憎む心と信じる心
「ガチュウううう!!」
「原初の力よ!!我が神域に力を!!!」
タケヒコは素早く飛び立つ!
俺らはニッちゃんとユミに道を創ってもらいつつ、俺とハナビでけん制して、敵のいない場所まで素早く移動する!
「タケヒコ!!ジランが!!」
俺はジランの上半身が変化して何万、何億ものの腕になっていることに気づく。
まだ内部にいるサンアが見えないことからおそらく腰のあたりにいるんじゃないかと予想できるな。
だが悠長に予想を立てている間にも、無数の腕は牙や爪のような鋭利な構造へと変化していく!
どうやら狙いは俺らではなく空を飛ぶタケヒコのようだ。
「まずい!!」
ジランの腕がタケヒコへ攻撃が届きそうだ!!
「原初の火!!!」
だがタケヒコは魔法のように手の中に火を創り出し投げ飛ばす!!
翼を使い腕から上空へ身体をひねりながら逃げるタケヒコ!!
途中腕へ当たりそうになりながらなんとかこれを回避ている…。
戦闘の経験値の差が違う…。
「切り刻んでやる!!絶望死滅切り!!」
だが前方へオングストロームが来る!!
「当たらぬぞ!」
オングストロームの即死攻撃を何とか回避し
そのまま斧で吹っ飛ばすようにオングストロームを跳ねのけ、ジランのほうへ!!
「原初の審判!」
タケヒコの攻撃でジランは縦に一刀両断される。
腰までよじ登るつもりでいたが手間が省けた!
最も他のみんなには何が起こっているのか、わからないでいたがな…。
精神生命体になってもやるじゃないか…。
「みんな!!見てみろ!!あそこに!!!」
一刀両断された先には黒い球体が浮いていた。
「…」
「さぁ出て来いよ!!サンアァァ!!!!」
俺らが叫ぶとサンアが黒い球体の中から出てくる。
すごくくたびれていて哀しい目をしている…。
「…本当に君たちは何しに来たの?
なんで、僕の邪魔をするの?」
「俺らはお前と話して分かり合って仲良くなるために来たんだ。」
「は?僕はそんなの望んでいない。」
「俺らはそうしたいんだ。お前とともにいたいんだ。」
「…なんで?何かのいじめか何か?」
「違う!俺は本気だ!
なぁサンアもう憎しみに囚われなくていいんだ。
哀しみ続けないでいいんだ。
怒らなくってもいいんだ。」
「まるで僕を否定するんだね。」
「否定?違う!
俺らはお前を許すんだよ。
お前を許してお前に許されたいんだ。」
「人間が?僕の心をわかったように言うなよ。」
「いや、俺らはお前のことはほとんどわからない。
あの扉の向こう側の世界で何があったのかも。
残念ながら何もわからない。」
「ほら見ろ。」
「だがな、わかろうとする意思はある。
わかりあおうとする想いがある。」
「わかろうとする意思?くだらない。」
サンアはお面を血の涙で濡らしながら威圧を放つ。
人間に絶望し、命に絶望してきたもの。
だからこそ、こいつの心を救う。信じれるその時まで。
「くだらないと、否定し続けてきたものが重要なんだ。」
「くだらないって言ってんだよ。どーでもいい。僕は憎悪そのもの。
人間から産まれ落ち、人間を殺すもの。
最誕なるものだ。なんどだって産まれて殺す。
僕が死んでも僕と同じ思想をもつものは必ずこの先の時代にもあらわれる。
そしてまた同じようにその存在にも君たちは大勢で『当たり前で正しい』という、
猛毒のついた刃物をにこやかその人の顔を見ずに、ぐしゃぐしゃになるまで突き刺し続けるだろうね。それが人間という当たり前だ。」
「あー命ってのはとても軽い、でもなその軽い命は時として困ったら誰かを助けることだってできるし、助けられることだってできる。
そして歴史に名を残すことだって、人に愛を伝えてはぐくむことだってできる。」
「…人間の助けなんていらない。誰も助けてくれなかったじゃないか!!
僕がベランダに立っても、誰も手を差し伸べてくれなかったじゃないか!!」
「………………………………そうだな。世の中は不条理だ。
俺だってソライがいなかったら今頃、死んでいただろう。
助けてって一言、言ってたらお前の憎しみなんて産まれなかったんじゃあないのか?周りを頼れ。自分だけじゃないんだ世界は。
自分にとって害になるだけが世界じゃないだろ!!
それでも人間が嫌いなら!自らと人間両方を変えてのければいい!!」
「…」
「ほら、苦しいんだろ。」
「やめろ。」
「哀しんだろ。」
「やめろ…」
「つらいんだろ!」
「やめろ!!」
「だからさ『助けて』って言ってみろよ。」
俺は目をそらさない。
「やめろおおおおお!!お前らに何がわかる!!
絶望が!!殺意が!!何がわかるんだよ!!
それをわかった風に!!!なにが助けてだ!!!
そうやって下に見られているから!!いじめられるんだよ!!
石を投げられ!!水をかぶり!!
時に蹴られ!!死ねと言われ!!命共が!!
そういう人の基準の元生きてきた!
そういう普遍的な【人間である根本的な問題を抱えた】生き物の君たちが嫌いなんだよ!!
人間以下のバケモノの気持ちも知らないで、
さも当然のように生きている人間どもが、憎くて憎くてたまらないんだよ!!!
何もわかってないくせして、お前らの正論と正義が僕の首を絞めていく!!
人と違ったら当たり前という刃物でめった刺しにして殺してもいいのかよ!!
人間肯定論者どもめ、
そういう僕に対して気持ちが悪いと思ってさ、また暴力をふるうんだろう?
それをなんで知った風に聞けるんだよ!!」
「満足か?」
「何を!?」
「お前は最低の馬鹿だよ。俺同様にな。
他人が苦しめばいい自分のことは何も知らないでって思ってる時点で
お前は他人をわかってあげようっていう気持ちが足らない。
他人の気持ちを考えていない。」
「ああ、そうだよ!!
他人の気持ちなぞどうでもよくなった!それがどうした!!」
「他人の気持ちっていうのはわかってあげるだけじゃあ本当には繋がれない。
他人の気持ちっていうのは、考えて信じあわなきゃ信頼も友情も愛情も、
繋がれないんだ。」
「…なにを知った風にっ!!」
俺は自分の胸に手を置いて、サンアの哀しみに覚悟で答える。
「なぁ…サンア。俺はお前と友達になりに来たんだ。」
「くだらない。友情ごっこはやめろよ。
友情なんてない。みんな所詮まがい物。うわべだけだ。」
「そんなわけねぇよ。友情ってのはそんなやわなもんじゃない。」
「僕の信じた友情はとても薄い。
みんな、それぞれの生活をとっていって消えた。
お前も同じだ。信頼なんてない。」
俺は友情を答えたランスを強く握る。
「ああ、そうだな。でもな、友情はうわべだけじゃない。
友情は誰かとの繋がりはそんなに簡単に消えるもんじゃあない。
一つ、約束してやるよ。俺は当たり前には染まらない。
お前との友情は決してなくさない。一生大事にしていく。
俺は常に心を冒険していく、それが『冒険職』だ。」
「…言葉ではなんとでも言えるよ。」
「ああ、じゃあ何度でも言おう。
俺はお前と友達になる。
たとえ、どんなに離れていよーが。
お前との繋がりはなくさない!」
「…」
「だから、苦しいんなら『助けて』って言ってくれ。」
「…」
「…」
「…僕からその言葉を奪ったお前ら人間がそれを言うのか…
お前たちが欲しいのは免罪符だろ?自分が楽になりたいからだろ?
第一どうやって僕を助けるのさ。」
「まだ考えてねぇよ。だがな、ちょっと見方を変えることはできる。」
「見方?」
「そうだ。見方だ。この世界をそして向こうの世界も見方を変えるのさ。」
「狭い視野にとらわれるのではなく、部屋に閉じこもっているだけじゃなく
殺意にとらわれているだけじゃなく、もっといろいろと見るのさ。感じるのさ。
そして二本の足でしっかり胸張って立って歩く。
それだけでちょっと世界は違ったように見える。
考えているだけじゃわからないようなモノを見る。
たったそれだけだ。いろんな場所を見て回るだけでもなかなか楽しいぞ。
いろいろと経験して学ぶだけで、だいぶ世界は明るく見える。
だから[冒険]する偏見だけじゃない世界を見る」
「それは哀しい一面が見えてくるだけじゃないのか?」
「そりゃあそういう一面も見えるだろう、だが哀しいことが全てじゃあない。
臆することなく進んでいく。前を向いて進むことが大事なんだ。
そりゃ向き不向きもある。苦手もあるし好きもある。
でもなたとえ他人が差別しようが、自分は差別しないようにする。
他人への注意ばかりの押し付け正義じゃなくて、なぜその人がそう思ったのかその人の正義はなんでそうなったのか?みんなで考えて意見を交換し合ってその考えの根本的な原因は何なのか、どこへ向かうべきなのか?
みんな悩むし迷うと思う
でも途中迷うことがあったらまた『助けて』っていえばいいんだよ。
迷ってないなら迷うまで自分の足で歩けばいいんだ。」
「俺らはお前の敵じゃない。」
「お前らは敵だ!!!!
僕の傷口に塩を塗りたくるような真似をする敵なんだ!!!」
「俺は、お前を救いに来た!!!
敵じゃあないんだ!!!」
「うるさい!!うるさい!!うるさい!!うるさあああああい!!
人間め!!僕の心をどこまで欺き騙そうとすれば気が済むんだよ!!
僕は人間を許さない。『助けて』も言わない。救いなんかいらない。」
サンアは鎌を構える。その声と仮面の奥にはひどい哀しみと怒りと憎しみ。
………そして[困惑]がある。
仕方がない…こういう場合、理解するにはぶつかり合うこと。
そして手を差し伸べて許す事が大切だ。
ならちゃんとケリを付けよう!!
「さぁ!!!僕の忌われし絶望よ!!
僕の哀しみも苦しみも、殺意も全ての絶望よ!!
僕の心を貫き、目の前の敵を!!
人間どもを!!
ありとあらゆる世から根絶するだけの力をッッ!!
僕の願いはただ一つッッ!!人間どもを滅ぼしッッ!!
最後に一人静かに平和に死ねる世界を創りたまえッッ!!」




