表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/243

第四章 動き出した時間 場面三 東方からの使者(六)

「三人ともよく聞いて。わたしはもうしばらくここに残るから、三人とも邸に戻っていて。シラヌスに話をして、全てよく相談して行動なさい」

「判りました」

 ゲルマニクスが答えた。

「何かあったら、まずシラヌスに言って、それからできるだけわたしにも知らせて」

 ゲルマニクスは「判りました」と再び答えてから、邸の奥で起こったことへの興味を抑えきれない様子で尋ねてきた。

「アウグストゥスはどんなご様子なんですか」

「お嘆きが深くて、見ているのが辛いほどよ。リウィアが付き添っておられるわ」

「伯父上はどうなさったんですか。何故、あんなふうに突然お帰りになったんですか。一体、どんな話を?」

 アントニアはゲルマニクスを見て、それから甥に目を向けた。それは、誰よりもこの甥が尋ねたいことだろう。ドゥルーススは不安そうな眼差しで、アントニアを見つめた。

「ティベリウスは、あなたに何か言った?」

「何も。先に戻るからと、ただそれだけで」

「そう」

「父はどうしたんですか」

 アントニアは少し間をおいて言った。

「心配しないで、って言ってもきっと無理ね。アウグストゥスはガイウス殿の死に心を乱されて、ティベリウスとの間に少し気持ちの行き違いがあったの。わたしからは今はこれ以上言えないわ」

 ドゥルーススは不安気な表情のまま一旦口をつぐんだが、遠慮がちに尋ねてくる。

「父の邸に行ってもかまいませんか」

 アントニアは少し考えた。

「ティベリウスに使者をやって確かめてみて。わたしには判断ができないから。ティベリウスがいいと言えば、邸のことはゲルマニクスに任せてくれればいいわ」

「はい」

 ドゥルーススは頷く。アントニアは子供たちを一人ひとり見つめた。

「頼むわね」

「はい」

 ゲルマニクスが率先して応え、三人は一緒に食堂を出て行く。使用人たちが、すでに手早く食堂を片付けにかかっていた。アントニアは食堂長に「よろしくね」と声だけかけてから、再び奥へ戻った。

 これからどうなるのだろう。アントニアには判らなかった。応接室を覗いたが、そこにはもう誰もいない。私室だろうか。

「アントニア」

 背後から声をかけられ、アントニアは振り返った。そこにいたのはリウィアだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ