第5話その6『風と知識の都市レンシキ』
※この『物語』は『フィクション』です。
※それなりに『意味なくゲラゲラ笑う』気持ちで読んでください!
――午後:10:36
8月13日、旅5日目
「お、窓を見てみろ!だんだんと見えてきたぞ!あれが恋識だ!」
「わぁ~!」
俺たちの眼前に広がるのは、大きな山脈に寄り添うようにして創られた巨大な金属でできた未来都市だった。
「来い、識す、風と知識の都市、恋識。」
「それってパンフレットか何かの言葉か?」
「いえ、地理の教科書に載ってました。」
すげーな高校の教育。
「とにかく新しいところってワクワクしますね!」
「ああ、だな!」
これまで結構長かったがやっと着いたぞ!
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《風の道中、レンシキ到達まで時間およそ5日》
※拡大推奨
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風と知識の都市_恋識
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到着し関所で手続きをし1時間後。
「着いた~!」
家を所定の場所に止め、あたりを見渡す。恋識…初めて訪れる都市!
この都市では家のほとんどが山の洞窟の中にあり。
割と高所で俺の家も収納された。
洞窟内は割と電気とヒカリゴケでもあるのか、ぼんやりと明るく洞窟の入り口から見える景色には、ところどころにトーキョー中央街には劣るが高層ビルが見えた。
「確か、恋識は元は鉱山都市で、それが科学の発展とともにだんだんと形を変えていって、今では学問などの研究機関が多いということで有名な街だったはずです。」
「ニッちゃんよく知ってるな。」
「これくらい地理の授業で習いますよ。」
「いや、中卒ですまんなぁ。」
「ちなみにこのトヨンダ町では、鉱山の開発後の坑道の中に家を収納する習慣があるそうです。」
「へー。とりあえず街を見に行こうぜ!」
「はい!」
俺達が新しい街にワクワクしている中で…。
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「あ、俺は家で引きこもってゲームしてるわ。」
「え、アルゴニック。街行かないん?」
「ああ、勝手に行ってきてくれや。俺は引きこもっていたほうが楽しいし。じゃ。」
はーまぁこういうやつなんだろう。アルゴニックと俺たちは別れ。
俺、ニッちゃん、ソライ、ハナビの四人で行動することになった。
洞窟から外に出ると、ドワッと、突然突風が吹きぬける!
「すごい風だ!」
「ここはどうやら山脈に囲まれていて風の通り道らしいです!
だから風を避けるために、元鉱山の洞窟を家の置き場所にしたと言われています!」
「ハナビちゃん!大丈夫かい!」
「だいじょーぶ!」
俺達は洞窟入口に手すりがあったのでつかまりながら山を下るごとに、風は優しくなっていき一番下の斜面が平地に変わっている頃には、そよ風程度になっていった。
「おお、最初はこんなところで人が暮らしているのかっていうくらいの、強風だったけど地面の風は気持ちいいな。」
「だねー。」
「お、お前らアレを見てみろ!」
俺は前方の街へ皆の視線を促す。街は鋼でできた金属の未来都市が拡がっており、ところどころ風力発電でもしているのか風車がそびえたっていた。ショーワ町みたいに錆びた鉄パイプが乱雑に、街を這いまわってるわけではなく、さながらサイバーパンクの世界に来たような感覚があり、別世界と思ってしまうほどだった。
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「わぁ~なんだか賑やかな街ですね。サイムさん。」
辺りを見渡してニッちゃんが言う
「そうだな。」
「なんだかあちこちから音が聞こえます。いったいこれは何なんでしょーか?」
ハナビも物珍しそうに答える。
「ん?おそらくはあれじゃない?」
ソライが指さしたのは一つのポスターだった。
ポスターには
『第69回!恋識音楽祭開催!!みんなで音楽を楽しみましょう~』と書かれていた。
「へぇ~街あげての音楽祭か!面白そうじゃん。もしかしたら出店とかもあるかもしれねぇし。」
「出店って…どうせならライブとか見ましょうよ。」
「ライブって何ですか?」
「ライブ…
それはオタたちの夢と希望が詰まった、まさしくドリームな場所さ!」
「ソライお兄ちゃん夢とドリームで意味がかぶっていますよ。」
「とにかくアニソンのライブしか、僕は行ったことないけど最高な感じだったよ。
音楽に包まれる熱気!ライブの臨場感!参加者全員の一体感!そしてオタ芸!!!」
「ひとつ余分なものがある気がしますけど。大体あっているのが悔しい。まぁようは、音楽をみんなで楽しむ場所って感じです。」
「あ、それってピアノのコンサートみたいなものですか?」
「ちょっと違いますけど、似たような感じですね。
ハナビちゃん、ピアノのコンサート行ったことあるんですか?」
「はい2611姉さんはピアノのコンサートをよく姉妹たちの間でしてくれました。」
2611…ノーツーか。
「2611姉さんは、六本の腕を器用に使い、いつもきれいな音色を奏でてくれました。」
「へぇ~あいつにそんな特技があったなんてな。」
俺がそういうと、ハナビはうつむいて。
「姉さん。元に戻りますよね…」
「安心してよ!僕ら武山冒険社が必ず、何とかして見せるから!」
ソライのその言葉にハナビの顔は少しほころんで、
「はい…!」
「…だけど、それはそれ、これはこれだ!今は祭りを楽しもうぜ!
お前の姉妹に治ったら自慢してやれ~!」
「はい!」
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――まず俺たちは腹が減ったので屋台に向かうことにした。
時刻は昼。
さすがの音楽祭といったところか、だいぶにぎわっているようだった。
特設の野外フードコートは想像以上に人が多く、結構人が並んでいるようだった。
「どれにする?」
「どうせなら、恋識の名物がいいなぁ。」
「だったら手羽先とかがうまいって聞いたぞ。」
「あ、だったら私手羽先がいいです。」
「え、っとハナビはその…おいしければなんでもいいよ。」
「僕の記憶が正しければ、恋識は天むすと、味噌カツがうまいって聞いたよ。」
「あ、天むすも食べたいです。」
「味噌カツってなんだ?」
正直あまり聞かない食べ物だ。
「じゃあ俺、味噌カツ~。」
「食えばわかるよサイム。僕も、味噌カツ~。
というわけで、手羽先4個、天むす3個、味噌カツ2つ買ってくる。」
ソライはフードコートの人込みに消えていった。
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数分後
「元の料金で手羽先7個、天むす5個味噌カツ3つゲットできたどー!」
「多すぎだろおおおおおおおお!!!!」
なんで、初見の店でそんなに買えるんだお前!
「相変わらず、ソライさんの交渉術はある種のマジックですね。」
「マジック?ソライお兄ちゃんはマジシャンなの?」
「はっはっは!いい得て妙の激安のマジシャンだよ!」
俺もマジシャンだと思う。
「お前、これから『値切りマジシャンのソライ』って名乗ったらどうだ?」
「サイムの、だせー二つ名の命名はスルーして…食べようよ!こんなにもあるんだし!」
「そうだな…それじゃあ皆様、手を合わせまして」
「「「「いただきます!」」」」
お、これが味噌カツか!なかなか…イケるな!
想像以上にうまく箸が進む!
「手羽先うめー香ばしい感じが何ともいえない!」
「サイムさん。天むすもなかなかにおいしいですよ!」
「ニッちゃんさん!これもおいしいですよ!」
「味噌カツは味噌の独特な風味とカツのジューシーさが、見事にマッチしていてサイコーだな!」
いい昼食だ。みんなと一緒に食べ物を分け合ってるからかおいしい。
お留守番のアルゴニックが可哀そうだなとは思うけど。
俺たちは数十分ですべて平らげてしまった。
量が少ないってこともなく、なかなかのボリュームだった…。
「あーうまかった。もう食いきれないなこれ。」
「ふぅ~また出禁の店を、つくってしまった感じがするが、ま、いっか。」
「ソライさん。ほどほどにしておいたほうがいいですよ。」
「いーのいーの、僕はみんなに満足してもらえたらそれで。」
「ソライお兄ちゃん。ごはん、おいしかった!ありがとうございます。」
ハナビはソライに向かってにっこりと笑う。
「くぅ~笑顔に生きてるって感じがするぅ~かわいいは正義だよなぁ~。
あ、ハナビちゃん。ほっぺにごはんついてるよ。」
「あ、本当だ。ぱくっ」
ハナビは頬っぺたのご飯粒を口元に運び食べる。
「おぉ~かわいい~!最高に萌えるぅ僕の心のCG集に一枚加わりましたぁ!」
昼食の余韻をぶち壊すな阿呆…
「ソライ…お前、はたから見たら完全にロリコンの変質者だからな。」
「ぐはぁ!まってくれサイム!ハナビちゃんはこんな姿だけど、もしかしたら、100年くらい生きている、ロリババアかもしれないじゃないか!」
なんちゅー、考察してんだ。
「ロリババアって何ですか?それに私、まだ1年しか稼働していませんよ。」
「まさか!幼児程度しか生きてないだとぉ!?」
「ほらみろソライ。お前はどうあがいてもロリコンなんだよ。」
人間だったらハイハイして立ち上がって歩行を覚えたくらいの年齢かよ。
ロボットだから年は関係ないかもしれないがな。
「くっ、認めようじゃないか!僕はロリコンだと!だがそれの何が悪い!?」
「昔からロリコン発言していたなぁー…。」
「ロリコンでいいじゃない!つるペタ最高じゃないか!
貧乳はステータスだ!希少価値だ!
巨乳ロリも最高!ないものがあるからこその小さいこの包容力があるというもの!
あと妹属性もあったら、さらに最高じゃないか!ロリコンでいて何が悪いぃ!!」
「ハウス!」
「アハン!」
ソライがニッちゃんに殴られる!
あ、こいつ馬鹿だったわ。
捕まった時に弁護士くらい雇えるように、所得税を払いつつへそくりを隠しておくか…
だって公衆の面前でこんなことを言っちゃうのは、まさしくこいつが変態の馬鹿野郎だからだろう。
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――昼過ぎ。
「さてと、どこに行く?」
「いろいろなライブ会場が集合しているみたいですね。JーPOP、ロック、アニソン…」
「アニソン?アニソンだって!?僕そこ行きたい!」
「私はJーPOPに行ってみたいです。」
「ジャズはないのか?」
「ジャズは午前中だけのようですね。」
「そうかー残念。」
俺は実は結構ジャズ系統の音楽が好きだ。
ニッちゃんは腰をかがめハナビに聞く。
「ハナビちゃんはどこに行きたいですか?」
「私はソライお兄ちゃんについていきたいです。」
「一応気をつけろよな、姉ロボットやソライのような変態が潜んでいるかもしれん。」
「変態じゃない紳士だ。」
「じゃあいったんここはニッちゃんと俺、ハナビとソライの二手に分かれよう。
何かあったら、ガジェットで連絡を取り合う事。以上、解散。」
「りょうかーい。じゃあな。」
俺とニッちゃんはその後、ロックのライブ会場に後方に来ていた。
男女混合の音楽番組で見たことがあるユニットが声を張り上げており、デスメタルやヘビメタって感じではないロックだ。
すでに会場の客のテンションは出来上がっており。少し圧倒される。
「わああああああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!」
「ありがとう、せんきゅ、次のグループよろしく頼むぜぇ!!!」
「お、ちょうど交代するタイミングできたみたいだな。」
「そうですね。すごい熱気、私ライブって始めてきましたけどこんなすごい熱気なんですね。あ、次の曲が始まるみたいですよ。」
先ほどのグループが舞台裏に後退し、次は女性ボーカルのバンドが出てきた。
「みんなきてくれてありがとー。どんどん声出していくよおぉおおおぉぉお!!」
俺たちはライブに浸った。
最初はあまりこういう音楽を聞かない俺が為れるのか不安だったが、ニッちゃんとともに一緒に盛り上がっていくうちに、だいぶ楽しくなってきた。
――そんな中…。
ライブ中、妙な二人組が、俺の隣に立っていることに気づく
その二人は、せっかくのライブだというのに棒立ちで、夏だというのに外套を羽織りフードを深くかぶった謎の二人組がそこにはいた。
奇妙だなと思いつつ、少し耳を傾けていると。
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「なぁイッキー?」
「何ですか?アオさん」
「この歌どう思う?」
「うーんわたくしの、趣味ではありませんが、いい曲だと思います。
ただし歌手が若干声をわざと高く意識しようとしているのがマイナスですかね。
それのせいで声が若干ですけど、ひずんでしまっています。
このひずみを好きな人はいるでしょうが、わたくしはそれが気にくわない。
これはあくまで原曲調。本来の曲の雰囲気を逸脱してしまっています。
また、野外ステージ自体が初めてなんでしょう。ノドの使い方が若干なっていません。
まぁそれさえ気にしなければ、曲自体は好きです。」
「おっと、イッキーしんらつだねぇ。」
「何を言ってるんですかアオさん、わたくしはこう見えて甘いほうですよ。」
「いや、それは知ってるけどさ。イッキー、これからどうする?」
「そうですね。わたくしは、これから行われるカラオケバトルに出場することを提案します。」
「あ、もしかして自分も歌いたくなっちゃった?」
「いえ、こんなレベルの低い音楽に嫌気がさしただけです。肩透かしですね。
だからわたくしが本気の音楽を示そうと思っているだけです。」
「はっは、さすが俺っちの最音の相棒だね。それじゃ聞かせてもらうよ。イッキーの実力。」
この二人は音楽評論家なのだろうか?どうやらカラオケバトルというものがこの後用意されてるらしい…。
「アオさんも出るんですよ?」
「ええぇめんどくさい~」
「心配無用です。
アオさんはわたくしの音楽を聴いていたんですから、いざとなったらアオさんの分もわたくしが歌いますから。」
「だね。じゃあイッキーそろそろ行こうか。」
「そうですね…。
あ、すいません。ちょっと通ります。」
「あ、ああ。」
俺は二人のために少し後ろに引く。何だったんだあの二人。
そして1曲1曲と終わっていき。
「よっしゃーみんなー休憩の時間だ!水分補給、トイレ休憩!何もかも大切だからな!夏の暑さに負けるなよ!!」
曲の合間合間の休憩時間がやってきた。
▽▽▽▽▽▽▽▽
「いやーサイムさん。盛り上がりましたね!」
「ああ、最高だったな!聞いたか?あの歌手の迫力!すごかったよな!」
「最高でしたよ!
音一つ一つに畳みかけるような感覚が、今でも私の中に鳴り響いていますよ!
私って音楽すごい好きなんです!」
「そうか、ならよかった。これからどうする?ソライ達迎えに行くか?」
「そうですね。連絡とってもらえませんか?」
「了解!」
俺はガジェットを起動し連絡帳からソライに電話する。
「ソライ!」
電話越しからアニソンのポップなミュージックが聞こえる。
「きたーーーー僕、この声優…」
「ソーラーイ!」
チっ、オタクのスイッチが入ってる。
「あ、サイム、どうした?」
「俺たち今から休憩に入るけど、お前どうする?」
「あ、わかったじゃあ僕らも後で、合流する。さっきの場所でいいよな?」
「おう、じゃあさっきの場所で。」
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