第3話その6『友達と別れの岩絵具:攻撃の赤色』
※この『物語』は『フィクション』です。
※それなりに『彩溢れる』気持ちで読んでください!
ムッチーを送っている帰り道の最中。
ゲームセンターの景品もあるし、ここは高圧配線が多めなのでボード禁止区域から帰っている最中だ。実は少し警戒している。
ゲームセンターを出たあたりか何かがすぐそばをいる気がする。
ムッチーが見られている。という発言をもとに周囲に気を配っている。
もしそれが事実なら今も…
まぁ、いかにも怪しい人影なんているわけ…
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いた…。
何あの人…
そういえばさっきからちらちらいたような…
あのローブを羽織った人…
あれ、今夏だよね。なんでローブ羽織ってるのあの人!?
あからさますぎる!!
背丈からして10代だと思われる、ローブを羽織った人物を横目に私は小声で、ムッチーに呼びかける
「ムッチー、あからさまに怪しい人がいる。ストーカーかもしれない、走ろ!」
「え、うん!」
私たちは走り出す、するとローブの人物も走り出す
「ムッチー、あれ、ストーカーだよ!走って!!」
「ごめん、ニッちゃん!今もう、全力!」
ストーカーのほうが速い!まずい!追いつかれる!私たちは、大急ぎで路地裏に入る。
ドンッ!!と何かにぶつかる!!
▽▽▽▽▽▽▽▽
「あ!?さっきの財布ちゃんと鬼ィ!?てめぇらよくも俺に恥をかかせてくれたなぁ!?」
その路地にはなんと偶然、さっきの不良がいた!
「げッ!まずい。」
しかもその不良のほかにでかい鬼の男の不良もたむろしていた。
「番長!こいつでさぁ、こいつが俺に恥をかかせたくそ女です!」
「誰が、くそ女よ!」
「…ほう、こいつをやったのは、お前か。」
くそ、ストーカーに追われてる時にまさに前門の虎、後門の狼ってとこかしら?
そして相手の種族も鬼。しかも男性で鍛えている。まず、間違いなく勝てない。
「ムッチー下がって!こいつ強いよ!」
「ニッちゃん!やめようよ!」
「ここで引いたら追いつかれる!!」
「ッ!!」
状況をムッチーも理解したようだ。
「どぉれ、俺が相手してやろう。もし俺が勝ったらお前に今以上の苦しみを与えてやる!」
「番長、その時は俺もお供しますぜ、財布ちゃんはたっぷりとかわいがってやるよ。」
しかも変態どもときた。こういうタイプ一番嫌い!!
「悪いけど、そんなのお断りよ!」
「まぁなるようになれって話なんだよ。
この『喧嘩組』番長の名に懸けて、お前らはここで俺に負けんだよ!!」
私は番長のパンチを食らう前に手でおなかをガードする。
「グっ…がはッ!」
そのままパンチを手に食らう。すごい衝撃だ。
こんなのを何度も食らっていたら、立てない。ストーカーの件がなければムッチーを逃がしているところだけど、何が何でもここを通らなければいけない。
「やああああああああああああああああ!」
私は一転攻勢の心構えで、相手の顔面を殴りつけようとする。
傷付けたらどうしよう…
一瞬だが思ってしまった…
「うん?この程度か?」
「ッ!?」
殴ったはずの私の手を掴む、うごかせない!!
力に差がありすぎる!!
いや私も一瞬の躊躇から力を出し切ってなかった!
「おらぁ!!」
そのまま私に肘鉄をくらわす。衝撃で頭が真っ白になりそうだ…
「がぁッ!?」
「ニッちゃん!」
肘鉄をもろに食らい頭がくらくらする。
「ニッちゃん!!ニッちゃん!!!」
「おっとお前の相手はこっちだぜ!
財布ちゃん~、さっきの反抗的な態度の分た~ぷっりかわいがってやるよ!」
「このクズがぁ…!!」
私は声を振り絞る。
「いや!やめて!こないで、」
くそ、私にもっと力があったら!
番長が私の髪をひっつかみながら笑ってる
「そこの小鬼のお前もこれまでだよ。ぐへへへ!!!弱いやつを服従する!いい気分だぜ!!!」
また私の弱さが傷つける。無鉄砲で軽薄な弱さが今度は自分じゃなく、親友を傷つけてしまう…。温かい笑顔を守るって決めたんだ…。なんで私の体は動いてくれなくて、意識を保つのがやっとなの?
吉田君の時も思った圧倒的な暴力や現実の前では、悪知恵を働かせようと気丈にふるまおうと、私は愚かで無鉄砲で無責任で無力だ。
守らしてください…
いや、私じゃなくてもいい。
だれか…
ムッチーを。
せめて親友を、守ってください…
お願い…です。
そんな私とは裏腹にムッチーは、不良を見据える。
「お?どうした!ボコられてぇのか!?」
「…たす、助けて!!『カイちゃん』!!」
ムッチーが誰かへ叫ぶ。
その時だ不思議なことが起こった。まずムッチーの持っていたバッグからピンク色の光があふれだす。
「ムッチー、ちょっとそれを言うのが遅いですよ。」
どこからともなくややきつめな女性の声が聞こえてくる
「な、なんだ!?まぶしい!!」
そしてだ周囲の建物、地面がまるでペンキをぶちまけたみたいに、高速で色が塗られていく。
色は様々な色だった赤、青、緑、黄色、オレンジ、白
そしてピンク、様々な色がビビットカラーで塗られていく。
まるで色が世界にあふれたかのように!
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「な、なんだこりゃ!」
そしてその次に不良にも同じように色が塗られていく。
「おい!前が見えねぇぞ!?」
驚きのあまり番長は私の髪を離す。
「番長!どこにいるんですか!?番長ー!!目が見えないよおおおおー
こわいよおおおおおーーぉぉぉおおおーーー!!!!
おとうさーーーあああああああああん!!!」
番長が私を離して目をこすりだす。だが目をこすってもこすっても、色は落ちないようで。
「こんの!くそアマ共がああああああああああ!!!
どこにいやがるぅうううう!!!!」
番長は無茶苦茶な方向を殴りだす!
「ニッちゃん!!」
「ム、ッチー…」
私は満身創痍になりそうになりながらムッチーの手を取る。
暖かい。手がとっても暖かい。守ろうとしたのに守られてしまった…。
この暖かさに守られている。
「そこかぁあ!」
番長が耳を頼りに、私達のいるところを殴りつけようとする。
「残念ながらチェックメイトですわ、男子諸君。」
先ほどの謎の声が勝利を宣言する。
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その時。
誰かが大急ぎでこっちに走る音が聞こえる。
「「高達流喧嘩術ッ!!」」
うつらうつらとした頭に響くよく聞いたことのある声
「鮃の稚魚!!」
「鰈の稚魚!!」
番長の両肩に強烈な重いかかと落としが炸裂する!
「がぁああああああああああああ!!!」
「「グァアアアアアア!!」」
だがその技をした本人たちも痛がる。
「骨、イッテェエエエエ!」
「かかとが破裂するみてぇにイテェ!!」
少し悶えた後二人はふらふらと立ち上がる。
「はぁーーー…よっしゃ!間に合った!」
意気揚々と長身のロングヘアーの男は言う
「だ、大丈夫かい、ニッちゃん!」
獣人のジャージ姿の男性が心配そうに言う。
「サイムさん、ソライさん。」
私は泣きそうになりながら二人の名前を言う。
「今回は労災を出してやる!こんな馬鹿相手に頑張ったしな!
あとで病院へ行け!」
「ニッちゃん僕に無断で無茶はいけないよ。
でも、大切な人を守るのはすごいことだよ!」
「お二人とも…ありがとう…ございます…。」
ボロボロと泣き崩れてしまう。心細かったものがつながった気がする。
「とりあえずニッちゃん、ナイスファイト。よくもった。あとは任せろ!」
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「サイムさん…ソライさん…なんで、ここに?」
「歩いていたらこの紙が、空からばらまかれたんだよ。」
ソライさんが差し出した紙を見てみると、HELP!という文字と
『テキ』いう矢印で描かれた不良と番長の絵と私が殴られているところの絵が載っていた。
「いったいこれは?」
「さぁな?すぐそばを通った時にこれが空から落ちてきたとき、すぐに駆け付けなければ、やばい状況だったことには変わりない。まぁ何とかなってよかった。」
「お前ら!俺たち喧嘩組を相手にしたらどうなるか、知ってんだろうなぁ!?」
番長がふらふらと立ち上がりながら叫びだす。
私はずっと思っていた
この『喧嘩組』って名前…
聞き覚えがあった。
「…」
「…」
サイムさんもソライさんも真顔で番長のほうを見ると
「プっ、くはっはっはははははははは!!」
「ぎゃーーーはっははははっははは!!」
二人して指をさして番長のほうを笑う。
「何がおかしい!!俺には初代番長とのコネだって!」
「ダウト!」
「ッ!?」
「お前、それ本気で言ってる?」
「はぁ?番長は初代番長とのコネ持ってるに
決まってるだろ、何言ってんだよおっさん!」
「うわー僕らがおっさんかー。クッソうけるんですけどwww」
「おい、ソライ今いいところなんだから自重しろ。」
「フヒヒ、さーせん。」
「いいか、お前らが名前を借りてる、『喧嘩組』ってのは俺が作ったものなんだわ。」
「は?」
番長と不良は唖然と口を開く。
あーやっぱり、昔。サイムさんが言っていたあれだった…。
「だーかーらー、俺がショーワ町、鮫島学園喧嘩組、初代番長。」
「ま、まさか。あ、あなた様は」
番長と不良は震えだす。
「そう俺が元喧嘩組、『人を巻き込む天災-ディザスターピープル-』の武山才無様だ。」
「そして僕がその腹心、『斬切のソライ』こと応木空井様だよ。」
「ひ、ひぇ」
番長は小便をちびりだす。
「うちのバイトをいじめた覚悟はいいか?
俺の喧嘩組の名をかたった覚悟もできてるんだよなぁ!!?
クソガキィ!!?」
「そ、そこまでだ!俺のお父さんに頼んで、お前らを訴えてやる!!」
するとソライさんが早口ややどすの利いた声で。
「言っとくと僕も今回の件についてはかなりきてるんだよねぇ?
そっちがその気なら僕はいくらでも受けて立つよ。僕に交渉、それも喧嘩が絡んだっていう、一番得意な交渉をやらせるっていうのかい?
ならば君の父親、君の母親、兄弟、交友、学校、自治会関係に至るまで
君をうちのバイトに手を出したっていうことを、ちゃんと何が一番の原因か場を設けて話し合ってやる。全員にしっかり君の証言を聞いてもらおうじゃないか
理由から何から何まで公平にそうなったかをさ。
だけど、最初に手を出したのは君たちだ。僕らの大切な人を傷つけたやつはどんな理由があれ許さない。」
「…」
「言いたいことがあるなら言えよ。僕だけしゃべってるじゃないか。」
「……」
不良はうつむく
「…交渉の舞台にも立てない臆病者め。」
ソライさん…それ、がっつり脅迫に聞こえますよ……。
▽▽▽▽▽▽▽▽
「さて、少し選ばせてあげよう、僕らとさっき言ったように、すでに交渉の舞台に立っていない君らと争うか?」
「ここで土下座して二度とこんなことをせず、ニッちゃんたちにした非礼を詫びるか。」
「それとも俺たちの怒りの腹いせに徹底的に殴られるか?」
「一時的にボコられて今だけ我慢するか、ボコってた相手に、プライドもすべて捨てて、土下座するか。社会的に死んで今後の人生で地獄を味わうか。だけの選択肢だ。」
「「どれがいい??」」
「へ…」
「ぁ…」
「あいまいな返答だと、すべての選択肢を一通り味わうことになるけど?ん?そうなりたいのかなァ?じゃあサイムやっちゃって。」
「了解だソライ。さてと、じゃあけじめつけようか?」
「待ってください!やめてください!俺が、俺が悪かった!謝るこの通りだ!」
「申し訳ございません!!申し訳ございませんッ!!」
不良たちがサイムさんに頭を下げる。
「俺たちに謝るなッ!!!謝罪する相手がちげぇだろうがよッ!!!」
「…ッ」
▽▽▽▽▽▽▽▽
「サイムさん…その辺で…」
私がそういうとサイムさんは私に向き直り優しく諭す。
「いいか、ニッちゃん。徹底的にたたくことは確かに悪いことだ。時に身を引くことも大事だ。
大勢で叩きのめしたりし続けるなんて、それをやってしまっては、人として下がれないところまで下がっちまう。『間違い』を許せない奴は『弱い子供のまま』だ。
やってしまったことは仕方がないが、しっかり謝らないと後悔しっぱなしだ。
謝るとき心を込めて謝らないと本当に過ちを正したことにはならないからな。
俺もソライも大人になるにつれてこういったものが積み重なってる時間がたつと謝罪ができなくなる。後悔で押しつぶされ弱くなる。
形だけで誤ってしまっては大人になって過去の後悔がこいつらにとっても悲しい思いを引きずるんだよ。そういう『弱い厳しさ』ではなく『優しい強さ』をしっかりと受け入れるんだよ。」
「…」
「…」
今の話を聞いて
不良たちは涙目でこちらを見つめる。
「…」
私も思うことがある。私もやってしまった。これが原因だ。
サイムさんが言ってたこと。私の弱さが招いたこと…。
不良が向き直り半泣きで、しっかりと私たちに頭を下げて。
「……申し訳ございませんでした。
…俺、睦月さんにひどいことを言ってしまいました。
…暴力も振るいかけましたごめんなさい。」
番長を名乗っているほうもゆっくりと土下座をする。
「……俺も、大切な名前を語ったり、暴力をふるいました。
申し訳ありません。ごめんなさい!」
…
…
「わ、わたしも…ご、ごめんなさい。
思わず手が出ちゃって。…ひどいことをして、ごめんなさい!」
私は今、どんな顔をしているのか自分でもわからない。
震えた声で気持ちを込めた言葉で何を言ってるのかわからない…。
頭を下げる私に不良たちはどんな顔をしていたのだろうか?
ただわかるのはソライさんとサイムさんが、私たちを見ながら優しい声で話し合っていた。
「…ふぅーーーー痛み分け…だな。サイム?」
「やっぱりニッちゃんもそうだったか。」
「さっきの交渉、結構勢いで言うの賭けだったんだよ?」
「ま、そりゃそうだろう。ニッちゃんだもん、友達思いなあの子らしいな。
お前の交渉は綱渡りだが、俺がフォローしてやるよ。昔みたいにな。」
「ああ、なんか懐かしい感じだ。僕らに対して『あいつ』がしてくれたことだ。」
「ああ、懐かしいな。よくあったなこういうの。ちゃんとしっかり許せればいい。」
「『あいつ』が今みたいに諭してくれなかったら、冒険社も設立しなかっただろうね。」
「今思えば大人になったら変に意地はってできないことだしな。これ以上こいつらを責めるのはガキ以下のすることだ。」
そうして不良たちはそのあと
何も言わずにゆっくりその場を去っていた。
すこし優しく微笑んで。ムッチーと私も彼らを優しく静かに送り出した。
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~ノヴァアージ知恵袋のコーナー~
~ムッチーのおじいさんが第1話の壁画を描いた有名な絵描きさんだぞ!~