第19話その6『THE_REVENGE:妖怪と溶解の究極』
※この『物語』は『フィクション』です。
※それなりに『諦めない』気持ちで読んでください!
――午後16:53
9月15日、旅38日目
まさかこのタイミングでこんな都合のいい展開が来るなんてな!
『エレベーター』という俺らも@も逃げられない状況!!
ユウジは『守』の歯車の盾。
ソライは『溶』の歯車の鞭をそれぞれ構える。
「みんな!オレの後ろに!!」
と言っているユウジの後ろへ全員すでにしゃがんでいる。
「チッー☆!『守』と『溶』!!君たちかー☆!!
ならば『僕』も全力を尽くしてやるよッ!!!」
天井にいる@の身体が無数の刀や銃、槍や薙刀へと変換されていく。
上に武器がつるされているからか………悪趣味な武器屋のようだ。
問題はあの大量の武器がこれからエレベーター内に、雨のように降り注いでくるってことだ。
「うなれぇ!!めるとうぃっぷ!!」
「守れッ!!シルバーシールド!!」
二人の手元にいる超越の歯車が輝き始める。
ユウジの持つ盾から依然戦った時の『時間の壁』が球体状になって俺らを取り囲む。
そしてソライの持つ鞭からパープルメルトの酸を、数倍濃くした紫色の粘液性の液体がしぶき出す!!
天井にいる@に直撃しつつ粘液はエレベーター内を満たしていく
「グォゥ~~!!
やばいッやばいぃ~~!!少しずつ溶ける!!
ああ!!せっかく用意した武器が!!
僕の大切な武器が!!」
よっしゃ!!効いてる!!こっちもだんだん視界は酸で見えなくなっていくが
隙間から溶解液が効いているのが見える!
「これアタシ達は大丈夫なの!?」
『むっちゃ周りを溶かしているけど!!?』
俺らの目の前が紫一色になる。周りを少しずつ溶かしている音が聞こえる。
まぁこんな光景をいきなり見たら子供のトシツキ達はビビるわな。
「俺達は時間の盾で酸に影響はないし、こんな狭い場所で面積をとっている@の方が確実に根負けする!!大丈夫だ!!狙い通りだ!!」
「いや…アタシたちが気にしているのは、ここが『エレベーター』だってこと。」
『ここの下には床はないんだよな?糸で箱を支えているみたいな状況なんだろ?
つまり………『支えているもの』も溶かしたらオイラ様達、落ちるんじゃね?』
「「「「「「………あ。」」」」」」
どうやら俺を含め武山冒険社は全員バカらしい。
エレベーターはガコン!!とひしゃげるような音を放ち、エレベーターとは思えないほど床が傾く。どうやら外の柱やら壁まで漏れ出し溶かしていっているらしい。
まだ都市の武器使用のための妨害電波の下だ、そもそも電力の残量がない。
槍を壁面へ杭のように差し込もうにもできない。同じような理由で、ボードに変形して側面へしがみつくこともできない。
「………いっそのこと、底の方へ酸をためてこのままバリアを張り続けて酸をクッションにしてしまうってのは?」
「バリアの中でみんなが叩きつけられまくって、ミンチになると思うわよ?」
ソライとユミのやり取りでこれも無理らしい。
残っているのは『操』の歯車だ。糸を出すグローブなのだが。
あの糸見た感じ『細い金属』だったんだよなぁ、しがみつこうにも手がスパーンって切れてしまうだろう。おお、怖い怖い。
そう思っている間に、エレベーター内がギシャンという音がする。
次で落ちそうだ。
「うぐぐおお………お前ら!!………まさか!!
………やけになってこんな作戦を…!?」
粘液が滑り落ちる音の合間に、@がダメージを受ける音が聞こえる。
早く作戦を思いつかないと俺ら共倒れ………。
「あ、そうだ!」
「何か思いついたのか!?ユウジ!!?」
「さすがユウジ!!」
「いいか今からいうことをよく」
とユウジの説明をさえぎるように
ガコォン!と!
エレベーターの底が抜けて空中分解し始める!!
「へ!!?」
「「「うおおおおおおおおお!!?」」」
「「「きゃああああああ!!?」」」
まさかエレベーター内で、転落死だけはごめんだぜ!!
なんで俺が塔に昇ると落ちるんだよ!!
みんなは盾を構えたユウジに全員掴まった体制で、ほぼ並行して落ちている!!
「一か八かだ!!狙い撃つぜ!!」
ユウジは盾を構えたまま、懐からスリングショットを取り出し、下方へ何かを放つ!!放った何かはエレベーターの破片を跳弾する!!
よく見たらその何かはロープ状に結び付いていた。
カン!!と音がした。何かに当たったらしい。
「掴まれ!!」
もうすでに最初からユウジに全員掴まっている。
「ぐぇ!!?」
すると腕が引きちぎれんばかりのGが腕に突如としてかかる。
そして視界が揺さぶられたのち、さっきまで下に落ちて言ったのに『上がっている』という違和感に気づく。
少し上を見てみるとそこにはもう一つのエレベーターが作動していた。
「ふぅ…持っていてよかったぜ。命綱用のかぎ爪フック。」
あ、確かユウジが修業中、溺れないためにって渡しておいた岩場にひっかける用のかぎ爪フック!あいつの種族大体、金づちだから一応渡しておいて大正解だった!!
「さて!このエレベーターも溶ける前に昇れぇ!!」
「おう!!」
そういえばこの乗り返したエレベーターも塔を昇っているが一体中にはだれが………??人はいなかったはずなのに………??
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タイショウモダンタワー_1号エレベーター
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「よいしょーーー!!」
エレベーターの救助用ハッチを開けて中へと滑り込む。
「うわ!?なになに!!?びっくりしたぁーーー!!
お前らかよ!!」
「なんだ…中にいたのはアルか………。」
「何だとはなんだよ!てか何、上からやってきて…
それにこの臭い何!?なんか溶けてる!?」
中にいたのは非常にかったるそうな顔をした創造主だった。
「まぁいい話はあと急いで降りるぞー!!」
次から次へとみんながエレベーター内部に入る中、頂上のボタンを最寄りの階層へ押して変更する。
「ええ!?何!?何ぃ!?」
「よし着いた!話はあと!このエレベーターが落ちるぞ!!」
チン!という音ともに扉が開き、みんなが一斉に降りだす。
扉が閉まるや否や下から爆音が聞こえる
エレベーター内でエレベーターが落ちたのか火災が発生したらしく、数秒間放心してたらしいの俺らを驚かせるように、火災報知器とスプリンクラーが作動し一気に目が覚める。
「さむ!」
「錆びるー!!先生―!!錆びるぅー!!」
「錆びないわよハナビ。この程度なら………。」
「へっくち!」
「大丈夫かニッちゃん?」
「うまく命中してよかった…。とっさだったからやばかった。」
「なんでエレベーター爆発したん…??」
「ああ、それは」
と言ったところでガコぉン!!と後方から物音。
出たばかりのエレベーターの扉が歪み軋む!!
まるでスプラッター系のホラー映画のようだ。
「あれが原因だ。」
「武山冒険社アアアアアアアアア!!」
黄緑のスライム状の身体は溶けて爆発に巻き込まれ燃えてボロボロになったが、何とか機能しているらしく大型犬くらいのサイズの楕円体になり、身体の節々を様々な素材へと変換させながら腕なのか、鉄なのかすらわからない部位を伸ばして這いずるように俺らへと手を伸ばしていた。
「レガシーギア!セット!」
俺は『操』の歯車を取り出し糸を伸ばし@を押さえつけようとする。
だが、どんどん糸で押せえようとするたびボロボロになっていく。もう瀕死の重体だ。
「ユウジ!盾を逆に構えろ!!」
「あいよ!!」
ユウジの盾のバリアの球体が先ほどとは変わって、裏返り@の周りだけスプリンクラーの水滴を弾く。
▽▽▽▽▽▽▽▽
「放せ!!僕はお前たちを倒さなくちゃならないんだ!!
絶対、絶対倒さなくちゃならないんだよ!!」
もう余裕はないようだな@。腹を割って話そう。
「おい、@素直になって話してくれないか?お前が吸収されるのを拒む理由も
自由のためとか言っているけど妙に嘘臭いんだよ。」
「じ、自由のためだもん!!放せ!!バリアを解除しろ!!」
「今、《オングストローム》の配下になっている『お前』が、自由を語るな!」
「ッ………。でも………言えないんだよォ!!
黙って見逃せよ!!なぁ!死神!!お前もそこにいるんだろ!!頼むよ!!」
バリア内で暴れまわる楕円形は情に訴えるかのような目をしている。
『…。』
「なぁ!!僕ら!!盟友だろ!!友達なんだろ!!
3600年前も僕と一緒にいてくれた友達だろ!!お願いだよ!!」
『………。』
「旅人!!ずっと旅をしてきただろ!!広い世界を見せてくれただろう!!
このバリアを解除するの手伝ってくれよォ!!」
『………盟友…だからこそだなァ。
オイラ様はおまえさんの今を知りてェ。くだらねェ思いでおまえさんがこんな風に動いてるとは、どーしても思えない…。
友達だからこそ、おまえさんを知りてェんだワ。』
「………。」
『………仕方ねェよ。盟友。
こうなったらオイラ様はお前を知るために強硬策を取らせてもらうぜェい。』
「…な、何をする気だ?」
『小僧!!よろしく頼む。』
「わかった…一路平安。アタシも最小限の言葉で幕引きして見せよう。
24Idアビリティ。シニガミ!!
あじゃらかもくれんてけれつのぱ!」
『………。』
死神は@へと向かい、ぽちゃんとその影の中に入る。
「………しばらくお付き合いくださいませ。
日々はめまぐるしく変わります。
ですがなかなか普段の景色や日常は変わりません。
そんな中、旅人や冒険社はいつも違った景色を日々見ていることが多いと聞きます。
これはある旅人に付き従う、奇妙な存在の『独白劇』になります。
その独白をぜひともお聞きくださいませ。」
「どうして君らを止めたいのか………。それは単純な話さ。
僕はね。前回の戦いで君らがどーーしようもなく
好きになっちゃったんだよね。」
…それは独白というより唐突な告白であった。
「だけどね、君らと初めて大傘で出会って別れた後
《オングストローム》が接触してきた。奴らのことだ。
昔、この世界で起こしたみたいに、邪悪なたくらみがあるってわかってた。
でもシロが人質にとられ、クロもいいなりになっているって聞いてさ…
これは、まずいって思ったんだ。僕は僕なりに考えた。
そして思いついた。大勢の歯車を君たちにけしかけて
君らを究極の歯車を倒せる正義のヒーローみたいにしておけば
どんなに世界が魔神によってひどいことになろうが、立ち上がれるんじゃないかなって。」
なるほどな温泉の時も4thカラーの時も、だいたいこいつのせいだったってことか。
つまり魔神に滅ぼされた後のために。
未然に防いだ後じゃなく終わった後のため、復興のため英雄視される『俺らのため』にこいつは今、魔神側の勢力として俺らへと立ちはだかっていたってわけか………。
「トシツキ…解除してくれ。」
「………うん。」
▽▽▽▽▽▽▽▽
@は楕円上の身体を糸のようにほどき、俺らへと25㎝の黄緑の身体を向ける。
「………これが僕の思いさ。」
「…。」
「…………………君らが今、ここで活躍して死んでしまうこと。
それは僕の筋書きじゃない。
そんなの僕のシナリオにはない!!
魔神が復活して、そんな絶望的な状況で立ち上がる正義のヒーロー!!!
それが僕の思い描いた君たちというヒーローだ!!!
だからどこまでも、いとおしい君たちが!!
せっかく手塩かけて、強くした君たちが!!
本当に僕にとってヒーローである君たちが!!
こんなところで死んじゃあ駄目なんだよ!!!!」
「はぁ…お前もか。いいことを教えてやる。
俺らは誰も死にに行くんじゃねぇよ。
全員無事で生きていく。」
「無理だよ!!どうあがいたってかないっこない!!
そんなの僕のヒーローじゃない…。」
廊下に響き渡る少し悲しそうな声だ。別れを惜しむような声にも聞こえる。
「…いいか?@。俺らはヒーローじゃない。一般人でもない。」
「じゃあ何さ…。」
俺は少し笑う。
「………俺らは冒険職だ。」
「そこに困った奴がいるのがすっ飛んで助けてやる。
今、この上では俺らを『信じて』待っている奴がいる。
行かねぇとダメなんだわ。」
「本当に…英雄になりたくないの!?
みんなが求めているのはそういうのじゃないの!?
だって平和じゃなくても、びくびく怯えていても【みんな】が求めている姿になれるんだよ!歴史にも残るし、こっちの方がいいじゃん!
【みんな】が君たちのかっこいい姿を求めているんだよ!!」
目を見つめる不安そうな目だ。どこか憂い帯びたその目へ勝ってみせる。
「………英雄なんかなったところで面白くも何ともねぇよ!
お前のはヒーローごっこだ!!お前が求めている俺には今後ともならない!!
いいか、最高にワクワクする生活ってのはな!
『心』に従い。前を向いて突っ走ることだ!それが『俺が求める日常』だ!!
自分のことくらい自分で決めれる!!
俺は俺!!冒険職!武山冒険社代表取締役社長!武山才無だ!!
他の何者でもねぇッ!!これからも!!これまでも!!今も!!
筋書き通りうまくいかない世界を、仲間と一生懸命生き抜いているからこそ、何者でもない俺であるからこそ死なねぇんだよッ!!
わかったか!@ッ!!!」
………
涙は流さずとも、その顔はわかる。
「…もう…もう………わかったよ。サイム…。
ここまで来た。僕を追い詰めた。
本当はわかってた。最後のあがきも失敗しちゃった。」
『盟友………。』
@の周りに死神と思わしき影が不安そうに見つめる。
「ごめんね。旅人、そして武山冒険社………僕が悪かった。
どうやら弱い僕には、強い彼らを止めるより送り出した方がいいのかもしれない。」
『おまえさんは十分強かったよ。』
「いや、心の強さは確実に彼らが強い。
きっとこう答えるんじゃないかって、たぶんわかってた。」
『………そうか。』
「…なぁ@、でもあと一つだけ言わなくちゃならないことがある。」
「………。」
「…お前のおかげで、いろんなことを学んだ。
お前に負けたおかげで、俺らは強くなってここにいられる。
きっとここまでたどり着けなかった。
………お前が理由はどうあれ、俺らをここまで思ってくれた。」
「だから、ありがとな。」
「………君らはほんと………ずるいやつらだなーー………☆
………アルゴニック…あとは頼んだよ。」
「おうよ。俺らに任せておけ。」
「……あははははははははははは!!!
じゃあね。武山冒険社。」
「認証コード『υ-自由の素晴らしさを考えるもの-』を認証しました。」
これで@こと、変換を司る『変』の歯車ウプシロンを吸収しおえた。
――残りは…『力』そして最後の人質
『知』の歯車シロ、『巨』の歯車エレデを回収して形勢逆転だ!!
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~ノヴァアージ知恵袋のコーナー~
~歯車たちは基本的に自由だけど己の信念で動いているぞ!~




