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【完結】nOva urGE/ノヴァアージ ~みんなと心を信じあう冒険~   作者: ラクルドゥ
第四章:第13話-万夫不刀と明珠暗刀-
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第13話その5『万夫不刀と明珠暗刀:白梅』

※この『物語』は『フィクション』です。

※それなりに『のすたるじぃ~な』気持ちで読んでください!




 ――歩くこと数十分後。



「何だここ?」

 それは見るからに和風の屋敷の門が目の前にあった。

竹でできた塀に木でできた塀の二重構造で覆われており、

大きな木製の門に瓦屋根…。

だが、どことなく手入れされているところから、人がいる気がする。

そういえば森に入った時も人がいる気配がしてた。

ここに住んでいるんだろうか???





「表札がありますよ。」

「あわわわわ…来ちゃったよぉ…」

「ソライ、うるせぇぞ。」

 表札には『王木』と書かれていた。クンキ?オウボク?

まぁいいや。歯車について何か知っているかもしれない。

「とりあえず、ノックするぞ。」

 コンコン!!と扉をノックする。チャイムはなさそうだが、扉を叩く用の金具はあるな…。



「すいませーーーん!あのーーーー!!!」

「お、おい。もう帰ろうぜ。」

 ホラーゲームのキャラクターか…。お前は…。

「何言ってんだソライ。さっきからマジで変だぞ?

もしかしたら歯車のありかがわかるかもしれねぇんだぞ?」

「いや、たぶん…あるんだよなぁ…寝物語がマジなら」

「じゃあなおさら行かなきゃな。

あのおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

すいませええええええええええん!!」

 金具を使ってもっと大きな声で叫ぶ。

「やめろ!サイム!!」

「いや、引き留める理由が全く分からん。千載一遇のチャンスかもしれんのだぞ。」

 その時大きな門がギギギと開く。







「うわーー…来ちゃったよぉぉぉ…」

「何ようかな?先ほどから我が里の付近を嗅ぎまわう若人よ。」

 中から出てきたのは俺に父親がいるんならこれくらいの年齢はいってそうだなぁって位の推定50歳?の、ガタイのいい和装の男性だ。

和装といっても部屋着で、緑色に雷の模様が入っている。

顔の堀が深い犬の…………『ダックスフンド』の獣人だ。

なんか……誰かと似ている気がする…ぞ。



「あのすいません。実は俺ら、ある歯車を求めに旅をする風変わりな企業でして。」

「サイムさん…」

「直球すぎだ馬鹿…」

「ある…歯車?」

 その男の視線が鋭くギラリと光る。



「え、ええ。実はその歯車、超越の歯車と言いまして、大きさは普通の冒険職が使っているギアと比べるとやや大きめで俺らの知り合いのものなんっすよ。

何とかその~~知っていたらでいいんで教えてくれませんかねぇ~~」

「…知りませんな。そのような歯車。」

「…そうっすか」

 あ、絶対こいつなんか知ってるな。声音がわかりやすい。

「ちっ仕方ね。みんな!向こうを探そうぜ。

ほらソライも!びくびくしてんな!行くぞ!」

「……!!??

ソライ?……そこのお方、今『ソライ』と!?」

 男性は慌てたように俺の言葉に慌てたような怒ったような表情になる。



「ん?ああ、あそこでなんかびくびくして…あれ?あいつどこ行った!?」

 見渡せど近くにソライがいない。

「あ、サイムさん、ソライお兄ちゃんなら、あそこで今全力疾走してる!」

 改めて言うが、ソライは獣人の中でもかなり足が速い部類だ。

ハナビが指さす方向を見ていると、後ろ向きに全力疾走している馬鹿がいた。







「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!

帰って!!!

帰ってたまるかぁああああああああああああああああああああああ!!!」

 すると男性が息を吸い込み大きな声を出しながら、クラウチングスタートを構える。

「……すぅーーーー…

くぉおおおおるらああああああああああああああああああああああああああ!!

数年ぶりに帰ってきたと思ったらぁ!俺から逃げるんじゃあああねぇよォ!!!」

「……え…」

 男性は吠えたと思いきや一気に走り幅跳びの要領で俺らを飛び越し、目にもとまらぬ速さで地面をパワフルに駆け出すッ!



「こうなったら!!

ガジェットギア!!セットッ!!」

 男性の怒鳴り声でソライの動きが止まり。

そのまま、男性はソライに向かって、ソライ以上の素早さで高速で向かっていき。

いつの間にか手に持っていた竹刀をソライへ向けて居合の構えで抜刀する。





その抜刀と脚の素早さと刀に込められた鋭さ。

男のそれは明らかに普段のソライを上回った速度のように見える。

ソライはとっさにガジェットを素早くギリギリでセットする。

()()流刀術ッ!!」「うわっ()()流刀(じゅッつ)ぅッ!」

「も、「モモォッ!」」

 竹刀だというのすさまじい威力を出す居合に、ソライが真剣だが()()構えの居合で推し負けぶっ飛ばされ、思わず尻もちをつく。







 俺らが唖然としている間に、男はソライの胸ぐらをつかみ、脅すような口調と威圧を持ってソライへこう告げる。

「久しいな。馬鹿息子、ソライ。しばらく見ぬうちに下界でなまりよって…。

お前も王木オウキなら腹くくれ。」

「あ、え…ぁ。」

「…

…返事はァ!!!」

「…は、はい。()()。」

 ん?父上?

ってことは…。

あのソライが目が泳ぎびくついている、あの男はまさか…。



挿絵(By みてみん)



「「ソライのお父さん!?」」

「えええッ!?ソライお兄ちゃんのお父さん!?」

「ウェ!?マジですか!?」


▽▽▽▽▽▽▽▽

王木の里_領主亭_応接間

▽▽▽▽▽▽▽▽



「馬鹿息子の友人であり雇い主とは知らず、お見苦しいところを失礼しました。」

「あ、いえいえ~普段からこの馬鹿は、ロリコンでアニメとゲームしか興味なくて

ほとほと手を焼ておりますか、まぁ楽しくやらせてもらっております。」

 俺らは門をくぐり大きな屋敷の畳の香りが素晴らしい、応接間らしき部屋に案内される。

すでにここに来るまで自己紹介を終わらした。

ここに来るまで、家の中をチラッと見たがここは相当広い。

玄関からよく手入れされた上流階級のような庭園が、応接室に来るまでに3回は見たし。

この応接間だって、高級そうな壺に掛け軸、皿に刀や鎧。

広さも10畳はある。しかも相当きれいな部屋だ。

「すいません、突然の来客で掃除し終えたのが、一番小さい部屋のここだけでして…。」

 ここが一番小さいだって!?ソライ以外の俺を含めた4人全員、口ぽかんッてしちまうよ。







「申し遅れました。私の名前は王木オウキ落雷ラクライ

この王木の里の長をやらせていただいております。」

「王木の里って何ですか?」

 ナイス質問だ。ニッちゃん!

「王木の里とはこの国で最も古い一族とその従者一族の末裔が住まう里でございます。」

「この国で最も古い一族?それっていったい何年くらい前なんですか?」

「4300年ほど前のはるか古より我々はその血を守ってまいりました。」

 4300年前!?リギョクの自称した年齢よりはるか前かよ!?

つか、従者の一族も住んでいるんだ…。

…ソライは頭首の息子…つまり、もっとも古い血統を持つ一族の…次期頭首ってことかよ。





「へ、へぇ…ソライお兄ちゃんて、いいとこのおぼっちゃまだったんだね。」

「いや、これ本当だとしたらマジで由緒正しいとこの家出身だぞ。」

「てんのー陛下よりすごいの?」

「ああ、血統書的な歴史だけだったら、たぶんめちゃくちゃすごい部類と思う。」

 つか、10年あいつと友達やってるけど初めて知ったぞ。

中学の頃、一人暮らししていたことは知ってたけど、あいつマジもんのいいところの出身だったのかよ!中学時代の一人暮らしの資金源の謎が解けたぞ!



「ソライお兄ちゃんすごいんだって!よかったね!」

「よくないよ!僕はこんなとこに帰りたくなかった!」

「こらぁ馬鹿息子が!お客人の前だぞ!

お前はそれでも王木の血を引いているのか!?

『こんなところ』とは恥知らずのバカ息子が!」

「血を引いてるどうこうの問題じゃないんですよ、父上!

こいつらとの関係は僕が決めますから!」

「確かに関係は貴様が決めてもよい!

だがな礼儀をわきまえろと言っておるのだ!

大体お客人は仮にも、貴様を雇っていた社長ではないか!」

「うちの会社は距離感がめちゃ近いんですぅー!

それが関係性を決めるってことなんですぅ~~!」

「それでも礼儀をわきまえよ!」

「まぁまぁお父さん、ソライ。二人とも落ち着いて!」

「「ふん!」」

 どうやら教育熱心…っていうか。

おそらく貴族的な教育が当たり前の家がこいつ嫌になったんだろうな…。



▽▽▽▽▽▽▽▽





「…何だか、とても教育熱心というか、礼儀正しすぎるというか…」

「あれだな。こういう古くから続く家だ。

おそらく政界とかそういう関係各所にそういうところにも太いパイプがあるんだろうな。

そういうところで痴態をさらさないように礼儀にはうるさいんだろう。」

「あのずっと気になっていたんですけど、

なんでソライさん、そんないいとこの家のなのに、家出したんですか?

しつけが厳しかったからとか?」

 さっき考えていたことをニッちゃんは聞いてみる。

こいつのことだから、まともな理由で俺らの地元に来るわけがない。

理由が気になるな。

「ああ、それもある。クソみたいなしきたりや、理不尽の数々。

だが問題はあの日。

『あ、これすぐに逃げなければ僕の人生オワタ』ってなったから家出したんだよ。」

「コラァ!!ソライィ!」

「ヒィイ!?」

 ソライは父親にどやされる。

「…え、それってどんなかお聞きしても…?」

「それは…」

 その時突然、ふすまが開く

現れたのは、たれ耳のダックスフンドの女性。おそらくソライの血縁関係者だろう。

セミロングの髪を揺らし、緑の花柄の着物を着た二十歳くらいの女性だった。

顔立ちがよく美人でありながら、童顔でソライにそっくりだ。



挿絵(By みてみん)



「父上、ここにいらしたのですか。そろそろ男衆の剣の稽古に…

え。嘘!もしかしてお兄様!!?」

「うごぁあ!ウミィィ!?」

 その女性を見た瞬間ソライが白目をむく。さながら顔が、ホラーマンガで見ちゃあいけないものを見た時のような顔になってた。

そして女性はソライへと駆け寄る。

が…この人は何だ?

お兄様…って言ってたが…。まさかなぁ…。

「お兄様が帰ってきてる!!父上!これは嘘ではありませんよね!」

「ああ、嘘ではないぞ。ようやく次期頭首、ソライが帰ってきたのだ。

ようやく肩の荷が下りたわい。」

「ソライお兄様ぁ~…♡」

 その女性はソライに抱き着く。

「うぉおおおおおおおおおおおお!!!

ウミィイイイイイイイイイ!!やめろやめろやめろ!離れろ!僕に近寄るな!!

その手どけろ!!来るなあああああ!!僕のそばに近づくなァァァ!(迫真)」

「ええ??いいじゃあないですの~~」

「むッ!なんだかちょっと嫉妬しちゃうかも!ソライお兄ちゃん!その人は誰ですか!?」

 ハナビがすっごい顔をしている。この子の顔の半分がゴーグルで覆われていなかったら、きっと人前で見せられないほどのすごい表情だ…。




▽▽▽▽▽▽▽▽




「あ、ああ。こいつは王木オウキウミ…。

………僕の…その…『実の』……はぁ……っ…『妹』のウミ。」

 ソライは顔を手で隠しすごく恥ずかしそうだ。そしてすっごい嫌そう…。

「初めまして皆さま、わたくしは王木オウキウミ。気兼ねなくウミと呼んでください。」

 ウミという女性は丁寧にお辞儀をする。

「はぁ………。どうも……。」

 ………………………。

「うぇえぇっぇ!?実の妹!!?

お前、『ハナビを妹扱い』させておいて『実の妹』いたのかよ!!?」

「ハナビちゃんは『ジェネリック妹』だったんですか!?ソライさん!?」

「お前、実家に妹いながら、あの態度してたのか!?」

「むぅーソライお兄ちゃんに妹がいたなんてハナビ初めて知りました!」

 自己紹介からワンテンポ遅れて、みんながさすがにドン引きする。

普段から、ハナビへ『妹萌え~ぐっへっへ!』って感じでベタベタ触りまくる、あのソライに!?実の妹!?





 …しかもあまり気が付きたくなかったのだが…。

このウミという妹、俺らがドン引きしている中、ソライの身体をベタベタ触るこの手つき…ソライがハナビにやってるのと同じだ!

妙なところでこの二人が、兄妹だということが、わかってしまって軽いショックを受ける。



「ソライお兄様めんこい~くふふ~。」

「べたべた触るなよ!もうお互い二十歳はたち過ぎの兄妹だろ!」

 …ソライ、普段からハナビに、べたべた触ってるくせに良く言えるな…。

ハナビを見てみろ。お前に向けて明らかに怒ってるじゃあないか…。

しかもなんで義妹扱いしているハナビと違って、実の妹であるウミさんへ、嫌悪感丸出しなんだよ。普段妹萌えとか言ってるやつが、妹を毛嫌いするって何かあったのだろうか…。




▽▽▽▽▽▽▽▽




 ――………思えば、こいつの過去…俺ら何も知らない。

…そういえば、あのタイムカプセル。

あの手紙、漢字の『止め』が妙なタイミングで『跳ね』に変わってた。ニッちゃんへと送った扇子や、社内日誌でよくみるソライ特有の『癖字くせじ』だ。

つまりあの手紙やタイムカプセルは、子供のころのソライの持ち物だったんじゃないか?

だが……奇妙だ…。



 手紙には

車『というもの』を運転したい。『動く絵』を見たい。

『この里の外へ出たい』以外のことが書かれてなかった…。おまけに筆で書かれていた。

…『現代の子供』がこんな表現をするとは思えない。

ましてや『外へ出たい』なんて…。まるで監禁されているみたいな書き方だ。

…広くて、きれいな里だが、奇妙だ。ソライが実の妹を毛嫌いしているのも…。



 …俺やユウジ、ヒトメと『大傘近郊ここ』から遠く離れた『東協都じもと』で出会い、青春を過ごしたこと、中学ながら一人暮らしをしていたことすら、今にして思えばとんでもなく奇妙に感じる。




▽▽▽▽▽▽▽▽



「で、なんでソライは家出したんだ?」

 さっき人生オワタとか言っていたが…。何なのか気になっていた。

はぐらかされるわけにはいかない。友達として。



「ああ、それはソライの許嫁が発表に出された翌日。この馬鹿息子は突如としていなくなってしまったのだ。」

「はぁ!?許嫁!?え、なにお前結婚すんの!?」

「もしかしてちょっと失礼だけど、その結婚相手が超ブスだから嫌だとか?」

「相手が実は男だったりとか?」

「だ、誰となんですか!?」

 友人のトンデモ情報に、いい加減慣れが出てきた俺らは、圧がある問い詰め方をする。

「………ああ……それは…その…」

「この妹、ウミとの結婚をしてもらおうと思ったのだよ。」



  …。



 …。



 …ごめん。目がみんな点になるほど、よくわからない。



 …よくわからないんだけどさ。

なに?けっこん??いもうと?……わからないんだけどさ。

頭を働かせてもわからないんだけどさ、脳の活動が止まるほどの何かがあるんだけどさ。

ごめん、けっこん??

けっこんてなに?いもうととけっこんてなに???

妹と血痕けっこん







 …あ、あー血痕ではなく結婚の方か…。

なるほど、なるほど、結婚かー。妹とソライが…結婚…。

「「「「ええええええええええええええええええええええええええ!!」」」」

「え!?実の妹との結婚んんんッ!?

妹萌えとかを普段のたまう、ロリコン野郎のソライがッ!!?

(デリカシーがない俺なりに配慮した表現)」

「いや、ありえないだろ普通ッ!!

(知的で冷静な判断をするユウジ)」

「それで逃げ出したんですか!?ソライさんッ!?

こんな美人相手に、まだ理性が残ってたんですか!?

(長年の付き合いから別の異常性を理解するニッちゃん)」

「ソライお兄ちゃんだよね!?頭大丈夫!?(ハナビなりの純粋な心配)」

 それぞれソライのひどい解釈だが…

普段からこいつは妹物の同人誌が好物で、妹物のアニメのBlu-rayのために貯金をして、妹物のライトノベルのために給料を前借をする、そういうタイプの変態だ。



 なのにだ、世間から受け入れがたいが、妹と結婚すること…。

こいつにとってはきっと『天国のようなこと』から逃げ出して、家出をして、俺らと旅をしたり依頼を解決したり、仕事して馬鹿やってたという衝撃の事実に、驚きのあまり心臓が口から飛び出そうだ…。



▽▽▽▽▽▽▽▽



「これが事実なんだよ…。

この里は血にとにかく、うるさく超閉鎖的過ぎて…

しきたりのせいで、めったなことでは外の人間と結婚できないんだよ…。

由緒正しすぎるがゆえに政府も完全に黙認してしまっているんだよ…。

さらに細胞の変質を抑える秘術的なのが戦国時代くらいに開発されたらしいし…。

母上も父上の………いとこだし…。」

「普段からお前、ハナビに妹キャラ強要してんのに、なんで実の妹はダメなんだよ!」

「そうですよ!りんごは食べられるのに、りんごジュースが飲めないみたいなものじゃないですか!!」

 もはや妹好きが妹を受け入れられないのに理解できない…。

世界七不思議クラスの自体だ…。





「普通に無理だろ!いいかお前ら!実の妹と義妹ぎまいは定義がチゲーーんだよ!!

義妹だったら結婚とかは全然おkだけど!でも実の妹は生理的嫌悪感的に無理!!

こいつと血がつながっているんだよ!やだよ!!それにこいつは…!」

 その言葉をさえぎるように、ウミさんは頬を涙で濡らして…。

「……ソライお兄様…あんまり滅相めっそうなことをおっしゃらないでくださいまし。

ウミは哀しゅうございます。」

「うぐっ…」

 ウミさんは畳をひたひたと涙で濡らしていく…。

世間では『兄妹での結婚』は受け入れがたいことだけど、もはやここまで否定されるのはなんか可哀そうだぞ…。





「そうだ。馬鹿息子よ。これでウミと結婚できるというのに何を哀しくて、関係を悪化させる必要がある!!?」

「なんで結婚の話がぶり返してんだよォ父上!」

「誰が父に対して、そんな口汚い効き方でしゃべっていいと教えたァぁッ!!!」

「ひィ!!!すいません!!」

「たくッ…」





「あのーーーーーーそれでこの方々はどなたでございますか父上?」

「ああ、この方々は下界でソライを雇ってくれていた武山冒険社の皆さまだ。」

「まぁ!ということは兄がお世話になった方ですね。兄がご迷惑をおかけしました。」

「いやいや、この馬鹿にいつも楽しく迷惑かけさせてもらってるんで……。」

 ウミさんは俺らへと向き直り正座での美しい所作で軽く会釈をする。

同じ兄妹でここまで態度が違うのかと、少し感心してしまう。



▽▽▽▽▽▽▽▽



「そういえば気になっていましたが、あなた方はなぜ歯車を求めにやってきたのですか?」

 ソライの父親であるラクライさんはふとしたことを、俺らへと尋ねる。

「あの…もしかして、やっぱりあるんですか?」

「ありますが…申し訳ございませんが渡すことも見せることもできません。なぜ歯車を?」

「ああ、それはアル。

確か本名はオヨン・ルプルドゥ・アルゴニック・フィクショナライズドラマチストだったかな?

そいつの家族らしいんだよ。その歯車ってのが。」

「「!!??」」

「なぜ創造主の名をご存じなのですか?」

「いや、俺ら会ったことあるし。何より一緒に暮らしてるし。」

「何と…!

創造主はご健在であらせらると!?これは…『ゾンガイ様』にもご報告せねば!!」





 なんだか、二人が盛り上がっている…。

そんな時、後ろ隣に座っていたニッちゃんが俺の袖を引っ張る。

構ってほしい猫みたいな動作だが、何か考えてるような顔で俺を見つめる。

「(小声で)サイムさん、私、ゾンガイって言葉、最近どこかで聞いたことがあります…。」

「(小声で)は?どんな…?なんていうか人物っぽいけど…。」

「(小声で)……いつだったっけ…??

(元の声量で二人へ)あの…ゾンガイ様って…?」

「我らの『先祖』であり歴史の裏に必ず存在する『武人ぶじん

三千年ものの間、今もなお生きてこの地を納める『仙人』。

敵とくれば一人で一万人を斬り伏せ。城や国を落とした数は知れず。

古今東西を駆ける、史上最強の剣士であり『王木流刀術開祖』

またの名を『無限刀』

『原初六道』の『一道いちどう』、『畜生道』王木存外オウキゾンガイ様です。」



 …え……。

「…あの……今、生きているって…。

その人って一体…。

…その人がいるから歯車を渡せないのですか…?」

「……うむ、では聞いたことが無いのであれれば、お聞かせ致しましょう…。

歯車の渡せない訳にも関係する、かの『原初六道』の物語を。」








 ラクライさんが語り始める。



 それはソライがいたこの『王木の里』…いや…

この『旭我』の建国、そして…

創造主アルと歯車を求めた『原初六道』との歴史のお話。





 ――ある六人の旅の物語(俺らによく似た話)だった。



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~ノヴァアージ知恵袋のコーナー~

~この国での狼の獣人は全滅したとされるぞ!~

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