第二話 ステータス
最近家にゴキブリが出るように…((( ;゜Д゜)))
隣の空き家が取り壊されたからかな?
わりとデカイ奴がいてめっちゃビビりました。
その後容赦なく退治しましたw
異世界。それは僕たちがいた世界とは異なる世界。それと共に存在するのが異なる文化、異なる常識、異なる概念など僕たちの世界の常識を超えた非日常。
普通の人なら異世界と言われたらいったい何を想像するだろうか。ライトノベルや漫画などを嗜む人ならば、まずは魔法を思い浮かべないだろうか。そしてそういったジャンルのゲームを好む者が最初に思い浮かべるのはステータスという概念だろう。
前世では入院生活が長かったので、よくそういった小説やゲームなどを僕もしていた。だってほぼ1日ベットの上で生活するのにそういった娯楽がなければすぐに飽きがきてしまう。
まぁ、それがどうしたと言われれば別にとしか答えようがないんどけど、生憎ここには僕一人なので返事を返す人はいない。……寂しいなんて思ってないよ?
つまり何が言いたいのかというと、僕にもそういったジャンルの知識は無駄に結構ある訳でして―――
「取り敢えず……ステータスっ!」
どうせここには僕一人しかいないので盛大に叫んでみても構わないだろう。そして調子に乗ってちょっとポーズまで決めてみるという痛々しさ。もしこれが家族に見られでもしたら生暖かい目で見られることだろう。ちなみにクラスメートの場合はきっとネタにされて虐められるに違いない。
とかなんとか色々考えていたが、ふと、僕は気がつく。
なんて言えばいいのかな、目の前にホログラムのように青白く光る文字が浮かび上がっていた。
―――――【ステータス】―――――
名前:白銀 鏡夜
天職:錬金術師
種族:人間族 ※【忌み子】
・生命力【B】 ・魔力【SSS】 ・気力【A】
・攻撃力【F】 ・魔法攻撃力【F】 ・防御力【D】
・魔法防御力【C】 ・俊敏【C】 ・知力【S】
・器用【A】 ・回避【D】 ・幸運【SSS】
《スキル》
【融合錬成】 【錬成】 【分解】 【強化錬成】
《EXスキル》
【豪運】 【言語理解】
《固有スキル》
【結晶の聖女】
《称号》
【魔女の寵愛を受けし者】 【異世界人】
―――――――――――――――――
………なんか色々と出てきた。しかも厄ネタ並みにヤバそうなのがあるんだけど…。
まず名前、天職、種族はなんの問題もないと思う。でも人間族と表記された後ろに記述されてる【忌み子】という不穏ワードが物凄く気になる。絶対これダメなやつでしょ。
漫画やライトノベルに登場した忌み子って討伐対象になってるか、生け贄にされるか、皆から嫌われ………あれ、最後当てはまってるじゃん…。
え、なに? 前世で結構嫌われてたからそういう不穏ワードがついたの? 忌み子ってレベルまで嫌われてたの? さすがに僕も泣くよ?
可能性の高い悲しい仮説によって僕の心に言葉の槍が突き刺さる。今にもグサッという擬音が聞こえてきそうだ。
【忌み子】
・右目が禁忌とされる赤の魔眼と酷似しているため、人間達に嫌われやすい。ただ、嫌われやすいというだけで、好かれる可能性もある。しかし、大抵の場合は嫌われる上に、憎悪する者もいるので注意。
・魔族には好かれやすい。ただ、上記で述べた通り、好かれやすいだけであって嫌われる可能性も少なからずある。
僕の感情を察してか、ホログラムがもう一つ浮かび上がると忌み子についての説明が表示された。
あ、よかった。別に前世とか関係ないみたい。でも人間に嫌われやすくなるって表記されているのでショック。可能性の話として好かれるかもしれないよと諦めさせないような文面があるので、なんとなく慰められているような気分になった。
自分のステータスに慰められるとかもう意味が分からない。そんな世にも奇妙な現象が普通に起こっているとか、もう僕は末期かもしれないね(泣)。
……よし、次いこう。いつまでもうじうじ考えてるわけにもいかないし。
次は身体能力の表示がされてるんだけどどういうものなのか漠然としか分からない。多分だけどSSSが一番高い評価でFが一番低い評価ではないだろうか。こういう身体能力などは数値で表示されることが多いから確証はないけど。
それにしても、魔力と幸運がSSSって自分の目で見ても信じられない。正直騙されてないか疑いたくなるレベル。魔力はよくわからないからパス。でも幸運はいくつか心当たりがある。
前世でくじ引き引いたら一等(最新型の掃除機)当たったり、選択問題を勘で回答したら全て正解したり、人助けをしたら実はその人が超人気の美少女アイドルグループの一人で一緒に写真撮ってくれたなど、普通の人にはなかなかない体験をしている。
宝くじは引いたことないから分からなかったけど、多分この感じだと一等とはいかなくとも三等くらいなら当たってたのかも。今更ながらちょっと後悔。
【豪運】
・かなり運気をアップさせる。このスキルは全ての物事に干渉する。ただしそれが自分にとっていいことであるとは限らない。
…………えぇー。最後の説明がなかったら素直に喜んでたのに。忌み子の説明してたホログラムが書き変わったと思ったらこれですか。まるでスキルに頼りすぎるなと言われている気分だ。
いや、実際そうなのかもしれない。ほら、漫画とかでもよくあるじゃん。スキルに頼りすぎて自分の強さを驕り自滅するキャラ。またはスキル封印されてフルボッコにされるとか。
まぁ僕の場合は戦闘関係ないけど、それでも運頼みで生きていくつもりは毛頭ない。それをやるのは博打好きの人か、ただの阿保である。
「それにしても、この固有スキルってなんだろ…」
そう呟きながらホログラムが気になるものの説明文に変わるよう念じてみる。
【固有スキル】
・1000人に1人の確率で発現するスキル。種族などで発現するスキルに違いはあれど、種類の数は千差万別。他の誰かとスキルが被るのはごく稀。別名、ユニークスキル。
やはり念じれば変わるのか。というか、固有スキルってレアなんだ…。これも豪運がもたらした効果なのかな。だって全ての物事に干渉するって書いてあったし。
とにかくそのレアな固有スキルが【結晶の聖女】といういかにもキリスト教信者が授かりそうなスキルはなんだろね。グーグレ先生、お願いします。
【結晶の聖女】
・かつて戦聖女と呼ばれた偉人が使用していたスキル。もともとは【幻夢の結晶】というスキルだったが、愛する人を守るために聖女が残りの寿命の8割を犠牲にして昇華させた無から結晶のみを生み出すスキル。
・結晶で少女の姿をした像を造ることも可能ではあるが、その面影はどことなく戦聖女に似る。
…………え"。
思わず顔が引きつった。いや、だって凄い訳ありなスキルじゃん。呪われてたりしないよね…?
だって二つ目の説明がこのスキル呪われてるんじゃないかと思わせてくるのだ。無から有を生み出す常識を超えた凄いスキルなのは分かるんだけど、呪われてるんじゃないかという疑念がその魅力を相殺する。
なんて重いんだろう。戦聖女の一部の物語が表記されているが、その内容があまりに重い。愛する人を守るために自らを犠牲にするなんてそれ相応の覚悟がいるはずだ。残りの寿命の8割を代償にこのスキルを昇華させたみたいだけど、その代償にみあったスキルなのかは使ってみないと分からない。もしかしたらよほど追い詰められた状況だったのかもしれない。
そしてその尊い犠牲によって昇華したスキルが、ポッと出の異世界人に発現するなんて…。自分なんかが使ってもいいのかと悩んだ挙げ句、自己嫌悪に陥りそうだ。
でもなぁ……呪われてそうだしなぁ。取り敢えず結晶で少女の像を作らないようにしよう。作るつもりもなければそんな予定は永遠に来ないが。
取り敢えず一通り【結晶の聖女】の説明は見たので次にいこう。……出来ればいきたくないけど。
僕はまたホログラムが変わるように念じる。
【魔女の寵愛を受けし者】
・最凶の魔女に寵愛を受けた者にしか授かることがないスキル。莫大な魔力を得るが代償がつく。
・代償:女性から一定以上の好意を持たれると女性が病む。男性に効果はない。
・備考:偉大なる魔女は愛される事がなかったが故に愛を知らない。だが、愛を知らぬままとある少年を愛したことにより、それは歪に形成され、心底へと根付いた。
・追加効果:髪が艶やかになる。
………一番ヤバいやつだったよこれっ!? 予想通りだったけどさ!
なんというかツッコミどころが満載だ。ステータスに表示された魔力【SSS】はこの称号が原因だったのか。でもそれはいいとして代償に納得がいかない。なんだよ、女性から一定以上の好意を持たれると女性が病むって…。
これじゃあ、遠回しに女性に近づくなと言われているようで心にくる。前世で彼女がいなかったのにこの仕打ちはいかがなものか。こんなんじゃ彼女どころか友達すら作れないよ。
……そもそもこんな人の気配がない神殿にいる時点で友達もなにもない。何が悲しくてこんなところに閉じ籠っていなくちゃいけないのか。粗方調べ終わったら絶対にここから抜け出してどこかの街にでも行ってやる。そして平和で幸せな生活を送るのだ。
そのためにはまずは自分のステータスやその他諸々の確認、そしてこの神殿の内部把握と何か使える物がないかの探索。その後は生きていくために食料調達……なんだけどこれが一番難易度が高いかもしれない。外は見ての通り大自然が広がっている。日差しの向きからして今は朝だから昼頃には外の探索に行きたいが、それは明日になるだろう。
夜は何が出るか分からないし、あまり神殿内部もうろつきたくないので早々に寝床を確保する必要がある。そうと決まればさっそく行動しなければ。
行動方針は大まかにだが決まったのでまずは自分に何が出きるかを知る必要がある。それは今後絶対役に立つから最重要事項と言えるだろう。
「うーん、次は神殿内の探索なんだけど……夕方までには終わらせられるといいなぁ…」
思わず不安要素を口に出してしまう。
今日中に終わらせたいが、このだだっ広い神殿を見る限り結構な規模だということが推測できる。僕は一度ため息をつくとやるべきことに目を向けた。
tips1 『白銀 鏡夜』
・白髪赤目の少年。典型的なアルビノだが、左目だけが日本人の特徴である黒色になっている。
・優しい心の持ち主で困っている人を見かけたら助けてしまう。しかし、現実的な考えを持っているので、自分には無理だと判断したら迷いなく大人の人か警察に頼る。喧嘩も強くないため、暴力事件などでは自分が表に出ることはない。
・過去に超人気の美少女アイドルグループ【†ROSARY†】のメンバーを助けたことが密かな自慢。(Rosaryはローザリーと発音します。ちなみにロザリオの事です)
・異世界では名も知らぬ神殿に一人放り出されたような状況ではあるが、とにかく生きるために奮闘中。
《一言コメント》
「豪運スキルがあるのに中学時代はよく事件に巻き込まれたのが未だに疑問かな」