第3話その7『友達と別れの岩絵具:別れの桃色』
※この『物語』は『フィクション』です。
※それなりに『彩溢れる』気持ちで読んでください!
「さて、万事解決だ!」
「「いえーい!」」
「あいかわらず無茶苦茶ね。あなたたちの解決法。まぁしっかりと更生させたのでよしとしましょう。」
マチルダさんだ…
その昔、ありとあらゆる学校を飛び級で単位を取得し何故かは知らないけど、この下町に行きついたっていうまさに天才少女であり、サイムさんたちがいつも困ったら泣きつく人だ。私とは知り合いだが接点はあまりない。
「サイムさんたちがお世話になっています。」
「本当に世話ばかり焼けるわ。やれやれ、バイトまで問題に巻き込まれるとか、本当にあなたたちってば…」
「すみません。」
私は頭を下げる。
「ニッちゃんの知り合い?」
ムッチーが聞くマチルダさんとムッチーは初対面だった。
「うん、この人はろある堂のマチルダさん。ほら鑑定屋の。」
「あ、初めまして、睦月といいます。ニッちゃんからはムッチーって呼ばれてます。」
「私は書輪街子『大天才少女-ジーニアスガール-』。ろある堂の支店長の、マチルダさんといったほうがわかりやすいかしら?」
「で、俺がアルゴニックってもんだ!」
そこにいたのはメイジダンジョンで出会った、なんだかよくわからない生き物アルゴニックさんだった。
「あ、起きたんだ。アルゴニックさん。」
「おうよ。今さっきこいつらと協力関係を結んだばかりだ!」
協力関係って…。
サイムさんを睨む。
ちらっとそっぽを向いて口笛を吹いている、どうせまた面白そうだからとか言って、なんだかよくわからない協力関係を結んだんでしょ。
「で、サイムさん達はなぜ、マチルダさんと一緒にいるんですか?」
私は地味に気になっていたことを言う
というよりまともな女性の交友関係の少ないあの二人がなぜ、こんな美人と一緒にいたのか、さっきから気になってしょうがなかった。
「あーっとえーっとな。話は数時間前にさかのぼるんだが…」
サイムさんはこれまでの経緯を話す。
願いのこと護衛の依頼をしたこと
マチルダさんと買い物をしたこと。
それらを説明してくれた。
▽▽▽▽▽▽▽▽
「あれからマチルダさんの買い物が無事に済んで、帰り道に何が起こるかと思えばこれだよ。何とかなったからいいものの。」
「しかしニッちゃん。無理は禁物だよ。」
「ごめんなさい。助けてくれてありがとうございます。」
「まぁ何かあったら互いをフォローをしあうのは大事だ。
世の中にはソライみたいな変態が、うようよしているもんな。」
「え、僕!?」
ここでマチルダさんが口を開く
「あの、聞きたいのだけれども、さっきの男どもの目とか壁や地面は、なぜペンキがぶちまけられているみたいに、なっているのかしら?」
そういえば疑問だ、ソライさんが拾った紙は『絵』が描かれていた。写真じゃあなかった。なんであの瞬間をこの短時間で描けたのだろう?いったいどこから?
「あ、えっと、説明しづらいことですが、それたぶん『カイちゃん』の仕業です。」
ムッチーが、恐る恐る手を挙げて言う。
「そういえばムッチーさっき『助けて、カイちゃん』って言ってたもんね。
カイちゃんって誰?」
ムッチーはカバンからガサゴソ何かを取り出そうとする
「あの、えっと、その、これがカイちゃん…です。」
その物体は色はピンク色だけれども、形、大きさ、不思議な模様。それは完全に見たことのある代物。中央には『χ』っていうマークが点滅していた。
それは…
「超越の歯車!?」
「この独特な感じ、『ピン』じゃないか!
いや、この世界では『カイ』か!お前なんでそんな状態でいるんだよ!」
と、アルゴニックさんが反応すると、それに答えるかのように、歯車から声が聞こえる。
「げ、アルゴニックじゃん!あんたこそ、起きたの!?
この姿にはいろいろと訳があるのよ!」
「キエアアアアアアアアアアアアアシャベタアアアアアアアアアアアア!!!」
ソライさんが馬鹿みたいに叫ぶ。
「本日二回目だぞソライ。いい加減慣れろ…。」
二回目って何があったんだろう?
「ううぅ…まさかのピンか…まぁいてくれてうれしいけど…」
「はっきり言いなさいよ。」
「なんでもない…。」
なんだろうこの思春期の娘と父親みたいなやや険悪な雰囲気…。
「カイちゃんは私のおじいちゃん家の、蔵にあったんです。」
「ねぇムッチー…ちょっといいかしら?」
「何?カイちゃん。」
「私ね。この前言った家族までの帰り道ってのは…
実はね、この謎生物のところなんだ…。
だから、あなたとはここで、お別れしなくっちゃならないの。」
「え、そんな!突然すぎるよ!私、お話したいこといっぱいあるのに!!」
「ごめんね。ムッチー。でも私行かなくっちゃならないの。」
「嫌だ、嫌だ嫌だ!カイちゃんが行っちゃうなんて嫌だよ!!」
ムッチーから涙がこぼれだす。
「ごめん。ムッチー。でもね、大丈夫、あなたは強い子、本当は強い子。それでいて優しい子だから私がいなくたって大丈夫。」
「それでも嫌よ!」
「ムッチー、いい?愛情のこもった別れも人生で必要な美なのよ。だから、それも糧として生きていきなさい。その糧一つ一つがあなたという『絵』を育てる。いつかまた、あなたと出会ったときに成長したあなたという絵を私に見せて。それまでお別れよ。」
「うう、わかった。ありがとう。でも、アルゴニックさん。
一つだけわがまま言っていい?」
「時と場合による。」
「今日一日だけは一緒にいさせて。
家まででいいから。お願い。
なんなら帰り道だけでもいいから一緒にいたいの。まだ心が整理できないの。」
「うーん、まぁ別に急いでないし。俺はいいよー。ピン…じゃなくってカイ次第だ。」
「もちろんよ。もう少し話してお別れ…しましょう…。」
「ニッちゃん、君を冒険社の一員としてお願いだ。
ムッチーを守ってやってくれないか?
俺らはマチルダさんとこの後もちょっと用事がある。
君が何とかしてムッチーとカイを家まで守ってやってくれ。」
私は一息をついて決意し答える
「了解です!」
「じゃ頑張ってねー。」
ソライさんはゆっくりと歩む。マチルダさんは一礼をして、その場を去る。
「カイ!オメガともどもあとで、お前らにほかの歯車のことを、たんと聞いてやるからな!」
「なにもないわよー。あっかんべーっ!」
アルゴニックさんはカイちゃんに若干の舌打ちをしてその場を去る。
「よく引き受けてくれたな、ニッちゃん。いい子だ。」
サイムさんは私の頭をポンポンしてその場を去る。
「じゃあ帰ろう。ニッちゃん。カイちゃん。」
「ええ。」
「…うん。」
▽▽▽▽▽▽▽▽
私とムッチー、そして超越の歯車のカイちゃんは、ゆっくり帰路についていた。
「カイちゃんは、服選びのセンスとか、色とか絵がすごくうまいんだ。」
「ああ、だから突然センスが良くなったんだ。
さっきの買い物の間もずっとアドバイスをしてもらっていたから。」
「ええ、私はなんたって『絵』の歯車、またの名を『表現と心の情景を考えるもの 』
センスが良くて当然、ファッションも大好きだし、絵なんていくらでも描けるわよ。」
「一回、家にいるとき子供のころの使わなくなった絵の具とかで
試しに書いてもらったんだけど、すっごくうまかったの!」
「あれぐらい、大したことのない落書きよ。」
どんなのだろう?というよりさっきも思ったけど、その姿でどうやって書いたんだ!?
「すごい美術品みたいなのだからニッちゃんのもあとで見せてあげる!」
「ありがとう!」
「二人ってすごく仲いいんだねー。ちょっと嫉妬しちゃうなぁ。」
「あら、あなたたちも仲いいと思うわよ。」
「「ありがとう!」」
「ふふ。」
「でもカイちゃんは、帰るべきアルゴニックさんとは仲よくないんだね。」
「純粋に馬が合わないだけ、生まれたころから、あいつちょっと苦手。
絵を描くけど中途半端な極め方が気に食わないし。
なんか、私が言うのもあれだけど女としても、絵描きとしても、家族としても素直に嫌い。
一応一緒に行くけどね。
ねぇこっちからもいいかしら?」
「「?」」
「ニッちゃんとあのサイムって人はどういう関係なの?」
「えどうって、バイト先の。しゃ、社長?と思う。」
「ふーん。じゃあ聞きたいのだけど。
どういう風に『思っているの?』」
「えそれは。」
「それ私も気になってたんだよね!
ニッちゃん的にはサイムさんはどういう風に思っていてどういう関係でいたいの?」
ムッチーまで…
「どうだろう。」
わからない。私はなぜかサイムさんにひかれている。
恋かどうかも今の私には、どうやっていえばいいのかわからない。
二人に伝えられない。うまく表現できない。
「ふふ、少し、意地悪だったわね。
私の家族の『ロー』だったら、うまいこと相談に乗れたかもしれないけど、私からはいつか『表現できるように』なるといいわねしか言えないわ。」
「…」
何か見抜かれている感じがする。私の見てこなかった。見ようとしなかった部分まで。
なんだか悔しいなぁ。
▽▽▽▽▽▽▽▽
そんな話をしているとムッチーの自宅の前まで着く。
ここでお別れをすることになるんだ………。
「さてと私はここまでね。」
カイちゃんはゆっくりと喋る。
「…」
「ムッチー名残惜しいわ。とっても、でもいつか。また会える。絶対に。」
「うん。」
カイちゃんは今にも泣きそうな震えた声で話を続ける。
「大丈夫、私が見込んだ女ですもの。
貴女の色はとても素敵な色。きっときれいな絵が描ける。自信をもって。貴女の色であふれたそのパレットに哀しい色は合わない。
哀しい色はすこしでいいの。一緒に過ごせて本当に、楽しかったわ。
ありがとう。」
「わ、私だって。ありがとう!ありがとう!カイちゃん!
ずっと!ずっと!あなたを忘れないから!また、会おうね。」
ムッチーの伸びた前髪が風に揺られ、隙間から涙いっぱいのキレイな目が見える。
「ふふ、最後のアドバイス。前髪は少し分けたほうがかわいいわよ。」
そういってムッチーはアルゴニックさんにあとで渡すため私にカイちゃんを差し伸べる。
「ニッちゃん、カイちゃんを頼むね。」
「うん。」
「カイちゃん、さようなら。」
「ええ、さようなら。」
その時!
「対象を確認。」
という声が路地裏に響き渡る。
声のしたほうに目を向けるとものすごい勢いで茶色のローブを着た何者かが、翼のようなものを広げて地面すれすれの低空飛行で『飛んでいた。』
そういえば、ストーカー!!!
もしかしてさっきまでは不良とサイムさん達がいたから近寄ってこなかったんだ!!
「あ!」
「きゃぁ!」
そのままローブの人物はムッチーの持っていたカイちゃんを強奪する!
「まずい!すられた!!」
まさか!このタイミングを見計らってきたの!!?
ストーカーはそのまま、前方の道へ飛びながら爆速で逃げていく!!
「ニッちゃん!!」
「今追いかける!!ガジェットギア!!セット!!!」
私はボードギアをガジェットにセットし、エアーボードに乗り込む!
「ムッチー!!危険だから自宅にこもっていて!!!
私が何とかして見せる!!!」
「わかった!!信じる!!!」
ムッチーから大切な別れを奪うなんて!
絶対に捕まえる!!!
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~鬼の角の伸び具合は遺伝で人によってコンプレックスらしいぞ!~