第5話その7『爆走爆音カラオケ大会:『身』から出た『錆』という言葉があります、そして『ドレ ミ ファソラシド♪』の音階から『サビ』は生まれるのです。』
※この『物語』は『フィクション』です。
※それなりに『意味なくゲラゲラ笑う』気持ちで読んでください!
――数分後、さっきのフードコートにて。
「おまたせーいいぞ!」
「ソライお兄ちゃんはああいう、曲が好きなんですか?」
「僕はかわいい女の子の出てるアニメの曲なら基本何でも好きだ!」
「そっちも楽しめたようだし、これからどうする?」
「うーーん僕はこのまま帰ってもいいけど、食料の買い出しもせにゃならんしなぁ。ただし、サイムちょっとピンチなことが一つある。」
「ん?なんだ?」
「0になった」
…
聞き覚えのある言葉、
「何が?」
つい最近も聞いた血の気の引く言葉…。自分でこう言っておいて何が?ではない。
もうわかりきった答えだ。
「財布が。」「ほらみろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
もはや、ツッコみすぎて顔面蒼白である。
「イヤね、さっきの買い物でちょうど金がなくなったんだわこれが!家の食糧はここに来るまでに食べきっちゃったし!」
「はぁ!?と、いうことは今!まさに33回目の倒産の危機!?」
「そういうことになるね。」
「まずいじゃん…」
「まずいね。」
「まずいじゃんッ!!!」
「まずいねッ!!!」
「どうするんだよ!今日の晩飯さえ買えないぞ!」
「うーーん、今から依頼受けてたら確実に夜になっちゃうしね。」
「なんか今すぐに、ぱっと稼げる方法はないか…」
俺は辺りを見渡す。
屋台、ライブ会場、ダメだ。
即急のバイトや出店なんてしても、時給的に厳しい!
そんな時。ふと、音楽祭のチラシが張っている隣のチラシを見る。
「これだ!!」
そこに書かれていたのは『恋識最音ギガMAXカラオケバトルぅ』と書かれていたチラシだった。
問題はチラシの下に『優勝賞金5万円』の文字が!
「今から行けば、なんとかエントリー間に合うぞ!走れ!」
「え、えええ!?こんなのに賭けるんですか!?」
「一か八かだ!大丈夫最悪、晩飯抜きで済むだけの話だぁ!急ぐぞおお!!」
▽▽▽▽▽▽▽▽
カラオケバトル会場
▽▽▽▽▽▽▽▽
俺たちは大急ぎでドタバタとカラオケバトルの会場まで向かう。
すると、そろそろエントリー片づけ始めている受付に向かって!
「すいません!まだ受付やってますか!?」
「すいませんもう受付終わっちゃって…」
「そこをなんとか!お願いします!」
「え、えっと。その。」
「お願いします!こっちの生活が懸かってるんです!」
「え、ええぇと。
まだ、一人くらいは行けたはずだから……わかりました。特別に出場を許可します。」
「やったああああああああああああああああああ!!!」
「で、誰が歌うんですか?」
「え」
係員に言われて固まる俺ら。
「まず、俺は無理だ。カラオケの点数だいたい83点くらいだもん。」
「僕はサイムより下手だもん。」
「私、そもそも歌ったことない。」
「じゃあ必然的に…ニッちゃんだな!!」
「え、えええ!?」
消去法で決めるがニッちゃんは困惑している。
「大丈夫大丈夫!ニッちゃん歌好きだって言ってたし、行ける行ける。」
「え、その私でいいんですか!?」
「いいんだよーグリーンだよ!」
「え、えええええ!!?」
「と、いうわけで歌うのは、このニッちゃんってことで。」
「カラオケバトルはトーナメント性となります。
参加者の方はあちらで待機していてください。」
「はーい。じゃあ頑張ってきますね。」
「おう、頑張ってこいよ。」
さて、どうなることやら…
主観変更side_ニッちゃん
▽▽▽▽▽▽▽▽
はぁ…
サイムさんには、ああ言ったけど私、全然自信ないんだよなぁ…
だって、一番得意な曲でカラオケの最高点97点だし。
それも偶然、発声練習がてらに歌ってみた結果にとれたものだし。
正直自信ないんだよなぁ。
とりあえず参加証をもらい案内された舞台裏テントの控室に設置されたテレビで、今から行われる開会式を見てみる。
司会のキラキラなスパンコールを着たアフロの男性がハイテンションに登場する。
「レディイイイイイイイスッ!エーーーーーーーーーーーンンド!
ジェントルメェエエエエエエエン!!
皆々様!おまたせいたしましたぁああああああああああああああッ!!!
それでは、はじめていきましょうぉおおおおおおおおうッ!!
『恋識最音ギガMAXカラオケバトルぅ』ッ!!!!
ボリューーーーーーム上げてくかいッ!?気分は上々ッ!!?」
「ではルーーーーーールッ!!を説明していくぜぇッ!!
まずこのカラオケバトルぅは、全員で23人いて1対1のトーナメント形式だあああああああ!
1回戦、2回戦、準決勝と進んでいって最終的に決勝戦は3名or三組で戦うぅ!!
なお準決勝まで、A、B、Cブロックに分かれていて
Aブロックは色物枠!ネタたっぷりのブロックだ!
8人の中から勝ち上がるキャラの濃い人物は誰か!?
Bブロックはペア枠!二人一組で歌って8組のトーナメントを勝ち進んでいくぞ!
なお決勝はどちらかが歌うことになるぞ!
Cブロックはニューピー枠!小~高校生限定のブロックだ!
2回戦からシード1名で、Cだけ人数は少ないぞ!
それぞれ別の会場で歌いあい、優勝者は賞金5万円をゲットすることになるゥッ!!。」
私、何試合目何だろ…。Cブロックだろうか…。
ちらっと参加証を見てみる。
そこには『A』、第1回戦第2試合の文字があった…。
目をこする『A』の文字は変わらない。
…ってなぜ色物枠に…!??
そういえば年齢はあまり聞かれなかったし、急いで適当にエントリーしたけど…。
▽▽▽▽▽▽▽▽
「それでは早速Aブロック第1回戦第1試合行ってみよう!
対戦者はァ!
自称!アニソンの帝王タケル!と
自称!薬指で面接官以外すべてをなぎ倒すッ!カンフーの達人、
ハンドルネーム就活君だぁああああああああああ!!!」
観客はわああああああああ!と盛り上がり、派手な音を立ててステージに登場したのは。
いかにもなメガネと横に伸びたアニメT シャツを着た太っちょの男
「VIPからキマスタ!」
「履歴書アイヤー!
我が、『終わらなき曲限就活-エンドレス・リズム・リクルート-』の餌食になるがいい!!」
そしてリクルートスーツに身を包み、履歴書をくるくる丸めたヌンチャクを振り回す細身の男性だった。
…なんだこれ?
アニソンの帝王はわかるがなんでカンフーの達人が、カラオケバトルに参加してんだろ…。
▽▽▽▽▽▽▽▽
「第2試合のニッちゃんさーん。マッシュぅールさん!準備してください!」
「はーい。」
そんな私に近づいてくる人物が一人いた。
そしてすぐさま私の顔と全身がこわばり固まってしまう。
その人物は全身が異様な筋肉で覆われていて、それでいて真っ黒マスクのブーメランパンツの姿の覆面だった。
「初めまして私は、マッシュぅールと申します。」
「え、あ、はい。」
えええーーと、私正直、どう反応したらいいのかわからないんだけど!?
助けてサイムさん…!
筋肉が目の前にもりもりって感じで迫ってきてるんだけど
…なんか、胸筋が動いていて怖い!ていうか近い近い!!
すっごい怖い。冷汗が止まんない…。
「本日はよろしくお願い申し上げます。おたがいいい勝負しましょう!」
覆面越しににこっと笑いかけてくる。
少し私は反応が遅れて…。
「は、はい。コチラコソよろしくお願いします。」
「…おっと驚かせてすいません、普段は覆面レスラーをしていまして…。」
「あ、は、はい。」
よかったいい人そうだ。
なるほど、自分のアピールのために来たんだ…。色物枠ってこういう人もいるんだな。
そう言って、彼は係員のところへ行ってしまった。
「ニッちゃんさーん。」
「あ、はい。」
「こちらに、歌う曲を入力してください。」
「はーい。」
「えーーーと、じゃあこれで。」
私が入力したのはさっきライブでやってた歌手の音楽を入力する。
緊張してきたけど、大丈夫。
「はい。それでは、少々お待ちください。」
私が何とかして、優勝して見せなくっちゃ。
▽▽▽▽▽▽▽▽
――ぼんやりと中継のテレビ画面を眺めていると
アニソンの帝王とカンフーの対決が終わった。
「また就活に失敗したぁアイヤーーー!
証明写真の裏には必ず名前を書きましょうーーーーーー
ぐあああああああ!!!!」
「ふん、余裕だったお」
いや、全然余裕じゃなさそうなんですが。ほぼ同点かつ僅差なんですが。
そして就活さんはその断末魔でいいんですかッッ!?
「それじゃああああああああああ第2試合行ってみようかッ!」
「ニッちゃんさんマッシュぅールさん出番ですよ!」
係員に呼ばれて、舞台に立つ。スポットライトがまぶしく私とマッシュぅールさんを照らす。
「それでは第2試合、まずはあああああああこの男から紹介しようッ!!
自称!蟻地獄さえ破壊する殺戮マッシィーン!!
マッシュぅール!今!リングイイぃーーン!!」
「うおおおおおおお!!!ぶっ壊してやるぜええええええ!!!」
うぇえええ!!?
いやいや、さっきまでそんなキャラじゃなかったでしょ!?
マッシュぅールさんは胸をドラミングする。
「うぉおおおおおおおお!!」
「ぶっ潰せ!マッシュぅールー!」「強者!マッシュぅールー!」
なんなの?悪役覆面レスラーかなんかなの!?
なんだか私の紹介も不安になってきた。
「続いてはエントリーギリギリで駆け付けた、頑張ります!
みんなの生活費のために!夕日に照らされたメガネのオレンジガール!!
ニッちゃんだあああああああああああああッ」
やだ、なんか。私の服装でいろいろと決まっちゃってる。たしかにオレンジの服だけど…。すごく不安…。少し恥ずかしいのと緊張で心臓がバクバクだ。
「ええーとみなしゃん!こ、こんにちは!頑張ります!」
あ、舌かんじゃった。
会場はなぜか受けているけど…。っていうか、かなり人来てるよ。大丈夫かな。私。
…いや、でも多分会場の期待は『こいつはどんなおかしいやつなんだ?』だろう…
「うおおおおおおニッちゃん!!!」
あ、ソライさんがオタ芸で私を応援してる…恥ずかしいからほんとやめて。
隣のサイムさんの、すっごい冷ややかなまなざしに気づいて…。
「では行きます。まずはマッシュぅールさんからまさかの自身がリングに昇るときの登場曲
『アリジゴク殺しのシュぅールな感動!』どうぞー!」
え!?まさかの自分の曲!!?そんなのあり!?
どんな感じなのかしっかりと見極めなきゃ!
そして私も頑張って歌おう!
▽▽▽▽▽▽▽▽
――開始から数分後
私の試合…第1回戦、第2試合。
勝った!しかも4点差で。
「ちくしょおおおおおおおお!!!なんで俺は負けたんだああああああああ!!!
俺の『アリジゴクアクセント』が何で負けたんだ!」
そりゃ音が取れてなかったからでしょ!!!本当に自分の曲?
「くそ!あとは託したぞ!オレンジガール!」
「あ、はい。」
「マッシュぅールッ3カウントッ!KO!!ここでぇ!リタイアとなります。」
私はそのまま舞台裏に戻ってテレビ画面をぼーーーっと見る作業に徹した。
正直このAブロックはおそらく歌を楽しむためのブロックじゃあない。
かなり…うん、『個性的』な人らが集まって馬鹿なことを言うブロックってのが分かった。
▽▽▽▽▽▽▽▽
第3試合は
小指と人差し指で逆立ちしながら足でジャグリングをする、
『自称ミスタージャグリング系歌い手の、種子島種種種雄』
VS
ビン底メガネに学生服と虫取り網を持ったひげ面のおじさんこと
『自称留年し続け24年、帰宅部を極め最近卒業した男、キロっチョン』という人の対決だった。
結果はキロっチョンが勝った。自称最強のビブラート、『下校ビブラート』で、キロっチョンが圧倒したのだ。
▽▽▽▽▽▽▽▽
第4試合は
雑魚と書かれた全身タイツ姿の
『自称最近FXを溶かした雑魚中の雑魚と名乗る男、雑魚君』
VS
こちらも紫の全身タイツ姿の
『自称悪の組織の幹部(多分コスプレ)、しっぽ怪人ビターン』
との対決だった。
結果としてはなんと雑魚君が勝っちゃった。
彼の謎の必殺『ファイナル雑魚★抑揚』で得点を稼ぎまくっていたからだ。
▽▽▽▽▽▽▽▽
そして時間は流れ…
「はぁ…」
私はため息をこぼす。
自己紹介に『自称』が必要な方々ばかりだけど…意外にうまいのだ。
仮装大会みたいな方々に『歌』で負けそうってだけで 腹 が 立 ち ま す が!
少なくとも!!よくわからない必殺技に負けるのだけは嫌だ!
えーい、うじうじしてても仕方ない!どうせだったらとことん楽しんでいこう!
▽▽▽▽▽▽▽▽
「では二回戦を行います。タケルさん、ニッちゃんさん、準備してください!」
「デュフフ、このタケルの相手が、まさかこんな中学生が相手とは、舐められたものだお!」
「高校生です!」
「なんとまさか、低身長キャラだったとは失敬湿気だお。お互い、いい勝負をするお。小生は何としても、小生のアンチスレで戯言を言っていた奴らを見返すために何としてもここで、勝たなくてはいけないんだお。」
なんか生々しい理由でこの人、参加してるなぁ。
「私だって負けませんよ!」
「デュフフ、まぁ小生の『萌え萌えこぶしぃ』に対してどこまで行くか見ものだお。
楽しみに待っているお。」
必殺技の名前がやたら可愛いのがどこか悔しい。
そういって肥満体型を揺らしながら、タケルさんは手続きを済ませ会場に入っていった。私も手続きを済まし入っていく。
「それじゃあ!行ってみよおおおおおおおおおおおうか!第2回戦ッ!!
対戦者はスレッドを見返せ!アニソンの帝王タケル!と
このままだともやしすら買えない!夕日に照らされたオレンジガール!!
ニッちゃんだあああああああああああああッ」
「アンチスレの連中見てるか!小生は必ず優勝して見せるからな!」
「本気で楽しんでやっていきます!」
▽▽▽▽▽▽▽▽
アニソンの帝王タケルさんは、ほぼ女声に近い異様な高音で、こぶしの利いたアニソンを歌い終わる。
点数は91.7点。
私の選曲した曲はソライさんが進めてきた某ネットソング。
素早い曲ながらも私の声とあっており、実はカラオケの定番。
――そして…私の点数は92ぴったり、非常にギリギリだが勝った。
「嘘だお!小生は勝つと、自負していたのに!」
タケルさんはがっくりとうなだれる。
「いや、いい勝負だったぞー」
「またVIPで会おう!アニソンの帝王!」「最高の戦いだったよ!」
観客たちが優しい言葉を投げつける。ソライさんの声もしたが聞こえなかったことにしよう。
「ありがとうございました。あなたの歌、かっこよかったですよ。」
実際負けそうだった。この人頑張れば歌手になれそうなうまさだった。
「うぅ、ありがとうございますだお。お嬢さんもいい歌だったお。
小生に勝ったからには必ず優勝するんだお。」
「はい。」
こうして私は準決勝にコマを進めたのであった。
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