第22話その7『始と終の場所:終わりの天筆』
※この『物語』は『フィクション』です。
※それなりに『最終決戦の』気持ちで読んでください!
三すくみ…状況の打開…。そろそろか…?
俺らが割ってはいるわけにはいかない。
六道の面々もレイトさんも膠着状態。
ハナビの姉妹も縛られて動けない。
――だがこの場にもう一組…いるよなぁ…??
「「「状況 の 判断了解 。 行動 を 開始します。」」」
「なんだ!!?なぜ別の部屋にいたそいつらが…。」
ハナビのご先祖様達。力を貸してもらうぜ…。
「「「『受注生産』」」」
俺はすぐに違和感に気づいた。
まさに一瞬の出来事だ。
ハナビの姉妹達の足元に赤いリング状の光が出て、
そのリング状の光の中に姉妹が落ちていく。
それと同時にレイトさんが槍の矛先を変えてリギョクへと向けて
ジンコが自分たちへ武器を向けている残りの六道の二人へと武器を向けなおす。
「………してやられたな
………『河童の抜け道』を後ろのキンガもどき共に作らされたか…。」
俺の後ろに姉妹達が転送されたことを確認する。
ハナビはかけより猿轡をほどく。
「お姉ちゃん大丈夫!!?」
「うん…怖かった………。」
「姉さまぁああああ~~!!」
「大丈夫 ですか?」
後ろのハナビのご先祖様たちの言動で思ったのだ。
こいつら、同族であるハナビには名前を聞いてきたが、俺らの名前は尋ねようとしてこなかったのだ。
つまり無関係であるこいつらを動かすためには、同族である姉妹の危機であると状況を理解させる必要があった。
ハナビの背中をたたいた時、レイトさん達には手が死角になる。
そうなったら中学のころから使い慣れたハンドサインでソライとユウジに指示を出す。
俺が説得で注目をひきつけている間に、仲間に背中を預けあとは状況をそろえさせてもらった。
俺は少し後退し、ハナビ達のもとへ駆け寄る。
「やれやれ…だが………ここで僕はいっそのこと、こいつらも君らも叩きのめす!」
「やってくれたよ………武山才無…主様そっくりだ…。
だが、今姉妹を逃すくらいなら君をここで討ち取ってもいいのでありんすよ?」
「………いや、俺は死ぬつもりはない。………ハナビ、姉妹たちよ。
少し協力してくれ…。」
「………うん。」
ハナビは小さくうなずく。
そして近くにいたエプの手とヘラロスの手を取り合う。
「みんな少しだけ協力してね?
今からハナビ達の中にある分散してしまったお母さんの意識を抽出するから。」
「「「「「「…?」」」」」」
ロボット達は困惑した様子だが、姉妹の互いの手を取り合い輪になる。
――そして彼女たちは目を閉じる。
「お願いします。」
「「「命令を確認。
これより機体番号 NAL-AXX9000-TYPE-87 の再構成を開始します。」」」
「な!!?待つでありんす!!」
「「「七つの 機械人 からデータを抽出。
当部屋にある 破損した機体 へ
NAL-AXX9000-TYPE-87 のデータの転送を開始…。」」」
「「「「「「「データ転送中………」」」」」」」
ハナビ達、姉妹の目が見開かれから、それぞれ光が飛び出し輪の中央で混ざり合うと、部屋に乱雑に置いてあった壊れたロボットへと収束していく。
光がロボットへ宿り切ると昼よりも明るい光が部屋を覆う…。
俺らは何も見えない中、ただ一言だけ聞こえた言葉がある…。
「――再起動開始。」
その存在はゆっくりと立ち上がる。
□◆▽◆×◆○◆
「ふふ…やったよ…サイムさん……。本当に動いている…。」
「あれが………お母さんなの…???」
光がましになり視力が元に戻っていく中、少しずつ変化があった。
俺の隣でハナビ達が疲弊して膝から少し崩れていく中…。
思わず彼女たちの笑みがこぼれる。
その者は、ゆっくりと肩足を引きずりながらモノアイでかつての仲間を見つめる。
「はぁ…復活したてでまさかこんなことになるとはね…。
娘の中から見ていたけど………はぁあ~~
………ほんと…いくつになっても、時代になっても…おまんらは………。」
そのデッサン人形な体で手で眉間を抑えて困ったような表情をする。
その者が現れたことでレイトさんや俺らが唖然にとられている中…
ただ一人、花魁姿の悪党がふらつきながらも猛ダッシュで歓喜のあまり駆け出す。
「キ、キンガ…?……キンガァァァ…!!」
リギョクはキンガに飛びつこうとする。
「よっと。」
「ぐあぁッ!?」
それをキンガは手を掴み、一本背負いして投げ飛ばす!
「な”あ”あ”ああーーーにしとるんだッ!!お”ど”れ”らあああああ!!!」
その女性の声はおそらくエイドスドアルーム中に響き渡るかのような
本気でぶちぎれた声だった!!
「あ………え、あ…キ、キン…ガ………?」
「ああ””!!??」
「ぃ…え……とっぉ…………。」
バッシィ!!
と部屋中に響き渡るリギョクへのビンタの音…。
「馬鹿がよ!!!クズめッ!!
あっしを蘇らす、どーだこーだの前に人質に取られた子供の心配せぇ!!!
ボケェ!!」
「あ…いや……その…」
「余計な言い訳よるなや!!だあぁっとれ!!」
「………。」
すげぇ方言のくせが強いぞ、ハナビの母親………。
それにリギョクはすごい勢いで動揺より落ち込み方がひどい…。
「………この機体だと時間はほぼないぜよ!
だから簡潔に言ってやる!」
「………。」
「六道も!そこのレイト殿も!ひどいことを互いにするような馬鹿どもぜよ!!
少し落ち着けェ!!いい年した大人が子供の前で騒ぐなァ!!」
「………。」
「………。」
「唐突に現れておいて…あんたなんか…」
「黙るぜよ!!おまんは瘴気に憑かれたうつけだ!!」
レイトさんをそのモノアイで睨みつける。
「………カイラ、この者のため少し約束を破る。それでもよいか?」
「HAHA…YOUが元々決めた取り決めだよ。金の字。
わいはそれでもよいでゴザル。」
「うん………。『受注生産』………。」
キンガは手元から何かを作り出す。わずか数分で作り上げたそれは、青い水晶と金属製の天秤のようなものが付いたボールペンの様なものだった。
「………うまくできたかな…?
これは【禁忌中の禁忌の産物】この世界にもうほぼ存在している物はないであろう物体。概念と概念の間を縫うような繊細な物体。
存在するだけで危険なパラドックスと自己同一性の崩壊を引き起こし、世界の均衡を揺るがしかねない本当に危険な物…。」
「NAL-AXX9000-TYPE-87 それは禁則事項 13 番です。」
「わかってるよ…兄弟姉妹機達…。
でも………身内がしでかしたことなんだ…。
あっしができる事をしたいんだ。」
「………。」
「いいかい?レイトとやら、これを使いなさい。
とてもリスクがあるもの、使うのであれば終わったら必ず壊すということを約束したうえで、おまんが決断すること。」
「………これはなんだ…?」
「あっしが事故で身体と意識を分散させた原因の道具であり、
今もなお、ここにいるカイラを転生させてしまっている原因。
禁忌物【黄泉戻しの天筆】。」
………【黄泉戻しの天筆】??
「これは人の記憶を無差別に産まれてくる赤ん坊に書きこむことができる道具。
だが記憶が同じと言えど、魂は違う人物。別人であるという事実が前提にある。
これを使えば他人と言えど、死者の記憶を受け継ぐことができるのだ。」
………死人は生き返らない…。アルが言っていた…。
だがこれは生き返りはしないけど、マジで概念の隙間を縫うような行動だ…。
「ただし…使おうにもリスクはある。
一つ、うまくいく可能性は50%と言ったところ。
二つ、脳にダメージが少なく死して間もない死体しか利用できないこと。
三つ、あくまで生き返りではなく記憶の転写であり、蘇ったとしても当人とはまったく別の性格である可能性が高いこと。
四つ、下手な使い方をすると転写したものは永遠とも思える時間を様々な赤ん坊に転写され続けて生きなくてはならないこと…。
そして最後……。」
キンガは少しためらうように瞬きをする。
「五つ、装置を使うためには【蘇らせたいと深く願ったもの】が
【自ら命を絶ちエネルギーをチャージしなくてはならない】という点だ…。」
………なんだ…それ…つまり自分自身は会えない代わりに、他人のどことも知れぬ子供に会いたい人物の記憶を写すって…
そんなの………世に言う【トロッコ問題】じゃないか!
脳が関係しているのかヒトメには使えずともレイトさんの仲間は、今だ箱舟の中に安置されていたはずだ。
「どうするのだ?これを使えば【仲間という記憶】を生き返らせる事ができるだろう。
その代わりにお前は死ぬ。お前の命をチャージすれば全員を救うことはできないが、大体20名を転写することができる。
ここでクロちゃんや娘達に復讐をするというのなら、この装置を破壊する。
使うというならこの場から消えろ。
………どちらも諦めるというのなら、それでも構わない。」
「………。」
「…瘴気に憑りつかれ、大事なことを見落とすな。」
………おそらくそんなに時間は経っていないのだろう…。
だがレイトさんはぎらついた目が落ち着いていき…。
何かを決心したようで、ゆっくりと少し哀しそうに笑うように口元を歪ませる。
装置を手を取る。
「………………………………………今からここを去る…。使うかどうかは少し考えさせてくれ…。」
「脳が腐る前に決断をすることをお勧めしておくぜよ…。
命をチャージしたらおまんの半径数mにいる仲間の記憶の転写が始まる。
そしておまんの寿命はおそらく数分間になるだろう。その数分間の間に
装置を壊せ。あってはならないものだからだ。」
レイトさんはうつむき、研究部屋を後にする。
これから彼がどうなるのかは彼が考えることだ。
□◆▽◆×◆○◆
「さぁーーーってと…緊張したーーー…。
けどまだやることあるなぁ…。」
キンガはモノアイをうなだれるリギョクへ向ける。
「クロちゃん、まだ完全な復活じゃないから残り数十分、短時間のうちに伝えておくべきことを伝えておくね。」
「………あ、ああ。」
…少し憔悴しているが少し二人とも少しうれしそうに笑う。
「その1、娘の下着にアレはダメです!
自分の好みのえっちなのを押し付けるべきではありません。」
「…はい。」
「その2、あなたが変にかかわるから、子供たちが『おませさん』になっています!
ほとんどが特殊性癖持ちの姉妹なんて聞いたことがありません!」
「……はい。」
母親であるキンガの『特殊性癖』という言葉を聞いて、ハナビを含めた姉妹はびくりと体を震わせる。どうやら心当たりがあるようだ。
「その3!!悪役ごっこはほどほどにしなさい!!
それで子供たちに悪影響が出たらどーするの?
あの子たちは結構自立しようとしているのに!」
「………は、はい…。」
完全に母親に怒られる父親みたいな構図だな…。
「最後に!!」
「………。」
「この身体を解析するとかそういうので、
無理ない範疇で完全復活してくれるって信じているんだから、
ガチュウ殿とかみんなとまた会えるってわかってるから!
だから………まだあがくぜよ。
天への道は地獄を歩んだものしか、たどり着かせないから。」
「………うん。」
キンガは少しずつ声にノイズがかかってきている…。
「後ろの三人も、そん時はまた…。」
「別に構わないさ。神って暇だし。待ってやるよ。100年でも200年でも…。」
「また会えたら、今度はお前のケツをひっぱたかせてもらうよ。
いつまでも待たせたツケだ。っはは。」
「HAHAHA………その時こそ、この転生…いや転写が終わる時だ…。」
「ああ…友よ。」
キンガは俺へと向き直る。
「ありがとう。主に似た【超極の民】よ。
貴様らの旅に良き終わりと始まりがあることを祈る。」
少しずつノイズがひどくなっているのか音質が不安定になっていくその声に、俺は力強く頷く。
「NAL-AXX9000-TYPE-87 …いや キンガ。」
「兄弟姉妹機達よ。おまんらも、ここを去る時が来たな。」
「…。」
「…禁則事項に触れたら、その者を破壊するプログラムを………発動していない時点で気づいているのだろう?それがエラーだ。また会えたら会おう。」
ここまで案内してくれたキンガと同型のロボット達は小さく頷いたように見えた。
ふらふらとおぼつかない足取りで、キンガは自分の子供たちへ駆け寄る。
「こっちへおいで…子供たち…。」
「「「「「「「…うん。」」」」」」」
姉妹たちは互いの顔を見て。母親として接していくれるその者へ駆け寄る。
「…停止するまでお話を聞かせて……。精一杯、悔いのないようにみんながどんな子なのか、教えてほしいの。そうしたら止まっても寂しくないから。」
「え、えっとね!お母さん?僕ね……。」
「…あたしね!えっとえっと…。」
――ここから先、彼女たちの話を俺が語ったりするのはとても野暮だろう。
ただ少女たちとその母親は、何気ない話をしていた。
楽しそうにずっと………彼女が止まるまで。
冗談めいた話を、将来のことを、恋や日常のこと、旅のこと。
ほほえましく。暖かく。子供っぽいそんな親子の会話。
――この光景はきっと…。
誰かが神として見守って。
誰かが王として導いて。
誰かが生き残ろうと必死になって。
誰かが悪になってまで。
誰かが復讐を抱いて。
それでもつかみ取りたかったものは
おそらく彼女たちの、このわずかな会話だったのではないだろうか?
そう思えるようなそんな愛情深いぬくもりを感じた。
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~ノヴァアージ知恵袋のコーナー~
この物語を作った理由は【三つ】ほどあるぞ!
その【三つ】は最後に語るとしよう。
そしてここでこの【知恵袋】の役目も終わりだぞ…!
心のままに真実を探し出すんだ。最後までやり遂げろ。頼んだぞ。
そしてそれを…。




