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第一章 父の帰還(二五) 場面六 対立(一)
ガイウスに聖職が与えられて間もなく、ティベリウスはアウグストゥス邸に呼び出された。二月も半ばを過ぎ、ティベリウスがそろそろ北の国境ゲルマニアの事を考え始めた頃だった。ゲルマニア制覇はまだ途上だというティベリウスの進言をアウグストゥスは聞き入れず、凱旋式を挙行した。だが、そのわずか数ヵ月後にはゲルマニアでは再び反乱が勃発している。結局、ティベリウスはそのまま半年をゲルマニアで過ごし、冬になってからローマに戻ったのだ。ゲルマニアが戦闘状態であるか否かの判断はひとまず措くとしても、ローマでは伝統的に、征服した将軍がそのままその地の統治に当たることになっている。征服から覇権の確立、そして政治力による統治へとスムーズに移行させるためには、現地を知り、そして現地を征した者が統治に当たる事が最適であると考えられていたからだ。
ティベリウスは、アウグストゥスも当然同じ考えだろうと思っていた。だが、この継父は、そうは考えなかった。
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