな…
近くにいる人でもこんな顔だったのかと、少し驚いてしまう。
しかも寝る前まで何かメモをしていたのか枕元にあるメモ帳によだれがかかりそうだ。
普段は俺とソライが馬鹿をやって眉間にしわを寄せることが多いけど
結構かわいい顔してんだな…。
…。
俺は、ニッちゃんでさえこんなにも見れていなかったんだ。
そうなると昔、一緒にいた『あいつ』はどれだけ見れてなかったんだろう。
ずっと残る果てのない後悔が続いてきた。
だから…願いを叶えてもらって。
もっとあいつとの日々を大切に過ごし今度こそ、しっかりとあいつへと向き直りたい。
そう、心の奥でしっかり決意した。
主観変更side_ユウジ
▽▽▽▽▽▽▽▽
――午前5:01
8月19日、旅11日目
オレの朝は早い。みんなが起きてくる前に顔を洗い、脱衣場の洗面台で水道水を飲み。
自慢の金髪を整えて、保湿クリームを顔に塗るところから始まる。
オレの種族、岩流人の特徴としてあまり多人種に知られてないが。
男は肌がガサガサになりやすく、乾燥してる季節は特にひどい。
さらに唇が切れやすい。リップクリームがないと、3日1回必ず起こるレベルだ。
あとは熱中症にもなりやすく、よく救急車で運ばれる大半がオレの種族だ。
サイムのようなノーマルな人間が羨ましく思うが仕方がない。
ああいう熱中症で運ばれる多人種を見て思うのが、しっかりと水分くらいちゃんととればいいのにと、いつも思う。
だから保湿クリームと水分補給が大切だ。今は夏も終盤戦。
まだ湿度はあるが、そろそろ、保湿クリームが必要になってくる。
――さて…ここから飯の準備………
……ん?誰か…いる?
さっきオレの真横で物音がした。
この脱衣場の真横には社長机がある。
「(小声で)誰か起きているのか?」
脱衣場所のドアを開けてみると、サイムが目を細くうとうとと、まさにまどろみの中にいるような顔をしていた。
「(小声で)ん?ああ、ユウジぃ…。どしたぁ?」
眠そうだな…。っていうかそのメモ帳なんだ??
「(小声で)それはこっちのセリフだ。オレは朝食の仕込みとかやらなきゃダメなんだよ。」
「(小声で)…いや、起きちゃった…。もう寝る…。」
「(小声で)あいよ。おやすみ…。」
そう言って、メモ帳をニッちゃんの枕元において、サイムは自分の布団に戻る…。
…あいつ、オレがいなくなってからどうなったんだろう?
なんで、あいつが冒険職の社長をやってるんだろう?
『中学のころ、冒険職なんてならない』とか言ってたのに…。
……暇を見て聞くか…
さてと、飯の準備だ。みそ汁とスクランブルエッグ、お米を炊いてベーコンも焼こう。
▽▽▽▽▽▽▽▽
――午前7:02
オレは飯を作り終わり、昨日干しっぱなしになっていた洗濯物をたたんでいる。
昨日、@との対決でクタクタで回収し忘れていたのだ。
他にもみんなが歯を磨いている間に洗濯物を干したり、割と大変だ。
そうやって洗濯物をたたんでいると。
「…ん、ふぁぁ…おはようございます。ユウジさん…。」
「おはよう。ニッちゃん。時間には正確だな。」
「とりあえず顔洗ってきな。」
「ふぁぁい。」
ニッちゃんが目をこすりながら起きてきた。とても眠そうで、髪の毛がぼさぼさだけど。
ニッちゃんを見送って何気なしに布団を見てみる。
「…おはよーございまーす。ユウジさん。」
「ああ、おはよう。ハナビ。ニッちゃんと一緒に顔洗って歯を磨きな。」
「はーーい。」
ハナビも起きてきた。どうやらニッちゃんが起きる時に一緒に起きてきたみたいだ。
…いつも疑問に思う、ロボットであるハナビに歯磨きとか効果があるのだろうか?
まぁいいか…。さてと…二人が歯磨きから帰ってきたらそろそろ、あいつら起こさなきゃ。
今日は陸谷に向けて出発しなくてはならねぇんだ。嫌でも起きてもらうぞ。
…昔、修学旅行の時もこうだった気がするけど…。
「戻ったよー。ユウジさん。ニッちゃんさんは、髪整えてるー。」
「おかえりーハナビ。あ、出てきたばかりで悪いけどこの洗濯物、脱衣場のタンスに入れてきてくれないか?」
「わかったー。」
ハナビに畳んだ洗濯物を渡す。その間に、みそ汁を温めなおす。
このみそ汁は、ここ食の都でもある大傘で発見し、厳選に厳選を重ねた激安で最もうまい白味噌がベースで赤味噌も少し加えた合わせ味噌だ。東協都で食べる味噌とはだいぶ違う。
何度も味の検証を行った結果、納得のいく優しい感じに包まれたみそ汁がこれだ。
▽▽▽▽▽▽▽▽
――数分後…。
「よし、みそ汁も完了。盛り付けも完了だ。」
「戻りました。」
「戻ったよー!ハナビも髪の毛整えるの手伝ったよー。」
「おお、ご苦労。」
「二人は自分の布団を直してくれ。」
「「はーい。」」
この家で川の字で寝ることもだいぶ慣れてきた…。
だいたい11畳しかない家で川の字で男女5人+1人?で寝てだいぶ窮屈だ。
アルゴニックがバスケットという特製ベットがある分羨ましく思う。
オレは洗ったばかりのフライパンとお玉を持ち、息を整えて大声で
「おぉぉぉーきやがれえええええええええ!!!馬鹿どもおおおおおおおおお!!」
「「「………!むゃい!」」」
「顔洗って歯を磨けぇい!!」
「「「はゃい!」」」
…なぜ、直立不動かつ、三人とも同じような反応で脱衣場の洗面台へと行くのか、疑問に思うが、とりあえず起きたようだった。
ま、今日もこれで慌ただしい一日が始まるんだなぁ…と実感しつつ。
机を出して、料理をみんなのもとへと並べる。
▽▽▽▽▽▽▽▽
オレは自分のほれぼれする出来の朝ごはんに舌鼓をうちながら、
スクランブルエッグへとスプーンを伸ばしていると。
「飯を食いながらでいいから聞いてくれ!」
「どうしたんですかサイムさん?」
「俺たちは前回の依頼で、思いっきりぼろもうけできた。そうだな?」
「ええ、そうですね。いつものソライさんの交渉術によってお金を搾り取れましたし。」
「いえーい、もっと褒めてー」
そういえば、ソライマジックで依頼金を3倍くらいまで膨らませてたな。
実はソライは昔、悪徳駄菓子屋を一件ほど潰している。
『法外的な値段を請求するってことはされる覚悟がなければ行けないのだ』と
悪魔のような笑顔を浮かべるあいつを見て、子供ながらあれはいい教訓になった。
あと昨日の依頼と昔の一件で、そろそろこいつはいずれ国でも潰すんじゃないかと本気で思い始めている。
「そこでだ。いよいよ俺らは今日、陸谷に出発しようと思う。」
「ハナビちゃんの製作者に会いに行くんだっけ?」
「まーな。」
「あと超越の歯車の情報も欲しい。
ハナビたちの手には超越の歯車を読み取れるってことは、情報くらい持っていそうだし、なんならそのものもあるだろ。@もそういうこと言ってきたし。」
「だな。で、どういうルートで今回、陸谷に行くんだ?」
「………」
「………」
オレがルートの質問をしてサイムは黙りこくってしまった。
「…サイムさん…?」
「…えぇー……@の戦いのせいで情報をあまり仕入れていなかったんだ。
だから今回のルート危険かもしれないし、安全かもしれない。
正直、若干未知数な部分~………があって…」
「「ええぇえ!?」」
「わずかな情報から安全そうな道はわかったんだが、あくまで『比較的』なだけでどれほどかわからないんだ…。」
Oh…先行き不安な発言だな。
「まず、ここから陸谷に向かうとなると厄介な事情が一つあってな。
ここら近辺のモンスターはやたら強いやつが多い。
例として身体を丸めながら竜巻のように回転し進む『タツマキスパイダー』
群れでシンバルで獲物をはさみひき肉にして食べる残忍な『シンバルミンチモンキー』
10本の長い指と刀を持ち、硬い爪で獲物を解体する虎『テンフィンガータイガー』
100体以上の群れで、縄張りを駆ける小型爬虫類で生きた化石『ミリミリザウルス』など。
猛獣の住処だ。行ったら死ぬ。少なくとも家がつぶれて帰れなくなる。」
「…やばいな。」
駄目だ。感想がそれしか出てこない。冒険職じゃなかった者からは想像もつかない。
オレは中学のころモンスターには何度かであったことはあるが…
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「ただし、そいつらを回避する方法がいくつかある。そいつらの縄張りは地上だ。
陸路がだめなら海路や空路は余裕で行ける。」
「おおぉ!」
「…と思っていた時期が俺にもありました。」
「え…。」
「まず、海路…金銭の問題で船は調達できない。
他にも土砂崩れや環境の変動が激しい地帯があってな。
行けそうな道は危険な道ばかりだった。」
「ええぇ!?どうするんですか!?」
「下手したら死ぬようなところに、長居した時点で自殺行為だしなぁ…。」
オレらがおもむろに不安そうな表情をおのおの取ると、サイムは少し二ヤっと笑い、畳んだ自身の布団から冊子を一冊取り出す。役所とかで無料配布されている冊子だ。
「…そこで、昨日寝る前に役所で仕入れたパンフレットを読みふけったところ、
すげー隅っこの方にこれを見つけた。」
サイムが指さすパンフレットのコラム欄に小さく、
『天然の巨大洞窟、中は大迷宮!??海原ブブガブの大洞窟!
うまくいけば陸谷へショートカットも!』
「この『ブブガブの大洞窟』は『ブンブンキ砂浜』というところから繋がっている。
幸いここまでは敵らしい敵は、ほぼほぼいない。
洞窟の幅的にこの家が余裕で通行できるらしい。
そして出口は猛獣の住処の位置とほとんど被っていない。
ここがたぶん比較的安全らしい。」
「「おおおお!!」」
「だがまだこの洞窟は謎が多いから、警戒に越したことはない。」
「いや、でも十分じゃないですか?」
「いいじゃん地下!」
「ハナビも賛成なんです!」
「無事につけて家族が回収できれば御の字だ。お前らに任せる。」
「よし!満場一致だな。
んじゃ、ただいまよりわが社は、陸谷のリギョクの研究所に向けて
進路をとる!!」
主観変更side_サイム
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通際橋
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――午前9:33
…………
…………
…………
「…………だああああああああああああああああ!!
まだなのか!!まだ列が進まねぇのか!!」
「叫んでも仕方がないですよ!!」
俺達は早急に大傘から出るために街の門の前で立往生をしていた。
すでに都市外用のレンタル車輪へと換装を済ませ、『さぁ!冒険だ!』って思いのまま
門に着いて係員の『少々お待ちください』と言われて、40分は経過している。
都市外に行くために門で待っている家の、列のだいたい中腹にいるが全然進まない!
俺とソライ、ユウジはだいぶイラついている!こういう待ち時間がもどかしい!!
数分後。
「サイム!動くよ!」
「どうせ、ちょっと動いて進まねぇってオチだ。渋滞ってのはそういうもんなんだよ。」
「いや…まて…動いて、いる…??動いているぞ!!」
「おお!やっと!やっと動き出したな!」
「この物語が??」
アルゴニックよ、物語ってなんだよ?っていう野暮なツッコミはもうせんぞ。
俺達の家は大傘の門を通る。
「ここを抜けると大きな橋がある。都市の速度制限を守れよソライ!」
「わかってるよユウジ。」
門を潜り抜けて外の光の先が見えてくる。
「見えてきたぞ!『通際橋』だ!」
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通際橋
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通際橋…可動橋の一種でオオガサにある淀土与大川と大傘湾を結ぶ橋で都市外の境目を結ぶ大切な橋の一種らしい。
可動橋として港としての船の運搬にもかかわってもおり、主にタンカー等の大型船が入ってくると開く。全長約4000m、国でもかなり大きめの可動橋で大型モンスターの防衛の要にもなっており、こういう橋が他にもいくつかあるらしい。
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さてと、この橋を渡れば少し先に草原があるはずだ。
久々にニッちゃんに稽古をつけなくてはならねぇ。
面倒だが、面倒がって命を落とされたらかなわない。
生きることに貪欲にならなくちゃならない。願いのためにも。
「うぇ!!?」
「!!!?何だアレ!!?」
「鳥!?」
俺達の走っている道路の約数百m先か!?
大きな家くらいある黒くデカい怪鳥??が寝そべって…
いや、血が出ているところを見た感じ、死んでいる…?のか?
警官が誘導灯を使って交通整理をかけている。
「なんだあれ…。」
「ソライ!交通整理だ!前!」
「あ、ああ。うん。」
「誘導に従い、車線変更。ちょっと徐行する。」
「了解。」
家が少し左に傾く。
ちらっと反対車線を見てみると、『鳥のモツ』のような部位があった。
多分、あの鳥のだ…。グロテスクだ。いったいなんだよあれ…。
「……解析中、解析中。
わかったよー!あの鳥さんは『セトワジオオガラス』の一種だよ!」
ハナビわかるのか!!?
…ロボットだからそりゃわかるよな…。モンブも塔でなんか解析してたし。
たぶん都市が近いから家の無線通信つかって検索もできるんだろう。
しかしでかいな。地味に奥にもう一匹見える…。
くちばしは鋭いし、あれで攻撃喰らったら一撃必殺なほどの威力は発揮できそうだ。
「どうやらここら辺の冒険職と警察が手を組んで倒したっぽいね。」
「渋滞の原因はこれだな。」
「都市攻防か!俺らも参加しておけばよかった!」
「無理ですよ。私達この都市の冒険職じゃあないですし、突然最下級の冒険職が入ってきたら邪魔でしょう。」
「まぁだが…。大傘にはいつもこんなモンスターがいるのか??」
「えっとね。セトワジオオガラスはカラスの一種で主にリアス式海岸???っていうところに住んでいてね。本来、ずっと先の南南西にいる烏なんだって。
そこらへんで狩りをするらしいのにここまで来ているの。」
……ハナビのいうことが正しければ、モンスターの分布が変わってる可能性がある。
動物は自然に敏感だ。もしかしたら地震や火山活動自然災害、他の強力なモンスターの出没。いろんなことがあって分布が変わる。大きな烏が縄張りを変えて、ここまでくる。
…何かがこの先にあるかもしれない。陸谷でも何かが起こっているかもしれない。
▽▽▽▽▽▽▽▽
…………思えば、この時した胸騒ぎは当たっていた。
『二つとも』、いや、正確には『三つか』
『目覚めていたもの』と《目覚めるべきではないもの》がすでに運命のレールに乗っかっていることにも気づかずに。その渦中の中心へ飛び込もうとは予想だにしていなかった。
主観変更side_???
▲▲▲▲▲▲▲▲
………………
………………
「………………GRRRRRRUUuuuAhhh……」
どこにいる…???
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~ノヴァアージ知恵袋のコーナー~
~ネットをやって『雷のマーク』を見た人物が不審死した事件があるらしいぞ!~




