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第2話その1『パープルメルト:発芽』

※この『物語』は『フィクション』です。

※それなりに『成長を見守る』気持ちで読んでください!



主観変更side_???

▽▽▽▽▽▽▽▽

――夕暮れのショーワ町、僕らの町。

商店街ねぎられるカモどもを抜けて僕は家路を急ぐ、今日はサイムの好きな焼きそばをすることにしている。

ゲーミングヘッドホンからお気に入りのアニソンを流しつつ自分のジャージと同じ色のキャベツを買い物袋にいれて、『尻尾』を揺らし、優雅に夕焼けを眺め帰宅していた。





 今日の僕は結構気分がいい。

なにせキャベツ1玉25円で手に入ったからな。

おかげで、買い物袋はパンパンだ。八百屋の奴途中から泣いていたな。

今度は人参を買いせしめると予告もしておいた。泣くのも無理はない。少ない金で生きていくためなら何だってやる。



 値切れるものなら、家だろうと道具だろうと値切って生きてきた。

節約とは曲がりくねった社会で生きていく、バグ技じみたチート処世術。

せどりをすすめられたこともあるが、プライドがあるので僕はそんなことはしない。

この世は弱肉強食ハイリスクハイリターン、友情以外は基本的になんでも値切れると、僕は思っている。



 だがある理由から友情は切れなかった。家族との縁を切っても。友達を見捨てられなかった。大切なものを譲らない。

相手の大切なものを見つけて交渉する。これも値切りの定石だ。

意識してると結構、場の有利はこっちに傾くからな。八百屋の奴みたいに。



 さてと家に着いたぞ。





 僕らの家。

東協都トーキョート塔明区とうめいく昭和町しょーわちょうこ29番地ばんちムージナン停留錬ていりゅうとう5F

武山冒険社へようやく帰ってきた。





「ただいまー。」

 ドンと、勢いよく玄関を開けても。

――返事がないただの屍のようだ。





 っていうことはサイムは今どっかに行ったか?

うーん、僕が『ちょっと遠方まで買い物行く』って言って、サボりがてら推しの地元系、地下アイドルあみんちゃんの握手会に行きつつ、激安で買い物を済ませてきたってのに、ねぎらいの言葉一つもないとは…。

何て薄情な社長なんだ!



 まぁそりゃそうだろう。あいつ暇になるとワクワクすることがないからか、散歩とか言って放浪して、問題を抱え込んで帰ってくるのは始めるのは今に始まったことじゃあない。



 昼前にあいつと僕が、訳アリで『無料ただ』にしてくれた、蕎麦の出前を食べて、その後僕が出て行ったから、何かに夢中になっているなら今頃はおなかを空かしている頃だろう。台所で、料理していりゃあ帰ってくるだろ。





 台所に立ち料理を開始する。

そこそこの速さで野菜を、切っていく。

その後コンロに火をつけ肉、野菜、麺、ソースの順で焼きそばをつくっていく…



 卵あったっけ?なんて思いながら冷蔵庫を覗いているとき。





 ガチャリ…

という玄関扉の音…







 お、ちょうどほぼできたタイミングで、帰ってきたな。

どうやら体内時計は正確のようだ。

「おかえりー遅かった…な?」

「ただいまぁああ…・」

 サイムはただでさえ長ったらしい髪がぼさぼさで、フラフラの千鳥足で

何か緑色のぬいぐるみみたいな大きさの物体を小脇に抱えながら。

よろけるようにして、帰宅のあいさつを交わす。





 はーん、さてはこいつ、また何かしでかしたな?

昔と変わらず、ロクでもないでかい何かをしてきたって感じだな。



 こんな面白い友人を持ててこれほど楽しいことはない。





 僕はサイムと飯を食いながら、

今日はこの馬鹿はいったいどんなろくでもないことをやらかして

いったいどんなワクワクする話があったのかを期待することにした。






主観変更side_サイム

▽▽▽▽▽▽▽▽





「…と、いうことがあったんだよ。」



 飯を食い終わり、

俺がわが社の値切り馬鹿の専務こと応木オウキ 空井ソライ

通称ソライに今日あったことはあらかた話した。



挿絵(By みてみん)



 ちなみにだが見ての通りソライは犬の細かいことを言えばダックスフンドに近い雑種の獣人だ。

獣人は動物の特徴を持つ種族で基本的に犬、猫、狸、キツネ、ウサギ

まれに馬、サル等の陸上型哺乳類の特徴が出る。

なお中には、蝙蝠、羊、イルカ、クジラなどもどこかにいるとかいないとか。

ただ獣人って名前の割にはいうほど獣していない。肉体のベースはあくまで人間だ。





 だって顔で特徴的なのは鼻程度で、獣人は実際の犬のように白黒の色盲でもない。

鼻が利いたり、玉ねぎを食べたりすると下痢になったり、

肉球とまでは言えないけど進化の痕跡として手のひらは割とぷにぷにしている。

あと犬歯が多かったり爪が固かったり舌が長くてざらざらしたり、見えないところで獣人らしい。

身体能力は鬼が怪力ならこいつらは基本俊足だ。




 割と個人差はあるがソライに関してはかなり速い部類。

あとあまり関係ないことだが童顔についてはあまり触れてやらないでくれ、コンプレックスらしいから。





「へぇーあんまり信じられない話だなぁ。」

 ソライはそんなことを言いながらしかめっ面をする。

「いやいや事実なんだって!マジで。」

 なお、この場にニッちゃんは同席していない。

あの子はもうすでに家に帰ったわ

なので俺一人だけが、ソライにいろいろと説明せにゃならん。

だからめっちゃくちゃ大変なんだわ。



 …あと飯がすき焼きじゃなかったのが腹が立つ。

どうせだったら一言連絡を入れておくべきだったと

かなり後悔をしている。ホウ・レン・ソウを社長ができてないのはダメだ。

まぁ好物を作ってくれたソライには感謝をしているがな。





「なんなら、明日ニッちゃんに確認してみようか?」

「うーん。まぁ二人が嘘をつく理由はないしなぁ。

まぁ信じることにするよ。それで質問なんだけどさ。」

「なんだ?」

「サイム達を空中へ放り出したっていう、肝心のアルゴニックってのは、もしかしてあれかい?」



 ソライが指さしたほうを見やると、そこには緑色のなんだかよくわからない物体が置かれていた。

「そうだ。あれが今回ゆーいつの戦利品。

はぁ…本当は周りにあった水晶をとりたかったのに、あんななんだかよくわからないものしか、手に入らなかった。」





「動かないみたいだね。」

 ソライがアルゴニックを、箸で突っつく。

遺跡から出たよくわかんないものなんだから

汚いからやめろ…と内心ツッコむ

実際、埃っぽかったし。



「そうなんだよ。メイジダンジョンを離れたら、動かなくなっちまった。」

「あ、意外に柔らかい。ふわふわしてる。それにこれ以外に重いね。」

「ああ、ニッちゃんに途中まで一緒に運んでもらった。

あとソライ!

あんまり触らないほうがいいぞ、いつ動き出すのかわかんねぇし。

爆発するやもしれん。」

「おk~」

 実際、遺跡からニトログリセリン的な物質を持って帰って会社が爆破したという事件が、餅にのどが詰まる事件の要領で1年に1回は聞くことがあるのだ。

「あ、そうそう僕からも一応報告です!」

「お、なんだ?」







「0になりました。」



その言葉を聞いてまさかと思う、

が、一応聞いてみることにした



「何が?」とこいつの報告という名の窮地はろくなことがない。

一番軽いので飲んだ牛乳が腐ってたのレベルだ。

そして帰ってきた言葉は案の定。



「財布が。」

「…」

「…」



 数秒間の謎の沈黙を経た後…



「まずいじゃん…」

「まずいね。」

「まずいじゃんッ!!!」

「まずいねッ!!!」



 こいつの財布にはわが社のほとんどの金が入っている。

浪費癖はあるが、こいつはそれを上回る値切りの天才なので預けざらるおえないのだ。

「武山冒険社始まって2年目にして30回目の倒産の危機だぞ」

「サイムそれ違う、正確には32回目だ!」

「どっちでもいいよ!!」

「とりあえず明日、ニッちゃんが来てから考えましょーか!」



▽▽▽▽▽▽▽▽


 翌日



「で、なんでこのピンチを迎えて、この体たらくなんですか!!

このダメ人間達は!!」

 ニッちゃんが叫ぶ。俺らがやってること…それは…。

「おーいソライ!まずNPCから潰すぞ!」

「サイム、相変わらず丸ピンクしか使わないんだな」

「これが一番使いやすいんだよ!お前こそおっさんばかり使ってんじゃねーぞ!」



「はぁ…まだ平日だというのに…」

 俺たちは平日の昼間っからゲームに興じていた。

なお使用ソフトは某対戦格闘ゲームである。

「よしっゲージ溜まった。くたばれ!」

「はい回避よゆー!ざまぁwねぇ今どんな気持ち?」

「このぉおおおお」



 この馬鹿はニタニタ笑いながら落としたそばから

挑発のつもりか攻撃には関係ないアピールをしてきやがる。

2週間前にもイラっときてぶん殴ってしまうほど煽り芸がうまい。

「ばーか!残念だが、防御をそんなに使ってない時点で勝ち目はないよー!」

 腹が立つけどなぁあ!!!



▽▽▽▽▽▽▽▽



「はいそれまでです!」



 そういうといつのまにかニッちゃんはテレビの前に立ち電源を切る。

「「あああーーーー!!!今いいとこだったのに!!」」

 死角からのコンセントぶっこぬきはねぇよ!!

ゲームの電源も切りやがったし!!!

「平日の昼間っから遊ぶな!21歳児!!」

「やーいサイムだけ叱られてんのー!」

「ソライさんもですよ!!」

「ニッちゃん、ざんねぇんでしたぁ!

僕は誕生月が5月だから22歳児でぇーす!」





「鉄拳制裁!」

「ぶべらっ!」

顔がむかつくソライへニッちゃんのパンチが繰り出される。

むろん鬼なりの手加減をして。

馬鹿ソライは見事に吹っ飛ばされる。

まぁこいつが殴られるのはいつものことだし。



「さてとニッちゃんも来たことだし、そろそろ話を進めようか。」

「じゃあまず初めに、このなかなか起きないアルゴニックをどうするかだ…」

「殴っても起きないし、フライパンで焼いても起きなかったぞ。」

「うーん一旦保留、ですかね?」





「そうだな…

まぁそれよりも今は、うちの資金が完全に底をついてな。

絶賛32回目の倒産の危機だってことのほうが、問題なわけでして。」

「明日からの生活費もないから冷蔵庫もキャベツくらいしか入ってないし。」

「とりあえず目標としては、2万円くらいどかっと稼げる依頼がないか、探さなくてはならねぇんだよなぁ。」





「じゃあどうする?情報屋兼鑑定屋のマチルダさんとこ行く?」

 その名前を聞いて俺は嫌なことを思い出す。

「え、マチルダさんとこって、ろある堂だろ?

あそこには貸しと借金が、いくつあると思ってんだよ。」

 俺はろある堂という総合冒険互助企業の非常に頭のキレる女、マチルダさん(あだ名)にひどい借金をしている。

借りもいくつもありこれ以上頼るわけにはいかんのだ。





「それもそうか、今回も金を借りに来たとか、高額依頼斡旋してくれとか言ったらまず間違いなく、マチルダさんの本の角で頭を殴られるな。」

「あなたたち一体いくつ借金あるんですか…」

「「てへっ☆」」



「とりあえずだ、ろある堂に行くのだけは、借金のかたがつきそうな場合だけにしておこう。

あそこに行くのは最終手段だ!」

「かとなんとか言ってギルドは、この前宝箱と間違えてミミック持ってきたときにやらかしちゃったしなぁ。」

 あやうく一般人を危険にさらしかけ警察に厳重注意処分を受けた。







「ですが、この最底辺の悪名高い会社にわざわざ依頼を頼みに来るような人もいませんしねぇ…」

「おお、ナチュラルにディスられてる。」

「もしお金を稼ぐのなら、昨日言った通りチラシのどれかから選んで、地道にコツコツと依頼をこなすしか方法はなさそうですね。」



 と、ここでソライが目を見開く

「あ、そうだ!それだよニッちゃん!

この中の依頼を1つだけ受けて、その1つを一気に2万円まで僕が値上げするのさ!」

「それだ!ソライ!」

「……はぁッ!?

え、ちょっと何ですか!?

ずるくないですか!?」

 ニッちゃんはびっくりしたように目が丸だった。



「「ずる上等!」」

 にたりと笑いあう俺ら。愕然となるニッちゃんがそこにいた。



▽▽▽▽▽▽▽▽


 さっそく昨日のチラシを見る俺ら三人

「猫の捜索依頼とかどうですか?」

「パス、どっかで野垂れ死んでいるかもしれん猫をいちいち、探す気にはなれん。

この街広いし。暑いし。案外、子猫を生んで幸せになってるやもしれん。」

「うーむ、この中で労力の少なそうなのは草の除草作業の依頼だね。」

「ほう。確かに除草剤をまくだけで終わる簡単な依頼だしなぁ。ソライの案を決定とする。

早速依頼主に電話だぁ!」

「あいあいさー!」







「サイムさん。」

「ん?どうした?ニッちゃん?」

「本当に1500円を2万円にできると思ってるんですか?」

「ああ、できるさ。この世でたとえホームレスになっても、贅沢三昧できるやつがいるとすれば、それはソライくらいなもんだろうと俺は踏んでる。」

「確かにソライさんは、馬鹿だけどすごいって知ってますけど…」

 ニッちゃんがジト目でソライのほうを見やる。



 すごい真剣な表情をしながら圧を感じる言い方と、優しい言い方を使い分け

「あ、はい。はい。いえいえ、そんなそんな~いえいえ。

そちらのほうこそ、はい、え、ああもちろんです。

はい。それもわが社に任せてください。

それでですね~それもこみこみで考えると少々お高くなってしまうと思われます。

はい。いやいや、そんな滅相もございません。

お客様の信頼がわが社のモットーですから、あなた様のお考えはまさに知的で

素晴らしいと思われます。

いやーそんなそんな、ではさらにもっと、上をいっっちゃいましょう!

…ありがとうございます!今後とも武山冒険社を何卒ごひいきに~」







ニッちゃんと会話している間にあらかたの内容は終わったらしく電話を切る。



「ソライどうだった?」

 ソライはうつむいたまま、五本の指を立てる。

「まさか、5000円!?あのソライが!?」

「5万円…」

「え」

「この依頼が達成したら5万円くれるってさ…」

「…」



▽▽▽▽▽▽▽▽



 ニッちゃんと顔を合わせる。

「いよっしゃあああああああ!!!!!」

 思わずガッツポーズをとる俺たち

「ばんざーい!!」



「やったなソライ、お前どんなペテンを使ったんだよッ!?」

「いやね、ありゃ天啓的なカモだ。僕が話し出す前から

『状況が変わった報酬は2万5000円でいい』って言ってきた。」

「そーかそーか。」



「ただし、厄介なことがわかった。

相手の人は植物学者らしく、今回除草する大量発生した植物『パープルメルト』の駆除を急いで、今すぐしてきてほしいってさ。

もしわかるならパープルメルトの大量発生の原因を突き止めてほしいとも言っていたよ。」

「え、パープルメルト?それって…」



▽▽▽▽▽▽▽▽



 ニッちゃんは焦った顔をし、事務所の整理されてない棚から植物図鑑を取り出す。

そして植物図鑑をぺらぺらとめくり

「ありました!これですね!」

 そこには口のような部位と、紫の袋のようなものがある植物が載っていた。



「えーと、何々パープルメルト

シダ植物門 ゼンマイ目 ムラサキサンツボミ科

学名 ムラサキサンツボミ

多年生植物。

大きさ・平均1m60㎝最大2m以上

繁殖方法・胞子

危険性・高い

3~4枚の胞子葉、そして大きな蕾のような袋があるのが特徴的です。

そして注意として『政府指定2級超危険植物』です。

その理由としてパープルメルトの生態は、食『獣』植物です。

パープルメルトは根と口のような部位から、

近くを通った動物を吸収しそして消化して養分とします。

パープルメルトの最大の特徴は近くに

獲物が通ると紫色の袋から消化液を吐き出す。

あたったら大けがを負うので注意してください。

だって。」







「おい、これ5万円でも安いくらいの依頼じゃねぇかああああああああ!!!」

「しまった!まさか僕としたことが!もっと値上げできたじゃないか!」

「そこですか!!?」



「はぁ…とりあえず受けちまった依頼は仕方がない、一度受けた依頼を引き下がるのは男の恥だ。

この依頼何としてでも完了させるぞ!」

「「おー…」」





 こうして夏の日差しに汗水たらす…

いや、溶解液との血なまぐさい戦いをし

手に汗握るパープルメルト駆除の依頼が始まった。




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~ノヴァアージ知恵袋のコーナー~

~武山冒険社は地元の声援で成り立っているような会社だぞ!~

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