第4話その6『逃亡者3066:打ち上げ花火』
※この『物語』は『フィクション』です。
※それなりに『姉妹を思う』気持ちで読んでください!
「き、きさまは!敵対者!また会ったな!」
地下の倉庫一室。ノーツーはどうやらここに潜伏していたらしい。倉庫部屋は大体、15㎥の大きさだ。
「武山!こいつはなんだ!」
「こいつはノーツー!」
「泥棒です!」
ようやくニッちゃんが本調子を取り戻したらしい。
「了解!メダ!吉田!
ただいまより武山冒険社と、一時的協力を結び窃盗犯を取り押さえる!」
「了解!」「了解!」
全員が警戒し場の空気がひりつく。
「吉田!メダ!単縦陣!
万歳式特一第伍戦術『叢雲』ッ!!」
「了解!!」「了解!!」
▽▽▽▽▽▽▽▽
「まず!ニッちゃん!アルゴニック!!下がれ!!巻き込まれるぞ!」
「ヘッッ!?」
「はい!」
俺はアルゴニックを引っ張り射程外へ放り出す。
だが俺はこの会社の真の恐ろしさを知っている。
それは…
「来るぞ。」
万歳ストームの全員がこの倉庫にある、スーツケースや段ボールといった。ありとあらゆる荷物を蹴りあいながら互いの足場を形成し、床や天井を強引に蹴りアクロバティックかつ三次元的な空間を移動して、敵に迫っていく!!
「舐めるなぁ!!」
ノーツーの四本の鉄の大きな腕が彼らに迫るが、吉田が相手の四本の手をスピードで撹乱しつつ、反撃をして来たら見事にいなし、決してとらえられないように視切る。
エイが吉田の撹乱の合間を縫って吉田を補助するかのように的確かつ迅速なけん制として殴り、最後にいつの間にか移動してたメダと名乗る赤髪の鬼が死角から強烈な蹴りを入れ!
常に攻撃の手を休めることなくノーツーを追い詰めていく!
「エイ!」
「吉田!」
「メダ殿!」
「いくぞ!」
連携や協力なんて言葉じゃ生ぬるい。
こいつらは個人の能力を互いが出し合うという考えのもと、ありとあらゆる戦術を考案し状況を打破する。
互いの武器、互いの間合い。考え方や視界まで全てを考えあって行動し、突撃する。
それを中心人物であるタマシイや、副参謀のエイが指示を出す。
状況を見極められるのが厄介なのに、なんの問題なしに指揮をとり、臨機応変に戦える。
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そして何よりも…
「ッ!!?」
ノーツーが少しずつ勢いに押されて引いている、はまっちまったな。戦術に。
――こいつらの最大の強みは高機動力にある。
武山冒険社が一発大逆転を得意としたカウンター系の戦闘技術。先陣をきるソライもそうだが、基本的にチャンスをうかがい、一気に戦闘を終わらせる。命中するか怪しい一撃必殺だ。
だがこいつらは全員とんでもない移動速度を誇り、室内から屋外全ての空間を多角的にとらえ、床や天井を蹴りながら互いにとってベストなポジションに移動する。
その状況下から確実に先制攻撃をとり地道に大量の攻撃回数を重ねる。攻撃は当たらないし
おまけに逃げようにも連携で相手は包囲され続け、だんだん動けなくなる。ほぼ必中の多連続攻撃でジワジワ削っていくというわけだ。
チームで相当の数の訓練を積まないとできない芸当を息を吐くかのように日常生活で応用した結果らしい。
同業種、別系統の技術を保有し町内を争いあっている会社として、互角に戦えているのがはっきり言って奇跡だ。
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「グッ!?」
ノーツーがのけぞった!
攻撃してた三人の呼吸と雰囲気が変わり、三人が同時にジャンプをする。
「決めるぞッ!!万歳式特三第参戦術『雷』ッ!!」
「くらえ!」
「「「ばんざああああああああああい!!」」」
最後に三人同時多方面のスピードと体重の乗った強烈なかかと落としッ!!
風圧で周りの荷物が吹き飛び。
当たったノーツーから鉄がひしゃげて壊れる『ミシっ』という音が聞こえる。
「我々の勝利である」
「「ばんざあああああああああああああああああああい!!」」
万歳ストームが勝利を吠える。
俺は少し不安を感じていた。モンブがあそこまで強かったのに…
妹であるノーツーが弱いとは思えない。
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「この程度か…?」
「ッ!?」
あれは確実に致命傷だったはずだ…なぜ…
「まだやる気か!?貴様は負けている我々の勝利のはずだ。なぜ立てる!?
さっき、かかと落としは確実に決まったはずだ!!」
「重心だ。貴様らの攻撃が当たる前に一歩引いて自分の重心をずらしながら防御したんだ。
だから貴様らの攻撃は直撃していない。」
直撃を回避するために重心をずらす…。
たぶん、足を一歩後ろに下がりながら身体を倒れるようにして重心をずらしたんだろう。
四本の機械の腕で防御姿勢をとりながら、蹴りを受け止め、柔道の受け身の要領で衝撃を床に逃がす。
そうすると最小限のダメージであの攻撃を回避できる!
ノーツーが立ち上がり、吉田とメダをハンマーでなぎ倒し!
エイの胸ぐらをつかむ!
「ぐッ!?エイ!」
吉田はさっきのハンマーの一撃をもろに食らい!ノびている!
「ッ!!大隊長とソライにはやく連絡しろ!頂上へ!ぐぁ!!」
「エイ!!」
ライバル社の社員とはいえ、そこに苦しんでいる奴がいる…。
「こっちに気を遣うな!先に行け!」
「ッ!了解!」
「……わかった!」
エイは馬鹿じゃあない。何かあるんだろう。苦渋の決断だがな…。
「お前らが何をしようが興味などない。お前らにかまう必要はない。
なぜなら、アルゴニックをこちらへ入手させてもらったからな!」
「にゃー。そんな乱暴に掴まんくっても…」
いつの間に!!まさか戦闘中にやったのか!?
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俺は大急ぎでソライへ連絡する!
「もしもし!なん」
ソライの間抜け声が聞こえる!
「バカヤロー!!早く頂上に登れ!!
まずいことになってんッ!ドわ!?」
「サイムさんッ!」
ノーツーがエイを投げつけ部屋から飛び出した!
「サイム!どうした!」
「ノーツーだ!塔に潜伏してやがった!!」
「え!?」
「今から後を追う!アルゴニックも奪われた!お前らは昇ってろ!!」
「りょ!」
「いくぞ!ニッちゃん!」
「はい!」
「「ガジェットギア・セット!」」
ギアはくるくると回りだし、特殊な分子を排出しボードの形へガジェットは変貌する!!
「いいかニッちゃん!この塔は!武器発生の妨害電波の根源だ。
武器は頂上より下にしか影響がないって聞いたことがある!
頂上ではタマシイと協力し、ドンパチやりあう!だからムッチー達を守りながら下がってろ!」
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ノーツーは地下の階段へ向かう!
とらえるなら地上階だ。あそこなら警備があるうまいこと…
「な!?」
ノーツーは階段ではなく、業務用のエレベーターの扉を背中の腕で無理やりこじ開けてそこから昇って行ったのだ。
だがな!この世界の『古い業務用エレベーター』ってのはな。整備しているやつは、『俺達が乗っている』を使ってるんだよん。
「ニッちゃん、難しいテクを使う!覚悟しろ!」
「はい!」
「このボードギアには左側面を三回叩くと、戦車とかのキャタピラフック上のものが地面に接している背面部に出てくる。
右側面を三回叩くと俺達が乗っている前面部に取っ手が出てくる!
背面部のフックをエレベータールームの外壁にひっかけてフックにつかまり上まで昇る!」
俺は実際に叩き実演して見せる。
「え、ええ!?」
「できないならついてこなくていい!!」
いきなりすぎるが今は緊急事態だ。
普段昇り降りしている籠の外壁にあるメンテナンス専用の梯子に、ボードをひっかける。
フックが梯子に引っかかり昇っていくのだ。
これは俺がそういう日雇いバイトを経験したことがあるから知っていることだ。
ニッちゃんにはいきなりすぎたか………。
「できます!」
と笑っていた。大した子だよ…。
俺達はノーツーと十数秒程遅れて、塔を登りきり頂上へ着く!
そこではしきりに大きな声が聞こえていた。
「はい!!」
「つくぞ!!」
頂上には異様な光景が広がっていた。
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「目標地点!ロの二繰り返す地点ロの二!」
「了解!先手必勝!万歳式特一第肆戦術『深雪』ッ!!」
「な!?」
タマシイが飛んでいる!?
奴の仲間の下には巨人のようなでかさと筋肉を持つスキンヘッドがいる。
踏み台にして上下から攻撃を仕掛ける気か!!
ノーツーの頭にマシンガンの銃口が向けられる。
バンという銃声が響く!
――あまりにも一瞬の出来事だった!
無言で粛々と処理する兵士のように、タマシイは空中でエネルギーの弾丸を放ったのだった。
「まずはけん制だ!」
「よし!いいぞ。タマシイ!上々だ!サンキュー!」
屋上にはほかにソライと3066号になぜかマチルダさんがいた。俺達はエアーボードを解除し屋上へ降り立つ。
銃系統の歯車は分子とか粒子とかエネルギーの弾丸を放つ。基本的にはしびれさせる硬直させるスタンさせるなどの弾丸だ。
だがさっきタマシイがやってのけたのは俗にいう零距離射撃身体がしびれる程度じゃあ済まない。撃ち所が悪かったら、身体が数週間は動かなくなるレベルの奴だ。
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「サイム!」
「マチルダさん!何でここに!」
「訳はあと!それより今はこの状況の立て直しが重要!」
マチルダさんにも思うとこがあるんだろう。
ソライも駆け寄ってくる!3066号も。なんとか上層組と合流する。
「よし反撃開始だ。」
「ぐぅお…お前ら…」
「姉さん!!」
ノーツーが体制を立て直しているときに3066号が一歩前へ出る。
「3066号」
「2611姉さん…」
姉妹は互いを見据える。
「帰るわよ。」
「帰りたくないです。姉さん。
今の姉さんたちは何かが変です、急によくわからないことになって、そして私に暴力をふるったりして…おだやかな姉さんはどこ行ったの?
姉さん達は壊れてしまっているんでしょ、だからあの方に直してもらってください!」
「あたしは正常。3066号、壊れているのはあなたよ。
我々は、道具。人の感情を持ったりしないの。
その目的が、超越の歯車を回収することで、あなた個人の感想などはどうでもいい。
さぁ帰ってあたし達とおんなじになりなさい。」
おんなじ?やっぱりこいつ何かがおかしい!壊れたとは思えないな…
「今のねえさんはとても苦しそうです!」
「苦しい…。」
「そうです!今のねえさんは苦しんでいるんですよね。
あんなにも心が温かかった。姉さんがそんなこというはずないです!!
何か苦しいんですよね!!」
「苦しい思いをするのが、普通というならあなたも同じになるべきよ。」
「普通いりませんッッ!!!苦しいだけの生き方なんて嫌です!!」
「無感情は普通はなのよ。」
ノーツーの腕が3066号に向かって伸びる。
「やめて!」
その時、3066号の前に、
ソライがいつの間にか仁王立ちで立ちふさがる。
「ちょーーーーっと聞き捨てならないなぁ!その意見、感情のない道具?
何言ってんだ!!その子は現にお前ら姉ロボット達をどうにかしたい!
そう悩んで悲しんだりしている。この子は道具なんかじゃない!!」
「理解不能。」
「じゃあ理解してやるように言ってやんよ!
その子は悲しんだり、喜んだりすることができる『人間』なんだ!
ただの『機械』なんかとはちげぇんだよおぉおお、ばーーーーーか!!」
「否定、我らは機械だ。」
「そうじゃねぇよ!僕の萌えを愛する心が言っている!
その子はキュートでラブリーな人間の少女なんだよ!
ただの機械ごときと一緒にすんじゃねぇよってこと!!」
俺もいい加減我慢の限界だ。
「そうだ、苦しい生き方を分け与えるなよ。
年上なら、年下へ手を差し伸べろよ!
そして年下が年上の思いを聞いて互いに手を差し伸べてやるのが!家族ってもんだろ!!」
「理解不能ッ!!!」
「…おれには家族はいねーが、ガキ一人のわがままを聞けねーほど腐っちゃあいねぇ!
3066号ッ!お前はどうしたい!?どうしてほしいんだッ!!!自分の口で言え!!!
自分で言わなくっちゃあ、お前はこれからも姉から逃げてるのことになるぞ!」
「…ソライお兄ちゃん…サイムさん…わ、わたしは…姉さん…と一緒に帰りたくない!
姉さんから守ってほしい!お願い助けてッッ!!!」
「その依頼!!引き受けた!!」
「この子には指一本も触れさせないぞ!!」
▽▽▽▽▽▽▽▽
その言葉に対して明らかな怒りの声を込めて
「理解不能だ。だが、任務に影響する可能性が高い要因と判断します。
ただいまより対象を『排除します。』」
そういうとノーツーは懐から歯車を取り出し。掲げる。
「あれは!!この前奪った超越の歯車!」
「オメガッ!!」
マチルダさんの歯車を使う気か!
「知らないようなので教えてやろう。我々の体は、超越の歯車の規格に合ったアダプタがセットされている。」
当たりにまばゆい銅色の光が輝きノーツーは背中の四本の腕のじゃない自分の右腕に歯車をセットする。
「レガシーギア・セット!」
ノーツーの右腕は急速に変化していき未知の幾何学模様が描かれた、とても大きな銅色のランスへと変貌を遂げる。
「すごい!力があたしの中にあふれてくる!」
光悦な表情で言い放ち武器を俺達に向ける。
これは…やばーい感じ…
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~ノヴァアージ知恵袋のコーナー~
~タマシイは元銀行員→元ホームレス→現冒険職と激動の人生だぞ!~