第15話その2『過去への旅行者:SF無双』
※この『物語』は『フィクション』です。
※それなりに『時計を合わせる様な』気持ちで読んでください!
――その少女はどっからどう考えても昔の私そのものだった。
思わず、まじまじと見つめてしまう。
だってこのワンピ、私すごく気に入ってたんだもん…。
だけど、中学くらいまで行くとさすがに着れなくなってバザーで出して
すごく悲しい思いしたんだもん…。
それにこの子の時くらいはメガネをかけず、黒板の文字を目を狭めて一生懸命見ていた。
視力が悪いことを受け入れようとせず変な意地はってた。
いやそれよりも…今は…なんで、私の家に『子供のころの私』そっくりな子がいるの…?
「……え、え~とあなたはここの家の人なのかな?」
私は少女の目線を合わせる。
少女は視力が悪いのか、私の顔をよく見えてないような感じだ。
しかし自分の家で邂逅した少女に私は何を聞いているんだろ…。
「はい…私は日って言います。
10歳、です。みんなからはニッちゃんって呼ばれてます。
……家になんのようですか?
おじいちゃんは今ぎっくり腰で、でれそうにありません。」
…おじいちゃん……。
「…えーーーーーーーーーーーっと、ニッちゃんに妹っていたの?
同姓同名の?」
「「いません。」」
ユミさんの質問に、小さいニチちゃんと私の声がハモる。
幼い声と私の声のイントネーションや声の質がそっくりだ。
……そもそも、ユミさんが言う同姓同名の姉妹なんて世の中にいるのだろうか…。
「……まずいっ!?ここがそういう事ならまずい!
お前らいったんこの場所を離れるぞ!
その子の記憶に残らないうちに!」
私達はアルさんに強引に連れられて、この場所をいそいそと離れる。
「え、あっはい!
じゃあね。ニチちゃん。」
「…バイバイ?」
ニチちゃんは、手を小さく振る。きょとんとした様子で。
▽▽▽▽▽▽▽▽
「はぁ…はぁ…アルさん一体突然離れてどうしたんですか!?」
私達は神社の境内から少し離れた、自動販売機の前に連れてこられた。
急いで走ったせいで、思わず疲れて近くのベンチに座り込む。
だが、そんな様子もお構いなしにアルさんは焦っているようだった。
「さっきのはニッちゃん自身で間違いないんだよなッ!」
「え、ええ。……あの髪形、あのワンピ間違いなく私自身みたいでした。
小学生のころ、あんな感じでした。」
「なんでニッちゃんさんがもう一人いるの?」
「っていうかソライだったらまず間違いなく手を出してたほどの美少女だったわね。」
「でしょ~~~ってそんなどころじゃないでしょ!」
「セルフツッコミ。」
「で、アル。あれはいったいどういう事?」
ユミさんが質問する中、アルさんは顔が青ざめる。
「ここは過去だ!あれは間違いなくニッちゃん本人なんだよ。
アイス屋の話といい、なんか変だと思った。」
「過去?過去に来たんなんて信じられないわ!
第一相対性理論的に考えて…」
「俺らが戦った歯車は、そういう次元を超えることのプロフェッショナルだ。
理論なんか捨てろ!」
「でもそれだけじゃ…。」
正直、私そっくりな子とつぶれたアイス屋さんだけじゃ信じられない…。
「じゃあニッちゃん。アレはどう説明する?」
アルさんは遠方にある一点を指さす。ここからでも見える天を突き破る巨大な塔。
私達が出会った始まりの塔『メイジダンジョン』。
ハナビちゃんの姉妹、モンブちゃんによって爆破され、『今』はもう存在しない。
アルさんとの出会い、旅の始まり、その塔を指さす…。
「メイジダンジョン。
崩落したあの塔が、なぜ存在する?これこそ過去の証拠だろ…。」
「……そう、ですね…。」
受け入れなければならない、来てしまったんだ…。過去に…。
私達が唖然とする中、アルさんは恐怖でひきつった顔になる。
「…いいか?みんな、まず第一過去に来たんなら最悪、帰れなくなるぞ!」
「へ?」
▽▽▽▽▽▽▽▽
「ここから難しい話に入るぞ。過去改変にはいろいろとリスクがつきものだ。
まず俺らがいた『現代をA』とする。そして俺らが今、『Aの過去』に来た。
この時点で多少バタフライエフェクトで世界線は変動するが
まだ観測と記憶のあいまいさからくる、『世界の修正力』に『Aの現代』により帰ってこれる。
ただし、もしその当時、生きるべきだった生物を一体でも殺したり
過去から現代までの『生存している人物の記憶(名前を憶えてしまったりとか)』に強く残ったり未来の知識を使って大儲けしたりすると、その時点で俺らは現代へ戻っても別の世界『Bの世界』へ『分岐した現代』へと移動する。
その『Bの世界』では俺らが過去を改変…殺した結果や儲けた結果がいろんなところに反響してしまった世界へ『変貌』している。
むろん、『Aの世界の現代』に戻ることは限りなく難しい。
戻ろうとするならば、前の過去に戻った『過去の自分自身を止める事』になるがそれはそれとして別に捻じ曲がった『Cの世界』が出来上がるかもしれん。
つまり、『過去に極力干渉せず、未来へ帰る試練を突破』しないと俺らは全く別の現代へと飛ばされる羽目になる。」
え、どういう事?SF?
「ねーねー例えばどんな現代へ変わるの?」
「例えば俺らとハナビが出会わなかった今。
ユミが旅についてこなかった今。
ユウジが裏カジノで酷使され続ける今。
ソライが実家に留まる今。
サイムと俺が喧嘩別れしっぱなしの今。
そもそも武山冒険社が結成されなかった今などへと分岐する。」
アルさんが『もしも』の話しを語る。
…?
つまりこの過去の世界で何かをすると私達の現代が変わってしまう??
さっき語った『もしも』の話が現代へとすり替わるっていうこと?
「あのーーーSFってよくわかんないんで、頭こんがらがってきたんですけど。」
「………………アル、質問よ。
…例えば『親殺しのパラドックス』っていう、
自分がまだ産まれていない過去で『自分の親になる人物』を未来の自分が殺すっていう『パラドックス』あるじゃない。
あれはこの世界では発生しないの?」
「発生しない。そういう未来へ分岐する。
『パラレルワールド』ってやつだな。
当然だが、現代に帰ったら自分は産まれていないことになる。
その場合、『親を殺した自分』は『別の誰かから産まれている』ことになってて、『全くの別人として生きている』ことになっているんや。
だが……下手すりゃ自分という存在はどこからも産まれていない『存在矛盾』が発生し『複雑処理個体』として、【超極】のくそ野郎に興味抱かれて接触されたり、
【五分前世界が誕生】したり、【シュレディンガー存在成否処理】されたり、
【別世界】に飛ばされたり、【世界ねじれの楔】として利用されたり、
そいつから【オドロ】っていう生き物が生まれ続けたり、
とにかく、ほかにもいろいろな意味で『危険な存在』になったりすることがあるからな!
パラレルワールドも『完璧』ではない!絶対やるな!」
ユミさんの質問に、アルさんはなんだかややこしい面倒そうな感じで答える。
SFオンチな私とハナビちゃんはきょとんとしている。
私は二人のSF話についていけず、そこのアスファルトにいるアリを見ながら聞いている。
「じゃあ世界線が変動する要因って何?」
「それはわからない。わかればこんな慎重に行動していない。
ちなみにだが時間は越えても、死ぬ奴は現代に戻った瞬間即死だからな。
死という概念は時間を超えても揺るがなかった。
あと未来へ行って現代を変えるのは、問題なかったりする。
歯車が手元にいた時、それは検証済み。」
つまり…何か世界を変える要因があって、それをしたら。
私達の『今』が変わってしまう…。ってことでしょうか?
――SFってほんとわからない…。アリの世界の方がまだ親しみがある。
「わかった。とにかく慎重に行動しなくっちゃ、世界が変わって大変なことになるのね。」
「えーーーっと…。この過去の世界で下手を打てば戻れなくなるんですね。」
「そういう事。今はその解釈でいいわ。
さてとまずは今が何年何月何日かちゃんと見極めなくっちゃ。
セオリー通りにね。」
さっきまで、知らない土地ってことで、少し不安そうだったユミさんは水を得た魚のように生き生きしだしている。
と、とりあえず、できるだけ目立たないように行動すればいいわけですね…。
▽▽▽▽▽▽▽▽
とりあえず、ユミさんの指示で『時間』を調べるために近場のコンビニへとやってきた。
今はもうやっていないキャンペーン商品に時代を感じる………あとは消費税が違う…。
「えーーーーーーーーーーーーーーーっと新聞新聞…」
「あったよ。」
「ハナビちゃん。ナイス。何年って載ってる?」
「えーーーーとね。『2014年5月24日』って載ってる。」
「7年前!?」
ハナビちゃんとともに覗き込んだ新聞の日時欄に驚愕してしまう。
今は2021年、9月。
――2014年…何があった時だっけ…。
▽▽▽▽▽▽▽▽
私が今17歳だから、さっきの私が10歳というのも合点がいく。
10歳と言えば、私がおじいちゃんに引き取られたばかりだ。
この年の数年前、両親が離婚と再婚し、事故死したばかりの頃だから元気ない感じだったんだな…。
「なるほど、だから私は10歳ってことですか…。」
危なかった…もしあと数か月、時間が巻き戻っていたら、昔の私はお義母さんといるから今の家にいない…。
もし、もっともっと時間が巻き戻っていたら『お義母さん』のほうじゃなく『母さん』と一緒にいて『実母の方の姓』を名乗っているから、すぐに私と気づかなかったかもしれない…。
アルさんはお面の顔をゆがませる。
「嫌な時に来ちまったなぁ…。
この時は確か、勉強ができないから、勉強するために勉強をやめた年だっけなぁ…。
それで大学じゅ………
………
………俺、まだ封印されていた時じゃん。」
「?」
…アルさんはどこか記憶が混濁しているようだった。
発言が矛盾してるし、封印されているときに見た夢か何かだろうか?
「ハナビなんか産まれてないよぉ…」
ハナビちゃんは1歳である。当然産まれてない。いや造られてない。
「とりあえず極力知り合いに会うのはやめましょう。
下手に過去を変えてしまうと帰れなくなるから。
「はい!」
「それにあたしもこの年に黒歴史が…。」
ユミさんも黒歴史があるらしい…。
とにかく…慎重に…慎重に…。
私がそう悩んでいる中、ユミさんがそっと横を通り過ぎて。
「すいません。この限定販売の明太からし唐揚げを。」
「ハナビも同じ奴欲しい~!」
「540円です。」
「ユミさん、ハナビちゃん!?慎重に行動するって言った傍から!?」
「……食べたかったのよ…。そして食べ逃したのよ…。
女の子は唐揚げとか食べないとか、意地はって……。」
「…おいしそうだったから。」
ユミさんはそう言いながら店員さんに540円払う。
ユミさんはなんとなくわかるけどハナビちゃんは、完全にノリだよね…。
二人の行動に驚きつつ、アルさんが私の耳元でささやく。
「(小声で)この程度の買い物は多分大丈夫だぞ。
硬貨の製造年月日に注意していれば。」
……なるほど…。
二人がそうなら…。私だっておなかがすいている。
ユウジさんが作ってくれていた夕食のカレー食べれなかったし…。
――私はスイーツコーナーに行く。
この年の3年後に消えてしまう食べそびれたマイナーなケーキ。
バナナクリーミーケーキをレジに持っていく。
「216円です。」
私は前の元号の硬貨で支払う。消費税にすごい違和感…。
まぁいいや。後で食べよっと!
「ニッちゃんもなんだかんだ食べるんじゃん。」
「私だってこういうスイーツの後悔はしたくありません。女の子ですもん。」
私達はコンビニを後にして、どこかで買ったものを食べようか…
という風に駅周辺へ数分歩いているところで、ユミさんがあることに気づく。
「…あれ?」
「どうしましたか?ユミさん?」
「アルは!?あいつ!どこ行ったのよ!」
私たちは周りを見渡す。さっきまでこの場にいたのに。
いつの間にかユミさん、私、ハナビちゃんしかいなかった。
「確かにいません!」
「ちょっこんな時にはぐれたっていうの!?
さっきまで一緒にいたでしょ!!」
「さっきふらふらとあっちのほう行っちゃった。
サイムさんっぽい人の後ろへふらふらと。」
ハナビちゃんは公園の方へ指さす。
「ハナビ…止めてよ…」
「責めてる暇はありません。追いましょう。」
主観変更side_アルゴニック
▽▽▽▽▽▽▽▽
はめやがったなぁ!ギンスケェ!!
俺がどれだけ超常的な能力を持っていても、
過去にいたら何もできないのと同じじゃねーか。
あいつらは時空のことになると、最強のそれだからな。
時止めの能力者の時を止めることだろうが、
世界の時間を速くすることだってなんだって出来ちまう。
それがギンスケたちの能力だ。
あの時のバトルで勝っていれば、こんなややこしいことにはならずに済んだのに!
とりあえず、あいつらが喜びそうな試練が、これから起こることは確定してんだ。
それまでに何の試練が起こるかだけは、考えとかないと。
…………つーかなぜに、必死に右往左往していた2014年に!!?
やめろよ!黒歴史で心痛いんじゃあああああ!!!
――…はぁ…
…?
…あ、目の前にいるこれサイムじゃない…。
…ちょっと待て…。
「ん?あれ?あいつらどこ行った!?
もしかして…はぐれた!?うわ、最悪じゃん。」
そういえば、さっき思わず2014年に出た某CDに目移りしてしまって。
通り過ぎた『サイムっぽい人物』に『こっそりついてしまった』…が…。
よく考えたらこの時代に今のサイムいねぇ…。
いたとしても中学生だ…。他人の空似へついていっている場合じゃあない…。
他人の空似に間違えてついていくとか小学生か、痛い奴じゃん。
経験あるけど!この歳でそれぁ恥ずかしいやん…!
俺はすぐさま、そこに離れてふよふよとそこら辺を探す。
だがニッちゃんらはいない。うーーーーーむ困ったなぁ。
なんだか心細くなってきた。
どうするか考え、ふと目に留まった公園へと何気なく入る。
運がいいことに、サイム達が渡してくれた300円の小遣いがある。
自販機で飲み物…。
――………んだ?100円玉のこの元号…
……『道紀32年』…読みはなんだ?どうぎ?どうき?
そういえば俺、この星の創造主だけど、この国の元号知らねぇ…
今の元号は何だ?この時代の元号は何だ?
道紀32年は西暦?何年だ?そもそも西暦はあるんか?
………ただでさえ俺の世界でも平成から令和に変わっただけで、色々とぐちゃぐちゃになって何年かなんてマジでわからねぇのに。
別の世界の元号なんて当然知らねぇよ。
やばい………使っていいんか…?喉乾いたんやけど…。
100円硬貨の質感って…マジでわからん…。
俺、サイムと喧嘩したときも思ったが、いつも硬貨に悩まされてんなぁ…。
………ハっ!!?
天才か俺…。すごいこと思いついた。
ここは公園ッ!!つまりッ!
飲み水が出る正式名称がわかんない、なんかの~その~…
あれ!蛇口が上向いていて子供に人気な、あの~水出る奴!
正式名称わからん!だが蛇口が上向いている水出る石作りの
『水飲み場』っていうのだろう、か…?
ともかく夏場にサイクリング行くと重宝するアレ!
アレがあるはずだ!ない公園もあるが、ここはそこそこ広い!きっとあるはずや!
たぶんッ!
俺は公園の砂場当たりを散策する。
…こういう砂場の近くにアレはあるはずや…。
▽▽▽▽▽▽▽▽
――…10分後…。
…探したがあらへん…。
…俺の世界だけの文化か?この国、どないなっとんねん…。
公園と水道に金かけてくれよ…。水飲みたい…。
…はぁ~~
さてと、どうしようか。俺が創った世界とはいえ、俺はここら辺の地理には詳しくない。
喉乾いたし、ニッちゃんらが来るまでとりあえずこの公園で待っておこう。
まだ戦闘の疲れが残ってる気がするからな。
疲れはできるだけ残したくない。
疲れが原因で仕事でミスをしてストレスが残る。これはいけない。
「あーーーーーーーーーーーーーーー喉乾いたなぁ。」
公園のベンチでくつろぐ。
腰かけたベンチからぬいぐるみくらいの大きさの、身体がズルズルとズレていく。
それくらい、力を抜いている。
…今の時間は昼時か。水をがぶ飲みしたーい。
そしてユウジのカレー…食べたいなぁ。
コンビニで買ってくりゃよかった…。
「…」
ベンチからズレていく俺がふと、目をやるとそこには少女がいた。
中学生くらいの少女。つーかセーラー服だな…。
目元がかわいらしいそばかす少女。
今のニッちゃんと同じく後ろ髪をくくっている。この世界の流行りか?
あと寒いのだろうか、アームカバーにレッグカバーを手足につけている。
その少女は俺を見るや否や、近づいてくる。
…何で近づいてきてんだろ。
「…え~っと何かな?お嬢さん?」
「…」
その少女は俺をひょいっと持ち上げる。
今はぬいぐるみ大の大きさをしているから、我ながら結構絵になっていると思う…。
あとこの少女、なんか握力意外に強いな…と俺は思いつつ。
少女はじっとかわいらしい目で俺を見つめる。
「やだなぁ、そんな見つめんでも。」
こういう中学生くらいの女の子の瞳に、俺弱いんよ…。
無垢すぎて…社会に出るとなんか罪悪感的なのを覚えてしまうんよ。
ちょっと苦手意識…。
照れてまって、照れてる自分想像して気持ち悪いと思ってしまうんよ…。
「…」
「えーーーーっとお嬢さん俺に何の用かな?」
この子の同じ歳のくらいの時、先生に『お前、イケボだな』と言われた時の経験を生かしつつ。
キモがられないように声をつくる。音楽できんけどこういうのは、結構できるんよな。にゃひひ…。
俺が喋ると少女は何か、感激したような表情になる。
「…か」
「か?」
「かわいい!!ナニコレ!かわいい!!」
「へ?」
「しかもしゃべってる!かわいい!!」
――モテ期きたかもしれん。
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~ノヴァアージ知恵袋のコーナー~
~この世界も昔はポケベルが流行ったぞ!~




