第1話その2『危機開会の塔:攻略者』
※この『物語』は『フィクション』です。
※それなりに『始まりを歩む』気持ちで読んでください!
「ニッちゃん、これだよ!!こういうのを、俺は望んでいたんだよ!!」
俺はニッちゃんの持ってきたそのチラシを読んで大はしゃぎだった。
「え!サイムさんこれ、ある意味ギャンブルじゃないですか?」
「ギャンブル上等!もしかしたらダンジョンにお宝が、あるかもしれない。
これで借金もろもろを払えるし、何よりもこういうのってワクワクする!」
大体の物事は楽しんだもん勝ちだ!楽しくなくて何が人生か!
重く考える必要があるのはそういう場面だけだ!
「はぁーいつものサイムさんのワクワクできれば、何でもいい理論が出てきた。」
…ん?待てよ。喜ぶのは早計だぞ俺!
「…あ、ちょっと待て。ニッちゃん!そのチラシの発行したのはいつだ!?」
「え、えーーーと」
「発行したのが一週間なら手遅れだ。もうお宝はない。」
ギルドは全ての印刷物に発行した年月、日時を記さらなければならない。
これは依頼が下手したら別の企業が完了しているかもしれないので、
企業が依頼承諾の電話や受付で受けたりする際の指針とするためだ。
ギルドは役所だ。ようは国の機関なので17時で受付を停止し
遅くとも19時まで職員が勤務している。
印刷物の張替は約18時ごろと緊急事態の時だ。
昨日刷られたものなら、希望が持てる、
でもフットワークが軽く早い企業だと、お宝はすでに取られてる。
1週間前に発行された情報だと、ダンジョンにあるのはゴミと残骸だ。
でも運が良ければ…。
「7月…20日17時発行」
昨日!!つまり、ダンジョンにはほぼ確定でお宝があるぞ!!
「よっしゃーーーー!!!そうと決まればニッちゃん、今すぐ行くぞ。」
「え、今から行くんですか?」
「だってそうだろ、早くしないと
お宝が先に越されちゃうかもしれないし。思い立ったが吉日!!
そこに金というロマンと、ロマンという金があるなら行かねばならない!!
楽しいことってのはそういう積み重ねさ!」
「私、武器とか持っていませんよ!
ダンジョンなんでしょモンスターとか…。」
「大丈夫、大丈夫。ダンジョンにいるモンスターは、モンスターを湧かす装置とか何かしらがないといけない。あそこのは壊れてたはず!
フィクションじゃあないし魔法なんてないんだから『科学的』に考えてありえることを考えよう。
あれくらいの大きさなら1日もかからないし、ニッちゃんを守りながら進むのなんてよゆーだろ。」
この言葉にニッちゃんは少しいぶかしげだが、納得し。
「そういうものですかね…わかりました。サイムさんを信じます。」
「いざ、メイジダンジョンにレッツゴー!!」
俺たち二人は準備をしはじめる、
ニッちゃんはオレンジの大きなドラム状のボストンバックを持ち、髪の結び目をしっかり端れないようにしてメガネを拭き、掛ける。
俺も武器をベルトについたポジェットに入れ、赤い短いロープを腰につけて息を整えバンダナを結びなおす。
「いくぜ。」
この時の俺たちはメイジダンジョンをなめていた。
予想というのは常に斜め上を行くものである。
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メイジダンジョンの道中は特に代り映えもしない街並みだ。
隣町だがどこか一昔前の街並みで、木造住宅が大半だ。
集合住宅…正確には『木造の団地』がこのあたりは多い。
モンスターが襲撃してくるんで、すぐに立て直せるようだからそういう建物が多いのだ。
古い町だからか塀にはミケ猫がおり、赤いポストに怪しい露天商。
進行方向奥に大きな塔があった。
すれ違う人はこの冒険職に、昼から飲んでいるよっぱらい。
リアカーで物を運んでいる運び屋。追いかけっこしている子供たち。
営業の話をしながら歩いているサラリーマンなどよくいる奴らばかりだ。
「ここら辺もだいぶ変わったなー。」
「昔はどんなんだったんですか?」
「たしか…穴ぼこばかりの街だった。
昔は土壌が弱かったこともあったせいで道路開発が難航してな。
少しの地震で、液状化しちまうんだ。」
「え、じゃあメイジダンジョンは…?」
「いや…それが不思議なんだよ。
あのダンジョンの周りだけ地盤沈下どころか、全然壊れない。
木の根っこのようなもので土壌を支えているかもしれないんだってさ。
まぁ、あそこ最近は老朽化してきたせいか、壁に穴あけたら崩れるかもしれないんだよ。」
「へー…。」
俺達は塔を目前にして開けた広場へ出る。
「えーーっとこの道を抜けて…っと着いたぜ。」
「遠くから見えていましたが近くで見るとかなり大きな塔ですね。」
そびえたつは雲よりも高く、
石のように固い謎の素材をレンガ状に積み上げて作られた巨塔『メイジダンジョン』
最高到達階層、五階。超初心者用ダンジョン。
別名『特に大したことのないでかい迷路』
数多いダンジョンの中では、かなり細長い部類であり老朽化が進んでいる。
さきほども言ったようにダンジョンの壁を下手な、力加減を間違えて破壊しようものなら崩れてしまうかもしれないからうかつに壊せない。と政府が示しており、一階は補修まみれと聞く。
壁にある虹色の血管のような模様があり何を意味するかさえ分からない。
あそこにあるのは、ラクガキやゴミばかりで、極めつけはこの世のどん底みたいな顔している奴が、屋内で眠ることがあるので、あんまり近寄りたがる奴はいない。
だって場所がスラムのどん底のすぐそばだもん。
そういうやつらが集まるのはなんとなく理解してほしい。
彼らだって懸命に生きているのだから。
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メイジダンジョン
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「この塔がメイジダンジョン、モンスターは狩りつくされたり、謎解きもなく、トラップもない。
正真正銘の初心者用ダンジョンだ。五階まではな。」
「それ、もはやただの迷路では?」
「うんそうだ。
だが俺達地元の人間の中で、なんで立っているのかマジでわかんねぇ物体ナンバー1だ。
さ、行こうぜ。」
俺たちはそそくさと入り口の中に入る。
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――今こそ解放の時はきたれり――
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何か、聞こえた気がする。空耳か?
「ニッちゃん、今、何か聞こえたか?」
「いいえ。」
「そうか…」
たまにあるダンジョンの仕掛けかなんかだろう。
コンビニとかで若者しか聞こえないアレ的な。
まぁいいや先に進もう。
このダンジョンは5階までは踏破されてる。
チラシによると、その5階での一番小さな部屋に秘密の通路があるらしい。
「あ、サイムさん、見てください、このダンジョンの地図ですよ!
あ、地図に名物落書きとか。各種観光名所もありますよ!」
「もうダンジョンとして完全に枯れてるなこのダンジョン。」
1階の時点ですでに看板に階段の場所書いてるし
「これって迷路としてもどうなんでしょうか?」
「いや、もしかしたらこれは大金をかけたライ○ーゲーム的な巧妙な罠が…」
「階段ありました。」
そんなことはなかった。
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2階に行ったら、看板に5階までの最速到達RTAの
記録の看板と細かいルールやレギュラーションが書いている。
「24分台が最速記録ですね。」
「あ!こいつトライアスロンの選手じゃないか!」
「え、有名人なんですか?」
「ああ、国内元3位の男だ。
こっちはパルクールやってるやつだし、けっこう有名人が来たんだな。」
「まぁ大きな建物ですし。」
「RTA勢の掲示板曰く、落とし穴の罠を飛び越えて行くのが最短コースで、観光コースではこの道をまっすぐ行って突き当りを右だ。」
「ああ、やっぱりダンジョンじゃあないですね。」
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3階に行ったら罠はなくラクガキがある程度だった。正直散歩コースレベルの感覚でダンジョンを昇ってる。
「「びっくりするくらい歯ごたえがない。」」
「それに2階でも思いましたがここって妙に明るいですね。」
「この壁、なんか虹色の毛細血管みたいな模様が走っているだろ。
これが発光してるんだと。」
「あー確かに若干光ってますね。」
「あと地味にー思ってたがこの三階でも、人がいないなぁ…。」
「過疎化ってやつですね。」
「ダンジョンまで浸透してくる世情の嵐を感じる。」
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4階には前衛的な芸術があった
「1階にあったパンフレット曰くこの落書きは後に数十年前一世を風靡した謎の画家『一月の貴公子』の初期の作品だと。突発的に友人と描いたらしい。」
「なんだか神秘的ですね。いろんなところにビビットカラー?の
濃いピンク色が塗られていますが、これ補修でもされてるんでしょうか?」
「知らねー。まぁ、絵を見たところで腹は膨れねぇ、先行こうぜ。」
「はーい。」
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目的の場所まで罠らしい罠がなく順調に次々と上の階へと昇る。
「さてとここが5階か。」
「本当にただの迷路でしたね。」
……ん、待てよ。『何もない』迷路?
「ニッちゃん、ちょっといいか?」
「どうかしました?」
「いろいろとおかしい。
まず第一にあんなチラシが配られるくらいなのに人が少なすぎる。」
いたのは一階の浮浪者程度だ。
「そういえば道中、人があんまりいませんでしたね。
でもそれっていいことなんじゃ、私達は結構早めにこれたんじゃ。」
「それにしちゃ、あまりにも妙だ。
普通こんな重大発表、なぜ『テレビ』でやらない?
こんな宝の宝庫、しかも洞窟でもない
明らかに人工的に建てられたダンジョン内でなぜ『水晶』が見つかるんだ?」
この国は都市だと、必ずと言っていいほどテレビの電波が入る。
そしてこの塔は今はこんなのだが俺が生まれる一昔前まで、毎日、人が訪れていたと聞く。
さびれたとはいえ、近隣の冒険職や町おこしのためにダンジョンを宣伝しない馬鹿なテレビ局はない。
特にこういうニュースだと必ずマスコミは食いつく!
昨日、ギルドが印刷したならテレビが昼間にやらない可能性は低い。
水晶ってのは洞窟で年月をかけて自然が結晶化し創り出された鉱物だ。
人工物の塔から水晶ができるなんてまずありえないだろう。
「確かに変ですね…」
「こういう冒険のパターンとしては3つある。
1、ただの迷惑なガセネタ。これの可能性が一番高い。
2、本当に俺たちがかなり探索序盤に来たか、そして問題は3つ目、何らかの犯罪が関与した何者かの罠である可能性。
ニッちゃん。俺はよゆーでニッちゃんを守ることは、今でもできると思う。
だがこのダンジョン、一応用心しといたほうがいい。
いろいろと奇妙な点があるんでな。」
「わかりました。逃げる心構えをしておきます。」
いい返事だ。
そうニッちゃんが言った時、ある小部屋に入る。
そんなに他の部屋と変わらないいつも通りの謎の素材でできた煉瓦造りの部屋だ。
そう例の隠し通路が見つかったという小部屋だ。
「ここが例の小部屋だな。えーっと一番上の赤い煉瓦から
右へ3上へ6の煉瓦を押す…っと」
俺は指定された通りの位置の煉瓦を押し出す。
するとゴゴゴ…と
大きな音を鳴らし煉瓦の壁は土煙をならし、横幅が二人分の穴が開いていく。
奥には何もなく、
ただそこにあるのは未知と何かが起こるドキドキの高揚感に舞い上がった冒険だった。
「サイムさん!見てください!これ!」
「ああ、どうやらパターン1じゃなかったみたいだな。
正直俺は驚いたぜ。どうやら本当にお宝が待ってるのかもしれねぇ。
ああ、ワクワクしてきた。」
予想外の状況に思わず顔が緩む、まさか事実の情報だったとは!
千載一遇の大チャンスってのはこういうのを言うんだろう。
俺たちの目の前にある、先も見えない道の奥に見たことのないワクワクしたものが待っている。
まさにチャンスの扉が開かれた。
「ニッちゃん!こっからだぞ!行こう!!」
「ですね!行きましょう!」
そう言って俺達は通路を進んでいく。
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~ノヴァアージ知恵袋のコーナー~
~ニッちゃんは成績は数学以外の成績はそこそこいいぞ!~