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第2話その3『パープルメルト:開花』

※この『物語』は『フィクション』です。

※それなりに『成長を見守る』気持ちで読んでください!



「まったくサイムさん達はデリカシーがなさすぎます!」

 ニッちゃんはあれから膨れていた。

「すまんすまん!」

「あのですね!角は鬼の乙女の中でも、かーなり大切なチャームポイントなんですから!」

 鬼の乙女の内心は複雑そうだなぁ…

まぁ年頃だし仕方がないなぁ…



「サイム、こっちから甘いにおいがする!」

 歩き続けてもうすでにかなりの時間が経過した。

俺達はソライの言う方向へついていく。

「あった一つだけだが…

まぁたったこれだけだし、ちゃっちゃと刈ってくる。」

「行ってらー」

 ソライはパープルメルトの後ろに回り込む。







 俺がこうして、ソライと一緒に何かをやりだすとつい昔を思い出してしまう…

この森もなんだか懐かしい…





「ニッちゃん、ちょっと聞きたいことがあるんだが…」

「はい?」

「唐突で済まないとは思うが、ニッちゃんって『鮫島学園さめじまがくえん』だろ、俺もあそこが母校なんだが…

今の鮫学に俺たちの『伝説』ってどのくらい残ってる?」





 ニッちゃんは少し考えて

「うーん実は詳細な伝説は残っていないんですよね…ただ昔、すごい数人組の不良たちが、学園にいたっていうことはわかるんですけどね。」

 母校で俺達いろいろとやらかしたのに時代は経つものだな…。

「…そうか」

 『あいつ』ももう過去の人なんだな…



「どうしてそんなことを突然聞き出すんですか?」

「いや、『何でもないよ』。

ただちょっと聞いてみたかっただけで。」

 こういう何気ない質問をして『何でもない』なんてはぐらかしてはいるが…

俺はあの頃を……




 ……………………その時だ。





 ズズズッズズズズッ







 また妙な音がした。

いったい何だろうか、この音はいったい…。



「…サイムさんッ!!!危ない!!!」

「へっ?」

 突然のごとくドンっと、ニッちゃんが体当たりで

俺を突き飛ばし覆いかぶさるようになる。







 次の瞬間





 ”オ”エ”エ”ェ!!

ニッちゃんの体当たりの数秒後

俺の『真後ろ』にいたパープルメルトから消化液が吐き出される。





「サ、サイムさん、お怪我はありませんか?ぁ…」

 って顔が近いな…。

なんか妙にニッちゃんの顔赤いけど、消化液には当たってないし大丈夫そうでよかった。

「ああ、大丈夫だ。おかげで助かったよありがとうなニッちゃん。」





 ニッちゃんはすっと立ち上がり小さい手を差し伸べてぐぐっと俺を引っ張り上げる。



「サイム~こっちは終わったぞー…って大丈夫か!?何があった!?」

「いやいつの間にかパープルメルトが…」

 そう口に出した時点で妙な感覚がする………………

俺………いつパープルメルトが後ろにいることに気づいた?



 ………………つい、さっきだ。



 ………ついさっき気づいた。

…じゃあなんで俺たちが後ろに『立った時点』で、消化液を吐かなかったんだ?

パープルメルトは足音に反応して消化液を吐くのに………。これはおかしい気がする。







 そもそもパープルメルトは、『いつ』俺の後ろにいたんだ?

普通、後ろにあってもニッちゃんがすぐ気づくだろ。

あの回避行動はさっき気づいた行動だ。

何かがおかしい。





「どうしたんだ?サイム?」

「いや、何かがおかしい。ソライ、さっきあった

パープルメルトのにおいは、この二つだけだったか?」

「いや、さっき僕が刈ったひとつからしか、においはしなかったよ?」

「じゃあ俺を襲ったパープルメルトからは、においがしなかったんだな?」

「うんだから僕はびっくりしてる。いつの間にかパープルメルトが、僕の知らないうちに『生えてる』だもん。」



▽▽▽▽▽▽▽▽





 あのパープルメルトを刈ってから歩く、行く道中のパープルメルトを文字通り根こそぎ、ただひたすらに刈り取っていく。

慣れてきたのか、バンバン刈り取っていくが、この植物の量が多い。雑草かよ。





「ふぅ~これで50本ってところかな?もうだいぶ刈るのもうまくなったでしょ~」

「油断しないでください。一応、命がけなことには変わりありませんからね。」

 どうやら、ニッちゃんは昨日のメイジダンジョンの一件でだいぶこういうことに警戒しているな。なんかうれしいな。

「そうだな慎重にいこう。」

「あ、そういえばこんなジャングルの中で、帰り道ってどうするんですか?」



 ニッちゃんが素朴な疑問を口にする。



「ああ、それなら心配ない。っていうかニッちゃん気づいていなかったのか?ソライが刀で木の幹を傷つけて、帰り道の目印をつけていることに。」

「ほら、さっきからこういう風にね」

 ザクっと

そうやってソライは見事な居合で木に印を掘る。

切り口がややいびつになっていて、切り口が大きく深いほうが俺らの町の方向だ。

ソライはこういういびつな形に絶妙な切れ筋を入れられる。



「おお~お見事です。」

「どんなもんだい!もっと褒めて褒めて~」

「こら、あまり調子に乗らない!」

「はーい。」





 ソライの目印は一定の感覚で町へと続いている。

俺は今までたどってきた目印が気になり来た方向を見てみる。

だが、さっきまでいたとは思えないくらい、木々の影が濃く

根っこが絨毯のように敷かれていた。

「にしてもだいぶ、うっそうとしてきたな…ここら辺ってこんな感じだったっけ?」

「いや、こんなジャングルじゃなくて、もうちょっと森らしい森だった気がする。」





 ズズズッズズズズズッ

妙な音が聞こえたと同時に



「ん?」





 俺はあることに気づく。

「あれ?ソライがさっき気づつけた傷、そんな位置だったけ?」

「え?」





 よく見てみると木の幹にあった傷は、腰のあたりだったのに

肩のあたりまで上にある。

「確かに妙ですね。」

「あれ?おかしいな?」

「なんでさっきまで腰のあたりだったものが肩に…」

 昇っていると言おうとしたとき





 ここで俺はあることを思い出す。

そうさっきのパープルメルトだ。

さっき俺を襲ったパープルメルトは突然生えてきた。





 そして移動する傷。



 うっそうとしていくジャングル…。



 まさかな。



 まさかそんなことが、本当に起こっているというのか?





▽▽▽▽▽▽▽▽



「二人とも、落ち着いて聞いてくれ…」

「ん?どったん?」

「たぶんだが、この森『成長している』。」

「え」

「いいか、さっき付けた傷が上に行っているってことは、それは木が成長しているんだ。

そしてさっき俺を襲ったパープルメルト、たぶんだが現れたんじゃなく、『最初からそこにあった種が成長した』んだと思う。

それにさっきのズズズズっていう音、たぶんこれ下に生えている根っこが、土をかき分けて成長している音なんだと思う。」




 正直馬鹿馬鹿しい話だ。植物がそんな速度で育つのなんて聞いたことない。

だが…証拠はある。

「な、なるほどぉ…。ってそれやばいじゃないですか!

いくら刈っても刈っても、常に成長していく植物を相手するとかキリがないじゃないですか。」

「そのとおりだニッちゃん。

実際状況的にここまで植物がうっそうとなると、こう考えればつじつまが合う。」





「植物でさえ、成長していくのにニッちゃんの胸と背は成長しないんだな。」

「うるさい!」

「あふんッ!」

 ソライがぶん殴られる!まぁセクハラだし。



「今はそれどころじゃないでしょう!」

 ニッちゃんは顔を真っ赤にしながら言う。

「いや、ほんのジョークジョーク。ごめんね。それでどうするよサイム。」

「ここで諦めたくはない。ちょっと危険だが、このまま進むことを俺は提案する。

これを食い止めなくっちゃ何も知らずに森に入った人の人命が危険にさらされることは容易につく。

ここで俺ら冒険職がやれるだけ対処しないと。」



「たしかにせっかく5万円もして引き受けた依頼だし、僕もあんまり引き下がりたくない。

それにここは僕らのショーワ町の近くだ。

下手にほっとくと、こちらまで植物が押し寄せてくるだろうし。」

「私も同感です。街が森に飲まれてパープルメルトに、人が食べられるところなんて見たくありません。」

「よし満場一致だな。じゃあ、こうなっている原因を突き止めるべく動こうか。

木がよりうっそうとなっているほうへ進めば原因がわかると思う。」

 そうやって俺たちはより森の奥へと進みだす。







 パープルメルトを刈りつつ、森を歩いていく。

そんな道中でガサっっという草木をかき分ける音がした。



 この感じ…植物かもしれないが一番考えられるのはモンスター、

植物が生い茂っているということは生態系のバランス的に

草食獣や、それすら喰らう肉食獣も繁殖した群れを守るために

狩りをしている可能性だってある。





 俺は声を潜めてソライに呼びかける。

「ソライ、ニッちゃん、モンスターかもしれない。気をつけろ。」

「りょーかい。」

 全員で腰をかがめ、ガサガサという音がしているほうを、ゆっくりと見る。

「ん?あれは…」





 そこにいたのは昨日の水色の長髪に、いけ好かない仮面をつけたセーラ服のロボットだった。

「なんで、あんなところにいるんでしょうね?」

「さぁ…ただ見つかるとまた戦闘になりそうだから、見つからないようにな」

「あれが昨日、お前らを襲ったっていうロボットか。」

 そういいつつ俺たちは草木を盾にして身を潜め少し近づいて様子を見る。

「…歯車『成長することについて考えるもの』反応あり。」



 なんだ?さっき『成長するもの』つったか?

つまりだ、あいつと俺らが捜しているものは一緒なんじゃないか?

「おい、もしかしたらあいつについていけば、この成長していく森の原因がわかるかもしれないぞ。」

「確かにさっき、成長する何とかって言ってたな。」

「行くぞ。」



 俺たちはロボットに気づかれないように尾行をはじめる。

ロボットは、この悪路を難なくと渡っていく。



「なぁサイム、再確認したいことがある。

あのロボットのスペックを教えてくれ。」

「あのロボットのスペックか。

まずはロケットパンチですべてをなぎ倒していく、ロケットパンチは案外よけられるがスピードと破壊力は抜群だ。

そして腕と手はワイヤーでつながっている。

発射された手が壁をつかんで、自分自身の体ごと巻き上げられることができる。

次に斧ですべてを切り倒すくらいには力が強い。あと僕っ娘!

以上だ。

あと昨日の今日で足のけがが治っているとは思えない。

弱点は足の遅さだ。」

「なるほど、おk把握。」

 情報を共有せずに死ぬ冒険職はよくある話だ。

いざっていう時に情報を共有しておけば誰かが戦闘不能になっても

残りが考えて行動できる。だから俺らはいざってときのために確認しておく。





 ロボットの進行方向の森は一段とその緑と木々の成長が濃くなっていく。

俺たちは尾行を続けて、そして…




▽▽▽▽▽▽▽▽





「おいおい、なんだこりゃ!?」

 そこにいたのは深く絡み合う大量のパープルメルトと超巨大な一本の大樹だった。

大樹の周りにはその周りにパープルメルトそれらでぐるっと取り囲むような形で、小さな学校のグラウンドくらいの大きさの円形の広場ができてた。

ただここは不思議と広場には木は生えておらず、太陽の光を久々に見た。そして付け加えると大樹の下にはこの自然の中に不自然な紫色に輝く祠があった。





「そこにいるんでしょ?昨日の人たち」

 ロボットが、振り返り俺たちのほうを見て問いかける。



「…ばれてーら。」

 俺たちは警戒してたロボットの前に出る。





「なんであなたたちが、生きてるのかは聞かない。

たぶんだけど、アルゴニックの封印を解除して願ったからだと推測。」

「さぁ?どうでしょうかねぇ?」

「まぁそんなことはどうでもいい。また僕の邪魔をしに来たわけ?」

「それはお前がここで何をやってるかによる」





「僕はただ、『超越の歯車』を求めにここにやってきた。」

「あのーそれはいったい何ですか?」

「答える義務はない。」

 …相変わらずいけ好かないな~~。俺はいらだちの顔をしていると…。

「サイムちょっと落ち着いて…こういう交渉の場は僕の出番だ。」

「お前は?あいつらの仲間か?」

「僕はソライ、応木空井だ。こいつの友達だ。

サイムが失礼したね。君にちょっと質問があるんだけどいいかな?」

「さっさとしろ。」





 ネゴシエイターソライが俺の一歩前に出る。





「まずは君の名前を聞こう。

できればスリーサイズも言ってくれたりするとうれしいなぁ。」

「あなたは少女型ロボットの名前とスリーサイズを聞く、変態的な趣味でもあるの?」

「うん、あるよ。

僕はなんだかんだ言っても変態紳士だからね。」

事実だからな。こいつにこういう趣味せいへきがあるのは。

「気持ち悪い、お兄さんだね。

スリーサイズは教えないけど、名前は教えてあげる。

僕の名前は2561、モンブよ。」



 でたソライの十八番ドア・イン・ザ・フェイス。

本当は名前が知りたいのにあえてスリーサイズなんて絶対に教えてくれないものを要求することで、『じゃあ名前くらいは教えてもいいか』と、思わせる心理学に基づいたテクニックだ。

ソライの真意は、相手から名前を喋らせることでそのあとの情報や、今後の展開を自分の優位に操るためだろう。



「なるほど、モンブちゃんだね。

これからよろしく~でね早速、聞きたいことがあるんだけど。」

「なに?」

「僕たちはある理由で、この森の成長を止めたい。

だがそれの理由がわからないんだ。知ってる?」

「それは超越の歯車が関与している。」





 うまいな。さすがソライ、森の成長=超越の歯車とやらが、関与していることまでは確定したぞ。

情報を確定させることはこの業界において最重要スキルの一つだ。

「それじゃあ超越の歯車っていうのを、僕らが取ってきてあげようか?

そうすれば森の成長も止まるでしょ?目的は一緒なんだからさ~。」

 フランクに笑顔えいぎょうスマイルを放つ。

「断る。お前らはきっと裏切る。」

「おやおや、僕らが裏切るっていう証拠はないよ。

なんならほら、武器を地面に置いた。」

 そういってソライは刀を地面に置くソライは後ろで手を組みつつ、へらへらと笑っている。



 だがよく手の部分を見ると、指で何やら合図を俺に向かって送っている。





 …はーん。そういう事か。了解した。





「…それでもお前らは信用ならない。

 なぜならお前らのもとにはアルゴニックがいる。

 あれに何を願うのかは知らない、

 だがあれに対して超越の歯車を近づけることを私は了承しない。」

「なんなら、僕らの事務所にあるアルゴニックをモンブちゃんにあげるよ。

家はショーワ町にあるよ。お茶も一緒にしてくれるとうれしいなぁ。」




「…なるほど、そこにあるのか、ならお前たちをここで殺し…」「サイムッ!!!」

 ソライがモンブの話の途中で俺に呼びかける。

 俺はソライの指示で『あらかじめ用意しておいた槍』を握りしめ

「あいよ!武山流槍術!!奥義ィ!!!」

 俺は強く一歩を踏み込み右手の全筋力で槍をモンブに向かって投げ飛ばす。



 力いっぱいに投げた槍は衝撃波を放ち、モンブに向かって迫っていく。





弐合目ニゴウメ高尾タカオ!!!」

「ふっそれくらい、よけられないとでも思っ」

 ああ、槍は回避できるだろうな。



 槍はな!



 その瞬間、いつの間にか刀を拾い上げたソライが、

応木流刀術オウキリュウトウジュツ 弐葉フタバモモ!」

 よけた直後のモンブに高速で接敵し、刀身を見る間もなく見事な居合の一線を決め込む。





 恐ろしいまでの速さのあまり時が止まっているかのように、モンブが制止し、一緒に切られたと思わしき、ひらりと舞った落ち葉が二つに切れる。



「うっしゃ!見たか!僕の居合!」

「ソライさんすごいです!」





 だが

「やってくれたな。」

 モンブはゆらりと立ち上がる。だが腕にそこそこ傷を負っており服が破けている。

「なるほど、刀の奴が話をしている間に、槍の奴が奇襲をかける。だが、槍の奴は囮で刀の奴が本命の攻撃、見事な連携だった。」

「できれば名前を憶えてほしいんだけどなぁ。」

 ソライ…一応、敵にそういう態度ロリにかまってほしいかんじにするな…絶妙に言い方がキモイ。



「…『サイム』に『ソライ』。あなたたちを『敵』と認識します。

だが僕に比べたらまだまだだ。」



 そういうと両手をクロスするようにしてギアを2つ持って叫ぶ。



「ガジェットギア!!ダブルセットッ!!」



 二つの【-斧-アックスギア】を両腕のくぼみにはめ込む。

そして両腕はだんだんと両手斧へと変わっていく。

仮面もガスマスクをつけたような見た目になる。




「さて始ましょうか。」


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~ノヴァアージ知恵袋のコーナー~

~サイムとソライは二人で家事を交代で担当しているぞ!~

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