第6話その2『雨の道中_2_お狐鳥居』
※この『物語』は『フィクション』です。
※それなりに『ポーカーフェイスな』気持ちで読んでください!
――午前11:45
8月15日、旅7日目
古刻崖の一件から翌日
小雨が降っている中、俺らはなだらかな上り坂の草原の道を走らせていた。
何もなくとも夕方にはオオガサにつけそうだと胸を躍らせつつ、
旅を続けていると周りの景色が奇妙になりつつあることに気づく。
「ねぇお兄ちゃん、サイムさん、何かあるよ?何これ?」
「ん?変なのって?」
「この朱い四角形の門?だよ。」
「…ああ。鳥居のことか!」
一瞬なんのことかわからなかったが、ハナビは窓の外の大きな鳥居を指さす。
「ハナビちゃん、あれはね鳥居っていうんだよ。」
「とりい?ことりさんのおうち?」
「うーーーん、アレは神様のおうちの玄関だね。鳥の神様もいるかもしれないけど。」
「へぇー神様はいっぱい玄関があるんだね。どこからか入るの迷っちゃわないの…?」
…確かにハナビの言う通り、ここなぜか鳥居が多いな。都市外でも神様を祭っているところには鳥居があるって聞いたことはあるが………ここのことか?
「サイムさん、ちょっとどいてください。」
「あ、ハイハイ。」
ニッちゃんが窓の前に立ち鳥居に目を凝らす。
あ、そうか。神社関係なら…ニッちゃん巫女だった……
「ソライさん少し停車してください。」
「??」
「…ええ・・やっぱりここはお狐鳥居…ですね。
よく見ないとわかりませんが鳥居に狐の細工があります。」
「「「お狐鳥居?」」」
それを聞いたアルゴニックがぼそぼそと小声で。
「(小声)…狐…鳥居…西の方にある…あーなるほど…。」
「ここ…たぶん私の神社の系統の総本山…です…。」
「え、つまり偉いところに来ちゃったのか!?」
「立ち入り禁止的な!?」
「いえ、普通に一般解放している部分だと思います。
ソライさん、偶然ここに迷い込んだんですか?」
「偶然だよ。ここって神聖な場所だったんだ……。」
どうやら運命的に、神様の住処に迷い込んだらしい…。
「まぁちょっと小さい客人が迷い込んだ程度のもんだと思ってるかもしれないし。
逆に俺達が『化かされる』かもしれないぜ。『ソイヤッサァ!』ってな。」
創造主が何か言ってる…。あと『ソイヤッサァ!』は多分…狸だ。
「まぁ化かしてくるといっても些細な悪戯程度でしょう。」
「ちょいと驚いたのがニッちゃんの家がお狐様だってことだな。」
「うちの分社はいろいろと巡り巡ってあの場所に建てられたらしいです。
なんでも先祖はここの神様に倒され仕えることになった鬼だとか…」
え、ニッちゃんの先祖ってそうなの!!??
「…って、アルゴニックさん、もしかしてこういうの詳しいんですか?」
「…いや、実をいうと専門家口調はできない。創造主と神は別の存在だ。」
「…皆さん、ついでだし参拝していきませんか?旅の安全祈願でもしながら。」
「いいね!よし早速止めても怒られないところ探すよ。」
「安全祈願?」
「いい旅になりますようにって。お願いするんだよ。ハナビちゃんにも教えてあげるね!」
「はい!」
ソライがエンジンをかけなおし、止められそうな場所を探す。
「やはりここは、『日本』で言う『伏見稲荷大社』か…。
……俺はもう大した用もないのに昇らんぞ。」
「昇る?アルゴニック。どういうことだ?確かに上り坂だが…。」
「あーーーこの世界は違うかもしれないけどな。
ここによく似た場所では山を1、2時間昇った先にも社があるんだわ。
光景は幻想的だが、何かと疲れが残る。非常に面倒なんだ。」
「確かに山を登った先が重要っておじいちゃん言ってましたけど、今回はふもとですよ。」
「まぁのんびりハイキングしている間に、モンスターに家を荒らされたらイヤだしね。」
「そゆことです。」
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お狐鳥居
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「…さてと、外に出たはいいものの…。」
俺達は『乱雑』でたくさんの鳥居に囲まれている、広場のような場所にいた。
水たまりが所々にあり、傘を差しつつどこの鳥居が、社に通じているのか皆で見回していた。
「あ、あの鳥居ですね。私から見て左の…。」
「…どれ?」
正直多すぎてわからない…。
「あの、鳥居の上に狐様の銅像が乗っている…。」
狐の銅像…?あれか?
あの酸性雨でいかにも溶かされているかのような…?
「あの狐の銅像、おじいちゃんが教えてくれた本社のものです。」
「ふーーん行ってみようぜ。」
俺達は鳥居に寄ってみると、少しだけ気が引き締まるような不思議な思いがした。
ニッちゃんの言っていた鳥居は他のよりも古そうだが、朱色の塗装も剥げかかっていた。
「何だろう…。なんだか不思議な感じだな…。ここへ入ればいいのか…?」
「おーーーーー神様の玄関!」
「まぁ入るか…。」「ちょいまち」
俺とハナビは鳥居をくぐろうとする前にアルゴニックが引き留める。
「ですね。まず鳥居をくぐる前に一礼して端を歩いてください。」
「え?どうして?」
「逆にお前は、人の家に上がりこむ時、なんの挨拶もなしに入るのか?
『お邪魔します』くらいは言うだろ?」
「それに一応、神様が住んでいるのに、僕らが堂々と真ん中を歩くってのもね…。」
「そういうことです。」
「え………ああ、確かに。」
そう…だよな、神社って神様の『家』だもんな。
「神様ってのは偉いの?」
「うーーーん。ハナビちゃん的には実感はないとは思うけどまぁ偉いんじゃないかな?って僕は思う。だから頭を下げる。旅がうまくいくように祈るんだしね。」
「わかったー!」
俺たち全員で一礼をして鳥居をくぐる。
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しばらく参道を歩き
「あれが社か…。えーーーと手を洗うんだっけ?」
参拝ってのは久々で、うる覚えだ…。流し台みたいな所で手を洗うんだっけ?
「そして軽く口を漱ぐんです。清めるって言った方がいいかもしれないですが。」
「お、おう。」
「神様って注文が多いんだね。」
「ふふ。そうだな。」
ハナビは少し笑いながら楽しんでいることが、よくわかる表情をする。
だがどうにも俺達がこれから料理されるみたいで、俺らも思わず笑ってしまった。
こういう新鮮な反応ってなんだか、ちょっといいなって思ってた。
なお、ソライが気持ち悪い笑顔を浮かべながら、天高く拳を突き出してなかったら、なおのことほほえましくあったんだがな。
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「さすがにここからは知ってる。二礼二拍手一礼だよな。」
「さすが本社ともなれば、壮観ですね。」
俺達は本社のお賽銭箱の前まで来ていた。人はいないらしいが整備はされている印象があった。
「ニッちゃんのところと違って上についている、お賽銭箱の上にある鈴とかないんだな。」
「そりゃ本社なので…お正月とかいちいち鳴らしていたら大変でしょう…。」
「よーし、ハナビちゃん見てて!僕がお祈りの手本を見せるから!終わったら真似してね!」
「わかった!」
主観変更side_ソライ
▽▽▽▽▽▽▽▽
僕は五円玉を投げ込み
二回お辞儀をする。
で、次に二回拍手
パンッパンッ
手を合わせてお願い事
『ハナビちゃんとライトノベルのようなそうはならんやろって言えるような、
超絶すげぇクンカ、スーハーしてぽにょんとしたラッキースケベがありますように…!』
ヨしッ!
そして一礼!
ヨしッッ!!!
「こういう風にお祈りするのさ!お祈りはできるだけ言葉にしちゃだめだよ!
ハナビちゃんやってみて。」
「うん!」
僕はハナビちゃんにお賽銭を渡す。…まぁ旅の安全は誰かがやってくれるだろう。
主観変更side_ハナビ
▽▽▽▽▽▽▽▽
え~~っと。
まずお金をポイする。
コロロンとお金が箱の中に落ちた!
えーーーと二回ぺこぺこする。
で…拍手だ!
パンッ!パンッ!
そして、手を合わせてお願い事…!
『えーーーとえーーーと、ご飯!
ご飯食べたい!お腹いっぱい食べたい!
できれば食べ放題とか超おいしいコックさんがいる店とか
そういうところに行って店がつぶれるまで食べつくして
ソライお兄ちゃんたちにお会計?をお願いしたい!』
えーーーっと、このあとは…
あ、お辞儀だ。
お辞儀をペコリする。
「これでいいんだっけ?」
「ええ、大丈夫ですよー。次、私します。」
「行ってらっしゃい。」
…旅とか姉さんとかは、まぁ誰かがお願いしてくれるよね。
主観変更side_ニッちゃん
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まぁ総本山様で、お祈りするのってなんだか緊張しますね…。
テキパキしましょう。
まずはお賽銭を投げ入れ二礼をする。次に二拍手…
パンッパンッ
『お願いします。サイムさんといちゃ……
で、できれば…その…うまいこと言えないけど、後ろから手をまわしてぐっと近づくような展開が来ますように…。
ちょっとした憧れなのでッ!特にそれ以外は願いなんてありませんのでッ!!!
そういう状況を作り出すだけでいいので…!本当にッ!よろしくお願いいたします!!』
私は深く一礼をしみんなの元へ戻る。
「まぁざっとこんなものです。神社の娘に雑念なく真摯に清い考えで挨拶をしました。」
「ヒュー!さすが!」
「あ、サイム、五円貸してくれ。」
アルゴニックさんへ五円を差し出す。
「ん。」
「じゃ、ちょっと行ってくる。」
まぁ旅の安全なんて、サイムさんとかソライさんがもう祈っているし、これくらいのわがままいいですよね。
主観変更side_アルゴニック
▽▽▽▽▽▽▽▽
…直近の願い…『夢』のため直面している最もな願いをしたいな…。
とりあえず、五円をお賽銭箱へ投げ入れる!
ほんとは『ぶち込む』とか『シュゥーーート!』的な表現を使いたいが、ガチの親族や、神社各所に怒られそうだし、さすがに真面目にやる。
お賽銭入ったな。これでいい。まぁ宙に浮いていてあまり伝わらないが、とりあえず二礼!そして二拍手!!
パンッッ!!パンッッ!!
…
目を閉じ頭を下げながら思考を巡らす
『…頼むゥぅッ!!この作品のPV数を伸ばしてくれえ!!お願いだああ!!
そして少し微笑んで思わず、超絶拡散されてくれえ!!頑張るから!頼むうう!!!
正月は別の神社だがッ!!頼むううう!!!お願いだあ!!
この作品にPV数と最高の評価、心温まる感想をくれええ!!前代未聞なことをやっているが頼むうう!!
あと仕事がうまいこと行ってくれえ!!
そして、じいちゃんたちの健康とかも、本当に頼む!
都合ばかりがいいこと頼む、俺だが一応祈らせてくれ!
頼むうう!!夢も現実も家族も頼むう!!!』
…さてと、一礼ッ!!
ほんま、たのむうううううううううううううううう!!!!
「ずいぶんと長かったな。」
「こういうのは、真剣にやるんだよ。ま、これくらいはするだろう。よゆーだぜ。」
「まぁ僕らは君に願いを叶えてもらうし。」
そういえばそうだった……。
「まぁ、創造主が神様にお願い事をするのって変な感じですが…。」
「まぁニッちゃんの言うことはもっともだが、俺だって行事する時は願う。」
よし、これでいい。旅の安全だとかはなるようになれだ。
主観変更side_サイム
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「じゃ行ってくる。」
俺は五円玉を投げ込みカツーーんといい音がする。
で、二礼をするんだよな。
一、二っと
よし、あとは二拍手だな
パンッパンッ
で…………何願おう。
何にも思い浮かべることがない。どうしよう。何も願うべきことがない。
金か?いや…こういうスリルのある生活が楽しいし別に困ってない。
『ん~~~??何願おう…??何も思いつかねぇ…。
…面倒だから仲間とできるだけ一緒に馬鹿やっていられる未来…とかかな?』
そう思い。俺はゆっくりと一礼して、仲間のところへ戻る。
「お疲れー。」
「それじゃあ、おみくじ引いて帰りましょうか。」
「だな。」
旅の安全とか、ソライがしてるだろうし。何も思いつかなかったからこれでいいや。
▽▽▽▽▽▽▽▽
神社の横っちょにあるおみくじを引く。
どうやら無人かつ無料おみくじらしい。
カメラとかがあってセキュリティはしっかりしてそうだが
ガラガラとおみくじを引く。
「10」「23」「34」「25ばーん!」「3番だ」
…俺達は番号に描かれた和紙を手に取り
「「「「「いっせーのせ!」」」」」
俺達はおみくじを互いに見せるように一斉に開ける。
「あ、ニッちゃん、大吉だ!」
「おおー!…縁談、ほどほどに叶う…。健康、無難。」
「まぁ縁談なんて当てにはならねぇよ。でも金運はいいじゃないか!」
「え、え…えええ、まぁ…」
「なぁサイム…僕、凶なんだけど…。
縁談、金銭運、絶望的。商売、中途半端」
「でも健康はいいじゃないか。」
こういう時できるだけプラスの方を発言することを意識している。
「とほほ、まぁ所詮はおみくじだしね」
俺は自分のおみくじを見ると『未分』という訳の分からないものを引いていた。
「ニッちゃん。この『みぶん』って何?」
「これはみぶんじゃなくて、『未分』と読みます。
珍しいの引きましたね。いいことか悪いことか神様さえもわからないのです。」
「お、いいじゃあないか。運命を自分でつかみ取るって感じで。
健康運と縁談が結構いいぜ。ただし仕事運は最悪だったがな。」
健康運は『極めて良好、虫に注意されたし』
縁談には『近しい叶う』と書いていた。
虫ってのは多分、疫病的なことだろう。
縁談はちょっと達筆で書き間違えたんだろう。正しくは『近しく』だな。
仕事運は『精進すべし』の一言。
「ねぇ、ニッちゃんさん、これなんて読むの?」
「それ、末小吉ですね。まぁちょっといいかな?って感じです。」
「へぇ~~。けんこう?が悪いみたいだけどロボットに関係あるのかな?」
「あ、でもハナビちゃん、仕事運はありますよ!」
「まだ子供だけどな。」
「「「「はっはっは」」」」
「…」
俺達が笑う中、アルゴニックは何とも言えない表情でこちらを見ていた。
「…どうしたんだ?アルゴニック?」
「どう反応すればいいの?これ。」
アルゴニックのおみくじの和紙には結果が載っておらず
『せいぜい、ほどほどの無茶で頑張れ。』
と書いているだけの和紙だった。
「…」「…」「なーに?これ?」
「行こうか。」
「そ、ですね。おみくじの結果はそこのひもに括りつけてください。」
「「「はい。」」」
こうして俺達は運気を養った。
ただお守りくらいは買っておいた方が………と少しだけ後悔をした。
なぜなら後日、大傘で波乱に満ちた金と欲が入り乱れる、
再会を賭けたギャンブルが待っていたのだから。
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~ノヴァアージ知恵袋のコーナー~
~ニッちゃんは数式の暗記が苦手だぞ!~