大魔王は檻の中で笑う
あたくしは大魔王の生まれ変わりである。
「きゃあーーー」
見た?すごいでしょ?老若男女問わず、あたくしを目にすると叫ぶの。え?あたくしが大魔王だった証拠を見せて欲しいって?見て御覧この爪、この牙。
「きゃあーーーー」
んふふふ。一際大きな悲鳴ね。幸せ。
「お腹、黒いー」
んふふふ。そこの子ども、分かっているじゃない。大魔王たる私のお腹は真っ黒なのよ。ペロっと舌を出す。
「きゃあーーーー」
「最強だわ」
んふふふ。よく分かってるじゃない。さて、林檎でも食べるかな。あたくしは木に登る。確かあの辺りにあったはず。あまりゴロゴロしているのもよくないと思ったのか、世話係の女性が木の上だとかに林檎などの果物を置いていく。人間はたくさん来るんだけど勇者は来ないし、暇なのよね。平和な世の中に乾杯。
「ねぇ、あれって…?」
たまに何か違う名前を出す人間がいるけど何なんだろう?
「違うよ。あれはアライグマ、この子はレッサーパンダ」
「かわいい、かわいすぎる。レッサーパンダ最強ー」
キャーキャー叫ぶ人間たちをよく見たくて、立ち上がってみた。一際大きな悲鳴があがる。本当に幸せだわ。