第20話その終『最後の歯車:俺とお前の夢と現実』
※この『物語』は『フィクション』です。
※それなりに『穏やかな』気持ちで読んでください!
主観変更side_サイム
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あれ…ここはどこだ??
確かニッちゃんに俺は告白されて……??
そのあと確か…寝ちゃったんだ………。
そうだ…確かニッちゃんが添い寝する形になったんだよな…。
ニッちゃんが告白から緊張の糸が切れて…。
可愛い寝顔は気絶するように眠り。
丘の草の上で俺も疲れから草の上で寝転がって………???
あれ??それで……??
どうなんだっけ??
ん??んんん???ここはマジでどこだ???
注意深く周りを見渡す。
床が………畳??
傍にはボロボロの押し入れ………。
椅子…ゲーミングチェアってやつに。
ボロボロのパーカーがゲーミングチェアに乱雑にかかっている…。
L字型の机の上には四枚の画面。一つはテレビだろうか?
近くに俺も遊んでいるゲーム機
………傍にあるのはソライが見たら喜びそうなパソコンだ…。
ちゃんと印刷機も置いてある…。
机は乱雑に目薬や時計コップが置いてあり、とても清潔であるとはいいがたい。
他にも部屋に薄そうな素材のカーテンがある…。
パソコンの傍には椅子を畳に傷付かせないためかカーペットが敷いている。
机の近くに扇風機。
そして部屋のほとんどの面積をとっているのは二段ベッド…??
いや、二段ベッドの上の部分しかない。
高さが高いだけのベッドか………。
ベッドの下に棚が置いてなかったら見間違えていた…。
なんだ…この部屋は………。
「ここは…どこだ………???」
「にゃふッ!?」
と、俺の背中になんだか硬いとがったものが、突き刺さる。
振り返ればそれはニッちゃんの角だったと即時に理解できた。
「ニッちゃん!?」
「サイムさん!?こ、ここどこです!?」
どうやら俺が入ってきた??と思わしき、入口ののれんから唐突に姿を表したのだ。
のれんの先には真っ白な空間が広がっており、このいかにも生活環満載な約四畳半の部屋だけがここにポツンと存在していた。
「ここ………本当にどこなんだろうな………。」
「私も覚えがありません…。サイム…さんとその………告白して………。
それで今日はいろいろとありすぎて…寝ちゃって………。
それで…あれ?ここは………。」
それが問題なんだが………。
「もしかしてここは夢の中なのだろうか?」
「え…ゆ、夢の中………サイムさんと私と一緒の夢………。
告白した晩に………。」
「確かに神秘的だな…。
でもこの部屋は神秘的とはかなりかけ離れているようだが………。」
「でも夢の中も一緒にいられるの本当にうれしいなぁ…。」
…ニッちゃんもだいぶ砕けた口調になりつつあるのを抑えられないようだ。
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「そう…ここは夢。今の彼の部屋。僕らが暮らすもう一つの場所。」
誰だ………ニッちゃんと俺しかいないはずの部屋に誰かがいる。
いや………ここが夢というならおそらく………。
「………お前は、『夢』の歯車だな。」
「そうだよ。ようこそ、サイム、ニッちゃん。」
アルは言っていた無色透明の歯車だ。どこにもいないそれでも存在する歯車。
気配も感じないだろう。夢ってんなら鏡にも映らないかもしれない。
「僕は君らと出会うのは実は初めてではない。
でもみんな『夢』を忘れちゃうから、いつもみんなにとっては、初めましてなんだ。
だから初めまして。」
「ああ、こんばんは。」
「こんばんはです。」
「ふふ、合わせなくてもいいのに。」
いないけど、確かにいる。ちゃんとここにいる。笑ってる。
優しい少年のような声だ。
「僕はどうしても、ここへ君らを案内したかった。」
「ここはどこだ?」
「アルゴニックの自室。彼にとっての現実世界のね。
それを夢として形作っている。ここしか形作ってないけどまぁ、ゆっくりしてね。」
ここがアルの………。
あいつの趣味って言われれば、この部屋は納得のいくかもしれん………。
俺はキョロキョロと見渡す。ゲーミングチェアに座ってみる。
よく見ればずいぶんとボロボロで、座り心地は俺の社長椅子の方が数段よかった。
ニッちゃんは、ベットの階段を登り俺を少し見つめている。
「なんだか、騒然とした部屋ですね…。
ミニマリストって感じで物をぎゅうぎゅうに詰めた感じ。」
「アルのことだ、利便性を追求しすぎて逆に不便になったとかそんなとこだろう。」
それにしても………なぜこいつは俺らをこの部屋に………。
「なぁ、何でお前は俺らをこの部屋に?」
「………実は僕は君の多分、想像通りだ。
最初にアルゴニックに入っていたのは僕だ。
君らが塔の上で最初に出会った時の歯車はね。」
やっぱりか………。
「だが、アルゴニックは彼や僕ら自身の、特性上願いを叶えるために動く存在
『願望器』だ。だけども『願い』を叶えるにあたって俯瞰して物事を見なければいけない時がある。だから僕は彼から離れた僕以外の『全ての歯車』が集まるこの時まで見届けていたんだ。」
「つまり、お前は『俺らの願い』を判別するために、俺らを観察していたのか?
『夢』を見させるとかそういうので………。」
「その通り。その中で、最も願いの判別が難しいのが君ら2名だ。
だからもっとも大切なこの部屋で少し問いかけたいんだ。」
「問いかけ…?」
「ああ、でも少しその前に大切な話をしよう………。
ニッちゃん、君の今座っているベッドの下を見てごらん?」
「ベッドの下………え………。」
ニッちゃんはベットの下を覗き込む。
彼女の顔に隠れていて何があるのかはいまいちわからないが、顔を上げると。
何があるのかわかった。
「エレデさん…??」
段ボールといろんな部品をくっつけたあの『巨』の歯車、エレデだった。
「そうだ…。彼は約十数年前、彼を………エレデをはじめとする【ロボット達】を【工作】したところから、僕ら《『歯車』》は始まった。僕らの原型。僕らの始まり。それは少年がそのロボット達に命を吹き込むべく『考え』と《役割》という【哲学】を与えた。それが始まり。
だから僕らは【現実での名前】と『こちらの世界での名前』の二つを持っている。」
「つまり、お前らは元はアルが創り出した工作のロボット…。」
「そう………。
少年は周りの人々がはぐくんできた、彼の心をほんの少し分けて僕らを【工作】した。
そしてそれらに基づいて少年の持つ、それぞれの心を特化し成長したのが僕ら。
少年は外と内によって心が作られ。
僕らは外と内によって心が作られた。
心の『対創造』とでも呼称しよう。
だからアルゴニックは人でありながら、道具の心もわかる文字通りの【キメラ】だ。」
「お前はそれで何を伝えたいんだ………?」
「僕が聞きたいことは単純さ。もし、【エイドスドアルーム】を攻略したら
君ら、ソライやハナビ、ユウジやユミも含む
全員の願いが叶わなくなったら………どうする?」
「………え…。」
どうするって………そんなのあるのか?
「惑星創成時【エイドスドアルーム】にアルゴニックがたどりついてしまった
あの時、彼の心を育むだけの人形である、僕らは【エイドスドアルーム】の何らかの影響を受けて、自由に動ける肉体を手にした。
僕らが動き出したのは【エイドスドアルーム】あってのことだ。
人形に命を吹き込み、哲学に基づいた能力を与えたのは
あの【エイドスドアルーム】なんだ。
そして君らはそれに挑もうとしているんだよ。サンアを倒すために………。」
………つまり。
「空の上に浮いているアレを落としたら。」
「創造主としてのアルさんの力が消えて、あなたたち歯車は元の人形に戻る…?」
「うん………。」
歯車の力が無くなったら願いは叶わない。
いや…下手したらアルも動けなくなるかもしれないじゃないか………。
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「さて、それを知って君らは夢を抱けるか?未来を進んでいけるか?
仲間や自分の願いが叶わなくなるかもしれないのに。」
「「………。」」
俺とニッちゃんは透明の存在から繰り出される問いかけに顔を見合わせる。
「…そんなことは多分ないと俺は思う。
………お前らは人形には戻らない。そう思う。
だってその理屈が正しいなら【エイドスドアルーム】とお前たち歯車によって創られた『この世界』そのものも、無くなっちまっても何ら不自然じゃないだろ?
だから無くならねぇ!この世界も!お前らも!アルも!俺も!
俺達の夢も!願いも!無くなりゃあしねぇんだよ!」
「私もサイムさんの心、同様に信じています。
それに、私達が信じたことが『夢物語』だというなら…
夢物語を叶えるのが私達、冒険職であり『武山冒険社』なのですから。」
「………………………ふふ。聴けて良かった。」
「…君たちと僕らは似たものを感じる。
僕ら『家族』と君たち『仲間』…
そっくりだ。ありがとう。最後の質問だ。
これはこの世界での僕の存在意義に関する、【僕の哲学】の質問だから
ちょっと仰々しくいかせてもらうよ。」
パソコンの画面が白く輝き『夢』の歯車の言葉の文字が浮かぶ。
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「…我は夢を持ち進むことについて考えるものなり。
汝らに問う、汝らにとって夢とは何だ?」
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「俺にとって夢っていうのは、ただの目標なんかじゃない。
そして手を伸ばせば届きそうなでもなければ、
手から零れ落ちていくようなものでもない。
夢っていうのはきっと、信じあう心の果てにあるもんだと思う。」
「信じあう心?」
「ああ、夢ってのはな、きっと一人じゃあ叶わないんだよ。
アイドルだったら応援してくれるファンあってのモンだろ?
営業のサラリーマンとかだったら顧客あってのモンだ。
人は人と繋がりあって夢に向かって進んでいる。
助け合い、笑いあい、時に喧嘩してこその夢だ。
そして人は誰かとともに『生きている』。
命ってのは食うか食われるかだけじゃない。信じあい、通じ合う。
そんな心の果てこそが、命の輝きこそが
夢っていうんじゃねぇかなぁって俺は思う。」
「ありがとう………。そろそろ、おはようの時間だ。」
「………なぁ『夢』の歯車、ベータ。
最後に俺の方からちょっと些細なことを聞きたい。」
「なんだい?」
「お前の本名はなんていうんだ?人形としての本名。
向こうの世界での本名………。」
「………妙なことをきくね。僕の本名は
【第一世代汎用人型自分行動診断家庭内地域都市用お手伝いロボット
試作コアバッテリー実用実証機
RN01・ミニ・ザ・スモール・ザ・ロボット】
『ザ・』が二個付くのは彼が子供でまだ英語を知らなかったからだね。
これが僕の正式名称。あっちではミニって言われている。」
「………ふはは。アルらしい、長ったらしくてそれでいて奇妙な名前だ。」
「アルさんらしい、まったくそうですね。」
きっと、こいつらの中に詰め込まれたのは子供のころのときめきだ。
それを抱き続けるあいつだからこそ、この世界は生まれたんだと
この名前を聞いて少し納得した。
「さぁ手を出して。」
俺は手を出す。そこには首が傾いたボロボロの人形がいた。
「本当にありがとう。サイム…ニッちゃん…。」
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少し薄目を開ける。
どうやら優しい夢を見ていたようだ。
目の前にはニッちゃんの顔。いい寝顔だ。添い寝したんだったな。
丘の上、空は赤いままだが、朝露が傍の草に乗っている。
少しだけ記憶はとぎれとぎれだが、大事なことは覚えている。
その証拠に、俺の手元には確かにある。
まだ見えない未来、まだわからない世界を表すような透明なもの。
初めて出会った時からずっとそこにいたような、そんな暖かい『夢』を持つ。
『最初と最後の歯車』は俺の手の中に確かにある。
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~ノヴァアージ知恵袋のコーナー~
~私はここにいるぞ………!~
※あとミニの実写画像をのせるかはあるにはあるけど、掲載するかも少し悩ませてください…。