第5話その4『風の道中_4_猛食草原と特訓』
※この『物語』は『フィクション』です。
※それなりに『意味なくゲラゲラ笑う』気持ちで読んでください!
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猛食草原
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――午前10:03
8月10日、旅2日目
早朝から走らせて、丘を越え俺達は草原に来ていた。
「さてと…ソライ!ここらで一旦停止!」
「了解。」
「どうして止まるんだ?」
アルゴニックの疑問はもっともだろう。
「いや、運転手の休憩と家の軽い点検。
その間に俺とニッちゃんはサバイバル研修がある。」
「ふーん、それってなんや…?」
こいつ、なぜ方言…西の『なんや』っていっぱいあるらしいけど…。
「うーーん、端的にいうと今日は狩りだ。
ここは別名、『猛食草原』。ここは食用の動物が多いことから、冒険職にとって『食い物が逃げたり襲ってくる市場』って認識だ。」
「ほーん。」
「アルゴニックお前も来るか?」
「いや、俺はここでゲームしてるわ。行ってら。」
こいつ………聞くだけ聞いといて…
「私は行くー!」
「ハナビちゃん、ニッちゃん、サイム、行ってらっしゃい!
(小声で)本当はもっと僕に甘えさせたいけど…。」
「「「行ってきまーす!」」」
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家から歩いて10分くらい。草原のだいたい真ん中。
縄で作る簡単な罠の作り方を教えつつ、目的の場所につく
「さてと二人とも、一見すると何もいないがここには何がいると思う?」
「うーーん、鳥とか?」
「わかった!豚さんだ!」
「うーん、両方と惜しい。でもなハナビ、哺乳類って点では同じだ。」
「「???」」
「今回仕留めたい獲物は二種類。
ちょうど二人いるし、それぞれの方法で試そう。
ハナビはさっき教えた罠を使って。ニッちゃんは文字通り戦闘で仕留めてもらう。
危なくなったら俺が助けるから目のつく範囲でいてほしい。」
「「了解」です。」
「よし、いい返事が聞けたところで獲物の説明する。」
とここで俺は無くてはないものをポケットから取り出す。
それは一見すると薄茶色の木製のソフトボールのようであり、赤い縫い目の代わりに切れ込みが入っている。
「サイムさんこれは?」
「なんだか独特な匂いだね。」
「こいつは、匂い玉(茶)。
こいつは動物共がよく食べる果物を熟成させたエキスが大量に詰まっている。
これを投げると、ナックルマジロとマトリラットという動物が高確率でやってくる。」
「ナックルマジロ???」
「マトリラット???」
「ナックルマジロってのは、アルマジロのような硬い皮膚とカンガルーみたいな瞬発力、そしてボクサーのようなパンチング能力を持つモンスターだ。
あいつらは基本巣を季節の周期ごとに移動していく。
その巣が移動するタイミングで、弱いのがここへやってくる。
ナックルマジロはニッちゃんが相手を。」
「なるほど…。」
「マトリラットはネズミみたいだが、もとは草食の狐のような生き物が退化した種族だ。
ちなみに草以外に土も食べる。爪や牙がない代わりに動きがとにかく俊敏な生き物だ。
こいつは背骨が隆起しているのと、最大の特徴は毛に特殊なフェロモンで幻覚を見せ、残像のようなものを見せるのが特徴だ。マトリラットはハナビがぶったおして捕まえな。」
「おーー!」
「時間は1時間30分、一つ制限があるなら『殺すな』
俺達は旅立ったばかりで食料となる動物はあまり取るべきではない。
だが、調味料になる部位が存在する。そいつらが取れない場合、昼飯は抜きにはしないが、薄味を食うことになる!いいな!」
「「はい!」」
「よし、始め!!」
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マトリラットは非常に足が速い、ナックルマジロよりか早くハナビのもとにつくだろう。
なのでまずはマトリラットの罠の方を担当するハナビのもとを見る。
ハナビには道中、ウサギの捕まえるタイプの罠の作り方だけを教えた。
こいつを捕まえるのに最も有効な罠だ。こいつを捕まえるのに腕力や瞬発力はいらない。
ハナビは疑似餌として匂い玉を草の上に置き、その前に罠を設置する。
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「来たよ…(小声)」
さっそく匂い玉(茶)に釣られて、マトリラットが残像を出しながら餌の方へ近づく。
外見は、ウサギの様に非常に小柄で、耳の形はキツネだが、背骨が若干隆起し棘のようになっている。
草を食べるためか脚が短く、鼻や目が大きい。目は横についている。体毛は赤茶色だ。
「…なんで食べてくれないの~?(小声)」
こいつらはただ罠を置けばいいだけではない。こいつらの最大の特徴を俺はあえて説明をしていない。前も言ったかもしれないが、事前に情報を知っていること自体が珍しいのだ。
一番重要なのは、観察と対応力。さて、ハナビは気づくかな?
「…捕まらない…。味のないご飯は嫌…だもん。
こーなったら!コードA-6!展開!」
ハナビは腰から大量の電気コードの触手を出す!
「電気でびりびりしびれちゃえ!雷撃!!!」
ハナビはニ、三本の雷をコードの先から射出し『電撃』をマトリラットに向ける!
その電撃は横に轟く雷のごとくマトリラットへ
ずすすうううん、と当たり衝撃がこっちまで伝わる。
「あ、あたった!!サイムさん見て!ハナビやったよ!」
「…」
あーあ。やっちまったな。
俺は無言で顎でマトリラットを見るように合図を向ける。
「?」
「…ハナビ覚えておけ、初見の敵が来たらまずは観察、そいつがどんな生物なのか外見から行動まで。事前情報よりもそれが大切。その次はどうするのか考えろ。」
「え…。あ!!」
ハナビの雷撃を受けたマトリラットは、先ほどと違い雷を身にまとい赤茶色の体毛はオレンジに変色。自分の体を揺らし、移動をせず残像を見せ威嚇していた。
「ハナビ防御姿勢をとれ!」
「え!??」
俺の言葉で防御の姿勢をとるハナビ。
次の瞬間、マトリラットはすさまじいスピードでこちらに迫っていた。
「きゃぁ!」
マトリラットはハナビに向けて残像を創りながら猛烈な速度でタックルする。
こいつらは『狐らしい生き物』の退化した姿。
爪はほぼないが、電気という武器が蓄電されたときはつまり狐のどう猛さを発揮する。
そしてハナビは何とか電撃の閃光の中、防御してさっきまでいたマトリラットを探すが…。
「あ、ああ~。逃げてっちゃった…。」
――マトリラットはすでにもう視界からいない。
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「残念だったな。ハナビこういうこともあるさ。人生積み重ねだ。」
「サイムさん…何で雷撃が…。生き物が雷をチャージしたの?」
「…雷にあたると普通の生き物なら神経系をやられて確実に黒焦げだ。」
「じゃあなんで??」
「ハナビ、アースって知ってるか?」
「…?」
「アースってのは、家電のプラグに、ついている部品だ。
家電は雷とかを受けると電気に耐えれなくって壊れちゃうだろ?
アースは雷とかのエネルギーを地面とかの別の場所に逃がしちまうんだ。」
「でも、アレは生き物だよ。」
「そう、だからだろうな。
『適応』したんだよ。ここの周りを見てみな。」
ハナビは周りを見渡す。一面の草原を。
「何もないよ。」
「だからだよ。何もない場所で敵に襲われる恐怖おびえる。そういう臆病な生き物だ。
ハナビの匂い球に近づかないのも『餌を食べている間に襲われたらどうしよう?』って思うだろ?だから食べようとしない。
そしてここは雨期になると、雷雨が多い。
こいつら以外もいろんな生き物が『雷が怖い』って思うよな、ハナビならどうする?」
「うーーーん…雷をへっちゃらにする。」
「そうだ。だからあいつらは背骨を発達させたんだ『背骨を避雷針』にして、そして自分の体毛に蓄電できる許容量以外の、電気を足から電気を地面に逃したんだよ。」
あいつらは草以外に土を食べ、骨を絶縁体に近い構造にして、雷雨を避ける。そしてわざと電を受け、体毛でチャージした雷で天敵を威嚇し、生態系を保つ。
「いいか?ハナビ、敵だけを見てもほしいものは手に入らない、周りの状況も見て判断し相手の立場を思いやってやれば、結構捕まえられる。もういっぺん挑戦してみな。」
「うん!!」
――さて…ハナビはこれでいい。あとは自分で考えるだろう。
ニッちゃんのところへ行くか…。
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「サイムさん!来ましたよ!」
早速来たか… ナックルマジロ。
ニッちゃんの眼前の先には、薄黄色の硬質そうなグローブらしき部位をつけたハナビくらいの大きさのモンスターがいた。
タップダンスの様に飛び跳ねており、カンガルーっぽいけど、有袋類ではない。あと背中と顔も硬質化した皮膚でおおわれおり、スパーリング選手をほうふつとする姿だ。
「サイムさん、どうすれば…?」
「ニッちゃん。ギアは?」
「あ、そうだ持ってたんでした。
ガ、ガジェット・ギア…セット!」
さてとニッちゃんは何をじじいから借りてきたんだ?
弓とかか?はたまた薙刀か?
ニッちゃんのギアはくるくる回り変化をする。
――俺はニッちゃんの武器を見る。
「…よりによってか…。」
だが、俺は頭を抱え唖然としていた。せざるおえない。
今回の敵には最悪の相性の武器で、おそらく一番扱いづらく一番きつい最悪の武器
――その武器の名は…【拳-ナックル-】ギア!!!
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ナックルギア…通称、『鋼鉄の拳』
腕にはめるタイプの武器。利き手のひじから下を鉄の塊で覆うほど大きい武器。
拳状の鉄が手に装着しており拳には、排気口のようなパイプが取り付けられている。
そしてこの武器の最大の特徴。そして最大の欠点。それは単純明快だ。
「う………腕が!!あ…がらな………い!!」
こいつは『重すぎる』ことだ。
正直、怪力の鬼であるニッちゃんでも、これはおそらく扱えない可能性が高い武器だ。
これは同種の成人男性用のナックルギア。元はニッちゃんのじじいの持ち物だ。
重すぎて当然だ。
ニッちゃんに気づいたのか目の前の ナックルマジロは拳を胸の前に出し臨戦態勢をしている。対してニッちゃんは重すぎるのか、右腕をせいいっぱい支えながら、重さで腰を丸め腕の関節さえ曲げられず敵対する。
「ニッちゃん手を貸そうか?」
「…サイムさん、お言葉ですが、遠慮させていただきます。」
「………………じゃあ頑張れ。セコンドに周るぞ」
ナックルマジロは跳ねながら加速しニッちゃんに近づいていく!
「ニッちゃん!手を強く握れ!!」
「ふんん!!!」
ニッちゃんの鉄の拳がチャージを開始し始め、拳から空気を吸い始め、排気口から白い煙が立ち始める。
その間、ナックルマジロはニッちゃんに迫り拳を振り上げようとした…。
「今だ!」
「はィいッ!」
ニッちゃんが重いナックルギアをもち上げる
この武器のもう一つの特徴は『殴る』のではなく『放つ』という表現が正解だ。
「ワぁっ!」
「!!」
ナックルマジロはニッちゃんの『伸びた腕』を間一髪のところをよける。
「もう一回行きます!!」
「よし!行け!」
ニッちゃんはやや千鳥足になりがちだが、ゆっくりとナックルマジロに向かっていく!
ナックルマジロは脅威と感じたのか、若干片足を引いている。ビビってるんだ。
「くらええええええ!!」
「ピギュイ!?」
さすが野生動物、ニッちゃんのパンチを二度よけた。
そして相手の懐に入った。
「ぁ!!?」
「蹴り上げろ!」
「ひゃぃ!」
「ひゅっむ!??」
ニッちゃんは不意打ちの蹴りを放ち、攻撃をやめさせ防御姿勢を取らせる。
危なかった。おそらく重くて移動はほぼ無理なんだろう。
「手に力を込めて腕を一回転させろ!!」
「はい!!!」
ニッちゃんは腕を縦にグルんと廻した結果、腕はそのまま勢いを増し加速をし、そのままとんでもない力を込めて放たれたアッパーは、硬質な皮膚でおおわれたナックルマジロの下あごを粉砕する!
「きゃぁ!!?」
ニッちゃんはアッパーの反動により、思わずしりもちをついてしまう。
ナックルギアってのは構造的にいえば
『パイルバンカー』って呼ばれてるSF作品に出てくる杭を射出する兵器に近い。
ギア内部の拳に力を籠めると周りの空気を吸い込み、その空圧で爆発するように鉄の拳を前方に相手にぶち込む。殴りつける体制や上腕などの力の込め方でも破壊力は違う。
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「サイムさんやりましたよ!」
「ああ、よくやった!」
ナックルマジロは完全に伸びており、当分は起きそうにない。
こいつのパンチを食らうと厄介なんだよなぁ……。ニッちゃんが喰らわなくって良かった。
「ニッちゃん、少しメンテナンスや調整が必要そうだ。予想以上に隙がでかい。
移動するのも大変そうだから、ギアを解除してもう一度セットするって戦略をとるべきだろう。『よける』より『守る』『攻撃を出させない』ことを意識しな。」
「わ、わかりました。」
「あともう一つ!そのギアは、連発はできない。何度も連発していたらオーバーヒートして、肝心な時に動かなくなる可能性がある。気をつけろよ。」
「あ、は、はい。」
俺はこのギアの煙の量が増えていたのを見てた。おそらくこのギア相当燃費が悪い。
「サイムさん!マトリラット捕まえた!」
ハナビがマトリラットを抱きかかえるように持ってくる。あそこから頑張ったみたいだ。
「お、よくやったなハナビ!じゃあ素材取るんで二人とも少々お待ちを~~」
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俺達は家に帰り昼食にする。
料理が終了しすでにメンテナンスは終わりエンジンをかけ始めてた。
「それでね!ハナビすっごく頑張って、マトリラットさん取ってきたんだよ!」
「うんうん。ハナビちゃんは可愛いなぁ~~…。」ニチャあ…
うん、このロリコンの顔はキモイ。
「ソライ、準備はいいな?」
「ういうい、このまま僕は昼飯を食べながら進むよ。たしかパンだよね。二人が頑張ったから付け合わせはあれだよね。」
そう、昼飯の主食はロールパンだが、付け合わせが存在する。
俺が頑張って作った。
「ああ、二人が頑張ってくれたからな、これが二人の頑張りの成果だ!」
「「おおおぉ……ぉ??」」
きょとんとするのも無理はない。
一つは瓶詰にした謎の黄色い粒が入ったものはどーみても、ただのコーンスープだ。
「じゃあ出発するよー。スープこぼさないように注意ねー。」
ソライがエンジンをかけて家を出す。
「サイムさん…これが私たちの頑張り…?」
「まぁまぁだまされと思って。そのパンの上にこの瓶に入った。ふりかけかけてみな。」
「ふ、ふりかけ??パンに?見た目は塩っぽいですけど…?」
ニッちゃんはふりかけをパンにかける。そのまま恐る恐る。口に運ぶ。
「…ん?…んん…
ん!なんというかコリコリしてますね。これ。
なんというか絶妙に塩辛くてパンといい相性です。
あと、どことなく口の中がパチパチする感じが…。」
「聞いて驚け、それはマトリラットの背骨を岩塩の要領で砕いてふりかけにしたものだ。骨の内側に柔らかい部分がありそれを加工したものだ。」
「これ私が取ってきたものなの~!?」
「さっきサイムが台所で何か削ってたのはこれか…。俺の世界には妙な進化を遂げた生物がいるもんだ…。じゃあこっちのコーンスープには何が入って…。ん?コーンスープじゃなくてミートスープか?」
アルゴニックがスプーンで掬いあげたスープの中に小さい肉片が入ってた。
「まぁいいか、いただきやす…。ん~~…。うん…。
肉が口の中でほぐれた。
味はあるけどほぐれて消えてる。これなんの肉?」
「これはな、ニッちゃんが取ってきたナックルマジロの尻尾の肉だ。あいつらはトカゲみたいに尻尾を切れるんだよ。それを洗って装甲を引きはがすだけで簡単に取れる。」
「あ、ぽろぽろ口の中がじゅーし!」
ハナビは感動のあまりほっぺを抑える。
なお小量しか取れないけど、パンとの相性がいいからスープでごまかしている。
この肉自体が味のアクセントになってスープがよりおいしく際立つ。
こうして楽しい昼食を過ごしていった…
…ありがとう、ニッちゃん、ハナビ。
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~家は世界戦争前から普及し始めたぞ!~




