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【完結】nOva urGE/ノヴァアージ ~みんなと心を信じあう冒険~   作者: ラクルドゥ
第四章:第13話-万夫不刀と明珠暗刀-
118/273

閑話⑥『昔語 上の巻:三道の酒』

※この『物語』は『フィクション』です。

※それなりに『のすたるじぃ~な』気持ちで読んでください!



 主観変更side_ゾンガイ

▽▽▽▽▽▽▽▽


「誰かの期待に応じるか…

我が子孫ながら大した心持こころもちよ。

まさか【最誕】の眼になりかけて…

良き愚か者よ。」

 崩れかけの社の中、ますに少しばかりの酒を注ぎ。今日の闘いを思い出していた。

ソライは多分自覚してなかっただろう。

闘いの中であいつの目……我らが主、『キジタケ様』と同じ『誕生の四角しかく』へ変わっていた。

【接続】しかけたのだな…。



 ――わしがますに酒を注ぎ終えると『よく知っている阿呆』が

隣から、空の『おちょこ』を差し出して酒をせがむ。



「おや?ゾンガイ。だいぶボロボロだけどなんだかすっきりした顔だねぇ…」

「…()()()()か?」

 忘れもしない。

この黒い模様に赤い隻眼をした『かつての仲間』を。



挿絵(By みてみん)





「今は()()()()だよ、旧友よ。しかし体力落ちたねぇ~。団子を貪ることと、人斬り以外才がなく。それを極め『私が建設した天守閣』を切り落とした女が、子供ガキに負けるのはあまりにも、みっともなくて滑稽で楽しかったよ、馬鹿ばーか

あと1000年は語り草だね。酒の肴に困らなくて助かるよ。」

 わしは少し、イラつきながらも少し笑いながら旧友のおちょこに酒を注ぐ。

最近は悪党になったらしいが。また馬鹿をやってることに呆れる。



「うるせい。ま、ぬしと会うのはざっと100年ぶりくらいだの。最後は地震のころだったか?」

「そうだねぇ。電報や文通はしてたけど、確か最後にあった時は世界大戦前後だったねぇ…。わが弟子の夏眼ナツメ君が木曜会発足のために、君に助力してもらった時とか懐かしいねぇ」

「…禁之助キンノスケか…いたの、猫馬鹿の坊ちゃんが。」

  あいつも…もう百年も前だな…。猫好き故、狼のわしとはあまり馬が合わなんだ…。





 我が友人コクゴクは上機嫌に百年も前のことを楽しそうに話す。

「…まぁ夏眼ナツメ君、私が洋食屋で『カツカレー』を食べながら、かわいい女の子たちと『いろいろなもので楽しい』ことができる『新しいカフェー』の構想を練っている間に『胃』が悪くなって、なんか死んじゃったけどね。

猫獣人もいっぱいいるって宣伝してもらおうと、夏眼ナツメ君をたぶらかして行けなかったのが残念で仕方がないよ…」

「…禁之助は嫌いじゃぜに見るたび嫌悪ぞ…

文豪なれば芥側アクタガワの小僧のやつのほうが賢い。

あやつの羅章門は都で茨義童子イバラギドウジや、羅章鬼ラショウキと阿呆やって不届きものどもを、全員打ち首根切にしあの門で亡者の上で三日三晩、血と酒を交わした幾千前のエイソの頃を思い出して、これはよーできておると感心したもんじゃ。」

「懐かしいねぇ~。」



 ――わしらがそう語っていると、間に入りさかずきを差出し酒をせがむ。

虚無僧姿のちんちくりんがおった。



▽▽▽▽▽▽▽▽



挿絵(By みてみん)



「その茨義イバラギの小僧はわての信者だったことを忘れたのか?犬っころ?

なれば教祖であるわてにも酒を注いでおくれよ。」

 虚無僧は、被り物を取って、三本角の鬼の顔をあらわにする。

よく見知った。3600年も前と変わらない『餓鬼』の顔で。

「ああ、そうだな。ジンコ。」

「酒が苦手なゾンガイがようやく、わてと呑む気になりよったか。」

「…たまにはいいだろ。」

「…うつけ。素直になるな、調子が狂う。」

 ジンコはそう言いつつ注がれた酒を、口元へ運ぶ。



 久しく揃わなんだ、原初六道旅団のうち三道

『地獄道』コクゴク(訳は分からぬが、リギョクと名乗っている。)

『畜生道』ゾンガイ(子孫と死闘を繰り広げたばかりのわし)

『餓鬼道』ジンコ(教祖であり神でありわしの酒を飲みに来ただけの鬼)

が揃ってしまった…。





「で、おぬしら何をしに来た?またまぬけな官能小説でも書いたか?」

「なに、ちょっと暇つぶしに昔の仲間に会っているところだよ。」

「たまには宴も悪くないだろう。そんなことを言わねばわからぬのか、さすが犬だな。」

「仲間か…」

 ……こいつらの口からこういう言葉を聞くとはな…。

かつて斬りあったこともある仲。だが、おめおめと顔を合わせて今はこうして酒をかわし。

3600年前の始まりの旅、同様にこうやって笑いあう。



「忘れもせんな。あの日々を。」

「うむ…。」

「そう私たちは仲間だったじゃないか。」

「そうだったの。……というよりコクゴクよ。」

「?」

「そのしゃべり方はなんじゃ?薄気味悪いぞ。」

「今はこれがトレンドなんだよ。それに今は私は『リギョク』だよ。」

 …『とれんど』とは、いかな南蛮語だ?

俗世に生きるこいつにしかわからぬ言葉だ…

「ついにボケよったか。現を抜かすとは。」



「あさつゆに かのひとこいし いくさきず みだれよいはて つちかえりこむ

今でも君の書いたきみのくそにも劣る、恥ずかしい和歌を覚えてるよ。

古今和歌集に載ってないのが残念で仕方がないねー。」

「あーーー、それ確かいつの日か帝に送った恋文だ。あの時は信者たちでゲラゲラ笑ったぞ!」

 ――こ、こいつらぁ…。



「うるせぇい!!たわけッ!!若気の至りだ!!」

「あの時にはもう千や二千、生きてたはずだけどなー…。

あの男のどこがよかったんだか………そういえばあの時だったねぇ~~

君の家が『狼から犬』に変わったの~!私は忘れてないよ~。

家系図に突然現れた『犬』!さ~て『誰の子』だったんだい~~?」

「気になるの~!おっほっほっほ!」

 コクゴクとジンコめ!

六道の連中でこいつらは、恋だの愛のことになるととことん意地汚い!

何千年経とうと、人の恋路を酒の肴に変えてきやがる!

「だまれぇ!斬るぞ!」

「「あっはっは!」」

 わかって言ってやがるな!こやつらぁ!悪いか!わしだって恋をしたかったんだよ!



▽▽▽▽▽▽▽▽



「まぁいいや、それよりさおいしいジンが手に入ったんだよねぇ。」

「わしは貴様の酒は苦手じゃ。」

 いつの間にか二人はわしが入れた酒を飲み終わっている。

「おや、3600年前に私ががぶ飲みさせたこと、まだ怒ってる?」

「ああ、そんなこともあったのう。あれは主の前で一生の痴態じゃ。」

「怒っていないなら飲もうよ。」

「仕方ない。今日だけじゃよ。」

「わてにもくれ。」

「さすが二人ともわかってるじゃあないか。そういうところがいいんだよ君らは。」



 ――コクゴクは、我ら二人に酒を注ぐ。





「そういえばコクゴク。今日、妙な客人が来てのう。

一人はわしの子孫なんじゃが、その子孫の友人というのが、キジタケ様そっくりでな。」

「そういえば貴様が切り落とした城で、似た匂いがした生娘がおったが知っておるか?」

「ああ、その人たちなら私のところにも来たよ。」

「二人のところにも来たか…。」

 ――これも…巡り合わせ。『縁』か…。



「ああ、来たし話したよ。実に面白い人たちだった。」

「あれはカイラと同じように転生しているようなものなのか?

それとも大陸へ渡った夜島大三郎ヤシマタイサブロウ阿呆狸あほたぬきが、わしを化かしたものか?」

「いや、カイラは転生しても顔は似てないでしょ?だから転生じゃない。

あと大三郎なら、今頃私との化け知恵比べの賭けの借金返済を頑張ってるらしいけど。」

「やつなら、わてにも頭を下げに来たが、お前のせいか。コクゴク。」

「阿呆、わしとカイラはタイラやあやつに恩があるんじゃぞ!

寄りにもよってあやつを天狗に頭をおさげさせるとは何事か!?」

 狸と天狗、神羅万象の秩序を、無為に狂わせる旧友二人ばかどもをみて呆れかえる。





「いーじゃん別に。知恵比べしかけてきたの向こうだし。

己の浅はかさを『借金地獄』で思い知ればいいさ。」

「それに昔、わてとカイラらが偽名を使って南北放浪二人旅の時に

逆に向こうのほうが恐縮しちまいやがって恩義を感じておったのだから頭を下げる程度。

致し方なし。」

 いい加減、この馬鹿ども…己が『餓鬼道』と『地獄道』と呼ばれる所以を自覚せよ。

「それに平の奴なら十数世紀も前にくたばったじゃあないか。

死人に口なしだよ。死んでしまった馬鹿を気にしてたらキリがないのを忘れたのかい。」

 ……命を軽く見てしまっているな…。

我らは不死ゆえ…の悪癖だ。





「まぁそうなんじゃが。

『死出の旅を歩みしものを時にいたわれよ。

我らより先に老いる者も戦で、死ぬもののふどもの躯道或る故今ありし、ゆめゆめ忘れることなかれ』。

幾時の何代目かのカイラが合戦前に、そう言うて殿をし大勢殺し死んで、次は坊主に産まれ、土地守るためまた殺し死んだ。

それでもいつも死ぬ前に自らを打ち取るものに『合唱』し、いずれ死ぬ己を殺す相手をいたわり、この言の葉吐いて微笑んで逝ったぞ。

ぬしらもちょいと死人をいたわれよコクゴク、ジンコ。

『死人ありて童ありしゆえ、いたわり送れよ』まぬけ。」





 もう一人の友の言葉を紡ぐと、コクゴクは酒を喉の奥へ注ぎ込んだのち。

「…はぁ…『修羅道』で、実に脳筋馬鹿の耳長らしいね。戦で斬りあった時は容赦なかったのになぁ…。」

 


 そう言っては、つまらなさそうな顔から薄く笑う。

「私は居なくなったものをいたわるなんて

馬鹿馬鹿しいんで面倒くさいからやりたく無いなぁー。

いたわったところで会えるわけでもないのにやるなんて、やだね。」

「……主様の前でそう言えるか?」

「…あ、思い出した。カイラと言えば最近、電話してきてね。

今度は女の子になったんだって。」

 ジンコの言葉をわざとらしくコクゴクは、はぐらかす。

…まぁいい。言いたくないだろう。



「うつけめ、また生まれたか。今度のカイラはあの狸のことを覚えてほしいものじゃが…」

 『修羅道』という、同じ我が旧友は幾万と性格や身分もバラバラで転生している。

「まぁカイラは性格が変わっているとはいえ、まったく生き返りのできないこの世界でどうやっておぼろげながらも記憶を保持したまま転生しているのか、私にはまったくもって原理を説明しようがない。たぶん魂が違う、記憶のみだけが受け継いでいる別人だと思うが…」

「あやつ、本当に何度転生しても能天気な奴じゃからな…。

ま、おなごなら無茶せんで済むじゃろ。」

「乱世の奴は二度と相手しとうない。

夜も戦も喩え其れが木刀試合為れど、すべからくごめんこうむる。」

「同感…まぁ彼は、いや今は彼女か。彼女は今楽しくやってるってさ。」



 ――三人とも修羅道あいつとの『闘い』や『夜』でまったくいい思い出がない。

おそらく今はいない人間道である主様や、天道であるキンガをのぞき、

様々な意味で、六道最強は間違いなく奴だ。





 ――『修羅道』…戦に出ればわしでさえ、首を飛ばされかけたことは数知れず。

神となったジンコを数千里先の山々まで殴り飛ばし、

地獄を作り出すコクゴクが全速力で逃げ、恐怖で百年以上身を隠し。

城を落とすのではなく国を一人で落とし。

あまたの英雄の神器を軽々と扱う。怒らせたらいかぬ相手…

天狗だろうと、大蛇だろうと、妖怪だろうと、神であろうと、

友である我らであろうと、決して敵わぬ。何度も転生する馬鹿者。

奴が成長しきる前に仕留めるのも、奴が転生し続けるうちに、もう皆疲れて諦めた。

皆、奴に死線を見せられておる、怒らせるべきではない、恐怖の対象である我が旧友だ。




※ブックマーク、評価、レビュー、いいね、やさしい感想待ってます…!!


~ノヴァアージ知恵袋のコーナー~

~六道は3600年間で何度も斬りあい何度も仲間になって倫理観が壊れているぞ!~

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